HOME 特集

2025.06.12

NEWS
【世界陸上プレイバック】―05年ヘルシンキ―棒高跳イシンバエワが世界新で初V 尾方剛と為末大が銅メダル
【世界陸上プレイバック】―05年ヘルシンキ―棒高跳イシンバエワが世界新で初V 尾方剛と為末大が銅メダル

女子棒高跳で世界新をマークし初優勝を飾ったイシンバエワ

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。

これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2005年にフィンランドのヘルシンキで行われた第10回大会を振り返る。

広告の下にコンテンツが続きます

女子3種目で世界新

第1回大会以来となるヘルシンキ開催となった同大会では女子種目で3つの世界新記録が誕生した。

1人目は棒高跳のエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が5m01を跳び初優勝。前年のアテネ五輪で金メダルを獲得し、7月には自身12回目の世界記録となる、5m00を成功させていた。

4m50から競技を始めると、4m50、4m60、4m70と全て一発でクリア。2位の記録が4m60にとどまったため、あっさりと優勝が決まった。

イシンバエワが次に挑戦したのが自身の世界記録を1㎝上回る5m01。1回目は失敗したが、2回目はしっかりとバーの上を越え、マットの上で喜びを爆発させた。

広告の下にコンテンツが続きます

20km競歩ではオリンピアーダ・イワノワ(ロシア)が、従来の世界記録を41秒上回る、1時間25分41秒で金メダルに輝いた。前年のアテネ五輪では4秒差で銀メダルだったイワノワ。スローペースで混戦だったアテネ五輪とは違い、序盤からハイペースに持ち込み、最後までペースを落とすことなく歩き続けた。2位とは1分24秒差の圧勝だった。

最後は最終日に行われた女子やり投のオスレイディス・メネンデス(キューバ)。1投目に71m70をマークして、自身が4年前に出した世界記録を16cm更新した。

女子選手として初めて70mオーバーを記録したメネンデスは、2001年のエドモントン大会で2位に4m以上の差をつけて優勝したが、前回のパリ大会では調子を落として5位に終わっており、女王奪還を目指す戦いとなった。

1投目から思い切りのいい投げを見せると、やりはすさまじい速さで伸びていく。70mラインを大きく超え、表示された記録は71m70だった。

これで勝負ありに思われたが、2投目にクリスティーナ・オーバークフォル(ドイツ)が世界歴代2位の70m03をマークした。その後の投てきは逆転優勝を狙うも、記録を伸ばせず、メネンデスが2年ぶりに金メダルを獲得。世界歴代1位と2位の競演はクライマックスに相応しいものとなった。

女子200mには、のちに女子最多の通算13個の金メダルを獲得することになるアリソン・フェリックス(米国)が19歳で初出場。終盤に逆転し22秒16(+0.2)で金メダルを獲得した。

女子長距離ではティルネシュ・ディババ(エチオピア)が5000mと10000mで2冠を達成。この種目の2冠は女子初の快挙だった。

女子3000m障害ではドカス・インジクル(ウガンダ)が9分18秒24の大会新記録で優勝。母国に初の金メダルをもたらした。

女子マラソンは世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ(英国)が2時間20分57秒の大会新記録で制している。

男子ではアテネ五輪100mを制したジャスティン・ガトリン(米国)が100m(9秒88/+0.4)と200m(20秒04/-0.5)の2冠を達成。200mでは1位から4位までを米国勢が独占した。円盤投はウィルギリウス・アレクナ(リトアニア)が70m17の大会新記録で連覇を達成。

為末と尾形が銅メダルの殊勲

日本からは男子34選手、女子22選手が出場。史上最多タイとなる入賞8の成績を残した。

男子400mハードルでは為末大(APF)が48秒10で2大会ぶりの銅メダルを獲得。世界陸上の日本男子では初となる複数メダル獲得となった。

準決勝は組4着ながらタイムで拾われて決勝進出。決勝は雨中のレースとなった。前半から積極的に飛ばしていき、2連覇中のフェリックス・サンチェス(ドミニカ共和国)がスタート直後に負傷して途中棄権するなか、300m付近まで為末が先頭を走り続けた。

ホームストレートに入って、バーション・ジャクソンとジェームズ・カーターの米国コンビに抜かれたが、懸命にフィニッシュラインを目指し、倒れるようにしてフィニッシュ。大型モニターで3位になったことを確認すると、その場で泣き崩れた。

前回のパリ大会を前に父を亡くし、パリ大会とアテネ五輪は準決勝敗退。苦しみを乗り越えた先に流したうれし涙がそこにはあった。

男子マラソンでは尾方剛(中国電力)が2時間11分16秒で銅メダル、高岡寿成(カネボウ)が2時間11分53秒で4位に入った。

男子マラソンで銅メダルを獲得した尾形剛

29km過ぎに前回王者のジャウアド・ガリブ(モロッコ)がスパート。高岡は反応したが、尾方は追いかけなかった。一時は8位まで順位を落とすも、自分のペースで着実に順位を上げ、31km付近で高岡をかわすと、39km過ぎに3位浮上。フィニッシュまで順位をキープし、男子マラソンで4大会ぶりメダル獲得となった。

