2024.01.27
2024年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。
主将として悩み苦しんだ1年間
「てっぺん」を目指していた國學院大は、大会直前に体調不良者が続出した。12月10日にインフルエンザに集団感染。さらに“3本柱”の1人である山本歩夢(3年)が12月中旬に故障を再発し、起用が難しくなったのだ。
前田康弘監督は「シード落ちを覚悟した」というほど弱気になったが、主将・伊地知賢造(4年)がチームを盛り立ててきた。
「監督として13回目の箱根でしたけど、12月は一番ピンチでした。そんな時でも『俺らはやれるんだ』という感じで、伊地知と平林(清澄)が頑張ってくれたんです」
伊地知にとって最後の学生駅伝。どん底から何度も這い上がってきた男にとって、負けられない戦いだった。
埼玉・松山高時代は全国大会の出場経験はなく、当時の5000mベストは14分43秒97。同学年内では11番目のタイムで國學院大に入学した。
すると、みるみるうちに急成長を遂げ、学生駅伝は1年時からフル参戦。2年時は全日本8区で区間賞を獲得し、箱根は花の2区を務めた。3年時は出雲と全日本でアンカーを担い、ともに準優勝のフィニッシュに飛び込んでいる。
しかし、箱根は11月中旬に左膝を痛めたこともあり、5区で区間7位と振るわず、チームも4位に終わった。
今季は主将に就任するも、1月末に右足首を痛めて出遅れる。「走りで引っ張るキャプテン像を描いていた」だけに、走れない自分を責めた。一時は「陸上をやめたい」と考えるほど悩み苦しんだという。
それでも4月末から走り始めると、7月に5000mで13分40秒51の自己新をマーク。9月の日本インカレは10000mで日本トップ(8位)に輝いた。3区を任された出雲駅伝は4位に終わったが、アンカーを務めた全日本大学駅伝は3位を確保。最後の箱根に向けては、こんな思いを口にしていた。
「4区あたりの可能性が高いと思うんですけど、2区や5区にアクシデントがあっても僕なら入ることができる。いずれにしても、後ろの選手たちが心を揺さぶるような走りをしたい」
主将として悩み苦しんだ1年間
「てっぺん」を目指していた國學院大は、大会直前に体調不良者が続出した。12月10日にインフルエンザに集団感染。さらに“3本柱”の1人である山本歩夢(3年)が12月中旬に故障を再発し、起用が難しくなったのだ。 前田康弘監督は「シード落ちを覚悟した」というほど弱気になったが、主将・伊地知賢造(4年)がチームを盛り立ててきた。 「監督として13回目の箱根でしたけど、12月は一番ピンチでした。そんな時でも『俺らはやれるんだ』という感じで、伊地知と平林(清澄)が頑張ってくれたんです」 伊地知にとって最後の学生駅伝。どん底から何度も這い上がってきた男にとって、負けられない戦いだった。 埼玉・松山高時代は全国大会の出場経験はなく、当時の5000mベストは14分43秒97。同学年内では11番目のタイムで國學院大に入学した。 すると、みるみるうちに急成長を遂げ、学生駅伝は1年時からフル参戦。2年時は全日本8区で区間賞を獲得し、箱根は花の2区を務めた。3年時は出雲と全日本でアンカーを担い、ともに準優勝のフィニッシュに飛び込んでいる。 しかし、箱根は11月中旬に左膝を痛めたこともあり、5区で区間7位と振るわず、チームも4位に終わった。 今季は主将に就任するも、1月末に右足首を痛めて出遅れる。「走りで引っ張るキャプテン像を描いていた」だけに、走れない自分を責めた。一時は「陸上をやめたい」と考えるほど悩み苦しんだという。 それでも4月末から走り始めると、7月に5000mで13分40秒51の自己新をマーク。9月の日本インカレは10000mで日本トップ(8位)に輝いた。3区を任された出雲駅伝は4位に終わったが、アンカーを務めた全日本大学駅伝は3位を確保。最後の箱根に向けては、こんな思いを口にしていた。 「4区あたりの可能性が高いと思うんですけど、2区や5区にアクシデントがあっても僕なら入ることができる。いずれにしても、後ろの選手たちが心を揺さぶるような走りをしたい」後輩たちを勇気づけた“攻めの走り”
当初は1区・山本、4区・伊地知を予定していたが、山本の戦線離脱で主将は1区に起用された。 「大学では初めてでしたけど、高校でも1区の経験はありますし、ハーフマラソンは1区みたいな感じなので、特に不安はなかったです。とにかく気持ちだけは絶対に負けたくありませんでした」 伊地知は序盤から積極的なレースを展開。駿河台大のスティーブン・レマイヤン(1年)のハイペースに食らいつく。先頭集団は4人で5kmを14分00秒で通過した。 しかし、自身もインフルエンザに感染した影響もあり、決して調子は万全ではなかった。8kmを過ぎると、レマイヤンと駒大・篠原倖太朗(3年)についていけない。それでも僅差を保っていたが、14kmを過ぎると、徐々に差が広がっていく。そして16.8km付近で後続集団に吸収された。その後は厳しい状況に追い込まれる。 「後半、身体が冷え切って、ガチガチになってしまいました。