HOME バックナンバー
ALL for TOKYO2020+1 ケンブリッジ飛鳥 復活の1年からさらなる飛躍を
ALL for TOKYO2020+1 ケンブリッジ飛鳥 復活の1年からさらなる飛躍を

 2020年、群雄割拠の男子短距離にあって、改めて存在感を示したのがケンブリッジ飛鳥(Nike)だった。16年の日本選手権100mを制し、リオ五輪では準決勝に進出。銀メダルに輝いたリオの4×100mリレーで、ジャマイカのウサイン・ボルトと並走したシーンは今も鮮明に記憶に残る。だが、17年以降はケガが重なり、本来の走りが影を潜めていた。そこからの、鮮やかな復活。再び五輪の舞台で輝くために、この冬、さらなる上積みを図っている。

●構成/花木 雫
●写真提供/USM

広告の下にコンテンツが続きます

福井で3年ぶりの自己ベスト

 コロナ禍の影響で、本格的なシーズン開幕直前に緊急事態宣言が発令され、東京五輪を含めて6月までの大会がすべて中止や延期となった2020年。それでもケンブリッジ飛鳥(Nike)に迷いはなかった。

 例年より4ヵ月近く遅い初戦となった7月24日の東京選手権男子100mで、大会新記録となる10秒22(-0. 8)で始動。これで手応えをつかむと、続く8月23日のセイコーゴールデングランプリ東京(GGP東京)では、久々に国内の一線級が顔をそろえるなか、優勝した桐生祥秀(日本生命)から0秒02差の10秒16(-0.2)で2位を占めた。

 極めつきは、8月29日のAthlete NightGames in FUKUIでの快走。ケンブリッジ自身が2020年シーズンで一番印象に残っているレースに挙げ、「久しぶりにベストが出てうれしかった。何よりうまくいかない期間が長かったので自信を取り戻せたのが大きかったです」。予選10秒05(+0.9)、決勝10秒03(+1.0 /日本歴代7位タイ)と立て続けに自己記録を更新し、両レースともに桐生にも先着。9秒台が目前に迫る好タイムは、〝復活〟を強く印象づけた。

 しかしその約1ヵ月後、肝心の日本選手権では再び桐生に0秒01差で敗れて2位。4年ぶりの優勝を逃した。

「福井の後に、少し調子に乗って富士北麓ワールドトライアル(9月6日)に出たのが余分でした」とケンブリッジ。100mのウォームアップレースを走った時点で左膝に軽い違和感を覚え、200mなどその後のレースを棄権した。

「ハイレベルな中で、2週続けて予選・決勝の2ラウンドのレースは負担が大きかった。3週続けてのレースは欲張り過ぎましたね」

 それだけ走るのが楽しかったこと、充実感の裏返しだが、せっかく上り調子だっただけに、欲を出してしまった自分を反省する。それでも、「2018、19年と、もやもやしたシーズンが続いたので、自己ベストも更新できましたし、高いアベレージを保てたことも収穫。精神面の成長も含め次につながるシーズンでした」と感慨深げに振り返った。

崩れたバランスを整える取り組み

日大を卒業して社会人1年目の2016年に大ブレイク。100mで第100回日本選手権の王者となり、初の世界大会だった同年のリオ五輪では100mで準決勝に進出。そして、アンカーを務めた4×100mリレーでは銀メダルに輝いた。桐生からバトンを受けた後、ジャマイカのウサイン・ボルトとしばらく並走するシーンは、今でも多くの人の記憶に残っているだろう。

 その後はプロに転向し、2017年はロンドン世界選手権、翌年はジャカルタ・アジア大会の代表入り。自己ベストも16年の10秒10から10秒08に短縮している。

 ただ、17年からは大学時代もあったハムストリングスのケガが重なり、本来の走りができないことが続いた。18年は日本選手権こそ2位を確保したものの、アジア大会では準決勝敗退。19年は日本選手権で8位に沈んでいる。

