HOME バックナンバー
Road to OREGON 22 山西利和 積み上げて、準備して、挑戦する
Road to OREGON 22 山西利和 積み上げて、準備して、挑戦する

2019年ドーハ世界選手権の男子20㎞競歩の『世界王者』は日本にいる。山西利和(愛知製鋼)。昨年の東京五輪では銅メダルを獲得し、今年3月の世界競歩チーム選手権でも他を圧倒して金メダルを獲得するなど、押しも押されもしない世界トップウォーカーとして君臨している。オレゴン世界選手権へ向け、世界王者はどんな歩みを見せるのか。
文/酒井政人 撮影/弓庭保夫

広告の下にコンテンツが続きます

世界競歩チームで圧巻の金メダル

8月6日。〝世界王者〟山西利和(愛知製鋼)の首には銅色のメダルがかけられた。東京五輪男子20㎞競歩で3位となった後は休養に入った。

「ゆっくり休みました。本当に2週間は何もしなかったんです。案外練習しなくても罪悪感が湧かないんですね」と笑う山西。その後も、「少しストロール(※ゆっくりとしたペースで歩くこと)はしましたけど、ポイント練習と呼べるものはほとんどやっていません。1ヵ月くらいはたいした練習もせずに、本格的に始動したのは10月に入ってからです」。猛暑の中の激闘だったが、それほど肉体にダメージがあったのかと思いきや、そうではなかったという。

「正直、東京五輪後のダメージはとても軽かったんです。夏のレースの後は内臓も疲労するので、しばらくはおなかの痛さを感じながら飲み食いするんですけど、そんなことはありませんでした」。肉体的の疲労よりも、「どちらかというと精神的にひと区切りつけた感じ」だった。

「オリンピックは僕が高校生の頃から見ていた夢舞台。それが終わったので、お世話になった方々に報告するためにあっちこっち行っていました」

10月からトレーニングを再開。新たな目標に向かって歩き出した。

2019年ドーハ世界選手権で、20㎞競歩日本史上初の金メダリストとなった山西。ディフェンディング・チャンピオンとして、オレゴン世界選手権はワイルドカードでの出場資格を持つ。山西は〝世界連覇〟に向けて3月5日の世界競歩チーム選手権(オマーン・マスカット)の参戦を決めた。

「オレゴン世界選手権の代表選考レースには出なくても大丈夫なので、国内よりも海外のレースに出場したほうが経験値的にいいかなと思ったんです。集団をどうコントロールするのかなど、テーマを持って取り組むなら、一番いいチョイスかな、と」

冬季を含め、「ケガもなく、練習も積めていた」と山西。トレーニング面は「大きく変えていません。説明するのは難しいですけど、いろいろと試しながら感覚のアップデートはしてきました」と振り返る。

世界競歩チーム選手権には、前回覇者で東京五輪銀メダルの池田向希(旭化成)と愛知製鋼の後輩である諏方元郁とともに出場。国別団体は上位3名の個人順位の合計ポイントで順位が決まるため、山西は諏方の順位がポイントになると読んでいた。

気温26度の中で行われ、最初の1周(2㎞)が8分34秒というスローな展開に。すると4㎞を過ぎて山西が前に出る。8㎞過ぎに池田に追いつかれたものの、中間地点を41分59秒で通過した後は山西が再びリードを奪った。その後はひとり旅になり、金メダルに向かって突き進んだ。山西が1時間22分52秒で優勝。池田が1時間23分29秒で続き、日本勢がワン・ツーを達成した。

「日本チームとして一番いい順位を取るためにはどういうレースがいいかを考えました。放っておいても池田は上位に入るので、諏方の順位をどう上げるのか。中国、スペインなど団体戦を狙っている国は集団で上位を目指すのが戦略としてあるので、ハイペースになるのが一番嫌な展開です。集団のペースが結構ゆっくり感じたので、もう少し速いほうがいいと思って前に出ました。本当は集団をうまく転がすようなことをしたかったんですけど、結果的にそうなりましたね」

