HOME 学生長距離

2024.12.22

箱根駅伝Stories/城西大・平林樹 主将として臨む最後の箱根「俺たち4年生がやらないと」
箱根駅伝Stories/城西大・平林樹 主将として臨む最後の箱根「俺たち4年生がやらないと」

主将としてチームを牽引する平林樹(城西大)

4年生としての覚悟

今年11月の全日本大学駅伝では、5区に林晃耀、7区に久保出雄太、アンカーの8区に平林と、4年生3人が後半区間に起用された。平林はレース前、4年生だけのグループラインで、「俺たち4年生がやらないと」というメッセージを伝えたという。

「今回の全日本で言えば、流れを作るのはヴィクターや将也。その流れを確実なものにして、順位を決めるのは後半区間に入った4年生の仕事。そういう意味でも4年生のがんばりが重要になると思っていました」

実際、城西大は2区終了時点で10位とやや出遅れたものの、3区のキムタイが5人抜き、4区の斎藤が3人抜きを達成。2位で前半区間を終えた。しかし、林が2つ、久保出が1つ順位を落とし、平林も5位をキープできずに6位でフィニッシュ。平林は「区間順位は5位ということで最低限の走りはできましたが、チーム目標は5位だったので、主将として、アンカーとしての仕事は果たせませんでした」と悔しさを滲ませる。

広告の下にコンテンツが続きます

それでも、「自分たちがやっていることの方向性は間違っていない」という手応えも得られた。

箱根駅伝では前々回、前回とともに9区を担い、区間8位、10位と今いる順位をしっかりキープしたが、自身には「全体を通して納得のいく入りができていない」という思いがある。

最後となる3度目の箱根は、櫛部監督が「チームの3本柱の1人ですので、主要区間を走ってもらいたい。往路を考えています」と語るように初の往路での出走が有力。平林は「前回の往路の選手たち同様、しっかりとチームの順位を決める走りをしていきたいです」と静かに闘志を燃やす。

「自分としては、往路ならどこでも走れる準備をしてきたつもりですが、1区、3区、4区あたりなら自分の力を一番出せると思っています。4位以上というチーム目標のためにも、区間3位以上を目指していきたいです」

平林がどんな大学4年間を過ごしてきたのか。それを証明する集大成の時が近づいてきた。

関東インカレ10000mでは大幅自己新で2位

ひらばやし・いつき/2002年12月8日生まれ。東京都八王子市出身。東京・打越中→拓大一高。5000m13分39秒77、10000m28分03秒13、ハーフ1時間2分49秒

文/小野哲史

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

トラックシーズンで大車輪の活躍

大学最後のシーズンで、平林樹(4年)はキャプテンとして力強くチームを牽引してきた。櫛部静二監督が「言葉が先行してチームを引っ張るタイプではありませんが、姿勢で見せるキャプテン」と言うように、平林は「自分からいろいろこうしてほしいと言うのではなく、個人個人が自分の目標に向かって必要なことを各自で考え、最大限に努力できるチームを作りたかった」と、チームメイトの自主性を重んじた。 自身もまずは自分の競技力向上に目を向け、とくに前期のトラックシーズンで大車輪の活躍を見せた。5月に5000mで13分39秒77の自己ベストをマークすると、5日後の関東インカレ1部10000mではチームメイトのヴィクター・キムタイ(3年)に競り勝って2位。タイムも28分03秒13と、46秒以上の大幅自己新で27分台に迫った。櫛部監督は「本人の自信にもなったと思いますが、チームとしても非常に盛り上がった。キャプテンが強さを見せたことは、前期の象徴的なシーンでした。競技に対して熱心で、走ること以外にも真剣に取り組む。そういう姿は他の学生たちの見本になっています」と平林を高く評価する。 しかし、夏を前にその勢いに陰りが見え始めた。連戦の疲労で練習をこなせなくなり、夏合宿に入ると、「腸脛靭帯を少し痛めて、8月はジョグしかできなかった」と明かす。結局、合宿中は調子が上がらないままだった。 9月半ばの合宿明けとともに身体が徐々に復調し、「夏合宿をしっかりこなせなかった不安がある中、でも、走れてきたから大丈夫だろうと、半々ぐらいの気持ちで臨んだ」のが出雲駅伝だ。4区に起用された出雲は、3区区間賞の快走でチームを12位から5位に押し上げたキムタイからタスキを受けた後、平林は区間9位で順位を1つ落としてしまう。 「調子は悪くなかったけれど、4位が見える位置にいたので力みがありましたし、何となく『やるぞ』という気持ちになれていなかった。だいぶ良くない走りをしてしまいました」 今季の城西大は3年生に実力者が多く、なかでも斎藤将也(3年)とキムタイは箱根駅伝で1年時から2年連続で2区、3区を担ってきたダブルエースだ。平林は2人を「駅伝になったら頼もしい存在」と絶対的な信頼を置きながらも、4年生として「頼もしいで終わるのはいかがなものか」という複雑な思いを持っている。 「先輩が後輩に頼り切っているだけではチームとしても良くないですし、僕も将也やヴィクターに負けたくない、負けていてはいけないという気持ちが強いです。前半シーズンの走りから言えば、自分もやってやれないことはない。3人でチームを引っ張っていけたらなと思っています」 その根底には「4年生がしっかりしないといけない」という考えがある。前回3位と躍進した箱根では、山本唯翔(SUBARU)や山中秀真(トーエネック)、野村颯斗(中国電力)という4年生が往路でチームを勢いづけた。当時の強力な最上級生の印象が強く残っているのかもしれない。

