2024.05.23
学生長距離Close-upインタビュー
片川祐大 Katakawa Yudai 亜細亜大4年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。39回目は、亜細亜大の片川祐大(4年)をピックアップする。
兵庫・報徳学園高では貧血やケガに苦しんだが、亜細亜大ではじっくりと土台を固めて成長。3年時に5000mで初の13分台をマークすると、10000mとハーフマラソンでも自己新を出した。
今年4月の金栗記念10000mでは日本人トップの5位に食い込み、5月の関東インカレでは男子2部5000mで4位に入るなど勢いに乗る。チームのエースで主将として学生ラストイヤーを迎えており、これまでの歩みや今季の目標などを語った。
金栗記念で日本人トップの快走
高3の夏まで5000m15分台だった男が、今や学生長距離界のトップランナーへと成長を遂げようとしている。
今年4月13日、金栗記念の男子10000mで、ひときわ光る健闘を見せたのが、亜細亜大の片川祐大(4年)だ。
「7月のホクレンディスタンスで27分台を狙いたいが、もともとの自己ベストだと(設定タイムが速い)上の組で走るのが難しい。自己ベストを更新することを考えて走りました」
その狙い通りに、昨年5月にマークした28分27秒51を大幅に更新し、28分11秒20の自己新記録を打ち立てた。目標の27分台は、いよいよ射程にある。
「タイムだけを狙っていたので、まさか日本人トップとは! 驚いています」。こう振り返るように、自身も驚くパフォーマンスで、昨年の日本選手権10000m5位入賞の小林歩(NTT西日本)、吉居大和(トヨタ自動車)にも先着。日本人トップの5位に入る活躍だった。
5月の関東インカレ(2部)では、10000mは入賞を逃したものの、5000mでは終盤まで先頭集団に食らいつき、4位(日本人2位)に入った。同大会では2年時に5000m8位、3年時に10000m5位に入っており、3年連続の入賞。確かな存在感を示している。
片川は「50mが速くなりたい」という理由で中学から陸上を始めた。当初は短距離だったが、「たまたま同級生が速くて……」。100mでは大会に出場することもできなかったという。そこで、400m、1500mと次第に距離を伸ばし、長距離になった。
高校は兵庫の名門・報徳学園高に進学。しかし、高校3年になるまでは5000mで15分を切ることもできなかった。「貧血や故障をひたすら繰り返していた」と言い、駅伝のメンバー争いにも絡めず最終学年に。記録も結果も残せず、「陸上で大学に行くことは無理だろうな」と思っていたという。
さらに、新型コロナウイルスの感染が拡大。高校ラストイヤーで巻き返しを図るつもりが、緊急事態宣言が出され、部活動もままならない。「ここで頑張らないといけないのに、このままでは高校3年間を棒に振ってしまう」という危機感ばかりが募った。
金栗記念で日本人トップの快走
高3の夏まで5000m15分台だった男が、今や学生長距離界のトップランナーへと成長を遂げようとしている。 今年4月13日、金栗記念の男子10000mで、ひときわ光る健闘を見せたのが、亜細亜大の片川祐大(4年)だ。 「7月のホクレンディスタンスで27分台を狙いたいが、もともとの自己ベストだと(設定タイムが速い)上の組で走るのが難しい。自己ベストを更新することを考えて走りました」 その狙い通りに、昨年5月にマークした28分27秒51を大幅に更新し、28分11秒20の自己新記録を打ち立てた。目標の27分台は、いよいよ射程にある。 「タイムだけを狙っていたので、まさか日本人トップとは! 驚いています」。こう振り返るように、自身も驚くパフォーマンスで、昨年の日本選手権10000m5位入賞の小林歩(NTT西日本)、吉居大和(トヨタ自動車)にも先着。日本人トップの5位に入る活躍だった。 5月の関東インカレ(2部)では、10000mは入賞を逃したものの、5000mでは終盤まで先頭集団に食らいつき、4位(日本人2位)に入った。同大会では2年時に5000m8位、3年時に10000m5位に入っており、3年連続の入賞。確かな存在感を示している。 片川は「50mが速くなりたい」という理由で中学から陸上を始めた。当初は短距離だったが、「たまたま同級生が速くて……」。100mでは大会に出場することもできなかったという。そこで、400m、1500mと次第に距離を伸ばし、長距離になった。 高校は兵庫の名門・報徳学園高に進学。しかし、高校3年になるまでは5000mで15分を切ることもできなかった。「貧血や故障をひたすら繰り返していた」と言い、駅伝のメンバー争いにも絡めず最終学年に。記録も結果も残せず、「陸上で大学に行くことは無理だろうな」と思っていたという。 さらに、新型コロナウイルスの感染が拡大。高校ラストイヤーで巻き返しを図るつもりが、緊急事態宣言が出され、部活動もままならない。「ここで頑張らないといけないのに、このままでは高校3年間を棒に振ってしまう」という危機感ばかりが募った。逆境がターニングポイントに
ただ、そんな逆境が片川にとってのターニングポイントになった。 「緊急事態宣言が出て、一人でやらないといけない時も故障していたのですが、どうしてか分からないんですけど、少しずつ故障をしなくなりました」 練習が継続してできるようになると、9月の5000mの記録会では自己記録を一気に30秒以上更新する14分34秒21。初めて15分切りを果たし、その記録会ではチームトップにもなった。 初めて駅伝のメンバーを勝ち取ると、兵庫県大会の4区で2位。12月には5000mで14分26秒95まで記録を伸ばした。 「陸上を本気でやるなら、関東の方が強い選手が集まる。関東で勝ってこそ、やりがいも出てくる」 高校の恩師・平山征志先生がこう話していたこともあって、片川は関東の大学を志すようになった。一度は諦めかけた陸上の道だったが、両親に頭を下げて、大学で競技を続ける許しを得た。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
後輩の快走が刺激に
高校の2学年後輩、前田和摩(東農大2)の存在も刺激になっている。前田は、金栗記念では5000mに出場し1組1着。5月の日本選手権10000mでは、日本人学生最高(日本歴代5位)となる27分21秒52の快記録で3位に入った。 「金栗の時はたまたま飛行機が(前田と)往復一緒でした。『次は全日本予選(関東選考会)で直接対決だね』という話をしたら『絶対に負けません』などと言われました。まさかあんなに行くとは……。(前田の活躍は)刺激にもなりましたし、自分もできるんじゃないかって思うことができました。負けじと食らいつく走りをしていきたいと思っています」 今季、片川はチームの主将を務める。亜細亜大は第82回箱根駅伝で総合優勝を飾っているが、その4年後の第86回大会を最後に本大会から遠ざかっている。チームとして目指すのは、もちろん15年ぶりの本戦出場だ。 「関東の大学に来たからには箱根駅伝はやっぱり走りたい舞台。“自分がしっかり走れば大丈夫”という精神を持った選手が10人集まって、一人ひとりがその目標に向かっていけば、予選会は良い勝負ができると思う。そういうチームにしていきたい」 本戦出場を逃した過去3大会は1区の10km付近で走路員を務めた。「出走する人を背中で見て、通り過ぎたら終わり。寂しい仕事でした」。本大会に出場がかなった際には、1区を希望するつもりだ。 「集団走が好きだし、テレビにも映りますから。あと、自分の持ち味が朝に強いこと。朝はばっちり起きられるので、良いスタートを切ってチームに流れを作りたい」 これまでは背中で見るだけだった1区で爆走を誓う。 [caption id="attachment_131365" align="alignnone" width="800"]
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