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2023.12.27

【Playback箱根駅伝】第85回/東洋大 初の総合優勝! 5区・ルーキー柏原竜二が4分58秒差を大逆転
【Playback箱根駅伝】第85回/東洋大 初の総合優勝! 5区・ルーキー柏原竜二が4分58秒差を大逆転

第85回箱根駅伝/9位でタスキを受けた東洋大5区の柏原竜二は、一気に山を駆け上り8人抜き。チーム初優勝の立役者となった

2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの)

第85回(2009年/平成21年)
2区でモグスが2年連続区間新 上武大初出場、青学大は33年ぶりの箱根路

前年の大会で関東学連選抜が4位に入ったため、シード枠は例年より1つ少ない「9」。それに加え、5年おきの記念大会ということで、史上最多23チームが大手町のスタートラインに立った。

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10月の予選会では3年連続で本戦11位だった城西大がトップ通過を果たし、上武大が初出場を決めた。そのほかにも青学大が33年ぶり、拓大が4年ぶり、明大が2年ぶりに箱根路へ返り咲いた。

全日本で3連覇を飾った前回王者の駒大、全日本2~4位の早大、山梨学大、東洋大が優勝候補に挙げられ、特に東洋大は出場67回目にして初優勝が狙える戦力が整っていた。

1区は前年同様にスローな展開となり、終盤に抜け出した早大のルーキー・矢澤曜が区間賞を獲得。2位以下も秒差でなだれ込み、先頭から20秒以内に9チームがタスキをつなぐ混戦へ。優勝候補の駒大はまさかの19位発進となった。

2区では前回大会で区間新記録を樹立した山梨学大のメクボ・ジョブ・モグス(4年)がまたもや爆走を見せた。4位スタートからあっという間に先頭を奪うと、自身の持つ区間記録を19秒更新する1時間6分04秒で2位以下に2分40秒もの大差をつけた。2位は留学生のギタウ・ダニエル(3年)が史上最多の20人抜きを達成した日大が入り、東洋大はこの時点で14位と出遅れた。この区間ではダニエルのほかに多くのごぼう抜きが見られ、中央学大の木原真佐人(4年)が11位から8人抜き、中大の徳地悠一(4年)が13位から8人抜き、東農大の外丸和輝(3年)が14位から10人抜き、駒大の宇賀地強(3年)が19位から11人を抜いた。

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3区では山梨学大が首位をキープしたものの、6位でタスキを受けた早大の竹澤健介(4年)が2位まで浮上し、その差を16秒まで縮めてきた。竹澤は北京五輪5000m、10000m代表のスピードを生かし、3区では初の1時間2分切りとなる1時間1分40秒の区間新記録を樹立した。駒大はこの区間で17位まで順位を落とし、連覇へ黄色信号が灯った。

4区では早大のルーキー・三田裕介が区間新の快走で山梨学大を逆転し、首位に浮上。早大が往路の小田原中継所でトップに立つのは11年ぶりだった。3位以下は大きく順位が入れ替わり、明大が10位から3位へ、日体大が8位から4位へ、帝京大が12位から5位へジャンプアップを果たした。

5区では山梨学大の高瀬無量(2年)がハイペースで早大の三輪真之(4年)に追いつくが、徐々に失速。その後ろで9位スタートだった東洋大の1年生・柏原竜二が猛烈な勢いで迫ってきた。柏原は区間新ペースで山を駆け上がり、19km過ぎで首位へ浮上。「山の神」と呼ばれた今井正人(順大)の持つ区間記録を47秒も更新する1時間17分18秒のスーパー区間新で、東洋大初となる往路優勝のフィニッシュテープを切った。

2位は早大、3位は日体大が続き、前回王者の駒大は先頭から約8分遅れの15位と優勝争いから完全に脱落した。

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復路のスタートとなる6区では22秒差で追いかける2位・早大の加藤創大(3年)が東洋大を逆転し、再び首位へ。しかし、東洋大も18秒差で続き、ここから一騎打ちのバトルが続く。

7区では早大の八木勇樹(1年)が東洋大の飛坂篤恭(4年)を一時1分近く引き離したものの、後半に盛り返した飛坂が区間賞を獲得。順位は変わらなかったが、その差を12秒まで縮めた。