4年生としての覚悟

今年11月の全日本大学駅伝では、5区に林晃耀、7区に久保出雄太、アンカーの8区に平林と、4年生3人が後半区間に起用された。平林はレース前、4年生だけのグループラインで、「俺たち4年生がやらないと」というメッセージを伝えたという。 「今回の全日本で言えば、流れを作るのはヴィクターや将也。その流れを確実なものにして、順位を決めるのは後半区間に入った4年生の仕事。そういう意味でも4年生のがんばりが重要になると思っていました」 実際、城西大は2区終了時点で10位とやや出遅れたものの、3区のキムタイが5人抜き、4区の斎藤が3人抜きを達成。2位で前半区間を終えた。しかし、林が2つ、久保出が1つ順位を落とし、平林も5位をキープできずに6位でフィニッシュ。平林は「区間順位は5位ということで最低限の走りはできましたが、チーム目標は5位だったので、主将として、アンカーとしての仕事は果たせませんでした」と悔しさを滲ませる。 それでも、「自分たちがやっていることの方向性は間違っていない」という手応えも得られた。 箱根駅伝では前々回、前回とともに9区を担い、区間8位、10位と今いる順位をしっかりキープしたが、自身には「全体を通して納得のいく入りができていない」という思いがある。 最後となる3度目の箱根は、櫛部監督が「チームの3本柱の1人ですので、主要区間を走ってもらいたい。往路を考えています」と語るように初の往路での出走が有力。平林は「前回の往路の選手たち同様、しっかりとチームの順位を決める走りをしていきたいです」と静かに闘志を燃やす。 「自分としては、往路ならどこでも走れる準備をしてきたつもりですが、1区、3区、4区あたりなら自分の力を一番出せると思っています。4位以上というチーム目標のためにも、区間3位以上を目指していきたいです」 平林がどんな大学4年間を過ごしてきたのか。それを証明する集大成の時が近づいてきた。 [caption id="attachment_156366" align="alignnone" width="800"] 関東インカレ10000mでは大幅自己新で2位[/caption] ひらばやし・いつき/2002年12月8日生まれ。東京都八王子市出身。東京・打越中→拓大一高。5000m13分39秒77、10000m28分03秒13、ハーフ1時間2分49秒 文/小野哲史

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.04

東海大相模が中盤で抜け出し4年ぶり制覇 女子は白鵬女が2区で首位浮上し5連覇/神奈川県高校駅伝

東海大相模が大会新記録となる2時間4分24秒で4年ぶりの優勝!女子は白鵬女が1時間12分15秒で4連覇/神奈川県高校駅伝 全国高校駅伝の出場権を懸けた神奈川県高校駅伝が11月3日、横浜市の日産フィールド小机及び付設ハーフ […]

NEWS 2025年最も輝いたアスリートは!?選手、ファン、メディアみんなで選ぶ「GetsurikuAwards2025」投票スタート!

2025.11.04

2025年最も輝いたアスリートは!?選手、ファン、メディアみんなで選ぶ「GetsurikuAwards2025」投票スタート!

この度、そのシーズンで最も輝きを放ったアスリートを表彰する 「GetsurikuAwards」 を今年も開催します! コンセプトは「最優秀」や「MVP(最も価値のある)」選手ではなく、その年に『最も輝きを放った選手=Cr […]

NEWS 平田2年連続男女優勝!女子はオール区間賞で2連覇 男子は1区から独走で6連覇/島根県高校駅伝

2025.11.04

平田2年連続男女優勝!女子はオール区間賞で2連覇 男子は1区から独走で6連覇/島根県高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた島根県高校駅伝は11月2日、浜山公園陸上競技場で行われ、男女ともに平田が制した。女子(5区間21.0975km)は1時間15分41秒で2年連続16回目の優勝。男子(7区間42.195km)は2 […]

NEWS 順天が1秒先着して3年ぶり都大路へ 男子は拓大一が中盤から独走して2連覇/東京都高校駅伝

2025.11.04

順天が1秒先着して3年ぶり都大路へ 男子は拓大一が中盤から独走して2連覇/東京都高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた東京都高校駅伝は11月3日、味の素スタジアム・武蔵野の森公園で行われ、女子(5区間21.0975km)は順天が1時間13分04秒で3年ぶり19回目の優勝を果たした。男子(7区間42.195km […]

NEWS 美濃加茂が初の男女V 男子は2区で首位奪い悲願の都大路 女子は1区から独走で6連覇/岐阜県高校駅伝

2025.11.04

美濃加茂が初の男女V 男子は2区で首位奪い悲願の都大路 女子は1区から独走で6連覇/岐阜県高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた岐阜県高校駅伝が11月2日、山県市の四国山香りの森公園付近特設コースにて行われ、男女ともに美濃加茂が優勝を飾った。男子(7区間42km)は2時間3分38秒で初制覇。女子(5区間21.0975k […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年11月号 (10月14日発売)

2025年11月号 (10月14日発売)

東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望

page top