15kmぐらいから急にきつくなって、意識もちょっと飛びかけました」と振り返る。トップ駒大と1分33秒差の区間17位。タスキをつなげると、伊地知はその場に倒れ込んだ。苦しいながらも“完全燃焼”の走りだった。 「正直、ラスト3kmぐらいは覚えていません。自分の走りはめちゃくちゃ悔しいです。粘り切れると思って、突っ込んだ部分もあったので、自分の力不足を感じましたね。ただ、気持ちを前面に出すことができたのは良かったと思います」 主将の熱い気持ちは、3年生エースに引き継がれる。「伊地知さんの勇気ある飛び出しに元気をもらいました」という2区の平林清澄(3年)が快走。8人抜きを演じて、9位に浮上した。 往路を6位で折り返すと、復路は1年生3人を含む下級生5人が出走。順位を1つ上げて、総合5位でフィニッシュした。危機的な状況のなかでもチームは底力を発揮したと言える。 「伊地知は行ける状況じゃないのに、迷わず先頭について行きました。想定より遅れましたが、チームに漂っていた閉塞感を切り裂いてくれたんです。その気持ちは後輩たちにつながったと思いますよ」と前田監督はキャプテンの攻めの姿勢を評価した。 『てっぺん』を目指していた以上、優勝したかった。気持ちだけは絶対に負けないと思って走ったんですけど、結果がすべて。うまくまとめきれず、チームに『ゴメンなさい』という気持ちです。僕らが届かなかった夢を後輩たちに託したいなと思います」 今回の出走メンバー9人が残る國學院大。伊地知は後輩たちに夢を委ねて、今後はマラソンで“新たな夢”を追いかけていく。 [caption id="attachment_126972" align="alignnone" width="800"]
2024年箱根駅伝で1区スタート前の國學院大・伊地知賢造[/caption]
伊地知賢造(いじち・けんぞう:國学院大)/2001年8月23日生まれ。埼玉県鶴ヶ島市出身。松山高卒。自己ベストは5000m13分40秒51、10000m28分29秒95、ハーフ1時間2分22秒。
文/酒井政人 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.01.23
編集部コラム「年末年始」
2026.01.18
【大会結果】第31回全国都道府県対抗男子駅伝(2026年1月18日)
2026.01.18
【テキスト速報】第31回全国都道府県対抗男子駅伝
-
2026.01.18
-
2025.12.30
-
2026.01.18
-
2026.01.12
-
2026.01.02
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2026.01.24
全日本実業団ハーフのエントリー発表!男子は細谷恭平、市山翼、女子は樺沢和佳奈、川村楓らが登録 女子10kmには山本有真
日本実業団連合は1月23日、第54回全日本実業団ハーフマラソン(2月8日/山口)のエントリー選手を発表した。 男子は前回大会で優勝を飾った市山翼(サンベルクス)が招待選手としてエントリー。前回入賞の田中秀幸(トヨタ自動車 […]
2026.01.24
日本郵政グループ・大西ひかりが引退 「たくさんのご声援、本当にありがとうございました」23年アジア大会マラソン代表
1月23日、日本郵政グループは、所属する大西ひかりが1月をもって退部し、現役を引退することを発表した。 大西は兵庫県出身の25歳。播磨中で陸上を本格的に始め、3年生だった2015年には全中1500mで4位に入賞するなど、 […]
2026.01.23
編集部コラム「年末年始」
攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム?? 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで […]
2026.01.23
中島佑気ジョセフに立川市市民栄誉表彰「地道に一歩ずつ頑張ることが大事」母校凱旋に熱烈歓迎、卒業文集に書いた夢明かす
男子400m日本記録保持者の中島佑気ジョセフ(富士通)が、地元の立川市から市民栄誉表彰が授与された。 昨年の東京世界選手権では、予選で44秒44の日本新を出すと、準決勝では組2着に入って1991年東京大会の高野進以来とな […]
2026.01.23
招待選手が抱負!上杉真穂「全力を出し切る」西村美月「これからにつなげる」伊澤菜々花「心を燃やして」前回の雪辱へ/大阪国際女子マラソン
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズG1の大阪国際女子マラソンを2日後に控え、有力選手が前々日会見に登壇した。 22年にこの大会で2位に入るなど国内では実績と経験のある上杉真穂(東京メトロ)は、「練習も順 […]
Latest Issue
最新号
2026年2月号 (1月14日発売)
EKIDEN Review
第102回箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
全国高校駅伝
全国中学校駅伝
富士山女子駅伝