山西の狙いはズバリと的中する。諏方も粘って23位(1時間27分51秒)でフィニッシュし、日本の合計ポイントは26。エクアドルに1ポイント及ばず、国別団体の連覇は逃したが、3位の中国(45ポイント)に大差をつけて2位になった。

負けちゃった東京五輪

「何というか、負けちゃったなっていう感じです。悔しいというよりも、『これで無理なんだ』という感情。自分の中ではマックスでやったつもりでした。これまでの枠でデザインしたものでは、どうしようもないものがそこにあったと思っています」

この続きは2022年5月13日発売の『月刊陸上競技6月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

2019年ドーハ世界選手権の男子20㎞競歩の『世界王者』は日本にいる。山西利和(愛知製鋼)。昨年の東京五輪では銅メダルを獲得し、今年3月の世界競歩チーム選手権でも他を圧倒して金メダルを獲得するなど、押しも押されもしない世界トップウォーカーとして君臨している。オレゴン世界選手権へ向け、世界王者はどんな歩みを見せるのか。 文/酒井政人 撮影/弓庭保夫

世界競歩チームで圧巻の金メダル

8月6日。〝世界王者〟山西利和(愛知製鋼)の首には銅色のメダルがかけられた。東京五輪男子20㎞競歩で3位となった後は休養に入った。「ゆっくり休みました。本当に2週間は何もしなかったんです。案外練習しなくても罪悪感が湧かないんですね」と笑う山西。その後も、「少しストロール(※ゆっくりとしたペースで歩くこと)はしましたけど、ポイント練習と呼べるものはほとんどやっていません。1ヵ月くらいはたいした練習もせずに、本格的に始動したのは10月に入ってからです」。猛暑の中の激闘だったが、それほど肉体にダメージがあったのかと思いきや、そうではなかったという。「正直、東京五輪後のダメージはとても軽かったんです。夏のレースの後は内臓も疲労するので、しばらくはおなかの痛さを感じながら飲み食いするんですけど、そんなことはありませんでした」。肉体的の疲労よりも、「どちらかというと精神的にひと区切りつけた感じ」だった。「オリンピックは僕が高校生の頃から見ていた夢舞台。それが終わったので、お世話になった方々に報告するためにあっちこっち行っていました」10月からトレーニングを再開。新たな目標に向かって歩き出した。2019年ドーハ世界選手権で、20㎞競歩日本史上初の金メダリストとなった山西。ディフェンディング・チャンピオンとして、オレゴン世界選手権はワイルドカードでの出場資格を持つ。山西は〝世界連覇〟に向けて3月5日の世界競歩チーム選手権(オマーン・マスカット)の参戦を決めた。「オレゴン世界選手権の代表選考レースには出なくても大丈夫なので、国内よりも海外のレースに出場したほうが経験値的にいいかなと思ったんです。集団をどうコントロールするのかなど、テーマを持って取り組むなら、一番いいチョイスかな、と」冬季を含め、「ケガもなく、練習も積めていた」と山西。トレーニング面は「大きく変えていません。説明するのは難しいですけど、いろいろと試しながら感覚のアップデートはしてきました」と振り返る。世界競歩チーム選手権には、前回覇者で東京五輪銀メダルの池田向希(旭化成)と愛知製鋼の後輩である諏方元郁とともに出場。国別団体は上位3名の個人順位の合計ポイントで順位が決まるため、山西は諏方の順位がポイントになると読んでいた。気温26度の中で行われ、最初の1周(2㎞)が8分34秒というスローな展開に。すると4㎞を過ぎて山西が前に出る。8㎞過ぎに池田に追いつかれたものの、中間地点を41分59秒で通過した後は山西が再びリードを奪った。その後はひとり旅になり、金メダルに向かって突き進んだ。山西が1時間22分52秒で優勝。池田が1時間23分29秒で続き、日本勢がワン・ツーを達成した。「日本チームとして一番いい順位を取るためにはどういうレースがいいかを考えました。放っておいても池田は上位に入るので、諏方の順位をどう上げるのか。中国、スペインなど団体戦を狙っている国は集団で上位を目指すのが戦略としてあるので、ハイペースになるのが一番嫌な展開です。集団のペースが結構ゆっくり感じたので、もう少し速いほうがいいと思って前に出ました。本当は集団をうまく転がすようなことをしたかったんですけど、結果的にそうなりましたね」山西の狙いはズバリと的中する。諏方も粘って23位(1時間27分51秒)でフィニッシュし、日本の合計ポイントは26。エクアドルに1ポイント及ばず、国別団体の連覇は逃したが、3位の中国(45ポイント)に大差をつけて2位になった。

