2024.10.15
◇第36回出雲駅伝(10月9日/6区間45.1km:島根・出雲大社正面鳥居前スタート、出雲ドームフィニッシュ)
出雲駅伝を2連覇中の駒大は、エース格の佐藤圭汰(3年)をケガで欠く布陣で出雲路に臨んだ。過去2大会は2区に配された佐藤が、序盤で大きな流れを作って優勝してきただけに、佐藤の不在は大きな痛手だ。それでも、藤田敦史監督は自信を持って6人のメンバーを送り出した。
「『圭汰なしでも戦えるチームを作ろう』ということで、選手たちはここまで頑張ってきた。そのおかげで、良い状態のチームを作ることができた。圭汰抜きで勝つことができれば、今後の全日本、箱根に向けて非常に大きな弾みになるとも思っています」
藤田監督の目論見どおりに、チームは序盤から好位置でレースを進める。
1区に抜擢されたルーキー・桑田駿介が区間6位でスタートすると、佐藤が担ってきた2区では帰山侑大(3年)が区間4位と粘り、順位をキープする。そして、藤田監督が1区とともにに“カギ”と挙げていた3区では、2年連続出場の山川拓馬(3年)が区間2位と好走し、青学大の黒田朝日(3年)と先頭争いを繰り広げた。最後は先着を許したものの、区間記録では黒田を上回った。
4区では地元・出雲市出身の伊藤蒼唯(3年)が、4km過ぎに青学大を逆転し、ついに先頭に立った。5区を任された島子公佑(2年)は、國學院大に先頭を明け渡したものの、初の大学駅伝で粘りを見せて、4秒差の2位でアンカーの篠原倖太朗(4年)にタスキをつなぐ。「30秒あれば篠原で逆転できる」という思惑通りで、レースは進んでいた。
しかし、アンカー対決は國學院大のエース・平林清澄(4年)に軍配があがった。篠原は1km過ぎに平林をとらえたものの、約4.5kmでじわじわと離され始めると、5km過ぎの上りで勝負に出た平林についていくことができなかった。終盤までもつれれば、篠原のスピードに分があると思われたが、平林のロングスパートが勝った。
「結局は、各区間で最後の部分で伸びがなかった。その積み重ねがアンカーに渡ったときに、ビハインドになってしまった」と藤田監督。「絶対的エースの篠原が何とかしてくれると信じる思いももちろんありましたが、ヨギボー(9月28日のYogibo Athletics Challenge Cup)の疲労が出てきてしまったのかな」と、半月前に5000mで13分15秒70をマークしていた篠原の状態を慮る。
ただ、前半シーズンの不調や佐藤の不在を思えば、健闘と見ることもできる。連覇中の王者としての意地は見せただろう。
「春からの流れが悪いなかで出雲は負けましたけど、先頭争いするところまではできた。この自信と悔しさを持って、次の全日本は連覇を目指したい。一つひとつ自信にして箱根に向かおうと思います。一つひとつですね」(藤田監督)。反省と収穫とを得て、次戦の全日本に向かっていく。
駒大のチームの状態の良さは、出雲駅伝後の“もうひとつの出雲駅伝”といわれる出雲市記録会でも窺い知ることができた。
快走を見せたのは1年生の谷中晴。直前にケガがあったため、6人の走者からは漏れたが、出雲遠征メンバーの1人として意地を見せた。
「全日本のメンバー選考がかかっていて、監督からは“勝ち切るように”と言われていたので、そこをしっかり意識していました」
谷中は、残り2周を切って青学大の白石光星のスパートに食い下がり逆転すると、最後は後続を突き放して13分49秒71の自己記録でトップでフィニッシュ。4年生の金谷紘大も13分57秒12で5着に入った。
谷中は福島・帝京安積高に在籍していた昨年秋に膝をケガし、本格的に練習を再開したのは今年の7月下旬から。トラックレースに出場するのは実に1年ぶりだった。
「(出雲駅伝の)レースが終わった後、篠原さんの涙を見て、強い駒澤のイメージを崩しちゃいけないと思いました。金谷さんと2人とも13分台で揃えられましたし、自分はトップを取れたので、合格点をあげられると思います」と、駒大のユニフォームを着て初めて走ったレースを振り返った。
“勝ち切れ”という指揮官の要求にしっかりと応えて、全日本のメンバー入りに向けて見事にアピールしてみせた。
「負けても、ただでは起きないのが駒澤。“チームが負けたなかで、お前たちがどういうレースをするのかが大事だ”って話をして送り出した。谷中は非常に強かったですね。出雲駅伝での不安を払拭する走りを谷中がやってくれたのは大きい」と、藤田監督もルーキーの走りを称えていた。
全日本も佐藤の出場は微妙な状況だが、“負けても、ただでは起きない”という藤田監督の言葉通り、全日本では巻き返しを見せそうな予感がある。
文/和田悟志
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