2025.10.01

立教大進学後に頭角現す
高校まで個人での主要な全国大会出場はなく、大牟田高2年時に全国高校駅伝5区14位の成績が残る。当時の大牟田高でエースが、1学年上の太田蒼生(GMOインターネットグループ)だった。
中学、高校で次第に力をつけ、県内では実力者に数えられるレベルに達した馬場だったが、頭角を現したと言えるのは、立教大進学後だろう。
立教大が初出場を遂げた箱根駅伝において、1年生ながら4区(区間16位)を受け持ったところからその名が広まり始めた。
2年時は箱根駅伝予選会でチーム内2位をステップに、本戦は3区8位。主軸の地位を得ていく。順調の二文字だ。そして前記したような、3年時のブレイクスルーへ。隠れていた長い距離への素養。種が芽吹き、花が咲いた。
浮き沈みが小さい。これはランナー・馬場の特徴を表している。猛烈に練習した、などといったエピソードがない。この夏の鍛錬期はどうだったかと聞くと、「特別良かった、悪かった、なしに練習できました」と返ってくる。
こうした等身大の日常の積み重ねが、馬場らしくあり、そこが良さなのだ。付け加えるなら、ケガが少ない。その要因を尋ねても、特別に気を付けていることはない――のだと言う。安定した生活習慣などの基礎が、自然にできているのだろう。
「こういうレベルになるとは、2、3年前の自分は想像もしなかった世界なので。着実に成長しているんだなと感じます」
自分でも驚く成果が続いた。しかし想像を超える成長速度にとまどっている様子でもない。競技レベルに応じた意識の変化も、自然体の一部だ。
競技という観点での成長について、馬場はこのように話す。「予選会、全日本、箱根へ向かっていく中で、一つひとつの試合に合わせていく力が上がっていきました。それから、最初に少し速く突っ込んで後半に粘る走りが確立されていった。それが昨年1年を通しての良かった点です」
序盤からハイペースで、終盤は粘り切る。箱根駅伝予選会、全日本大学駅伝7区、箱根駅伝2区、学生ハーフ。そのいずれも、そのスタイルに違わなかった。
馬場の10000mベストは28分40秒67。現状で実力を表していないタイムだが、全日本以降の3レースはこれをはるかに上回る速さで10kmを通過している。箱根駅伝3区と学生ハーフの10km通過はほぼ同じだったと言う。持ち味を「再現」できたことが大きく、自信を上乗せしている。
箱根駅伝予選会の通過が前提となるが、全日本7区や箱根駅伝2区でその「再現」の上をいく走りを見せるだろうか。「今は練習を手堅く積めた段階で、ここが伸びたな、という実感はまだないですが……。練習への余裕度がだいぶ変わってきました。夏も、昨年ほどやり切った感じではない中で、練習が充実した感覚です。コース途中の上り坂には、『箱根2区のラストランだ!』と意識して臨みましたね」。
大風呂敷はなく、意識するのは自己ベストの積み重ね。近未来の目標に一つ一つ取り組んでいく馬場らしい言葉だ。
そんな馬場だが、少し先の未来については「マラソンへ挑戦」を芯に据えている。大迫傑(東京陸協)らの活躍に胸躍らせた少年時代からすれば、いつの間にかマラソンが近づいてきた。ただただ、走るだけでなく、「初マラソンの歴代記録を狙って」など、この数年でイメージもはっきりしてきた。
そこへ向かって、馬場は今日も等身大の日常を送っている。

昨年の全日本大学駅伝で7区区間4位と快走した馬場
◎ばば・けんと/2003年11月11日生まれ、福岡県福岡市出身。長丘中→大牟田高→立教大。自己記録5000m13分52秒55、10000m28分40秒67、ハーフマラソン1時間0分26秒。
文/奥村 崇

