HOME 特集

2021.12.29

Playback2021日本記録/田中希実、21歳「真夏の大冒険」1500mで3分台に突入
Playback2021日本記録/田中希実、21歳「真夏の大冒険」1500mで3分台に突入


2021年は21個もの日本記録(タイ記録含む)が誕生した。東京五輪イヤーという特別な1年に樹立された日本記録を振り返っていく。

常識を次々とくつがえす快進撃

今年生まれた21個の日本記録。そのうちの3つは女子1500mで、田中希実(豊田自動織機TC)によって樹立された。

広告の下にコンテンツが続きます

この夏、スケートボードでは「13歳、真夏の大冒険」が話題をさらったが、国立競技場で21歳のランナーもまた、大冒険を繰り広げた。

7月のホクレンディスタンスで4分04秒08をマークし、昨年自身が樹立した4分05秒27を更新。結果的には有効期間内に間に合わなかったが、東京五輪の参加標準記録を上回って、ワールドランキング制度で出場権を得たオリンピックへ臨むこととなった。

卜部蘭(積水化学)とともに、女子1500m日本人初出場。だが、快挙はそれだけにとどまらない。

田中は先に行われた5000mにも出場し、初の14分台をマークするも予選敗退に終わった。その悔しさを1500mにすべてぶつける。

広告の下にコンテンツが続きます

予選で4分02秒33と日本記録を大幅に更新し、4着で準決勝進出を果たした。「4分を切らないと決勝は難しい」。準決勝のスタート直後、インレーンからすっと前に出た。海外勢と互角の走りを見せ、ずるずる落ちることはない。これまでこだわり抜いてきた「ラスト1周」で粘り切り、5着でフィニッシュ。着順で決勝進出を決めた。

田中の記録は、3分59秒19。日本人女子初の4分切り。「着順を狙うことでタイムもついてくると思いました」とどこまでも冷静に分析しつつ、「今の自分の全部をぶつけた」と、熱い気持ちを身体の奥にたぎらせていた。

決勝ではタイム以上に驚く7位入賞。日本人にとって、世界から最も遠いトラック種目とされてきた中距離で、153cmの小さな巨人が歴史を動かした。

なぜ世界と戦えるのか。その問いに対して田中はこう答えた。

広告の下にコンテンツが続きます

「ひるまずに前に行く気持ちが大事」

父と二人三脚で時に意見をぶつけ合いながら、綿密に立てられた練習計画と試合スケジュール。着実に積み重ねた上で、最後に必要になるのは、やはり「気持ち」だった。

「1500mを極めればどんな種目にも対応できるということを、身をもって証明していけるようにしていきたいです」

21歳の大冒険を終えたあと、9月に22歳になった。卒論に追われながら、スタイルを崩さずにレースをこなす。まだ見ぬ自分と出会うために。今日より明日、速くなるために。

広告の下にコンテンツが続きます

■女子1500m 日本歴代10傑
日本歴代
3.59.19 田中 希実(豊田自動織機TC) 2021. 8. 4
4.07.86 小林祐梨子(須磨学園高3兵庫) 2006. 9.24
4.07.90 卜部  蘭(積水化学) 2021. 8. 2
4.09.30 杉森 美保(京セラ) 2005. 4. 9
4.10.00 吉川 美香(パナソニック) 2007. 5. 5
4.10.08 陣内 綾子(九電工) 2013. 8. 3
4.10.39 田村 育子(グローバリー) 2002. 6.23
4.11.10 弘山 晴美(資生堂) 1994. 4.29
4.11.34 萩谷  楓(エディオン) 2021.9.24
4.11.65 藤原夕規子(グローバリー) 2002.12. 7

