2025.12.23
大学で得た経験と目指す世界
高校に入ると、転機が訪れる。身長が伸び始めたのである。入学時は女子マネージャーよりも小さかったが、いつしか逆転。高校の3年間だけで15cm以上伸びたという。
成長期に身長が伸びるにつれて、記録も伸びていく。だが、同時に身体への負担を抑えきれなくなり、故障も増えていく。高校2年生の時には、疲労骨折。慢性的な成長痛にも悩まされ、一時期は走ることはおろか、ほんの少し動くだけで脚の関節に痛みが走り、数歩、歩くことすら困難な状況に陥った。
「でも、不思議と競技は辞めようとは思いませんでした。反対に、どうやったら痛みがなくなるのか、どういう走りをすれば故障しないのかを考えるようになりました」。今の競技への向き合い方の原点でもある。
縁あって、東京国際大に進学。入学後に、痛感したことがあるという。それは「過去の実績がいかに無意味か」ということだ。
「高校時代に全国大会への出場経験がなかったとしても、大学での努力次第で結果は大きく変わるという実力主義の側面を目の当たりにしました」と話し、実績のある選手たちに囲まれる環境のなかで、過去の栄光ではなく、現在の積み重ねこそが重要だ、と考えられたことも、自分にとっては大きかったです」と言う。
入学してから1、2年時はまだ故障に悩まされていた。ただ、チームのトレーナーと話をして、基礎から走りを改善した結果、少しずつ練習を継続できる身体へと変化していく。トレーニングへの向き合い方も変わったことで、記録は順調に伸びていった。
「たとえ120%の満足度が得られる練習ができたとしても、ケガをして長期離脱をしては意味がありませんよね。だったら、90%程度の努力度であっても、ケガをせずに練習を継続できたほうが良い。僕にはそのほうが合っていました」と実感を込める。
中・高とケガに悩まされてきたからこそ、辿り着いた境地。この経験があって、今大村は理学療法士になるべく勉強も始めたという。
東京国際大で得た経験は、人生を大きく変えるものだった。競技に対する考え方も変わった。取り組み方も変えた。自分が目指す、引退後の世界も見えた。
あとは、最後の箱根路で自分の集大成を見せるべく、全力を出し切るだけだ。
文/田坂友暁
今回も10区での力走を誓う東京国際大・大村良紀[/caption]新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。競技を続けるきっかけは消去法
「大村良紀=10区」、という構図ができあがってしまっている。無理に払拭しようとも思わないが、それだけで自分が語られるのは、悔しい。前回の第101回箱根駅伝10区で、4人がダンゴになる展開になったことで、東京国際大・大村良紀(現・4年)としてはシード権を確保することを優先した走りをしただけだった。だから、今回も「できることなら10区を走りたい」と言う。自分が持っているポテンシャルとパフォーマンスをすべて出し切り、自分が主導権を握る走りを10区でしたいからだ。「前回は、シード権確保を優先したことで、相手に合わせた走りになってしまいました。今年は最後の箱根です。自らの力でレースを動かして、展開を作っていく走りがしたいです。実際に走った現実的な経験と利点を生かして、他者に追従するのではなく、自分自身で周りを押し切り、自分が考える理想の走りを完成させたいです」元々は、あまり研究熱心ではなかった。トレーニング以外では陸上のことはスパッと切り離し、リフレッシュするタイプ。だが、大学1年時に9区の給水を担当し、箱根駅伝という大舞台を肌で感じたことで「自分もここで選手として走りたい」という思いが強くなった。漠然とした「走れたら良いなあ」から、「自分が走るんだ」という決意に変わった瞬間だった。そこからは一転、練習中も、練習が終わっても自分が最高の走りを箱根でするにはどうしたらよいかを追究。身体のケアや使い方なども学ぶことで、故障がちだったがそれも改善していく。その結果が、昨年の10区の走りであり、また今年2月の丸亀ハーフでの1時間2分51秒という自己新にもつながった。大村が陸上を始めたのは、小学生のとき。地元の友人に誘われて地元の長距離専門の陸上クラブに入ったことがきっかけだった。もともと外で駆け回るのが好きな子どもだったため、体力には自信があった。しかし、本格的に取り組む選手たちには歯が立たなかった。当時は身体も小さかったため、同世代の女子にも負けることが多かった。「それが悔しくて。負けたくないって思って練習を頑張っていたのを覚えています」と当時を振り返る。中学校に進学すると、必ず部活に所属しなければならなかった。小柄な自分でも努力をすれば活躍できるスポーツを考えた結果、陸上を選ぶ。ここで出会った指導者に長距離への適性を見いだされ、自分でも「長距離に向いているんだ」と自覚し、そこからは記録も伸び始め、試合で結果を残すと達成感も感じられた。競技を続けるきっかけは、身長を理由にした消去法だったものの、自分が頑張れば頑張っただけ結果につながるのは楽しかった。だから、競技を続けることができた。大学で得た経験と目指す世界
