HOME 駅伝、箱根駅伝

2023.01.03

東京国際大ヴィンセント3区間区間記録!最強留学生が最後の箱根 圧巻の8人抜きで幕/箱根駅伝
東京国際大ヴィンセント3区間区間記録!最強留学生が最後の箱根 圧巻の8人抜きで幕/箱根駅伝

4区区間記録を打ち立てた東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(2023年箱根駅伝)

◇第99回箱根駅伝・往路(1月2日:東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km)

第99回箱根駅伝の往路が行われ、4区で東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(4年)が区間新記録を打ち立てて区間賞を獲得した。

広告の下にコンテンツが続きます

大砲は、最後まで大砲だった。

1年時には3区で59分25秒の区間新記録を叩き出せば、2年時は花の2区で1時間05分49秒の、これまた区間新記録。3年時こそ途中の左足首の痛みもあり、区間5位の1時間07分02秒という記録だったものの、ヴィンセントは最後の箱根で最強の留学生の名にふさわしい走りを見せた。

4年間、ともに戦ってきた1区・山谷昌也、2区・丹所健とつなぐも本来の走りができず総合10位で3区へ。白井勇佑も粘りたかったが2つ順位を落とした。ヴィンセントがタスキを受け取った時点で12番目になっていた。

「脚の状態もコンディションも100%ではなかったですし、ほぼ1ヵ月程度で調子を上げなければなりませんでした。エンデュランスのトレーニング(持久系)はしていましたが、それでも練習は十分ではありませんでしたから心配も不安もありました」

広告の下にコンテンツが続きます

万全でなくても、自分の仕事を果たすだけ、最高の走りをするだけ、と淡々とレースを進める。1人抜き、また1人抜く。異次元のスピードで国道1号線を駆け抜けていく。追いつけば、躊躇することなく抜き去っていく。抜かれた選手はただ唖然とするばかり。この光景は、今までもヴィンセントが走る区間では幾度となく見られた景色だった。

気づけば、あっという間に8人をごぼう抜き。記録も速報では史上初となる1時間を切る59分59秒をマーク。正式結果は1時間ジャストとなったが、それでも従来の区間記録を一気に30秒縮める区間新記録で最後の箱根路を駆け抜ける。車に乗る大志田監督からの声にスッと手を上げて応えた。最強留学生の箱根駅伝が終わった。

「区間新記録を出せてとても良い気持ちです。大志田監督からは10kmからペースを守れ、という言葉がありました。目標は60分カット。記録もうれしいです」

少しはにかむようにしてインタビューに答える。ヴィンセントはこれで2区、3区、そして4区と3つの区間記録を保持するという、史上初の快挙を成し遂げた。

広告の下にコンテンツが続きます

勉強熱心で、普段から勉学にも励み、遅い時間まで課題のリポートに取り組むこともあった。恥ずかしがり屋のため、公のインタビューではあまり日本語は話さないものの、日本語自体はほとんど理解しているという。

言葉も違えば文化も違う。衣食住の環境も習慣も違う異国の地。そんな中でストレスなく、陸上に集中することができたのは、同級生で「家族同然の存在」というルカ・ムセンビの存在が大きかった。ムセンビ、そして丹所ら仲間とともに過ごしたこの4年間は、ヴィンセントにとってもかけがえのない時間であったことだろう。

出雲駅伝前に左脚のふくらはぎの肉離れという故障に見舞われながらも、最後の最後まで最強の留学生でありつづけたヴィンセント。大志田監督は「彼がいなければ今の東京国際はない」と功労者に最大限の賛辞を送る。最後はファンに囲まれ、子供たちから写真撮影をせがまれ、それに笑顔で応じていた。

「今後はまずトラックでパリ五輪が目標。その後はマラソンにも挑戦していきたい」。ヴィンセント劇場は、まだ第1幕を終えたばかり。これからもきっと、アッと言わせるパフォーマンスを披露し続けていくことだろう。