女子マラソンでは原裕美子(京セラ)が2時間24分20秒で6位、弘山晴美(資生堂)が2時間25分46秒で8位とダブル入賞を果たした。

男子50km競歩では山﨑勇喜(順大)3時間51分15秒で8位。男子棒高跳では澤野大地(ニシ・スポーツ)が5m50で8位となり、この種目で日本人初入賞を果たした。

男子4×100mリレーは末續慎吾(ミズノ)、髙平慎士(順大)、吉野達郎(ラスポート)、朝原宣治(大阪ガス)のメンバーで挑み、38秒77で8位。前々回の5位、前回の6位に続き3大会連続入賞となった。

男子4×400mリレーには大阪高3年の金丸祐三が1走で出場。日本は予選で失格となったが、黄色のハチマキをつけてハツラツと走り抜いた。

2大会連続でメダル獲得中だった男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)は、左脇腹の炎症と疲労蓄積のために欠場した。

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2005年にフィンランドのヘルシンキで行われた第10回大会を振り返る。

女子3種目で世界新

第1回大会以来となるヘルシンキ開催となった同大会では女子種目で3つの世界新記録が誕生した。 1人目は棒高跳のエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が5m01を跳び初優勝。前年のアテネ五輪で金メダルを獲得し、7月には自身12回目の世界記録となる、5m00を成功させていた。 4m50から競技を始めると、4m50、4m60、4m70と全て一発でクリア。2位の記録が4m60にとどまったため、あっさりと優勝が決まった。 イシンバエワが次に挑戦したのが自身の世界記録を1㎝上回る5m01。1回目は失敗したが、2回目はしっかりとバーの上を越え、マットの上で喜びを爆発させた。 20km競歩ではオリンピアーダ・イワノワ(ロシア)が、従来の世界記録を41秒上回る、1時間25分41秒で金メダルに輝いた。前年のアテネ五輪では4秒差で銀メダルだったイワノワ。スローペースで混戦だったアテネ五輪とは違い、序盤からハイペースに持ち込み、最後までペースを落とすことなく歩き続けた。2位とは1分24秒差の圧勝だった。 最後は最終日に行われた女子やり投のオスレイディス・メネンデス(キューバ)。1投目に71m70をマークして、自身が4年前に出した世界記録を16cm更新した。 女子選手として初めて70mオーバーを記録したメネンデスは、2001年のエドモントン大会で2位に4m以上の差をつけて優勝したが、前回のパリ大会では調子を落として5位に終わっており、女王奪還を目指す戦いとなった。 1投目から思い切りのいい投げを見せると、やりはすさまじい速さで伸びていく。70mラインを大きく超え、表示された記録は71m70だった。 これで勝負ありに思われたが、2投目にクリスティーナ・オーバークフォル(ドイツ)が世界歴代2位の70m03をマークした。その後の投てきは逆転優勝を狙うも、記録を伸ばせず、メネンデスが2年ぶりに金メダルを獲得。世界歴代1位と2位の競演はクライマックスに相応しいものとなった。 女子200mには、のちに女子最多の通算13個の金メダルを獲得することになるアリソン・フェリックス(米国)が19歳で初出場。終盤に逆転し22秒16(+0.2)で金メダルを獲得した。 女子長距離ではティルネシュ・ディババ(エチオピア)が5000mと10000mで2冠を達成。この種目の2冠は女子初の快挙だった。 女子3000m障害ではドカス・インジクル(ウガンダ)が9分18秒24の大会新記録で優勝。母国に初の金メダルをもたらした。 女子マラソンは世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ(英国)が2時間20分57秒の大会新記録で制している。 男子ではアテネ五輪100mを制したジャスティン・ガトリン(米国)が100m(9秒88/+0.4)と200m(20秒04/-0.5)の2冠を達成。200mでは1位から4位までを米国勢が独占した。円盤投はウィルギリウス・アレクナ(リトアニア)が70m17の大会新記録で連覇を達成。

