◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)11日目
パリ五輪・陸上競技最終日となる11日目に女子マラソンが行われ、シファン・ハッサン(オランダ)が2時間22分55秒の五輪新記録で金メダルに輝いた。
五輪2大会連続で3種目に挑戦したハッサン。前回の東京は1500m、5000m、10000mのトラック3種目だったが、今回は5000m、10000m、マラソンを選択した。そして、その締めくくりに、得意のスパートを決めてみせた。
序盤から先頭を常に視野に入れた位置で、マイペースを刻む。大きなストライドを刻むハッサンにとって、ストライドやピッチのリズムが合う選手がなかなかいないというのもあるだろう。もちろん、多少距離が開いたとしても、すぐに対応できる自信の裏返しでもある。
中間地点をトップと3秒差の1時間13分25秒で通過。28kmからの急坂で脱落したかに見えたが、上り切ってからの平坦、さらには下りを利用して、いつの間にか先頭集団の背中を捕らえる。
そのまま集団後方で静かに待機すると、その力を解放したのはラスト1kmを切ってからだった。2時間11分53秒の世界記録を持つティグスト・アセファ(エチオピア)が集団から抜け出すと、それに呼応するかのようにすぐさま背後にピタリとつく。そして、並びかける。
いったんはアセファの抵抗を受けたが、位置を変えて渾身のスパート。アセファを突き放し、両手を掲げてフィニッシュテープを切った。
大会5日目の5000m、9日目の10000mはいずれもディフェンディングチャンピオンとして臨んだが、ラスト勝負で競り負けて銅メダルに甘んじた。マラソンに対応するためのトレーニングの影響か、トラックランナーに対しては切れ味を欠いた。だが、10000mから約34時間半後に臨んだマラソンでは、ライバルを圧倒する武器となった。
フィニッシュ後、ハッサンは歓喜を爆発させてこう振り返った。
「夢を見ているような気がします。ゴールした瞬間、解放感でいっぱいでした。信じられない気持ちです。こんなことは今まで経験したことがありません。これまで走った他のマラソンでさえ、こんなことはなかったです。『私はオリンピックチャンピオン。どうしてこんなことができたの?』と思いました」
レース中は「ずっと、5000mと10000mを走ったことを後悔していました。あれをやらなければ、今日は最高の気分だったのに」と、ジョークを交えて振り返りる。
その気持ちが切り替わったのが20km付近。「調子が良くなり始めた瞬間、すごく気分が良くなった。それから金メダルが欲しいとわかりました」。ライバルたちの動向に注意を払いながら、勝負どころに向けて集中力を研ぎ澄ませる。
「スパートの瞬間まで、人生でこれほど集中したことはありませんでした。1歩1歩に集中していました」。そして、最後のアセファとのラスト勝負は「これはただの100mスプリント。頑張れ、シファン。あと1回。スプリンターのように、ただ感じろ」と思いながらスパートを繰り出したという。
最初の五輪だった2016年リオは1500m5位、800m予選敗退だったが、東京からの2大会ではこれが3つ目の金メダルで、6個目のメダル獲得だ。
「若い頃は結果に一喜一憂した」が、「大人になるにつれて『思ったようにことは進まない』と感じました」。昨年のブダペスト世界選手権では、10000mの優勝争いの中で転倒するアクシデントもあったが、「これも人生」と受け入れる。「大事なのは毎日ベストを尽くすこと。そうすれば明日、新しい自分に会える」。
その積み重ねの先に、史上最も強きランナーの姿があった。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.06.15
-
2025.06.15
-
2025.06.11
2025.05.28
女子10000mがレース途中で異例の中断!! 大雨と雷の影響も選手困惑/アジア選手権
2025.05.16
2025高校最新ランキング【女子】
-
2025.06.04
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.06.16
800m昨年全国8位の菊池晴太が1分50秒03の大会新V「収穫と悔しさがある」400mH長谷川桜介が51秒19、三段跳の菅野穂乃は大会新/IH東北
◇インターハイ東北地区大会(6月13~16日/青森・カクヒログループアスレチックスタジアム)3日目 広島インターハイを懸けた東北地区大会の3日目が行われ、男子800mは菊池晴太(盛岡第四3岩手)が1分50秒03の大会新で […]
2025.06.16
走幅跳IH2位の成澤柚日が自己新6m11で3連覇!柴田弥聖が2年連続ロングスプリント2冠/IH北関東
◇インターハイ北関東地区大会(6月13~16日/栃木県宇都宮市・県総合運動公園カンセキスタジアム) 広島インターハイを懸けた北関東地区大会の2日目が行われ、女子走幅跳で成澤柚日(共愛学園3群馬)が自己新の6m11(+1. […]
2025.06.16
円盤投・松元美春が最終投てきで大逆転連覇&3年連続IHへ!走幅跳・木浦が自己新連発7m20、大混戦800mは田中が2年生V/IH南九州
◇インターハイ南九州地区大会(6月13~16日/熊本市・えがお健康スタジアム)3日目 広島インターハイを懸けた南九州地区大会の3日目が行われ、女子円盤投は松元美春(出水3鹿児島)が39m42で2連覇を達成した。 広告の下 […]
2025.06.16
中村学園女3種目V 小松美咲800m2分05秒63の大会新で2連覇&2冠 走幅跳とハンマー投も制す 大塚涼也がやり投65m51/IH北九州
◇インターハイ北九州地区大会(6月13日~16日/佐賀・SAGAスタジアム) 広島インターハイをかけた北九州地区大会の3日目が行われ、中村学園女(福岡)が女子3種目で制した。 広告の下にコンテンツが続きます なかでも80 […]
Latest Issue
最新号

2025年7月号 (6月13日発売)
詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会