 2020年シーズンに再び輝きを取り戻すことができた要因は、何だったのか。原動力の一つとなったのが渡部文緒トレーナーとの出会いだ。2019年の冬季練習から、フィギュアスケートの五輪銅メダリスト・髙橋大輔をサポートしてきた経験もある敏腕トレーナーに師事し、根本的な肉体改造に取り組み始めた。課題として取り上げたのが身体の左右のバランスの改善と、上半身と下半身の連動性だ。

「両脚の動きだと安定しているものが、片脚ずつの動作になると左右で極端に違いました。右脚が強い動きもあれば、左脚が得意な種目もあるとバラバラで……すごくアンバランスでした。自分ではもっとできると思っていましたが、意外にできなくてショックでした。ケガもあって、知らず知らずのうちにバランスが崩れてしまっていたと思います」

この続きは2021年2月13日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

 2020年、群雄割拠の男子短距離にあって、改めて存在感を示したのがケンブリッジ飛鳥(Nike)だった。16年の日本選手権100mを制し、リオ五輪では準決勝に進出。銀メダルに輝いたリオの4×100mリレーで、ジャマイカのウサイン・ボルトと並走したシーンは今も鮮明に記憶に残る。だが、17年以降はケガが重なり、本来の走りが影を潜めていた。そこからの、鮮やかな復活。再び五輪の舞台で輝くために、この冬、さらなる上積みを図っている。 ●構成/花木 雫 ●写真提供/USM

福井で3年ぶりの自己ベスト

 コロナ禍の影響で、本格的なシーズン開幕直前に緊急事態宣言が発令され、東京五輪を含めて6月までの大会がすべて中止や延期となった2020年。それでもケンブリッジ飛鳥(Nike)に迷いはなかった。  例年より4ヵ月近く遅い初戦となった7月24日の東京選手権男子100mで、大会新記録となる10秒22(-0. 8)で始動。これで手応えをつかむと、続く8月23日のセイコーゴールデングランプリ東京(GGP東京)では、久々に国内の一線級が顔をそろえるなか、優勝した桐生祥秀(日本生命)から0秒02差の10秒16(-0.2)で2位を占めた。  極めつきは、8月29日のAthlete NightGames in FUKUIでの快走。ケンブリッジ自身が2020年シーズンで一番印象に残っているレースに挙げ、「久しぶりにベストが出てうれしかった。何よりうまくいかない期間が長かったので自信を取り戻せたのが大きかったです」。予選10秒05(+0.9)、決勝10秒03(+1.0 /日本歴代7位タイ)と立て続けに自己記録を更新し、両レースともに桐生にも先着。9秒台が目前に迫る好タイムは、〝復活〟を強く印象づけた。  しかしその約1ヵ月後、肝心の日本選手権では再び桐生に0秒01差で敗れて2位。4年ぶりの優勝を逃した。 「福井の後に、少し調子に乗って富士北麓ワールドトライアル(9月6日)に出たのが余分でした」とケンブリッジ。100mのウォームアップレースを走った時点で左膝に軽い違和感を覚え、200mなどその後のレースを棄権した。 「ハイレベルな中で、2週続けて予選・決勝の2ラウンドのレースは負担が大きかった。3週続けてのレースは欲張り過ぎましたね」  それだけ走るのが楽しかったこと、充実感の裏返しだが、せっかく上り調子だっただけに、欲を出してしまった自分を反省する。それでも、「2018、19年と、もやもやしたシーズンが続いたので、自己ベストも更新できましたし、高いアベレージを保てたことも収穫。精神面の成長も含め次につながるシーズンでした」と感慨深げに振り返った。

