2025.07.30
今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。
これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2015年に中国の北京で行われた第15回大会を振り返る。
イートンが自身の世界記録を更新し連覇
今大会では“キング・オブ・アスリート”が魅せた。走・跳・投の種目の合計点数で争う男子十種競技。その勝者は“キング”として称えられる。主役はアシュトン・イートン(米国)。2012年の全米選手権で自身がマークし世界記録、9039点を6点上回る9045点を叩き出した。世界陸上において、混成競技の世界新が誕生したのは史上初の偉業だった。
前回のモスクワ大会に続いて連覇を狙うイートンは、跳躍3種目こそ前世界記録時を下回ったが、スプリント種目が好調。400mでは自己記録を0.55秒も更新する45秒00をマークし、この記録は十種競技内における世界最高記録だった。投てき種目も順調に得点を重ね、最後の1500mを残した時点で世界記録を27点上回っていた。
世界記録を更新するには4分18秒25以内で走ることが条件。3年前に世界記録を出した時は4分14秒48で走っているが、この時を含めて4分20秒を切ったことは2度しかなく、世界記録更新はかなり際どいラインだった。
序盤から先頭集団でレースを進め、残り1周を3分14秒で通過し、ペースアップをしないと世界記録更新は難しい状況だった。それでもイートンは最後の力を振り絞り、渾身のスパート。組2着でフィニッシュし、そのタイムは4分17秒52。829点を獲得して自身の世界記録を塗り替えた。
男子スプリントでは100m、200mの世界記録保持者・ウサイン・ボルト(ジャマイカ)とジャスティン・ガトリン(米国)が大熱戦を繰り広げる。
前回のモスクワ大会で3冠に輝いたボルトだったが、シーズン序盤からケガの影響もあり不調で、しばらくは100mで10秒、200mでは20秒を切れず周囲からは“限界説”もささやかれていた。
ボルトの不振とは対照的に、ライバルであるジャスティ・ガトリン(米国)は絶好調。初戦のダイヤモンドリーグ(DL)ドーハで世界歴代5位の9秒74を叩き出した。その後もDL3大会でいずれも9秒7台をマークし優勝するなど、打倒・ボルトの1番手として北京に乗り込んだ。一方のボルトは大会1ヵ月前のDLロンドンで気温15度のなか9秒87を2本そろえ復調を示したが、ガトリン優位の状態に変わりはなかった。
予選はガトリンが9秒83をマークし、好調さをアピール。ボルトも9秒96で危なげなく予選を通過した。準決勝ではガトリンが9秒77で余裕の1着通過だったが、ボルトはスタート直後にバランスを崩し、必死の追い上げでなんとか1着だったものの、タイムは9秒96にとどまった。
迎えた決勝。ガトリンがスタートで先攻するも、中盤以降にボルトが追い上げて逆転勝ち。ボルトが9秒79(-0.5)、ガトリンとは0.01秒差の接戦だった。200mではボルトが2位のガトリンに0.19秒差をつける19秒55(-0.1)で4連覇を達成。4×100mリレーでも金メダルを獲得し、2大会連続で3冠に輝き、「ボルトはやはりボルト」を強烈に印象づけた。
女子ハンマー投では大会前に81m08の世界新記録を樹立したアニタ・ヴォダルチク(ポーランド)が当時のパフォーマンス世界歴代2位となる80m85で2大会連続3回目の優勝。国際大会では初の80mオーバーを記録した。
男子三段跳ではクリスチャン・テイラー(米国)が世界歴代2位の18m21(+0.2)の大ジャンプで2大会ぶり2回目の優勝を成し遂げた。ジョナサン・エドワーズ(英国)の世界記録にあと8cmに迫った。
男子400mはウェイド・ファン・ニーケルク(南アフリカ)が、当時の世界歴代4位となる43秒48で初優勝。翌年のリオ五輪では43秒03の世界新記録を樹立している。
男子長距離ではモハメド・ファラー(英国)が2大会連続で5000mと10000mの2冠。10000mではケニア勢との競り合いを27分01秒13で制すると、スローペースとなった5000mでも残り100mで強烈なスパートを炸裂させ、13分50秒38で3連覇を達成した。
男子3000m障害ではエゼキエル・ケンボイ(ケニア)が8分11秒28で4連覇。1位から4位までケニア勢が独占するレースとなったが、ラスト勝負で王者が別格の強さを見せつけ、余裕を持ってフィニッシュした。
この大会で見事な復活を遂げたのがアリソン・フェリックス(米国)。世界陸上ではこれまで8つの金メダルを獲得しているレジェンドだが、前回のモスクワ大会では200m決勝のレース中に、右ハムストリングズの筋断裂を起こして途中棄権となった。
