2025.10.05
◇滋賀国民スポーツ大会(10月3日~7日/滋賀・平和堂HATOスタジアム:彦根総合スポーツ公園陸上競技場) 3日目
滋賀国民スポーツ大会・陸上競技の3日目が行われ、成年女子100mハードルは清山ちさと(宮崎・いちご)が13秒07(-0.4)で優勝した。
今日で最後になることをさみしがり、惜しむように冷たい雨が降り続く。今季限りで第一線を退く寺田明日香(北海道・ジャパンクリエイト)にとって、本気で走る最後のレース。慣れ親しんだ地元・北海道のユニフォームをまとって走り、13秒53の5位でフィニッシュした。
極秘裏の動いていたサプライズだった。今回のレースを見送っていた日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)や田中佑美(富士通)、100mのみ出場した中島ひとみ(長谷川体育施設)、青木益未(七十七銀行)が駆けつけ、寺田に抱きついた。「えー!?」寺田は泣きながら笑っていた。ひときわ雨粒が強くなった。
1990年生まれの35歳。恵庭北高時代に、今年5月に逝去した中村宏之氏の指導を受け、100mハードルでインターハイ3連覇、高3時には100mとの2冠を成し遂げた。日本選手権は2008年に3連覇し、09年に出した13秒05は今もU20日本記録として残る。同年にはベルリン世界選手権に出場した。13年に一度は現役を退き、その後、結婚、出産を経て、五輪出場を目指して7人制ラグビーに挑戦したがかなわなかった。
19年に陸上に復帰すると、同年8月には金沢イボンヌの日本記録に並ぶ13秒00をマーク。さらに翌月に12秒97を叩き出し、日本女子初の13秒切りを果たした。その後、日本女子スプリントハードルは12秒台が当たり前の状況になった。21年には悲願の東京五輪にも出場を果たした。
ここ数年、日本選手権後の光景がいつも話題に上がった。座って話し込んだり、集合写真を撮ったり。友人ではないし、馴れ合いの関係ではない。お互いをライバルとして認め合っている。「気がついたらそういう雰囲気になっていて、思い返すと明日香さんが復帰してからだったように思います」と清山は言う。
「第一線を退くと発表してから、みんなが寂しいと言ってくれました。早くいなくなれよ、と思われんじゃないかと考えていたけどそうじゃなかった。私がいることでやりにくい雰囲気を作りたくなかったんです。分け隔てなく接しようと思っていたら、みんなに伝わって、一緒に意見を出し合う雰囲気を作れたのは、本当に私1人の力じゃないんです」
“引退”レースに盟友たちが駆けつけ、「そういう存在になれたというのが、戻ってきて一番意味があったこと」だと胸を張った。
1週間前の全日本実業団対抗は棄権。アキレス腱がもう限界だった。「悲しかったですが、私の全国大会最後は国スポと決めていた」。なんとかスタートに間に合ったが、夫の佐藤峻一さんは「決勝に行けないかも知れない」と話しているほど、アキレス腱はひどいものだった。「本当に走れなくなるまで走り抜くなんて思っていなくて、それがトップレベルで最後の最後までできたのは幸せです」と語る。
いくつものハードルを乗り越えてきた。「高くても全部にチャレンジしてきたのが、一番自分を評価できるところです」。誰も届かなかった12秒台は9人になった。世界の準決勝でどう勝負して、どうすれば決勝に進めるかを考えるようになった。
「痛みをできるだけ考えないように。今できることを精一杯やりました。ゴールできて良かった」
これまでのキャリア、人柄、どれだけ愛されているかが詰まった、寺田明日香らしい“ゴール”だった。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.12
月刊陸上競技2025年12月号
-
2025.11.12
-
2025.11.10
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.12
月刊陸上競技2025年12月号
Contents EKIDEN REVIEW 全日本大学駅伝 駒大 最多V17! 王者の帰還。 追跡 藤田敦史監督が語る「勝つべくして勝った試合」 中大、青学大がトップスリー 学生駅伝Close-up 國學院大 出雲V2 […]
2025.11.12
日本陸連アスレティックスアワード 新人賞に古賀ジェレミー、清水空跳、坂ちはる、小林香菜の4人が選出
日本陸連は年間表彰式となるアスレティックス・アワード2025の受賞者一覧を発表した。 「2025年の活躍が顕著であり、将来が期待される競技者」に与えられる新人賞には日本陸連、東京運動記者クラブからそれぞれ男女1名ずつ、計 […]
2025.11.12
日本陸連アワード優秀選手賞に勝木隼人、藤井菜々子、村竹ラシッド、山西利和がノミネート!11/29にMVP発表
日本陸連は年間表彰式となるアスレティックス・アワード2025の受賞者一覧を発表した。 「2025年において優秀な成績を収めた競技者」を表彰する優秀選手賞にノミネートしたのは、男子35km競歩の勝木隼人(自衛隊体育学校)、 […]
2025.11.12
ホノルルマラソンに堀尾謙介、神野大地がエントリー ソウル五輪代表・浅井えり子さんも出場
11月12日、ホノルルマラソンの事務局は、12月14に日に開催される「JALホノルルマラソン2025」に堀尾謙介と神野大地(ともにM&Aベストパートナーズ)がエントリーしたことを発表した。 堀尾は22年の東京で […]
2025.11.12
現代の駅伝ランナーのためにデザインされたナイキの「EKIDEN PACK」コレクションが登場!
ナイキは11月12日、2025-2026年の駅伝シーズンに向け、⽇本のランナーからインスピレーションを受けてデザインされた「EKIDEN PACK」コレクションを発売することを発表した。 駅伝シーズンを象徴する存在として […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025