HOME 国内、世界陸上、日本代表
メダルに近づいた4人の侍 男子マイルリレー4位「お家芸となれるように」悲願達成へ個々を高める/世界陸上
メダルに近づいた4人の侍 男子マイルリレー4位「お家芸となれるように」悲願達成へ個々を高める/世界陸上


◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)10日目

オレゴン世界陸上10日目のイブニングセッションに行われた男子4×400mリレーで、日本マイルリレーの歴史が一歩動いた。

広告の下にコンテンツが続きます

かつて世界の入賞を果たしていた4×400mリレーだったが、その時計の針は長く止まったまま。昨年の東京五輪では、1996年アトランタ五輪4位の時と並ぶ日本タイ記録(3分00秒76)をマークしながら決勝進出はならず。その針を4人の“侍”が動かした。

1走は日本選手権覇者の佐藤風雅(那須環境技術センター)。スタート前の紹介では、男子4継でおなじみの刀を抜くポーズを決める。これがスタートの合図だった。

佐藤は「海外勢と競り合って予選からタイムを落としてしまった」と悔やむものの、5、6番手で川端魁人(中京大クラブ)へバトンをつないだ。今大会、400mに佐藤、川端、ウォルシュ・ジュリアン(富士通)がフルエントリーしたが、川端だけが予選敗退。その悔しさをリレーにぶつけた。「予選よりも(海外は)速くて、メリハリのあるレースができなかった。ポジショニングなどが2走の大事なところ」とこちらも自身の走りを反省する。

しかし、「決勝ということを考えれば良い位置で持ってきてくれました」とバトンを受けたウォルシュ。6番手からラップタイム43秒91の快走を見せる。どんな位置で来ても「順位を上げないといけない」。それが自分の果たすべき役割だった。その思い通り、ラストはジャマイカをぶち抜き4位へと押し上げて、大学の後輩にもあたる、中島佑気ジョセフ(東洋大)へとバトンをつないだ。

広告の下にコンテンツが続きます

後半が持ち味の中島。「バックストレートが向かい風だったので(ベルギーの)後ろにつきました」と冷静な対応で、虎視眈々とメダル争いを狙う。米国が独走し、ジャマイカ、ベルギー、そして日本が続く。しかし、「得意な後半で離されてめちゃくちゃ悔しい。実力不足でした」と、ベルギーを捉えきれず。メダルへの挑戦は幕を閉じた。

米国、ジャマイカ、ベルギーと続き、掲示された日本のタイムは――2分59秒51。これまで届きそうで届かなかった2分台に突入する日本新、そしてアジア記録の奪還だった。アトランタ五輪以来の4位。記録もついに塗り替えた。

大興奮の4位にも、4人の表情は予選突破時とは違って明るさがない。「全員が絶対にメダルを取れると信じていました」と中島。ウォルシュも「日本記録は当たり前で、メダルを目指していたので」と悔しさを隠しきれない。それだけ高みを目指せる場所に来たということだった。

「4継だけじゃなく、マイルリレーもお家芸となれるように」とウォルシュ。メダルに近づいたからこそ、感じるのは個々の走力を上げることの大切さ。オレゴンで世界と対峙した“4人の侍”は、悲願のメダル達成へさらに個々を磨いて、再集結の日を待つ。