復活を懸けた400m決勝ではスタート直後から果敢に飛ばし、4年ぶり自己新となる49秒26で優勝。自身の女子最多金メダル獲得数を9に伸ばした。
自衛隊体育学校コンビが50km競歩でダブル入賞
日本からは男子35名、女子16名の選手が出場。メダル1、入賞2という成績を残した。
男子50km競歩では、谷井孝行(自衛隊体育学校)が3時間42分55秒で銅メダルを獲得。チームメイトの荒井広宙も3時間43分44秒で4位に入り、ダブル入賞を成し遂げた。
レースはマテイ・トート(スロバキア)が序盤から独歩。谷井と荒井は2位集団でレースを進めた。41km過ぎに2位集団からジャレド・タレント(豪州)が抜け出し、谷井と荒井が3位を争う展開となる。
そのなかで終盤に谷井が抜け出し、3位フィニッシュ。五輪、世界陸上を通じて競歩種目で初の日本人メダリストとなった。
女子マラソンでは伊藤舞(大塚製薬)が2時間29分48秒で7位入賞。33km過ぎまで先頭集団につけ、アフリカ勢のスパートからは遅れたものの、粘りの走りで7位入賞。「8位以内で日本人トップ」という条件を満たし、翌年のリオ五輪代表内定も手にした。
入賞数こそ少なかったが、各種目で日本勢は健闘する。男子やり投では新井涼平(スズキ)が83m07で9位。8位の選手との差はわずか8cmだった。
男子200mは、日本史上最年少となる16歳で代表入りを果たした城西高2年のサニブラウン・アブデル・ハキームが出場。予選は同組だったジャスティン・ガトリン(米国)に次ぐ2着で通過。16歳での準決勝進出は同種目で史上最年少の快挙だった。準決勝は組5着で決勝進出はならなかったが、初のシニア代表で世界を相手に堂々と戦い抜いた。
女子5000mは鈴木亜由子(日本郵政グループ)が自己記録を更新する15分08秒29で9位。序盤は尾西美咲(積水化学)と交互に先頭を引っ張り、アフリカ勢がペースを上げた2000m以降は入賞争いを繰り広げる。最後はスサン・クルミンス(オランダ)との8位争いとなり、0.29秒差で入賞を逃すも、当時の日本歴代5位となる好記録をマークした。尾西は15分29秒63で14位だった。
青山聖佳(大阪成蹊大)、市川華菜(ミズノ)、千葉麻美(東邦銀行)、青木沙弥佳(東邦銀行)が出場した女子4×400mリレーは3分28秒91の日本記録を叩き出した。組7着で予選通過はならなかったが、日本初の3分30秒切りを成し遂げた。
イートンが自身の世界記録を更新し連覇
今大会では“キング・オブ・アスリート”が魅せた。走・跳・投の種目の合計点数で争う男子十種競技。その勝者は“キング”として称えられる。主役はアシュトン・イートン(米国)。2012年の全米選手権で自身がマークし世界記録、9039点を6点上回る9045点を叩き出した。世界陸上において、混成競技の世界新が誕生したのは史上初の偉業だった。前回のモスクワ大会に続いて連覇を狙うイートンは、跳躍3種目こそ前世界記録時を下回ったが、スプリント種目が好調。400mでは自己記録を0.55秒も更新する45秒00をマークし、この記録は十種競技内における世界最高記録だった。投てき種目も順調に得点を重ね、最後の1500mを残した時点で世界記録を27点上回っていた。世界記録を更新するには4分18秒25以内で走ることが条件。3年前に世界記録を出した時は4分14秒48で走っているが、この時を含めて4分20秒を切ったことは2度しかなく、世界記録更新はかなり際どいラインだった。序盤から先頭集団でレースを進め、残り1周を3分14秒で通過し、ペースアップをしないと世界記録更新は難しい状況だった。それでもイートンは最後の力を振り絞り、渾身のスパート。組2着でフィニッシュし、そのタイムは4分17秒52。829点を獲得して自身の世界記録を塗り替えた。男子スプリントでは100m、200mの世界記録保持者・ウサイン・ボルト(ジャマイカ)とジャスティン・ガトリン(米国)が大熱戦を繰り広げる。前回のモスクワ大会で3冠に輝いたボルトだったが、シーズン序盤からケガの影響もあり不調で、しばらくは100mで10秒、200mでは20秒を切れず周囲からは“限界説”もささやかれていた。ボルトの不振とは対照的に、ライバルであるジャスティ・ガトリン(米国)は絶好調。初戦のダイヤモンドリーグ(DL)ドーハで世界歴代5位の9秒74を叩き出した。その後もDL3大会でいずれも9秒7台をマークし優勝するなど、打倒・ボルトの1番手として北京に乗り込んだ。一方のボルトは大会1ヵ月前のDLロンドンで気温15度のなか9秒87を2本そろえ復調を示したが、ガトリン優位の状態に変わりはなかった。予選はガトリンが9秒83をマークし、好調さをアピール。ボルトも9秒96で危なげなく予選を通過した。準決勝ではガトリンが9秒77で余裕の1着通過だったが、ボルトはスタート直後にバランスを崩し、必死の追い上げでなんとか1着だったものの、タイムは9秒96にとどまった。