負けちゃった東京五輪

「何というか、負けちゃったなっていう感じです。悔しいというよりも、『これで無理なんだ』という感情。自分の中ではマックスでやったつもりでした。これまでの枠でデザインしたものでは、どうしようもないものがそこにあったと思っています」この続きは2022年5月13日発売の『月刊陸上競技6月号』をご覧ください。 
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2026.11.04

昨年度全国3位・成瀬が圧勝 鳥取は男子・八頭、女子・鳥取北がアンカーで逆転/中学駅伝

12月13日に行われる第34回全国中学校駅伝の出場権を懸けた都道府県予選が、10月中旬から11月3日にかけて8道県で行われ、男女それぞれの代表チームが決まった。 10月15日に行われた福島では、男子の須賀川一が56分16 […]

NEWS 広島は西条農が男女優勝 倉敷、鳥取城北、平田も男女V 山口は高川学園初都大路、女子は西京/高校駅伝都道府県大会

2026.11.03

広島は西条農が男女優勝 倉敷、鳥取城北、平田も男女V 山口は高川学園初都大路、女子は西京/高校駅伝都道府県大会

全国高校駅伝の出場権を懸けた鳥取県と島根県の両高校駅伝が10月31日に、岡山県、広島県、山口県の各高校駅伝が11月1日に男子7区間42.195km、女子5区間21.0975kmで行われた。 みよし運動公園陸上競技場付設駅 […]

NEWS 学法石川が全国連覇へ発進!11年連続男女Vも達成 青森山田、浜松日体、浜松市立、美濃加茂が名乗り/高校駅伝都道府県大会

2026.11.03

学法石川が全国連覇へ発進!11年連続男女Vも達成 青森山田、浜松日体、浜松市立、美濃加茂が名乗り/高校駅伝都道府県大会

全国高校駅伝の出場権を懸けた青森県高校駅伝が10月29日、福島県高校駅伝が10月31日、静岡県、岐阜県高校駅伝が11月1日に、男子7区間42.195km、女子5区間21.0975kmでそれぞれ行われた。 猪苗代町総合体育 […]

NEWS 怪物・後藤大樹が400m45秒33!「楽しもうと臨んだ」金丸超え21年ぶり高校新 アクシデントも「何か起こせる」

2026.11.03

怪物・後藤大樹が400m45秒33!「楽しもうと臨んだ」金丸超え21年ぶり高校新 アクシデントも「何か起こせる」

エコパトラックゲームズ2026が11月3日、静岡・小笠山スタジアムで行われ、男子400mで後藤大樹(洛南高2京都)が45秒33をマークした。この記録は金丸祐三(当時・大阪高)が2005年に作った高校記録(45秒47)を2 […]

NEWS 女子4×100mR・市柏高が45秒32のU18日本新!IH200mV山田奈央ら1、2年生オーダーで自校の記録1年ぶり更新/エコパトラックゲームズ

2026.11.03

女子4×100mR・市柏高が45秒32のU18日本新!IH200mV山田奈央ら1、2年生オーダーで自校の記録1年ぶり更新/エコパトラックゲームズ

第17回エコパトラックゲームズが11月3日、静岡県掛川市の小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われ、女子4×100mリレーで市柏高(千葉)がU18日本新の45秒32をマークした。 6組タイムレースの最終組に入った市柏高 […]

    SNS

    Latest Issue 最新号最新号

    2026年11月号 (10月14日発売)

    2026年11月号 (10月14日発売)

    アジア大会総特集
    駅伝プレビュー

    page top