高校に入ると、転機が訪れる。身長が伸び始めたのである。入学時は女子マネージャーよりも小さかったが、いつしか逆転。高校の3年間だけで15cm以上伸びたという。成長期に身長が伸びるにつれて、記録も伸びていく。だが、同時に身体への負担を抑えきれなくなり、故障も増えていく。高校2年生の時には、疲労骨折。慢性的な成長痛にも悩まされ、一時期は走ることはおろか、ほんの少し動くだけで脚の関節に痛みが走り、数歩、歩くことすら困難な状況に陥った。「でも、不思議と競技は辞めようとは思いませんでした。反対に、どうやったら痛みがなくなるのか、どういう走りをすれば故障しないのかを考えるようになりました」。今の競技への向き合い方の原点でもある。縁あって、東京国際大に進学。入学後に、痛感したことがあるという。それは「過去の実績がいかに無意味か」ということだ。「高校時代に全国大会への出場経験がなかったとしても、大学での努力次第で結果は大きく変わるという実力主義の側面を目の当たりにしました」と話し、実績のある選手たちに囲まれる環境のなかで、過去の栄光ではなく、現在の積み重ねこそが重要だ、と考えられたことも、自分にとっては大きかったです」と言う。入学してから1、2年時はまだ故障に悩まされていた。ただ、チームのトレーナーと話をして、基礎から走りを改善した結果、少しずつ練習を継続できる身体へと変化していく。トレーニングへの向き合い方も変わったことで、記録は順調に伸びていった。「たとえ120%の満足度が得られる練習ができたとしても、ケガをして長期離脱をしては意味がありませんよね。だったら、90%程度の努力度であっても、ケガをせずに練習を継続できたほうが良い。僕にはそのほうが合っていました」と実感を込める。中・高とケガに悩まされてきたからこそ、辿り着いた境地。この経験があって、今大村は理学療法士になるべく勉強も始めたという。東京国際大で得た経験は、人生を大きく変えるものだった。競技に対する考え方も変わった。取り組み方も変えた。自分が目指す、引退後の世界も見えた。あとは、最後の箱根路で自分の集大成を見せるべく、全力を出し切るだけだ。[caption id="attachment_194111" align="alignnone" width="800"]
前回は4校によるアンカー争いを制してシード権を確保した[/caption]文/田坂友暁RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.11.06
【男子三段跳】長尾一輝(洛南高3)15m81=高校歴代8位タイ
2026.11.06
〝虎視眈々〟と初マラソンへ、HOKAアスリート・近藤幸太郎の新たな挑戦
2026.11.06
後藤大樹 シーズン最後は走幅跳で7m10!「楽しくやれました」と笑顔の自己新締め
2026.11.06
2026.11.06
2026.11.04
2026.10.31
【大会結果】第58回全日本大学駅伝(2026年11月1日)
2026.11.01
2026.10.31
2026.10.31
2026.11.01
2026.10.17
2026.10.08
2026.10.17
Latest articles 最新の記事
2026.11.06
【男子三段跳】長尾一輝(洛南高3)15m81=高校歴代8位タイ
男子三段跳 高校歴代10傑 16.13 0.6 宮尾 真仁(洛南3京都) 2022.11. 4 16.10 0.8 山本 凌雅(諫早農3長崎) 2013.10. 7 16.05 1.4 野﨑 千皓(洛南3京都) 2015 […]
2026.11.06
〝虎視眈々〟と初マラソンへ、HOKAアスリート・近藤幸太郎の新たな挑戦
大学・実業団ではチームのエースとして駅伝で活躍 近藤幸太郎というランナーを語る上で欠かせないのが、学生駅伝だ。愛知・豊川工業高校を卒業後、駅伝の名門・青山学院大学へ進学。 大学入学当初は世界やマラソン挑戦などは見据えず、 […]
2026.11.06
後藤大樹 シーズン最後は走幅跳で7m10!「楽しくやれました」と笑顔の自己新締め
何でもこいの後藤大樹!各種目の自己ベストをチェック! 後藤大樹の自己ベスト 100m 10秒49 200m 20秒40=高校歴代2位 400m 45秒33=高校記録 110mH 14秒13 110mH(U20規格) 13 […]
2026.11.06
競歩指導者の鈴木茂雄氏が78歳で他界 競歩界の発展に尽力、日本陸連競歩部長など歴任
競歩指導者の鈴木茂雄氏が11月3日に病気のため亡くなった。78歳だった。 鈴木氏は東京都荒川区出身。区役所に勤務しながら競歩の指導に携わり、小坂忠広、園原健弘、今村文男といったオリンピアン、指導者として活躍する三浦康二氏 […]
2026.11.06
2027年WA室内ツアーの日程が決定 ゴールド大会はミルローズ・ゲームなど8試合
27年WA室内ツアー ゴールド大会 1月27日:ベオグラード室内(セルビア・ベオグラード) 2月2日:チェコ室内ガラ(チェコ・オストラヴァ) 2月4日:WA室内ツアー・ゴールド・マドリード(スペイン・マドリード) 2月6 […]
Latest Issue
最新号

2026年11月号 (10月14日発売)
アジア大会総特集
駅伝プレビュー
