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2019.11.29

【コラム番外編】編集部が独断で選ぶ2019年〝ONE SCENE〟
【コラム番外編】編集部が独断で選ぶ2019年〝ONE SCENE〟

【コラム番外編】
編集部が独断で選ぶ2019年トラック&フィールド

〝ONE SCENE〟

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〝オリンピック・プレイヤー〟だった2019年は日本記録が多数樹立された。

 いよいよ今年も残すところあと1ヵ月。

 そこで今回は編集部員コラム「番外編」として、編集部員が独断(?)と偏見(?)と思い入れたっぷり(?)に、今年印象に残った〝ONE SCENE〟を選出しました。

 みなさんの心にはどんな〝ONE SCENE〟が刻まれましたか?

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ドーハ世界選手権男子50kmW
鈴木雄介〝涙〟の金メダル(小川雅生)

 ジュニアの時から「目標は世界一」と言ってはばからなかった鈴木雄介選手(富士通)。

 ドーハ世界選手権では深夜のうだるような暑さの中、2015年に20kmで世界記録を樹立した後、どん底まで落ちながらも這い上がる、彼の競技人生を映し出したかのような死闘の末に、金メダルを獲得。

 日の丸を受け取った瞬間、苦しかった日々への想い、それを乗り越えた達成感、支えてくれた人たちへの感謝……さまざまな出来事が走馬灯のように駆け巡り、涙となってあふれ出た。

大器の「覚醒前」
鵜澤飛羽のIH東北地区大会(山本慎一郎)

 細身の長身。明らかに成長途上の肉体。しかし強い。鵜澤飛羽(築館高2宮城)の走りを初めて見た時の印象は鮮烈だった。

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 将来、大化けするかもしれない……その予感は間違っていなかった。ただ、それが来年、再来年ではなく、こんなに早く現実になるなんて――。

 6月のインターハイ東北地区大会で初めて見た〝大器〟は、8月の沖縄インターハイでは短距離2冠の大活躍。200mでは追い風参考ながら高校記録にも迫った。

 それでも、彼がまだ成長段階にいるのは間違いないだろう。〝未完の大器〟はこれからどんな走りを見せてくれるのか。

悪コンディションの中で、
三浦龍司が8分39秒49の高校新(井上 敦)

 インターハイ近畿大会男子3000m障害で、8分39秒49の高校新記録をマークした三浦龍司選手(洛南3京都)。実はこの日の競技場は強い風が吹き荒れ、レース直前にはトラック上に設置された代用縁石が動いてしまうほどだった。

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 それでも、独走劇で30年ぶりの記録更新と日本人高校生初の8分40秒切りを達成。

 フィニッシュからまもなくスコールのような大雨になったため、タイマーでの歴史的な記念スナップがなかったのは残念だったが、その走りっぷりは脳裏に焼きついている。

三段跳・伊藤陸
42年ぶりの快挙(向永拓史)

 今年、もっとも〝過小評価〟されている記録かもしれない。

 岐阜で行われた日本インカレ男子三段跳で偉大な記録が誕生。伊藤陸選手(近大高専)が16m34(0.6)の大ジャンプで優勝した。

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 この記録で、1977年に中西正美さんがマークした16m29という日本最古のU20日本記録を、実に42年ぶりに更新。多くのトリプルジャンパーたちがこの記録に挑み、跳ね返される姿を見てきただけに、ここまで一気に更新するとは……。同日、東京でMGCが開催されていた影響でこの快挙の印象が薄くなってしまっているのがちょっと残念。

 オリンピックで日本初の金メダルは、1928年アムステルダム大会での三段跳の織田幹雄さん。2020年東京五輪を前に〝お家芸復活〟に向けた起爆剤となる偉大な記録だ。
(※今回、男子ばかりになってしまった…。円盤投・郡菜々佳選手や、やり投・北口榛花選手の日本記録を挙げたいところだったが、実は〝この目〟で見られなかったため断念……)

200mハッサン・ナワール
本人も驚く23秒99 の中学新(大久保雅文)

 これまで取材を続ける中で、多くの日本記録や高校記録、中学記録を目にしてきた。長距離や高さの種目ではレースペースやバーの上がり方で新記録が出ることがすぐ分かるが、ごく稀に短距離でも「このレースでは新記録が出るな」という直感(記者の勘?)が働くことがある。

 今年のジュニア五輪A女子200mでハッサン・ナワール選手(松戸五中3千葉)が23秒99を出したレースでは、スタートした瞬間に久しぶりに〝その感覚〟を覚えた。

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 中学新は出ると思ったが、それでも女子中学生初の23秒台は私だけでなく、ハッサン選手自身も「まさか」と驚くタイムだった。

横浜の夜を盛り上げた
「世界リレー」初の日本開催(松永貴允)

 これまで「世界リレー」といえば、過去3大会はバハマの地で開催されており、正直なところ日本人にはなじみの薄い大会だったように思う。

 今年5月の第4回大会は日本の横浜国際総合競技場(神奈川)で開催。国内の大会では流れない陽気な音楽、英語のアナウンスに高揚感が生まれ、陸上記者ですら初めて見るシャトルハードルや2×2×400mなど、2日間〝リレー種目だけ〟で横浜の夜を沸かせてくれた。

 2年後の次回はポーランドで開催されることになったが、「また日本で開催されるといいな……」と思ったのは私だけではないはずだ。

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日本記録決着!
歴史に残る日本選手権110mH(船越陽一郎)

 試合前から「日本記録が複数出て決着する」と編集担当から〝プレッシャー〟をかけられていた今年の日本選手権男子110mハードル。

 雨が降る中、高山峻野選手(ゼンリン)と泉谷駿介(順大)の2人による壮絶な死闘の末、予想通り日本記録決着となりました。仕上がりを見てみると……しっかりと2人をセットで抑えられていたので、ホッとしました。

