2026.02.03
最後は晴れ晴れとした表情
「陸上が楽しかったです」
密度の濃い1年だった。振り返って、「陸上が楽しかったです」と帰山に笑みがこぼれる。
藤田監督が挙げるターニングポイントは、2024年11月の上尾シティハーフマラソン。その前に全日本大学駅伝でメンバーから外れ、上尾は正念場だった。そこで1時間1分59秒のタイムとともに、優勝争いを演じた内容が光った。
前回の箱根駅伝1区3位の好走を見せた後、2月の丸亀ハーフマラソンで1時間0分32秒にベストを短縮。あと一歩でワールドユニバーシティゲームス代表に届かなかったところが帰山らしい。ニューヨークシティハーフでの海外レース挑戦をはさみ、関東インカレ2部ハーフマラソン優勝を遂げた。
疲れもあって、夏合宿前にケガ。「そろそろ身体を休ませなさい」との天からの合図だったのだろう。秋以降は駅伝に絞って、学生三大駅伝を区間上位で駆け抜けた。
「駒澤大学にまず入れてもらえて、悔しいこともたくさん、苦しい思いも良い思いもさせてもらいました。充実した4年間だったと思います。4年目は特に、三大駅伝をすべて走らせていただきました。努力して、ここまでになった帰山侑大を、後輩たちに少しでも見てもらえたかな。後輩たちが『自分もそうなりたい』と、少しでも思ってもらえたらいいな」
後輩たちが見た帰山の背中は、克服しながら強くなっていった姿。2年時に5000m13分37秒54を出したように、もともとの持ち味はスピード。一方で練習を継続して積めず、スタミナに課題があった。これを地道な取り組みで克服し、3年時以降の活躍につなげた。
おおむね順調な歩みのなか、2年時に箱根駅伝メンバーに入ったものの、6区で区間12位と苦戦。帰山はあえて、これを最も印象に残ったレースとして挙げる。多くの悔しさも成長の糧に変えてきた。
さて、出雲駅伝は2区2位、全日本大学駅伝は3区3位、箱根駅伝3区2位。勲章にはあと1歩の学生駅伝だったが、学生最後のレースとなった都道府県男子駅伝の3区で軽やかに12人抜き。実業団のスピードランナーや黒田朝日(青学大4)らを抑え、区間賞を手に入れた。
まずは実業団駅伝での活躍を期し、ゆくゆくはマラソン挑戦を。普段はクールなその顔が、晴れ晴れとしていた。

多くの悔しさも成長の糧にしてきた帰山
帰山侑大(きやま・ゆうだい:駒大)/2003年6月10日生まれ。群馬県桐生市出身。群馬・樹徳高卒。自己ベストは5000m13分37秒54、10000m28分58秒07、ハーフ1時間0分32秒。
文/奥村 崇
箱根駅伝3区を区間歴代5位タイの1時間0分51秒で走破した駒大・帰山侑大[/caption]
第102回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。優勝を手にしたり、区間賞に輝いたりした選手以外にもそれぞれの思いを胸に、タスキをつないだ。最終学年として迎えた選手たちの“最後”の奮闘を紹介する。
副主将の健在がチームの支えに
帰山侑大(4年)は往路中盤の重要区間、3区に座った。駒大が誇る「4年生4人」のうち、往路を担ったのは帰山1人。伊藤蒼唯の6区は予定通りだったが、ケガのあった山川拓馬、佐藤圭汰が復路に回ることになっていた。 4年生の責任がその双肩にかかる。帰山は積極的だった。「桑田(駿介、2年)がいい位置で持ってきてくれて、前が見えていたので、前半はだいぶ突っ込んでいきました」。トップと1分07秒差の4位、一つ前の早大と22秒差の戦況を受け、序盤の下り坂を突き進んだ。3位の早大を一気にかわして、次の標的を見据える。 しかし異変に襲われる。まだまだ多くの距離を残した8km付近。脇腹に鋭い痛み、いわゆる「差し込み」が襲った。「ペースダウンせざるを得なくなってしまいました」。差し込みはレース中に回復することも多く、ランナーの多くは走行中の技術的な対処として、ある程度ペースを緩めて回復を待つ。帰山もそうした。 「(痛みが去った)後半に切り替えられたのですが、本間君(颯、中大3)が速くて、区間賞を取れなくて悔しいです」。そして、こう言葉をつなげる。「後輩たちに、もっと前で渡してあげたかったな」。 とはいえ、駒大の悪くない流れは継続された。1区・小山翔太(3年)が僅差の5位につけ、2区の桑田が1時間6分19秒の好タイムで日本人3位。そして、帰山が3位に引き上げた。区間2位の1時間0分51秒は区間歴代5位タイ。トップの中大との差がわずかに広がっただけで、2位・城西大へはあと9秒に接近。早大を抜き、青学大との差を拡大している。 帰山は先頭に立てず、区間賞を逃したことを悔しがったが、藤田敦史監督は「帰山はよくやってくれましたね!」と声を弾ませる。総合6位となり、苦しい台所事情を説明していた苦渋の表情が、帰山の話題ではパッと明るくなった。 「実は復路起用も考えていました。今の状況の中、急きょ往路に行くかもしれない時間を経て、準備をしっかりした上でそれだけの走りをしてくれました。助けられたな、という思いです」。 レースの内容が優れていただけでなく、そこに至る過程で健在を示し、チームの支えになった副主将・帰山だった。最後は晴れ晴れとした表情