ターニングポイントは全日本
森の中をコツコツと歩いた先に、急に景色が開けることがある。馬場賢人(立教大4)にとってのそれは、昨年の全日本大学駅伝7区だった。 シードライン(8位)から41秒遅れの11位で中継所を出発。10秒先行してスタートしていた東京国際大を抜き、中大、日体大、帝京大が形成する7位集団に追いついた。駆け引きはしない。「前に行くしかなかったので、ひたすら前に行きました」(馬場)。 ライバルを振り切って7位に浮上し、8区の主将・安藤圭佑へ勢いを伝達。区間4位の快走で、初出場にして初のシード権へ大きく貢献した。 チーム内で主軸の一角ではあった。2週間前に箱根駅伝予選会チームトップ(個人15位)の熱走があり、ブレイクにつながる気配も。だが、酷暑のハーフマラソンをこなした疲れもある。そうした背景を携え、馬場は他校も認めるエースへブレイクした。 優れた内容とともに、51分11秒の好タイムと区間4位の好成績だ。この快走が先に続く道を照らす。 箱根駅伝2区7位で1時間6分32秒。日本学生ハーフマラソン選手権(丸亀)は1時間0分26秒。この選考会2位の成績が、望外のワールドユニバーシティゲームズの代表入りにつながった。 レース前は、チームメイトの國安広人(4年)が持っていた立教大記録の1時間2分07の更新、できれば1時間1分30秒あたりが目標だったという。 春先は5000m、10000mに取り組んで、苦手分野ながら納得の過程。プライベートを含めても初の海外遠征を6月に1つ挟み、初の世界大会はハーフマラソン4位。ラストのスピードチェンジに置いていれたが、日本の団体戦金メダルに貢献した。 ハーフマラソンの準備を酷暑の都心を拠点に行った。難しいミッションだったが、「良い経験でした」と馬場は振り返る。 自身として、もっとも大きかったターニングポイントを尋ねると、「自分が一皮向けたなと感じたのは、やはり全日本の7区ですね」と馬場は振り返る。 「シードライン内へ持っていけたこと。そこそこ良いタイムを出せたこと。駅伝での単独走を踏まえて結構な自信になりましたね」。景色が開けたその場所からは、もっと高い頂が目に入った。立教大進学後に頭角現す
高校まで個人での主要な全国大会出場はなく、大牟田高2年時に全国高校駅伝5区14位の成績が残る。当時の大牟田高でエースが、1学年上の太田蒼生(GMOインターネットグループ)だった。 中学、高校で次第に力をつけ、県内では実力者に数えられるレベルに達した馬場だったが、頭角を現したと言えるのは、立教大進学後だろう。 立教大が初出場を遂げた箱根駅伝において、1年生ながら4区(区間16位)を受け持ったところからその名が広まり始めた。 2年時は箱根駅伝予選会でチーム内2位をステップに、本戦は3区8位。主軸の地位を得ていく。順調の二文字だ。そして前記したような、3年時のブレイクスルーへ。隠れていた長い距離への素養。種が芽吹き、花が咲いた。 浮き沈みが小さい。これはランナー・馬場の特徴を表している。猛烈に練習した、などといったエピソードがない。この夏の鍛錬期はどうだったかと聞くと、「特別良かった、悪かった、なしに練習できました」と返ってくる。 こうした等身大の日常の積み重ねが、馬場らしくあり、そこが良さなのだ。付け加えるなら、ケガが少ない。その要因を尋ねても、特別に気を付けていることはない――のだと言う。安定した生活習慣などの基礎が、自然にできているのだろう。 「こういうレベルになるとは、2、3年前の自分は想像もしなかった世界なので。着実に成長しているんだなと感じます」 自分でも驚く成果が続いた。しかし想像を超える成長速度にとまどっている様子でもない。競技レベルに応じた意識の変化も、自然体の一部だ。 競技という観点での成長について、馬場はこのように話す。「予選会、全日本、箱根へ向かっていく中で、一つひとつの試合に合わせていく力が上がっていきました。それから、最初に少し速く突っ込んで後半に粘る走りが確立されていった。それが昨年1年を通しての良かった点です」 序盤からハイペースで、終盤は粘り切る。箱根駅伝予選会、全日本大学駅伝7区、箱根駅伝2区、学生ハーフ。そのいずれも、そのスタイルに違わなかった。 馬場の10000mベストは28分40秒67。現状で実力を表していないタイムだが、全日本以降の3レースはこれをはるかに上回る速さで10kmを通過している。箱根駅伝3区と学生ハーフの10km通過はほぼ同じだったと言う。持ち味を「再現」できたことが大きく、自信を上乗せしている。 箱根駅伝予選会の通過が前提となるが、全日本7区や箱根駅伝2区でその「再現」の上をいく走りを見せるだろうか。「今は練習を手堅く積めた段階で、ここが伸びたな、という実感はまだないですが……。練習への余裕度がだいぶ変わってきました。夏も、昨年ほどやり切った感じではない中で、練習が充実した感覚です。コース途中の上り坂には、『箱根2区のラストランだ!』と意識して臨みましたね」。 大風呂敷はなく、意識するのは自己ベストの積み重ね。近未来の目標に一つ一つ取り組んでいく馬場らしい言葉だ。 そんな馬場だが、少し先の未来については「マラソンへ挑戦」を芯に据えている。大迫傑(東京陸協)らの活躍に胸躍らせた少年時代からすれば、いつの間にかマラソンが近づいてきた。ただただ、走るだけでなく、「初マラソンの歴代記録を狙って」など、この数年でイメージもはっきりしてきた。 そこへ向かって、馬場は今日も等身大の日常を送っている。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
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