広告の下にコンテンツが続きます

文/田坂友暁

次ページ 【動画】最強留学生!東京国際大ヴィンセントが4区区間新で8人抜き

◇第99回箱根駅伝・往路(1月2日:東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km) 第99回箱根駅伝の往路が行われ、4区で東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(4年)が区間新記録を打ち立てて区間賞を獲得した。 大砲は、最後まで大砲だった。 1年時には3区で59分25秒の区間新記録を叩き出せば、2年時は花の2区で1時間05分49秒の、これまた区間新記録。3年時こそ途中の左足首の痛みもあり、区間5位の1時間07分02秒という記録だったものの、ヴィンセントは最後の箱根で最強の留学生の名にふさわしい走りを見せた。 4年間、ともに戦ってきた1区・山谷昌也、2区・丹所健とつなぐも本来の走りができず総合10位で3区へ。白井勇佑も粘りたかったが2つ順位を落とした。ヴィンセントがタスキを受け取った時点で12番目になっていた。 「脚の状態もコンディションも100%ではなかったですし、ほぼ1ヵ月程度で調子を上げなければなりませんでした。エンデュランスのトレーニング(持久系)はしていましたが、それでも練習は十分ではありませんでしたから心配も不安もありました」 万全でなくても、自分の仕事を果たすだけ、最高の走りをするだけ、と淡々とレースを進める。1人抜き、また1人抜く。異次元のスピードで国道1号線を駆け抜けていく。追いつけば、躊躇することなく抜き去っていく。抜かれた選手はただ唖然とするばかり。この光景は、今までもヴィンセントが走る区間では幾度となく見られた景色だった。 気づけば、あっという間に8人をごぼう抜き。記録も速報では史上初となる1時間を切る59分59秒をマーク。正式結果は1時間ジャストとなったが、それでも従来の区間記録を一気に30秒縮める区間新記録で最後の箱根路を駆け抜ける。車に乗る大志田監督からの声にスッと手を上げて応えた。最強留学生の箱根駅伝が終わった。 「区間新記録を出せてとても良い気持ちです。大志田監督からは10kmからペースを守れ、という言葉がありました。目標は60分カット。記録もうれしいです」 少しはにかむようにしてインタビューに答える。ヴィンセントはこれで2区、3区、そして4区と3つの区間記録を保持するという、史上初の快挙を成し遂げた。 勉強熱心で、普段から勉学にも励み、遅い時間まで課題のリポートに取り組むこともあった。恥ずかしがり屋のため、公のインタビューではあまり日本語は話さないものの、日本語自体はほとんど理解しているという。 言葉も違えば文化も違う。衣食住の環境も習慣も違う異国の地。そんな中でストレスなく、陸上に集中することができたのは、同級生で「家族同然の存在」というルカ・ムセンビの存在が大きかった。ムセンビ、そして丹所ら仲間とともに過ごしたこの4年間は、ヴィンセントにとってもかけがえのない時間であったことだろう。 出雲駅伝前に左脚のふくらはぎの肉離れという故障に見舞われながらも、最後の最後まで最強の留学生でありつづけたヴィンセント。大志田監督は「彼がいなければ今の東京国際はない」と功労者に最大限の賛辞を送る。最後はファンに囲まれ、子供たちから写真撮影をせがまれ、それに笑顔で応じていた。 「今後はまずトラックでパリ五輪が目標。その後はマラソンにも挑戦していきたい」。ヴィンセント劇場は、まだ第1幕を終えたばかり。これからもきっと、アッと言わせるパフォーマンスを披露し続けていくことだろう。 文/田坂友暁 次ページ 【動画】最強留学生!東京国際大ヴィンセントが4区区間新で8人抜き
【動画】最強留学生!東京国際大ヴィンセントが4区区間新で8人抜き(日テレTwitter)

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.05.19

200mVの鵜澤飛羽はフィニッシュ後に転倒し救急車で搬送/セイコーGGP

◇セイコーゴールデングランプリ(5月19日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが行われ、男子200mは鵜澤飛羽(筑波大)が20秒40(-0.3)で優勝した。 […]

NEWS 走幅跳・橋岡優輝は「次につながる」7m97で4位 パリ五輪標準突破済み/セイコーGGP

2024.05.19

走幅跳・橋岡優輝は「次につながる」7m97で4位 パリ五輪標準突破済み/セイコーGGP

◇セイコーゴールデングランプリ(5月19日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが行われ、男子走幅跳は張溟鯤(中国)が8m13(+0.4)をマークして優勝した。 […]

NEWS 男子100m坂井隆一郎 ケイレンで最下位も大事には至らず「まだ身体がついてこなかった」/セイコーGGP

2024.05.19

男子100m坂井隆一郎 ケイレンで最下位も大事には至らず「まだ身体がついてこなかった」/セイコーGGP

◇セイコーゴールデングランプリ(5月19日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが行われ、男子100mで昨年の日本選手権覇者・坂井隆一郎(大阪ガス)は、スタート […]

NEWS 北口榛花 またラストで逆転Vで昨年から10連勝!!「まだちょっと足りない」3年前涙に暮れた国立で貫禄/セイコーGGP

2024.05.19

北口榛花 またラストで逆転Vで昨年から10連勝!!「まだちょっと足りない」3年前涙に暮れた国立で貫禄/セイコーGGP

◇セイコーゴールデングランプリ(5月19日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが行われ、女子やり投は北口榛花(JAL)が63m45のシーズンベストを投げて優勝 […]

NEWS 女子100mH田中佑美は12秒90の2位「タイムが出たことは評価したい」/セイコーGGP

2024.05.19

女子100mH田中佑美は12秒90の2位「タイムが出たことは評価したい」/セイコーGGP

◇セイコーゴールデングランプリ(5月19日/東京・国立競技場) 世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・ゴールドのセイコーゴールデングランプリが行われ、女子100mハードルで田中佑美(富士通)が12秒90(-0.6)で2位 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年6月号 (5月14日発売)

2024年6月号 (5月14日発売)

別冊付録学生駅伝ガイド

page top