「陸上が楽しかったです」 密度の濃い1年だった。振り返って、「陸上が楽しかったです」と帰山に笑みがこぼれる。 藤田監督が挙げるターニングポイントは、2024年11月の上尾シティハーフマラソン。その前に全日本大学駅伝でメンバーから外れ、上尾は正念場だった。そこで1時間1分59秒のタイムとともに、優勝争いを演じた内容が光った。 前回の箱根駅伝1区3位の好走を見せた後、2月の丸亀ハーフマラソンで1時間0分32秒にベストを短縮。あと一歩でワールドユニバーシティゲームス代表に届かなかったところが帰山らしい。ニューヨークシティハーフでの海外レース挑戦をはさみ、関東インカレ2部ハーフマラソン優勝を遂げた。 疲れもあって、夏合宿前にケガ。「そろそろ身体を休ませなさい」との天からの合図だったのだろう。秋以降は駅伝に絞って、学生三大駅伝を区間上位で駆け抜けた。 「駒澤大学にまず入れてもらえて、悔しいこともたくさん、苦しい思いも良い思いもさせてもらいました。充実した4年間だったと思います。4年目は特に、三大駅伝をすべて走らせていただきました。努力して、ここまでになった帰山侑大を、後輩たちに少しでも見てもらえたかな。後輩たちが『自分もそうなりたい』と、少しでも思ってもらえたらいいな」 後輩たちが見た帰山の背中は、克服しながら強くなっていった姿。2年時に5000m13分37秒54を出したように、もともとの持ち味はスピード。一方で練習を継続して積めず、スタミナに課題があった。これを地道な取り組みで克服し、3年時以降の活躍につなげた。 おおむね順調な歩みのなか、2年時に箱根駅伝メンバーに入ったものの、6区で区間12位と苦戦。帰山はあえて、これを最も印象に残ったレースとして挙げる。多くの悔しさも成長の糧に変えてきた。 さて、出雲駅伝は2区2位、全日本大学駅伝は3区3位、箱根駅伝3区2位。勲章にはあと1歩の学生駅伝だったが、学生最後のレースとなった都道府県男子駅伝の3区で軽やかに12人抜き。実業団のスピードランナーや黒田朝日(青学大4)らを抑え、区間賞を手に入れた。 まずは実業団駅伝での活躍を期し、ゆくゆくはマラソン挑戦を。普段はクールなその顔が、晴れ晴れとしていた。 [caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"]
多くの悔しさも成長の糧にしてきた帰山[/caption]
帰山侑大(きやま・ゆうだい:駒大)/2003年6月10日生まれ。群馬県桐生市出身。群馬・樹徳高卒。自己ベストは5000m13分37秒54、10000m28分58秒07、ハーフ1時間0分32秒。
文/奥村 崇 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.03.21
【大会結果】世界室内選手権(2026年3月20日~22日)
2026.03.20
男子200m・永丘琉人が中2歴代6位の22秒10 栃木と山梨で中学生アスリートが始動
-
2026.03.20
-
2026.03.20
-
2026.03.20
2026.03.16
GMO・吉田圭太と100mHの安達楓恋が結婚!「これからも二人で」青学大の先輩後輩
-
2026.03.14
-
2026.03.16
-
2026.03.15
-
2026.02.27
-
2026.03.16
-
2026.03.07
-
2026.03.01
Latest articles 最新の記事
2026.03.21
【大会結果】世界室内選手権(2026年3月20日~22日)
【大会結果】世界室内選手権(2026年3月20日~22日/ポーランド・トルン) 男子 60m 金 J.アンソニー(米国) 6秒41 銀 K.トンプソン(ジャマイカ) 6秒45 銅 T.ブロメル(米国) 6秒45 [日本代 […]
2026.03.20
石塚陽士が現役引退 高校時代1500mで好記録 早大で箱根4年連続出場 学業と競技の両立図る
引退を表明した石塚のSNSをチェック! 【引退のご報告】明日のSpring Trial in Waseda 1500mをもって競技を引退することにしました。 大学院との両立に挑戦させてくれたロジスティードには感謝でいっぱ […]
2026.03.20
男子200m・永丘琉人が中2歴代6位の22秒10 栃木と山梨で中学生アスリートが始動
男子200m中2歴代10傑 21.71 2.0 日吉克実(修善寺・静岡) 2009. 7. 4 22.00 0.7 桑田隆史(寝屋川四・大阪)1987. 8.22 22.06 0.0 田嶋和也(白河二・福島) 2004. […]
2026.03.20
コモディイイダ・柴田龍一が陸上競技部退部 今後は社業に専念しつつも競技は続行
柴田の退部コメントをチェック! コモディイイダ陸上競技部 柴田龍一選手 退部のお知らせ 皇学館大学〜コモディイイダ強化部員〜一般部員を経て退部 自己ベスト5000m14.2010000m29.30 3月21日のTHE C […]
2026.03.20
黒田朝日が第50回記念特別ゲストとして参加 5月の“さがえ”さくらんぼマラソン
黒田朝日の参加が決まったさくらんぼマラソンのSNSをチェック! エントリー期間延長のお知らせ特別ゲスト“シン・山の神”黒田朝日さんの出場決定!より多くの皆さまにご参加いただけるよう、3月29日(日)までエントリー期間を延 […]
Latest Issue
最新号
2026年4月号 (3月13日発売)
別冊付録 記録年鑑 2025
東京マラソン、大阪マラソン、名古屋ウィメンズマラソン