為末と尾形が銅メダルの殊勲

日本からは男子34選手、女子22選手が出場。史上最多タイとなる入賞8の成績を残した。 男子400mハードルでは為末大(APF)が48秒10で2大会ぶりの銅メダルを獲得。世界陸上の日本男子では初となる複数メダル獲得となった。 準決勝は組4着ながらタイムで拾われて決勝進出。決勝は雨中のレースとなった。前半から積極的に飛ばしていき、2連覇中のフェリックス・サンチェス(ドミニカ共和国)がスタート直後に負傷して途中棄権するなか、300m付近まで為末が先頭を走り続けた。 ホームストレートに入って、バーション・ジャクソンとジェームズ・カーターの米国コンビに抜かれたが、懸命にフィニッシュラインを目指し、倒れるようにしてフィニッシュ。大型モニターで3位になったことを確認すると、その場で泣き崩れた。 前回のパリ大会を前に父を亡くし、パリ大会とアテネ五輪は準決勝敗退。苦しみを乗り越えた先に流したうれし涙がそこにはあった。 男子マラソンでは尾方剛(中国電力)が2時間11分16秒で銅メダル、高岡寿成(カネボウ)が2時間11分53秒で4位に入った。 [caption id="attachment_173302" align="alignnone" width="800"] 男子マラソンで銅メダルを獲得した尾形剛[/caption] 29km過ぎに前回王者のジャウアド・ガリブ(モロッコ)がスパート。高岡は反応したが、尾方は追いかけなかった。一時は8位まで順位を落とすも、自分のペースで着実に順位を上げ、31km付近で高岡をかわすと、39km過ぎに3位浮上。フィニッシュまで順位をキープし、男子マラソンで4大会ぶりメダル獲得となった。 女子マラソンでは原裕美子(京セラ)が2時間24分20秒で6位、弘山晴美(資生堂)が2時間25分46秒で8位とダブル入賞を果たした。 男子50km競歩では山﨑勇喜(順大)3時間51分15秒で8位。男子棒高跳では澤野大地(ニシ・スポーツ)が5m50で8位となり、この種目で日本人初入賞を果たした。 男子4×100mリレーは末續慎吾(ミズノ)、髙平慎士(順大)、吉野達郎(ラスポート)、朝原宣治(大阪ガス)のメンバーで挑み、38秒77で8位。前々回の5位、前回の6位に続き3大会連続入賞となった。 男子4×400mリレーには大阪高3年の金丸祐三が1走で出場。日本は予選で失格となったが、黄色のハチマキをつけてハツラツと走り抜いた。 2大会連続でメダル獲得中だった男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)は、左脇腹の炎症と疲労蓄積のために欠場した。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.13

大迫傑が「さいたまマラソン2026」の大会アンバサダーに就任

さいたまマラソンの大会事務局は6月13日、26年2月に開催されれる「さいたまマラソン2026」にパリ五輪男子マラソン代表の大迫傑が大会アンバサダーに就任したことを発表した。 さいたまマラソンは2019年まで開催されてきた […]

NEWS 久保凛が1500mで高校歴代2位の4分11秒07!! 「出し切って勝ち切れた」 芦田和佳は歴代3位/IH近畿

2025.06.13

久保凛が1500mで高校歴代2位の4分11秒07!! 「出し切って勝ち切れた」 芦田和佳は歴代3位/IH近畿

◇インターハイ近畿地区大会(6月12~15日/京都市・たけびしスタジアム京都) 2日目 広島インターハイを懸けた近畿地区大会の2日目が行われ、女子1500mは久保凛(東大阪大敬愛3大阪)が4分11秒07の高校歴代2位、U […]

NEWS 高校陸上年鑑 2024年度版(No.72)

2025.06.13

高校陸上年鑑 2024年度版(No.72)

高校陸上年鑑 【No.72】の内容 全国高体連発行,陸上競技社製作による「高校陸上年鑑」(2024年度版)。2024年度の高校陸上界の動きをまとめたもので、インターハイや全国高校駅伝などの主要イベントを中心に、ハイライト […]

NEWS 久保凛が1500m4分11秒07!高校歴代2位、U18日本新の激走で2連覇!2位の芦田和佳も高校歴代3位4分12秒48/IH近畿

2025.06.13

久保凛が1500m4分11秒07!高校歴代2位、U18日本新の激走で2連覇!2位の芦田和佳も高校歴代3位4分12秒48/IH近畿

◇インターハイ近畿地区大会(6月12~15日/京都市・たけびしスタジアム京都) 2日目 広島インターハイを懸けた近畿地区大会の初日が行われ、女子1500mで久保凛(東大阪大敬愛3)が高校歴代2位、U18日本新の4分11秒 […]

NEWS 東京世界陸上 米国女子マラソン代表のサイナが出産予定により代表辞退  ボストン7位のマクレーンが代表に

2025.06.13

東京世界陸上 米国女子マラソン代表のサイナが出産予定により代表辞退 ボストン7位のマクレーンが代表に

米国陸連は6月12日、9月に東京で開催される世界選手権の女子マラソン代表に選ばれていたB.サイナが出場を辞退し、代わってJ.マクレーンが代表に選出されたと発表した。サイナは今秋に出産を控えていることを理由に辞退を表明して […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top