崩れたバランスを整える取り組み

日大を卒業して社会人1年目の2016年に大ブレイク。100mで第100回日本選手権の王者となり、初の世界大会だった同年のリオ五輪では100mで準決勝に進出。そして、アンカーを務めた4×100mリレーでは銀メダルに輝いた。桐生からバトンを受けた後、ジャマイカのウサイン・ボルトとしばらく並走するシーンは、今でも多くの人の記憶に残っているだろう。  その後はプロに転向し、2017年はロンドン世界選手権、翌年はジャカルタ・アジア大会の代表入り。自己ベストも16年の10秒10から10秒08に短縮している。  ただ、17年からは大学時代もあったハムストリングスのケガが重なり、本来の走りができないことが続いた。18年は日本選手権こそ2位を確保したものの、アジア大会では準決勝敗退。19年は日本選手権で8位に沈んでいる。  2020年シーズンに再び輝きを取り戻すことができた要因は、何だったのか。原動力の一つとなったのが渡部文緒トレーナーとの出会いだ。2019年の冬季練習から、フィギュアスケートの五輪銅メダリスト・髙橋大輔をサポートしてきた経験もある敏腕トレーナーに師事し、根本的な肉体改造に取り組み始めた。課題として取り上げたのが身体の左右のバランスの改善と、上半身と下半身の連動性だ。 「両脚の動きだと安定しているものが、片脚ずつの動作になると左右で極端に違いました。右脚が強い動きもあれば、左脚が得意な種目もあるとバラバラで……すごくアンバランスでした。自分ではもっとできると思っていましたが、意外にできなくてショックでした。ケガもあって、知らず知らずのうちにバランスが崩れてしまっていたと思います」 この続きは2021年2月13日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.16

熊橋弘将が2時間11分45秒で日本勢最高 女子は初マラソンの酒井心希が3位 MGC出場権獲得ならず/神戸マラソン

神戸マラソン2025が11月16日、兵庫・神戸市役所前をスタートし、明石市大蔵海岸付近を折り返して、神戸ハーバーランド(神戸ガス燈通り)をフィニッシュとする42.195kmで行われ、男子はエリシャ・ロティッチ(ケニア)が […]

NEWS 國學院大のルーキー・野田顕臣がU20日本最高1時間1分29秒!「自分ができるところまでアピールを」/上尾ハーフ

2025.11.16

國學院大のルーキー・野田顕臣がU20日本最高1時間1分29秒!「自分ができるところまでアピールを」/上尾ハーフ

第38回上尾シティハーフマラソンは11月16日、埼玉県上尾市内で行われ、大学生男子の部は青木瑠郁(國學院大)が1時間0分45秒の日本人学生歴代10位タイの好記録で優勝した。國學院大のルーキー・野田顕臣がU20日本最高記録 […]

NEWS 駒大・桑田駿介は積極レースで2位 伊勢路出走なく「箱根ではチームの役に立つ走りを」/上尾ハーフ

2025.11.16

駒大・桑田駿介は積極レースで2位 伊勢路出走なく「箱根ではチームの役に立つ走りを」/上尾ハーフ

第38回上尾シティハーフマラソンは11月16日、埼玉県上尾市内で行われ、大学生男子の部は青木瑠郁(國學院大)が1時間0分45秒の日本人学生歴代10位タイの好記録で優勝した。桑田駿介(駒大)が3秒差の2位に入った。 強い覚 […]

NEWS 國學院大・青木瑠郁が1時間0分45秒で競り勝つ! 流れを戻すために「勝てたことが大きかった」/上尾ハーフ

2025.11.16

國學院大・青木瑠郁が1時間0分45秒で競り勝つ! 流れを戻すために「勝てたことが大きかった」/上尾ハーフ

第38回上尾シティハーフマラソンは11月16日、埼玉県上尾市内で行われ、大学生男子の部は青木瑠郁(國學院大)が1時間0分45秒の日本人学生歴代10位タイの好記録で優勝した。 風がなく、気温が上がり切る前にスタートしたレー […]

NEWS 【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(九州共立大1)70m04=U20歴代5位

2025.11.16

【男子ハンマー投】アツオビン・アンドリュウ(九州共立大1)70m04=U20歴代5位

11月15日、九州共立大学陸上競技場で第1回九州共立大投てき競技会が行われ、U20規格(6kg)で実施された男子ハンマー投において、アツオビン・アンドリュウ(九州共立大1)が70m04のU20歴代5位の記録をマークした。 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top