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)10日目 オレゴン世界陸上10日目のイブニングセッションに行われた男子4×400mリレーで、日本マイルリレーの歴史が一歩動いた。 かつて世界の入賞を果たしていた4×400mリレーだったが、その時計の針は長く止まったまま。昨年の東京五輪では、1996年アトランタ五輪4位の時と並ぶ日本タイ記録(3分00秒76)をマークしながら決勝進出はならず。その針を4人の“侍”が動かした。 1走は日本選手権覇者の佐藤風雅(那須環境技術センター)。スタート前の紹介では、男子4継でおなじみの刀を抜くポーズを決める。これがスタートの合図だった。 佐藤は「海外勢と競り合って予選からタイムを落としてしまった」と悔やむものの、5、6番手で川端魁人(中京大クラブ)へバトンをつないだ。今大会、400mに佐藤、川端、ウォルシュ・ジュリアン(富士通)がフルエントリーしたが、川端だけが予選敗退。その悔しさをリレーにぶつけた。「予選よりも(海外は)速くて、メリハリのあるレースができなかった。ポジショニングなどが2走の大事なところ」とこちらも自身の走りを反省する。 しかし、「決勝ということを考えれば良い位置で持ってきてくれました」とバトンを受けたウォルシュ。6番手からラップタイム43秒91の快走を見せる。どんな位置で来ても「順位を上げないといけない」。それが自分の果たすべき役割だった。その思い通り、ラストはジャマイカをぶち抜き4位へと押し上げて、大学の後輩にもあたる、中島佑気ジョセフ(東洋大)へとバトンをつないだ。 後半が持ち味の中島。「バックストレートが向かい風だったので(ベルギーの)後ろにつきました」と冷静な対応で、虎視眈々とメダル争いを狙う。米国が独走し、ジャマイカ、ベルギー、そして日本が続く。しかし、「得意な後半で離されてめちゃくちゃ悔しい。実力不足でした」と、ベルギーを捉えきれず。メダルへの挑戦は幕を閉じた。 米国、ジャマイカ、ベルギーと続き、掲示された日本のタイムは――2分59秒51。これまで届きそうで届かなかった2分台に突入する日本新、そしてアジア記録の奪還だった。アトランタ五輪以来の4位。記録もついに塗り替えた。 大興奮の4位にも、4人の表情は予選突破時とは違って明るさがない。「全員が絶対にメダルを取れると信じていました」と中島。ウォルシュも「日本記録は当たり前で、メダルを目指していたので」と悔しさを隠しきれない。それだけ高みを目指せる場所に来たということだった。 「4継だけじゃなく、マイルリレーもお家芸となれるように」とウォルシュ。メダルに近づいたからこそ、感じるのは個々の走力を上げることの大切さ。オレゴンで世界と対峙した“4人の侍”は、悲願のメダル達成へさらに個々を磨いて、再集結の日を待つ。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第64回「駅伝とチームマネジメント~棄権を今後の糧に~」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第64回「駅伝とチームマネジメント~棄権を今後の糧に~」 年の瀬が迫り、その先には箱根駅伝が待 […]

NEWS 今季の最終決戦を制するのは青学大、駒大、國學院大、中大、早大!? 創価大、帝京大などの5強崩しなるか/箱根駅伝

2025.12.30

今季の最終決戦を制するのは青学大、駒大、國學院大、中大、早大!? 創価大、帝京大などの5強崩しなるか/箱根駅伝

第102回箱根駅伝は2026年1月2日に往路、3日に復路の全10区間217.1kmで行われる。 前回大会でシード権を獲得した10校と、予選会を突破した10校とオープン参加の関東学生連合チームを合わせた21チームが出場。今 […]

NEWS SUBARU・三浦龍司「ワクワクしてもらえるようなレースに」 GMO・吉田祐也「優勝を目指して」ロジスティード・平林清澄「自分の走りでチームに貢献」 各選手が意気込み/ニューイヤー駅伝

2025.12.30

SUBARU・三浦龍司「ワクワクしてもらえるようなレースに」 GMO・吉田祐也「優勝を目指して」ロジスティード・平林清澄「自分の走りでチームに貢献」 各選手が意気込み/ニューイヤー駅伝

◇第70回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km) 第70回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の記者会見が12月30日、スタート・フィニッシュ地点となる群馬県庁で行われた。 […]

NEWS 名城大が4位 主将・米澤「みんなのお陰でやりきれた」連覇狙った立命大は5位/富士山女子駅伝

2025.12.30

名城大が4位 主将・米澤「みんなのお陰でやりきれた」連覇狙った立命大は5位/富士山女子駅伝

◇2025富士山女子駅伝(12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 学生女子駅伝2大タイトルの一つ、富士山女子駅伝が行われ城西大が2時間22分36秒で初優勝を飾った。城西 […]

NEWS 2年ぶりV奪還へトヨタ自動車・鈴木芽吹「レース全体で自分の力を発揮」 2週間前に痛みも/ニューイヤー駅伝

2025.12.30

2年ぶりV奪還へトヨタ自動車・鈴木芽吹「レース全体で自分の力を発揮」 2週間前に痛みも/ニューイヤー駅伝

◇第70回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/1月1日、群馬県庁発着・7区間100km) 元日に開催される全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の記者会見が12月30日、スタート・フィニッシュ地点となる群馬県庁で行 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top