2021年は21個もの日本記録(タイ記録含む)が誕生した。東京五輪イヤーという特別な1年に樹立された日本記録を振り返っていく。

常識を次々とくつがえす快進撃

今年生まれた21個の日本記録。そのうちの3つは女子1500mで、田中希実(豊田自動織機TC)によって樹立された。 この夏、スケートボードでは「13歳、真夏の大冒険」が話題をさらったが、国立競技場で21歳のランナーもまた、大冒険を繰り広げた。 7月のホクレンディスタンスで4分04秒08をマークし、昨年自身が樹立した4分05秒27を更新。結果的には有効期間内に間に合わなかったが、東京五輪の参加標準記録を上回って、ワールドランキング制度で出場権を得たオリンピックへ臨むこととなった。 卜部蘭(積水化学)とともに、女子1500m日本人初出場。だが、快挙はそれだけにとどまらない。 田中は先に行われた5000mにも出場し、初の14分台をマークするも予選敗退に終わった。その悔しさを1500mにすべてぶつける。 予選で4分02秒33と日本記録を大幅に更新し、4着で準決勝進出を果たした。「4分を切らないと決勝は難しい」。準決勝のスタート直後、インレーンからすっと前に出た。海外勢と互角の走りを見せ、ずるずる落ちることはない。これまでこだわり抜いてきた「ラスト1周」で粘り切り、5着でフィニッシュ。着順で決勝進出を決めた。 田中の記録は、3分59秒19。日本人女子初の4分切り。「着順を狙うことでタイムもついてくると思いました」とどこまでも冷静に分析しつつ、「今の自分の全部をぶつけた」と、熱い気持ちを身体の奥にたぎらせていた。 決勝ではタイム以上に驚く7位入賞。日本人にとって、世界から最も遠いトラック種目とされてきた中距離で、153cmの小さな巨人が歴史を動かした。 なぜ世界と戦えるのか。その問いに対して田中はこう答えた。 「ひるまずに前に行く気持ちが大事」 父と二人三脚で時に意見をぶつけ合いながら、綿密に立てられた練習計画と試合スケジュール。着実に積み重ねた上で、最後に必要になるのは、やはり「気持ち」だった。 「1500mを極めればどんな種目にも対応できるということを、身をもって証明していけるようにしていきたいです」 21歳の大冒険を終えたあと、9月に22歳になった。卒論に追われながら、スタイルを崩さずにレースをこなす。まだ見ぬ自分と出会うために。今日より明日、速くなるために。 ■女子1500m 日本歴代10傑 日本歴代 3.59.19 田中 希実(豊田自動織機TC) 2021. 8. 4 4.07.86 小林祐梨子(須磨学園高3兵庫) 2006. 9.24 4.07.90 卜部  蘭(積水化学) 2021. 8. 2 4.09.30 杉森 美保(京セラ) 2005. 4. 9 4.10.00 吉川 美香(パナソニック) 2007. 5. 5 4.10.08 陣内 綾子(九電工) 2013. 8. 3 4.10.39 田村 育子(グローバリー) 2002. 6.23 4.11.10 弘山 晴美(資生堂) 1994. 4.29 4.11.34 萩谷  楓(エディオン) 2021.9.24 4.11.65 藤原夕規子(グローバリー) 2002.12. 7

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.05.08

110mH・泉谷駿介が右ハム違和感のためセイコーGGP欠場 5000m・山本有真、三段跳・森本麻里子も出場見送り

日本陸連は5月8日、セイコーゴールデングランプリ陸上2024東京(5月19日/東京・国立競技場)の欠場者を発表し、パリ五輪代表に内定している泉谷駿介(住友電工)が右ハムストリングスの違和感のため欠場することを発表した。 […]

NEWS 男子三段跳・テイラーが今年限りでの引退を表明! ロンドン、リオ五輪金メダリスト

2024.05.08

男子三段跳・テイラーが今年限りでの引退を表明! ロンドン、リオ五輪金メダリスト

男子三段跳五輪・世界選手権金メダリストのクリスチャン・テイラー(米国)が今季限りで引退する意向であることを発表した。米国・NBCスポーツが報じている。 テイラーは33歳。12年ロンドン五輪、16年リオ五輪で金メダルを獲得 […]

NEWS マラソン五輪王者・キプチョゲがキプトゥム氏の事故死に対する誹謗中傷を告白 IOCはAI活用し、選手への中傷を監視することを発表

2024.05.08

マラソン五輪王者・キプチョゲがキプトゥム氏の事故死に対する誹謗中傷を告白 IOCはAI活用し、選手への中傷を監視することを発表

男子マラソン前世界記録保持者で五輪2連覇中のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、昨年10月に世界記録を塗り替えたケルビン・キプトゥム氏の事故死に関与したという憶測から、誹謗中傷をSNSで受けてきたことを明らかにした。 キプ […]

NEWS 【竹澤健介の視点】葛西潤と五島莉乃に感じた「意志」と冷静さ 太田智樹の安定感、前田和摩の潜在能力に驚き/日本選手権10000m

2024.05.07

【竹澤健介の視点】葛西潤と五島莉乃に感じた「意志」と冷静さ 太田智樹の安定感、前田和摩の潜在能力に驚き/日本選手権10000m

静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムを舞台に開催された第108回日本選手権10000m。男子は葛西潤(旭化成)が27分17秒46、女子は五島莉乃(資生堂)が30分53秒31と、ともに日本歴代6位の好タイムで初優勝を飾 […]

NEWS 【高平慎士の視点】男子4×100m、4×400m「収穫ある4位」五輪シードレーン獲得、後手に回ってメダル争いの価値/世界リレー

2024.05.06

【高平慎士の視点】男子4×100m、4×400m「収穫ある4位」五輪シードレーン獲得、後手に回ってメダル争いの価値/世界リレー

バハマ・ナッソーで開催された2024世界リレー(5月4日、5日/日本時間5日、6日)で男子の4×100mと4×400mがパリ五輪出場権を獲得した。初日の予選で、4×100mは38秒10で1着通過して五輪切符を決めると、決 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年5月号 (4月12日発売)

2024年5月号 (4月12日発売)

パリ五輪イヤー開幕!

page top