そして勝負を決した8区。東洋大の千葉優(2年)が8km手前で早大の中島賢士(2年)に追いつくと、16km付近にある遊行寺で引き離しにかかり、戸塚中継所では45秒の差をつけた。東洋大はその後も9区の大津翔吾(2年)が区間2位、10区の高見諒(2年)が区間6位と安定感のあるタスキリレーで後続を寄せ付けず、往路・復路をともに制する完全優勝で悲願の総合初制覇を成し遂げた。

早大は2年連続で2位となり、日体大が4年ぶりのトップ3。大東大が予選会10位通過から大躍進の4位に入り、以下は中央学大、山梨学大、日大が5位~7位と続いた。明大は8位で43年ぶりとなるシード権を獲得。9位は関東学連選抜が入り、名門・中大が苦戦しながらも10位で連続シードを「25」に伸ばした。

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優勝候補の駒大は13位でまさかのシード陥落。予選会1位通過の城西大は8区で途中棄権のアクシデントがありながら、9区の主将・伊藤一行(4年)が区間トップだった山梨学大・中川剛(3年)のタイムを28秒上回る「幻の区間賞」で見せ場を作った。

大会MVPは5区で驚異的な区間新を叩き出した柏原が受賞。東洋大は5区の柏原を中心に6人が1、2年生という布陣で、これから訪れる「黄金時代」を予感させる戦いぶりだった。

参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)

2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの)

