HOME 学生長距離

2023.12.23

箱根駅伝Stories/立教大の苦境を支えた4年生世代「後輩たちに何かを残す走りがしたい」
箱根駅伝Stories/立教大の苦境を支えた4年生世代「後輩たちに何かを残す走りがしたい」

立教大を支えてきた主将の宮澤徹(右)とエース格の中山凜斗

「最後の箱根で爪痕を残したい」

もうひとり、チームを影から支え続けた強化プロジェクト1期生がいる。それが寮長を務めた市川大輝だ。

チームの足並みが悪くなっていくとき、最初に乱れるのが私生活である。人は楽なほうにすぐに流されていく。寮で集団生活をしていると、一歩踏み外すとなかなか戻ってくることはできない。そこを、常に目を光らせ、チーム全員を陸上競技に集中させるようなサポートを続けてきた。

「彼の存在は本当に大きいです。このチームが大変なときに、練習面で支えたのは主将の宮澤ですし、生活面でサポートしてくれたのは市川でした。この2人は、どちらが欠けてもチームはダメになっていたと思います。本当に良く支えてくれました」(原田総監督)

広告の下にコンテンツが続きます

また、主力として背中でチームを牽引してきたのも、今回エントリーされた中山凜斗に関口絢太、岸本健太郎、忠内侑士、服部凱杏らを中心とした4年生たちだった。

「僕たち4年生はすごく個性が強いので、もしかするとバラバラになっていた可能性があると思います。でも、自分たちで何をしなければならないのかをきちんと考えて、一人ひとりが間違ったことはせず、チーム目標のために真剣に取り組んでくれる。そう信じていたので、不思議と不安はありませんでした」(宮澤主将)

チーム一丸となる。だが、なれ合いはしない。やるべきことを、やる。

広告の下にコンテンツが続きます

今季の4年生たちは、言葉は少なくても、その背中が雄弁に語っている。後輩たちに、箱根を目指すチームとしての矜持を伝え続けていた。

23年箱根駅伝でタスキをつないだ2区の國安広人(左)と3区の関口絢太

それに牽引されるようにして、3年生の稲塚大祐や安藤圭佑、林虎大朗らはもちろん、國安広人、馬場賢人といった次世代を担う2年生も元気いっぱいだ。

「この子たちは、自分たちで考えて、取り組んで、たくさんのことを乗り越えてきました。一所懸命な姿を見ていると、私も老体にムチ打って頑張らないと、と思っています。最高の走りをしてくれると思います」と今年67歳を迎えた原田監督は言う。

中山は、「後輩たちに何かを残す走りをしたい」と言う。

「4年間、一緒に生活をしてきて飽きないというか、本当に楽しいチームでした。箱根本戦で僕たち4年生が結果を残せば、楽しいだけじゃなくて、自分たちがやってきた練習だったり、取り組む姿勢だったり、そういうことが間違っていなかったことが証明できると思うんです。だからこそ、最後の箱根で爪痕を残せるような走りがしたいです」

昨年、55年ぶりに復活した江戸紫のタスキ。今回は大学創立150周年の節目に62年ぶりのシード権獲得を狙う。

文/田坂友暁

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

笑顔を絶やさなかった主将・宮澤徹

雨降って地固まる、とはまさにこのことか。立教大学男子駅伝チームが、強い結束力を見せている。 箱根駅伝予選会の2日前、突如として監督が解任される事態が発生。原田昭夫総監督が急きょチームを率いることになった。 ただ、予選会までは時間がなかったこともあり、「勢いで突破できた」と宮澤徹主将は話す。むしろ、チームをまとめる主将として心配したのは、予選会後の状況だった。 「予選会を突破したら、本戦まで約2ヵ月あります。時間ができると、やっぱり冷静になって考えてしまうことはわかっていました」 そんなチームを支えるには、主将である自分が練習面でも生活面でも、そしてチームの精神的主柱として、今まで以上に頑張らなければならない。そう決意した宮澤は、予選会後から一層練習に気持ちを入れて取り組むようになった。それに伴い、自分の調子も上げていく。 エントリーメンバー(16人)の当落線上にいた宮澤が、くじけることなく、前を向き、ひたむきに頑張る姿は、チームを鼓舞するのに十分だった。 加えて、宮澤が気をつけてきたことがあった。チームメイトたちに声をかけるときには、常に明るく、笑顔で接するように心がけたのである。キャプテンが落ち込んでいたら、チーム全員の雰囲気まで落ち込んでしまうからだ。 苦しくても、明るく。しんどくても、楽しく。宮澤がそうやって笑っていられるのは、ブラジルで育ったことも影響していると笑う。 「ブラジルでは、みんな明るいですからね。常に明るくいられるのは、小学1年から4年までサンパウロにいたことが影響していると思います」 大学創立150年の節目に向けて組まれた強化プロジェクトの1期生。振り返れば、うまくいかなかったことのほうが多かったが、いよいよ4年間の集大成を迎える。 「まずはキャプテンとして、自分たちの代が最後の箱根を後悔がないような結果で終えられるように準備を進めます。チームの目標としてはシード獲得。厳しい状況ではありますが、もっと苦境に立たされた予選会を突破した経験があるわけですから、それを自信に変えてみんなで箱根を迎えたいと思います」 結果的に、宮澤自身はエントリーメンバーから外れてしまったものの、指揮官不在の憂き目にあっていた選手たちを支えたのは、間違いなくこの宮澤であった。

