HOME 国内、大学、世界陸上、日本代表
日本男子4継「東京からの再出発」!失格ながら平均年齢22歳の新布陣で戦い抜く/世界陸上
日本男子4継「東京からの再出発」!失格ながら平均年齢22歳の新布陣で戦い抜く/世界陸上

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目

オレゴン世界陸上8日目のイブニングセッションに行われた男子4×100mR予選1組。日本は、「東京五輪途中棄権」からのリスタートを切った。

1走は24歳の坂井隆一郎(大阪ガス)、2走は23歳の鈴木涼太(スズキ)、3走は23歳の上山紘輝(住友電工)、アンカーは東洋大1年の18歳・栁田大輝。全員が世界陸上も五輪も出場経験がなく、平均年齢は22歳という新布陣。だが、坂井は100mで準決勝に進出、上山も200m予選で日本歴代9位の20秒26をマークしてセミファイナルに進むなど、個人で力を出し切った経験がある。

ただ、リレーチーム最年長の小池祐貴(住友電工)が新型コロナウイルス感染のため欠場を余儀なくされ、本来は2走に入る予定だった100m7位入賞のサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)を疲労や脚の違和感から起用できなかった。同じ組には連覇が至上命題の地元・米国、前々回に地元優勝を飾った英国など、強豪がずらり。苦戦は十分に予想されていた。

1走の坂井が得意のスタートから米国に次ぐ2番手争いの位置で持ち込む。2走・鈴木は、米国が200m王者ノア・ライルズを投入するなど各国のエースが集う中でさすがにポジションを下げたが、粘りの走りを見せた。しかし、3走・上山へのバトンパスが乱れた。

3走・上山が個人と同じような快走を見せ、上位争いへと巻き返す。4番手争いでスタートした栁田も、後方から追い上げたガーナにはかわされたが、先行する中国を逆転して4着でフィニッシュした。プラス通過への可能性は残したとはいえ、タイムは38秒78。37秒台が当たり前となった日本チームにとっては、伸び悩んだと言っていい記録だ。

広告の下にコンテンツが続きます

しかも、バトンパスが乱れた2走、3走間がオーバーゾーンだったと判定され、失格に。東京五輪に続いて記録を残せなかった。結果的に2組5着のブラジルが38秒41で、プラス通過にも届いていない。

それでも、それぞれが常にメダルを期待されるこの種目の重圧に耐え、初出場とは思えないほど力を出し切った。

「スタート自体はしっかりと切れたので良かった。後半は隣のレーンの選手を意識してちょっとだけスピード落としてしまったけどバトンはうまく渡せたかなと思う」(坂井)

「(事前に)話しはしたけど、バトンがうまくいかなかった。難しさを感じました」(鈴木)

「勝負する、メダルを狙っていましたが、自分のところでバトンをミスしてしまって悔しい。自分の力で勝負していかないといけないなと感じました」(上山)

「悔しい気持ちでいっぱい。ミスはあったけど、誰が悪いわけではない。僕ももっと調子を上げて、安心してもらえるような状態で臨めれば、もっと余裕を持って走れたのかなと思います」(栁田)

日本男子4継の中心を担ってきた桐生祥秀(日本生命)、山縣亮太(セイコー)、多田修平(住友電工)らが代表に名を連ねることができず、大会に入ってからも主力を欠く状況に陥った。速報で出たタイム、失格という結果だけを見れば、東京からの再出発はほろ苦いものだったかもしれない。

その中でも、若い芽が育ってきた兆しはある。個人種目で得た経験、リレーで味わった思いをそれぞれが糧にすること。さらには、この結果を他の選手が受け止めて今後につなげること。それができれば、来年のブダペスト世界陸上、再来年のパリ五輪、さらには2025年の東京世界陸上で、伝統のバトンパスが復活を遂げるはずだ。

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目 オレゴン世界陸上8日目のイブニングセッションに行われた男子4×100mR予選1組。日本は、「東京五輪途中棄権」からのリスタートを切った。 1走は24歳の坂井隆一郎(大阪ガス)、2走は23歳の鈴木涼太(スズキ)、3走は23歳の上山紘輝(住友電工)、アンカーは東洋大1年の18歳・栁田大輝。全員が世界陸上も五輪も出場経験がなく、平均年齢は22歳という新布陣。だが、坂井は100mで準決勝に進出、上山も200m予選で日本歴代9位の20秒26をマークしてセミファイナルに進むなど、個人で力を出し切った経験がある。 ただ、リレーチーム最年長の小池祐貴(住友電工)が新型コロナウイルス感染のため欠場を余儀なくされ、本来は2走に入る予定だった100m7位入賞のサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)を疲労や脚の違和感から起用できなかった。同じ組には連覇が至上命題の地元・米国、前々回に地元優勝を飾った英国など、強豪がずらり。苦戦は十分に予想されていた。 1走の坂井が得意のスタートから米国に次ぐ2番手争いの位置で持ち込む。2走・鈴木は、米国が200m王者ノア・ライルズを投入するなど各国のエースが集う中でさすがにポジションを下げたが、粘りの走りを見せた。しかし、3走・上山へのバトンパスが乱れた。 3走・上山が個人と同じような快走を見せ、上位争いへと巻き返す。4番手争いでスタートした栁田も、後方から追い上げたガーナにはかわされたが、先行する中国を逆転して4着でフィニッシュした。プラス通過への可能性は残したとはいえ、タイムは38秒78。37秒台が当たり前となった日本チームにとっては、伸び悩んだと言っていい記録だ。 しかも、バトンパスが乱れた2走、3走間がオーバーゾーンだったと判定され、失格に。東京五輪に続いて記録を残せなかった。結果的に2組5着のブラジルが38秒41で、プラス通過にも届いていない。 それでも、それぞれが常にメダルを期待されるこの種目の重圧に耐え、初出場とは思えないほど力を出し切った。 「スタート自体はしっかりと切れたので良かった。後半は隣のレーンの選手を意識してちょっとだけスピード落としてしまったけどバトンはうまく渡せたかなと思う」(坂井) 「(事前に)話しはしたけど、バトンがうまくいかなかった。難しさを感じました」(鈴木) 「勝負する、メダルを狙っていましたが、自分のところでバトンをミスしてしまって悔しい。自分の力で勝負していかないといけないなと感じました」(上山) 「悔しい気持ちでいっぱい。ミスはあったけど、誰が悪いわけではない。僕ももっと調子を上げて、安心してもらえるような状態で臨めれば、もっと余裕を持って走れたのかなと思います」(栁田) 日本男子4継の中心を担ってきた桐生祥秀(日本生命)、山縣亮太(セイコー)、多田修平(住友電工)らが代表に名を連ねることができず、大会に入ってからも主力を欠く状況に陥った。速報で出たタイム、失格という結果だけを見れば、東京からの再出発はほろ苦いものだったかもしれない。 その中でも、若い芽が育ってきた兆しはある。個人種目で得た経験、リレーで味わった思いをそれぞれが糧にすること。さらには、この結果を他の選手が受け止めて今後につなげること。それができれば、来年のブダペスト世界陸上、再来年のパリ五輪、さらには2025年の東京世界陸上で、伝統のバトンパスが復活を遂げるはずだ。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

5月5日に行われる日本グランプリシリーズ第7戦「2025水戸招待陸上」のエントリー選手が発表された。男子棒高跳には東京五輪代表の山本聖途(トヨタ自動車)、江島雅紀(富士通)や世界選手権代表経験のある柄澤智哉(東京陸協)ら […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

NEWS 【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top