迎えた決勝。ガトリンがスタートで先攻するも、中盤以降にボルトが追い上げて逆転勝ち。ボルトが9秒79(-0.5)、ガトリンとは0.01秒差の接戦だった。200mではボルトが2位のガトリンに0.19秒差をつける19秒55(-0.1)で4連覇を達成。4×100mリレーでも金メダルを獲得し、2大会連続で3冠に輝き、「ボルトはやはりボルト」を強烈に印象づけた。女子ハンマー投では大会前に81m08の世界新記録を樹立したアニタ・ヴォダルチク(ポーランド)が当時のパフォーマンス世界歴代2位となる80m85で2大会連続3回目の優勝。国際大会では初の80mオーバーを記録した。男子三段跳ではクリスチャン・テイラー(米国)が世界歴代2位の18m21(+0.2)の大ジャンプで2大会ぶり2回目の優勝を成し遂げた。ジョナサン・エドワーズ(英国)の世界記録にあと8cmに迫った。男子400mはウェイド・ファン・ニーケルク(南アフリカ)が、当時の世界歴代4位となる43秒48で初優勝。翌年のリオ五輪では43秒03の世界新記録を樹立している。男子長距離ではモハメド・ファラー(英国)が2大会連続で5000mと10000mの2冠。10000mではケニア勢との競り合いを27分01秒13で制すると、スローペースとなった5000mでも残り100mで強烈なスパートを炸裂させ、13分50秒38で3連覇を達成した。男子3000m障害ではエゼキエル・ケンボイ(ケニア)が8分11秒28で4連覇。1位から4位までケニア勢が独占するレースとなったが、ラスト勝負で王者が別格の強さを見せつけ、余裕を持ってフィニッシュした。この大会で見事な復活を遂げたのがアリソン・フェリックス(米国)。世界陸上ではこれまで8つの金メダルを獲得しているレジェンドだが、前回のモスクワ大会では200m決勝のレース中に、右ハムストリングズの筋断裂を起こして途中棄権となった。復活を懸けた400m決勝ではスタート直後から果敢に飛ばし、4年ぶり自己新となる49秒26で優勝。自身の女子最多金メダル獲得数を9に伸ばした。自衛隊体育学校コンビが50km競歩でダブル入賞
日本からは男子35名、女子16名の選手が出場。メダル1、入賞2という成績を残した。男子50km競歩では、谷井孝行(自衛隊体育学校)が3時間42分55秒で銅メダルを獲得。チームメイトの荒井広宙も3時間43分44秒で4位に入り、ダブル入賞を成し遂げた。 [caption id="attachment_178013" align="alignnone" width="800"]
男子50km競歩で銅メダルを獲得した谷井孝行(右)と4位に続いた荒井広宙[/caption]レースはマテイ・トート(スロバキア)が序盤から独歩。谷井と荒井は2位集団でレースを進めた。41km過ぎに2位集団からジャレド・タレント(豪州)が抜け出し、谷井と荒井が3位を争う展開となる。
そのなかで終盤に谷井が抜け出し、3位フィニッシュ。五輪、世界陸上を通じて競歩種目で初の日本人メダリストとなった。女子マラソンでは伊藤舞(大塚製薬)が2時間29分48秒で7位入賞。33km過ぎまで先頭集団につけ、アフリカ勢のスパートからは遅れたものの、粘りの走りで7位入賞。「8位以内で日本人トップ」という条件を満たし、翌年のリオ五輪代表内定も手にした。入賞数こそ少なかったが、各種目で日本勢は健闘する。男子やり投では新井涼平(スズキ)が83m07で9位。8位の選手との差はわずか8cmだった。男子200mは、日本史上最年少となる16歳で代表入りを果たした城西高2年のサニブラウン・アブデル・ハキームが出場。予選は同組だったジャスティン・ガトリン(米国)に次ぐ2着で通過。16歳での準決勝進出は同種目で史上最年少の快挙だった。準決勝は組5着で決勝進出はならなかったが、初のシニア代表で世界を相手に堂々と戦い抜いた。女子5000mは鈴木亜由子(日本郵政グループ)が自己記録を更新する15分08秒29で9位。序盤は尾西美咲(積水化学)と交互に先頭を引っ張り、アフリカ勢がペースを上げた2000m以降は入賞争いを繰り広げる。最後はスサン・クルミンス(オランダ)との8位争いとなり、0.29秒差で入賞を逃すも、当時の日本歴代5位となる好記録をマークした。尾西は15分29秒63で14位だった。青山聖佳(大阪成蹊大)、市川華菜(ミズノ)、千葉麻美(東邦銀行)、青木沙弥佳(東邦銀行)が出場した女子4×400mリレーは3分28秒91の日本記録を叩き出した。組7着で予選通過はならなかったが、日本初の3分30秒切りを成し遂げた。RECOMMENDED おすすめの記事
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