「最後の箱根で爪痕を残したい」

もうひとり、チームを影から支え続けた強化プロジェクト1期生がいる。それが寮長を務めた市川大輝だ。 チームの足並みが悪くなっていくとき、最初に乱れるのが私生活である。人は楽なほうにすぐに流されていく。寮で集団生活をしていると、一歩踏み外すとなかなか戻ってくることはできない。そこを、常に目を光らせ、チーム全員を陸上競技に集中させるようなサポートを続けてきた。 「彼の存在は本当に大きいです。このチームが大変なときに、練習面で支えたのは主将の宮澤ですし、生活面でサポートしてくれたのは市川でした。この2人は、どちらが欠けてもチームはダメになっていたと思います。本当に良く支えてくれました」(原田総監督) また、主力として背中でチームを牽引してきたのも、今回エントリーされた中山凜斗に関口絢太、岸本健太郎、忠内侑士、服部凱杏らを中心とした4年生たちだった。 「僕たち4年生はすごく個性が強いので、もしかするとバラバラになっていた可能性があると思います。でも、自分たちで何をしなければならないのかをきちんと考えて、一人ひとりが間違ったことはせず、チーム目標のために真剣に取り組んでくれる。そう信じていたので、不思議と不安はありませんでした」(宮澤主将) チーム一丸となる。だが、なれ合いはしない。やるべきことを、やる。 今季の4年生たちは、言葉は少なくても、その背中が雄弁に語っている。後輩たちに、箱根を目指すチームとしての矜持を伝え続けていた。 [caption id="attachment_124198" align="alignnone" width="800"] 23年箱根駅伝でタスキをつないだ2区の國安広人(左)と3区の関口絢太[/caption] それに牽引されるようにして、3年生の稲塚大祐や安藤圭佑、林虎大朗らはもちろん、國安広人、馬場賢人といった次世代を担う2年生も元気いっぱいだ。 「この子たちは、自分たちで考えて、取り組んで、たくさんのことを乗り越えてきました。一所懸命な姿を見ていると、私も老体にムチ打って頑張らないと、と思っています。最高の走りをしてくれると思います」と今年67歳を迎えた原田監督は言う。 中山は、「後輩たちに何かを残す走りをしたい」と言う。 「4年間、一緒に生活をしてきて飽きないというか、本当に楽しいチームでした。箱根本戦で僕たち4年生が結果を残せば、楽しいだけじゃなくて、自分たちがやってきた練習だったり、取り組む姿勢だったり、そういうことが間違っていなかったことが証明できると思うんです。だからこそ、最後の箱根で爪痕を残せるような走りがしたいです」 昨年、55年ぶりに復活した江戸紫のタスキ。今回は大学創立150周年の節目に62年ぶりのシード権獲得を狙う。 文/田坂友暁

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.09.18

400m・中島佑気ジョセフ「たくさんの人に力をもらった」高野超え6位入賞で「見えた景色」/東京世界陸上

◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)6日目 東京世界陸上6日目のイブニングセッションが行われ、男子400m決勝で中島佑気ジョセフ(富士通)が44秒62をマークして6位入賞を果たした。 1991年東京大会の高野 […]

NEWS 鵜澤飛羽200mファイナル届かず「全力は出した。それでダメなら負けを認めるしかない」/東京世界陸上

2025.09.18

鵜澤飛羽200mファイナル届かず「全力は出した。それでダメなら負けを認めるしかない」/東京世界陸上

【動画】男子200m準決勝 決勝を狙った鵜澤飛羽のレース 【東京世界陸上】 ▶️男子200m 準決勝1組 日本のエース👊 🇯🇵鵜澤飛羽選手 6位 20秒23 決勝進出ならずも世界のトップ相手に健闘🔥 📺TBS系 生中継 […]

NEWS マクローリン・レヴロン47秒78!!降りしきる雨のなか女子400m世界歴代2位、大会新の激走/東京世界陸上

2025.09.18

マクローリン・レヴロン47秒78!!降りしきる雨のなか女子400m世界歴代2位、大会新の激走/東京世界陸上

女子400m世界歴代10傑をチェック! 47.60 M.コッホ(東ドイツ) 1985.10. 6 47.78 S.マクローリン・レヴロン(米国) 2025. 9.18 47.98 M.パウリノ(ドミニカ共和国) 2025 […]

NEWS 中島佑気ジョセフ400m6位 3レース連続の44秒台で日本選手過去最高位/東京世界陸上

2025.09.18

中島佑気ジョセフ400m6位 3レース連続の44秒台で日本選手過去最高位/東京世界陸上

【動画】男子400m決勝 中島佑気ジョセフのレースをチェック! 【東京世界陸上】▶️男子400m 決勝 ボツワナ史上初🥇🥇🇧🇼ケビナシッピ 選手 43秒53 🥈🇹🇹リチャーズ 選手 43秒72(🇹🇹新記録)🥉🇧🇼ヌドリ […]

NEWS 中島佑気ジョセフ400m44秒62 高野進を超える歴史的6位入賞を果たす/東京世界陸上

2025.09.18

中島佑気ジョセフ400m44秒62 高野進を超える歴史的6位入賞を果たす/東京世界陸上

◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)6日目 東京世界陸上6日目のイブニングセッションが行われ、男子400m決勝1組の中島佑気ジョセフ(富士通)が44秒62で6位に入った。 日本人選手が世界陸上で決勝を走ったの […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年10月号 (9月9日発売)

2025年10月号 (9月9日発売)

【別冊付録】東京2025世界陸上観戦ガイド
村竹ラシッド/桐生祥秀/中島佑気ジョセフ/中島ひとみ/瀬古優斗
【Coming EKIDEN Season 25-26】
学生長距離最新戦力分析/青学大/駒大/國學院大/中大/

page top