第85回(2009年/平成21年) 2区でモグスが2年連続区間新 上武大初出場、青学大は33年ぶりの箱根路

前年の大会で関東学連選抜が4位に入ったため、シード枠は例年より1つ少ない「9」。それに加え、5年おきの記念大会ということで、史上最多23チームが大手町のスタートラインに立った。 10月の予選会では3年連続で本戦11位だった城西大がトップ通過を果たし、上武大が初出場を決めた。そのほかにも青学大が33年ぶり、拓大が4年ぶり、明大が2年ぶりに箱根路へ返り咲いた。 全日本で3連覇を飾った前回王者の駒大、全日本2~4位の早大、山梨学大、東洋大が優勝候補に挙げられ、特に東洋大は出場67回目にして初優勝が狙える戦力が整っていた。 1区は前年同様にスローな展開となり、終盤に抜け出した早大のルーキー・矢澤曜が区間賞を獲得。2位以下も秒差でなだれ込み、先頭から20秒以内に9チームがタスキをつなぐ混戦へ。優勝候補の駒大はまさかの19位発進となった。 2区では前回大会で区間新記録を樹立した山梨学大のメクボ・ジョブ・モグス(4年)がまたもや爆走を見せた。4位スタートからあっという間に先頭を奪うと、自身の持つ区間記録を19秒更新する1時間6分04秒で2位以下に2分40秒もの大差をつけた。2位は留学生のギタウ・ダニエル(3年)が史上最多の20人抜きを達成した日大が入り、東洋大はこの時点で14位と出遅れた。この区間ではダニエルのほかに多くのごぼう抜きが見られ、中央学大の木原真佐人(4年)が11位から8人抜き、中大の徳地悠一(4年)が13位から8人抜き、東農大の外丸和輝(3年)が14位から10人抜き、駒大の宇賀地強(3年)が19位から11人を抜いた。 3区では山梨学大が首位をキープしたものの、6位でタスキを受けた早大の竹澤健介(4年)が2位まで浮上し、その差を16秒まで縮めてきた。竹澤は北京五輪5000m、10000m代表のスピードを生かし、3区では初の1時間2分切りとなる1時間1分40秒の区間新記録を樹立した。駒大はこの区間で17位まで順位を落とし、連覇へ黄色信号が灯った。 4区では早大のルーキー・三田裕介が区間新の快走で山梨学大を逆転し、首位に浮上。早大が往路の小田原中継所でトップに立つのは11年ぶりだった。3位以下は大きく順位が入れ替わり、明大が10位から3位へ、日体大が8位から4位へ、帝京大が12位から5位へジャンプアップを果たした。 5区では山梨学大の高瀬無量(2年)がハイペースで早大の三輪真之(4年)に追いつくが、徐々に失速。その後ろで9位スタートだった東洋大の1年生・柏原竜二が猛烈な勢いで迫ってきた。柏原は区間新ペースで山を駆け上がり、19km過ぎで首位へ浮上。「山の神」と呼ばれた今井正人(順大)の持つ区間記録を47秒も更新する1時間17分18秒のスーパー区間新で、東洋大初となる往路優勝のフィニッシュテープを切った。 2位は早大、3位は日体大が続き、前回王者の駒大は先頭から約8分遅れの15位と優勝争いから完全に脱落した。 復路のスタートとなる6区では22秒差で追いかける2位・早大の加藤創大(3年)が東洋大を逆転し、再び首位へ。しかし、東洋大も18秒差で続き、ここから一騎打ちのバトルが続く。 7区では早大の八木勇樹(1年)が東洋大の飛坂篤恭(4年)を一時1分近く引き離したものの、後半に盛り返した飛坂が区間賞を獲得。順位は変わらなかったが、その差を12秒まで縮めた。 そして勝負を決した8区。東洋大の千葉優(2年)が8km手前で早大の中島賢士(2年)に追いつくと、16km付近にある遊行寺で引き離しにかかり、戸塚中継所では45秒の差をつけた。東洋大はその後も9区の大津翔吾(2年)が区間2位、10区の高見諒(2年)が区間6位と安定感のあるタスキリレーで後続を寄せ付けず、往路・復路をともに制する完全優勝で悲願の総合初制覇を成し遂げた。 早大は2年連続で2位となり、日体大が4年ぶりのトップ3。大東大が予選会10位通過から大躍進の4位に入り、以下は中央学大、山梨学大、日大が5位~7位と続いた。明大は8位で43年ぶりとなるシード権を獲得。9位は関東学連選抜が入り、名門・中大が苦戦しながらも10位で連続シードを「25」に伸ばした。 優勝候補の駒大は13位でまさかのシード陥落。予選会1位通過の城西大は8区で途中棄権のアクシデントがありながら、9区の主将・伊藤一行(4年)が区間トップだった山梨学大・中川剛(3年)のタイムを28秒上回る「幻の区間賞」で見せ場を作った。 大会MVPは5区で驚異的な区間新を叩き出した柏原が受賞。東洋大は5区の柏原を中心に6人が1、2年生という布陣で、これから訪れる「黄金時代」を予感させる戦いぶりだった。 参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)

第85回箱根駅伝総合成績をチェック

●総合成績 1位 東洋大 11時間09分14秒 2位 早大  11時間09分55秒 3位 日体大 11時間13分05秒 4位 大東大 11時間17分48秒 5位 中央学大11時間17分50秒 6位 山梨学大11時間17分56秒 7位 日大  11時間18分14秒 8位 明大  11時間18分16秒 9位 関東学連選抜 11時間18分20秒 10位 中大  11時間18分33秒 11位 国士大 11時間19分07秒 12位 東農大 11時間19分17秒 13位 駒大  11時間20分20秒 14位 専大  11時間24分59秒 15位 神奈川大11時間25分07秒 16位 亜細亜大11時間25分39秒 17位 拓大  11時間26分31秒 18位 東海大 11時間28分04秒 19位 順大  11時間28分09秒 20位 帝京大 11時間28分21秒 21位 上武大 11時間28分54秒 22位 青学大 11時間29分00秒    城西大 途中棄権 ●区間賞 1区 矢澤曜(早大)  1時間04分48秒 2区 M.J.モグス(山梨学大) 1時間06分04秒 3区 竹澤健介(早大) 1時間01分40秒 4区 三田裕介(早大)    55分04秒 5区 柏原竜二(東洋大)1時間17分18秒 6区 佐藤匠(大東大)    59分14秒 7区 飛坂篤恭(東洋大)1時間05分01秒 8区 髙林祐介(駒大) 1時間06分27秒 9区 中川剛(山梨学大)1時間11分07秒 10区 永井大隆(日体大)1時間10分41秒

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