【コラム番外編】 編集部が独断で選ぶ2019年トラック&フィールド 〝ONE SCENE〟 〝オリンピック・プレイヤー〟だった2019年は日本記録が多数樹立された。  いよいよ今年も残すところあと1ヵ月。  そこで今回は編集部員コラム「番外編」として、編集部員が独断(?)と偏見(?)と思い入れたっぷり(?)に、今年印象に残った〝ONE SCENE〟を選出しました。  みなさんの心にはどんな〝ONE SCENE〟が刻まれましたか? ドーハ世界選手権男子50kmW 鈴木雄介〝涙〟の金メダル(小川雅生)  ジュニアの時から「目標は世界一」と言ってはばからなかった鈴木雄介選手(富士通)。  ドーハ世界選手権では深夜のうだるような暑さの中、2015年に20kmで世界記録を樹立した後、どん底まで落ちながらも這い上がる、彼の競技人生を映し出したかのような死闘の末に、金メダルを獲得。  日の丸を受け取った瞬間、苦しかった日々への想い、それを乗り越えた達成感、支えてくれた人たちへの感謝……さまざまな出来事が走馬灯のように駆け巡り、涙となってあふれ出た。 大器の「覚醒前」 鵜澤飛羽のIH東北地区大会(山本慎一郎)  細身の長身。明らかに成長途上の肉体。しかし強い。鵜澤飛羽(築館高2宮城)の走りを初めて見た時の印象は鮮烈だった。  将来、大化けするかもしれない……その予感は間違っていなかった。ただ、それが来年、再来年ではなく、こんなに早く現実になるなんて――。  6月のインターハイ東北地区大会で初めて見た〝大器〟は、8月の沖縄インターハイでは短距離2冠の大活躍。200mでは追い風参考ながら高校記録にも迫った。  それでも、彼がまだ成長段階にいるのは間違いないだろう。〝未完の大器〟はこれからどんな走りを見せてくれるのか。 悪コンディションの中で、 三浦龍司が8分39秒49の高校新(井上 敦)  インターハイ近畿大会男子3000m障害で、8分39秒49の高校新記録をマークした三浦龍司選手(洛南3京都)。実はこの日の競技場は強い風が吹き荒れ、レース直前にはトラック上に設置された代用縁石が動いてしまうほどだった。  それでも、独走劇で30年ぶりの記録更新と日本人高校生初の8分40秒切りを達成。  フィニッシュからまもなくスコールのような大雨になったため、タイマーでの歴史的な記念スナップがなかったのは残念だったが、その走りっぷりは脳裏に焼きついている。 三段跳・伊藤陸 42年ぶりの快挙(向永拓史)  今年、もっとも〝過小評価〟されている記録かもしれない。  岐阜で行われた日本インカレ男子三段跳で偉大な記録が誕生。伊藤陸選手(近大高専)が16m34(0.6)の大ジャンプで優勝した。  この記録で、1977年に中西正美さんがマークした16m29という日本最古のU20日本記録を、実に42年ぶりに更新。多くのトリプルジャンパーたちがこの記録に挑み、跳ね返される姿を見てきただけに、ここまで一気に更新するとは……。同日、東京でMGCが開催されていた影響でこの快挙の印象が薄くなってしまっているのがちょっと残念。  オリンピックで日本初の金メダルは、1928年アムステルダム大会での三段跳の織田幹雄さん。2020年東京五輪を前に〝お家芸復活〟に向けた起爆剤となる偉大な記録だ。 (※今回、男子ばかりになってしまった…。円盤投・郡菜々佳選手や、やり投・北口榛花選手の日本記録を挙げたいところだったが、実は〝この目〟で見られなかったため断念……) 200mハッサン・ナワール 本人も驚く23秒99 の中学新(大久保雅文)  これまで取材を続ける中で、多くの日本記録や高校記録、中学記録を目にしてきた。長距離や高さの種目ではレースペースやバーの上がり方で新記録が出ることがすぐ分かるが、ごく稀に短距離でも「このレースでは新記録が出るな」という直感(記者の勘?)が働くことがある。  今年のジュニア五輪A女子200mでハッサン・ナワール選手(松戸五中3千葉)が23秒99を出したレースでは、スタートした瞬間に久しぶりに〝その感覚〟を覚えた。  中学新は出ると思ったが、それでも女子中学生初の23秒台は私だけでなく、ハッサン選手自身も「まさか」と驚くタイムだった。 横浜の夜を盛り上げた 「世界リレー」初の日本開催(松永貴允)  これまで「世界リレー」といえば、過去3大会はバハマの地で開催されており、正直なところ日本人にはなじみの薄い大会だったように思う。  今年5月の第4回大会は日本の横浜国際総合競技場(神奈川)で開催。国内の大会では流れない陽気な音楽、英語のアナウンスに高揚感が生まれ、陸上記者ですら初めて見るシャトルハードルや2×2×400mなど、2日間〝リレー種目だけ〟で横浜の夜を沸かせてくれた。  2年後の次回はポーランドで開催されることになったが、「また日本で開催されるといいな……」と思ったのは私だけではないはずだ。 日本記録決着! 歴史に残る日本選手権110mH(船越陽一郎)  試合前から「日本記録が複数出て決着する」と編集担当から〝プレッシャー〟をかけられていた今年の日本選手権男子110mハードル。  雨が降る中、高山峻野選手(ゼンリン)と泉谷駿介(順大)の2人による壮絶な死闘の末、予想通り日本記録決着となりました。仕上がりを見てみると……しっかりと2人をセットで抑えられていたので、ホッとしました。

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