◇第102回箱根駅伝(1月2、3日:神奈川・箱根町~東京・大手町往復/10区間217.1km)
第102回箱根駅伝が行われ、青学大が10時間37分34秒で3年連続9度目の総合優勝を成し遂げた。伝統校の日大が10時間53分56秒の10位で、来年のシード権を手にした。
第90回大会(2014年)以来となるシード権獲得の瞬間。予選会で4位通過したときも笑顔はなかった選手たちだったが、この時ばかりは皆が喜びを隠しきれなかった。
「選手たちが一所懸命、コツコツと努力を積み重ねてくれたおかげです。神様がご褒美をくれたのだと思っています」
12年ぶりにシード権を獲得した日本大の新雅弘駅伝監督は、笑顔でそう語った。
指揮官がポイントに挙げたのが最終盤の9区、10区だ。「目標にしていたシード権争いを見据えて、経験のある4年生の中澤星音と大仲竜平を配置しました。最後は絶対に経験値が生きてくると思っていたので」と、采配が見事に当たる。
往路から、要所に置いた4年生の強さが光った。2区のシャドラック・キップケメイが17位から9位へとジャンプアップさせた総合順位を、3区の冨田悠晟が区間14位ながら粘りの走りで総合10位を死守した。
冨田は「前回大会は区間最下位。本当に悔しい思いをしましたから、『絶対にこの区間でリベンジしてやるんだ』と1年頑張ってきました」と、最後の箱根路にぶつけた思いを語る。「目標としていたタイムにも届きましたし、何より後輩たちに、どこよりも走ってきた日大だから結果を残せるんだ、という走りを見せられました」と、上級生としての役割を果たした。
冨田の思いを復路につなげたのは、5区の鈴木孔士だった。幼少期からあこがれていた箱根5区。ずっと山が走りたくて、陸上競技を続けてきた。前回大会では、その思いだけで身体の走る準備はできていなかった。それを思い知ったからこそ、この1年間、冨田同様に同じ区間でリベンジを果たすためにトレーニングに取り組んできた。
「タスキをもらった位置も良かったので、気持ちが高ぶるスタートでした。ひとケタ順位を目標にして、その通りに走ることができた。しっかりと箱根駅伝5区で勝負ができたと思っています」
鈴木の区間9位という好走によって、チームも9位とシード圏内に押し上げる。
往路をつないできた選手たちの思いを背負い、臨んだ復路。6区・山口聡太、7区・天野啓太の3年生コンビが、しっかりと9位をキープ。8区の山口月暉(4年)は後半に苦しい走りとなりながらも、何とか総合10位を維持した。しかし、一斉スタートから順位を上げている帝京大や東海大が迫り、シード権争いは熾烈さを増していった。
そこで生きたのが、冒頭の新監督の采配である。9位の中央学大とは13秒差、11位の東海大とはちょうど1分、12位の帝京大とは1分54秒差。シード権争いはまさに混戦だった。こうした展開を見越していたかのように、勝負どころで粘り強さを発揮する主将・中澤が満を持して9区に起用された。区間順位は13位だったが、終盤に中央学大を逆転し、総合9位に浮上。すべては10区の副主将・大仲に託された。
大仲は、すぐに追いついてきた中央学大の成川翔太(4年)と並走。互いに探り合う中で、メンタルが削られていくような展開を粘り強く耐え続けた。
勝負の分かれ目は、関東学生連合の佐藤颯人(武蔵野学大3年)が追いついてきた18km地点だった。もともと「残り3kmで勝負をかけるつもりだった」という大仲は、佐藤の走りについていけない成川の様子を見て、予定より2km早くスパートを敢行。佐藤についていく形で成川を引き離すことに成功した。
実はこの時点で、帝京大・鎗田大輝(4年)が総合順位で日大と中央学大を逆転し、帝京大が総合9位に浮上していた。
つまり18km地点は、成川と大仲のどちらが勝つかでシード権の行方が決まる、まさに命運を分ける局面だったのである。それを知ってか知らずか、大仲は勝負に出て、そして勝ち切った。
チームをまとめてきた中澤からは、「陸上競技を続けてきた中で、笑顔で終われることは率直にうれしいです。個人的にも主将として必ずシード権を残したいと考えていました。主将としての役目を果たせたことにホッとしています」と、自然と笑みがこぼれた。
だが、新監督はすでに次を見据える。
「うちの選手たちはすぐに浮かれてしまいますから、きちんと手綱を引き締めておかないと(笑)。でも、これでようやく次の『確実にシード権を獲る』というステップに進めます」と語る。次のステップに向けては、「身体的なレベルアップはもちろん、トレーニングに対する考え方を含めた頭の中の意識レベルを上げて行かないといけません」と、高速化が進む箱根駅伝でさらなる進化を求める。
過去12度の優勝を誇る日大にとって、シード権獲得はあくまで通過点。上には、まだ9校もいる。本当の意味での『古櫻復活』のためには、ここで立ち止まるわけにはいかない。
文/田坂友暁
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