HOME 国内

2024.03.22

復活期す江島雅紀 大ケガをして気づいた「棒高跳は生きがい」パリ、そして東京へ
復活期す江島雅紀 大ケガをして気づいた「棒高跳は生きがい」パリ、そして東京へ

棒高跳の江島雅紀

富士通が3月22日、本社となる川崎工場で新加入選手および所属選手の合同取材会見を開いた。

同チームに所属する男子棒高跳東京五輪代表の江島雅紀が大ケガから復活を目指している。悪夢は2022年6月だった。世界選手権出場を確実なものとするために出場した記録会で、マット外に着地。右足舟状骨を粉砕骨折した。7月に手術したが快復が悪く、昨年3月に右脚付け根の骨を移植するため再手術。昨年9月の全日本実業団対抗選手権でようやく復帰した。

日常生活もままならず、引退もよぎった。「自分は何のために棒高跳をやっているのか」。何度も自問自答したが、ケガをしたからこそ答えが見えた。「棒高跳は自分の生きがい」なんだと。

広告の下にコンテンツが続きます

苦しい時期を過ごしているなかで、世界を舞台に活躍する仲間の存在が刺激となる。日大でともに過ごした1つ上の北口榛花(JAL)が世界一になり、同期の走幅跳・橋岡優輝は米国を拠点にした。十種競技の丸山優真(住友電工)も世界選手権の舞台に立った。

「この2年間、活躍を見てすごく苦しかったですが、勇気ももらえました。遠い存在じゃないし刺激になりました。でも、やっぱり悔しい」

そうした面々も、ケガをしたり、コーチが不在だったり。いろんなアクシデントを乗り越えているのも知っている。

「みんなつらい思いをしてきたし、僕も命があっただけ良かった。リハビリの先生や、会社の支えもあって成り立っています」

この冬季は久しぶりに痛みなくスプリントに励んだ。富士通との2週間に一度の合同練習では、佐藤拳太郎らと走り「ボコボコにされました」と笑う表情はうれしそうだった。

いずれは自身も米国を拠点にしたいという目標もある。だが、まずは目の前の試合1本1本を大切にしていく。1週間前には久しぶりに5mオーバーとなる5m20をクリア。「記録会に出ていきます。次はまず5m30」。日本歴代3位タイの5m71を跳んでいるボウルターにとっては低い高さだが、今はそれでいい。次々と目標をクリアしていった先に頂点に立っていた、高校生の頃と同じように。

「楽しさを忘れたらいけないと思っています。やっぱり楽しむのが一番。今年は勝つことの楽しさを思い出したい。パリ五輪も可能性はゼロじゃないのであきらめていませんが、来年の東京世界選手権を目指していきたい。東京五輪で来られなかった友達や家族に見てもらいたい」

江島がポールを持ち、大きな身体が華麗に宙を舞う。その姿に誰もが目を奪われてきた。もう一度、あの高みへ――。

文/向永拓史

富士通が3月22日、本社となる川崎工場で新加入選手および所属選手の合同取材会見を開いた。 同チームに所属する男子棒高跳東京五輪代表の江島雅紀が大ケガから復活を目指している。悪夢は2022年6月だった。世界選手権出場を確実なものとするために出場した記録会で、マット外に着地。右足舟状骨を粉砕骨折した。7月に手術したが快復が悪く、昨年3月に右脚付け根の骨を移植するため再手術。昨年9月の全日本実業団対抗選手権でようやく復帰した。 日常生活もままならず、引退もよぎった。「自分は何のために棒高跳をやっているのか」。何度も自問自答したが、ケガをしたからこそ答えが見えた。「棒高跳は自分の生きがい」なんだと。 苦しい時期を過ごしているなかで、世界を舞台に活躍する仲間の存在が刺激となる。日大でともに過ごした1つ上の北口榛花(JAL)が世界一になり、同期の走幅跳・橋岡優輝は米国を拠点にした。十種競技の丸山優真(住友電工)も世界選手権の舞台に立った。 「この2年間、活躍を見てすごく苦しかったですが、勇気ももらえました。遠い存在じゃないし刺激になりました。でも、やっぱり悔しい」 そうした面々も、ケガをしたり、コーチが不在だったり。いろんなアクシデントを乗り越えているのも知っている。 「みんなつらい思いをしてきたし、僕も命があっただけ良かった。リハビリの先生や、会社の支えもあって成り立っています」 この冬季は久しぶりに痛みなくスプリントに励んだ。富士通との2週間に一度の合同練習では、佐藤拳太郎らと走り「ボコボコにされました」と笑う表情はうれしそうだった。 いずれは自身も米国を拠点にしたいという目標もある。だが、まずは目の前の試合1本1本を大切にしていく。1週間前には久しぶりに5mオーバーとなる5m20をクリア。「記録会に出ていきます。次はまず5m30」。日本歴代3位タイの5m71を跳んでいるボウルターにとっては低い高さだが、今はそれでいい。次々と目標をクリアしていった先に頂点に立っていた、高校生の頃と同じように。 「楽しさを忘れたらいけないと思っています。やっぱり楽しむのが一番。今年は勝つことの楽しさを思い出したい。パリ五輪も可能性はゼロじゃないのであきらめていませんが、来年の東京世界選手権を目指していきたい。東京五輪で来られなかった友達や家族に見てもらいたい」 江島がポールを持ち、大きな身体が華麗に宙を舞う。その姿に誰もが目を奪われてきた。もう一度、あの高みへ――。 文/向永拓史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.08

女子400mのナセルがアディダスと契約 パリ五輪銀、東京世界陸上銅メダリスト

女子400mのアジア記録保持者、S.E.ナセル(バーレーン)がアディダスとのプロ契約を結んだことを発表した。自身のSNSで契約締結に関して「新たな挑戦と歴史的偉業に向け、アディダスの献身的な取り組みとパートナーシップは極 […]

NEWS 全米クロカン選手権はウォルフとケラティ・フレスギが制す 世界陸上入賞・ヤングら上位選手が26年1月の世界クロカン代表に内定

2025.12.08

全米クロカン選手権はウォルフとケラティ・フレスギが制す 世界陸上入賞・ヤングら上位選手が26年1月の世界クロカン代表に内定

12月6日、米国・オレゴン州ポートランドで全米クロスカントリー選手権(10km)が行われ、男子はP.ウォルフが29分17秒で、女子はW.ケラティ・フレスギが33分46秒で優勝した。 女子を制したケラティ・フレスギはパリ五 […]

NEWS 3月のThe TENから7月にかけて17大会を実施! 26年実施の米国陸連ツアー日程発表

2025.12.08

3月のThe TENから7月にかけて17大会を実施! 26年実施の米国陸連ツアー日程発表

米国陸連(USATF)は12月5日、来年実施するUSATFツアー17大会の日程を発表した。 米国では連盟が統括するツアーの立ち上げを10月に発表しており、年次総会で対象大会と日程が決定された。3月28日のThe TENを […]

NEWS 400mH・ベンジャミンと短距離のジェファーソン・ウッデンが年間最優秀賞! 米国陸連が年間表彰者発表

2025.12.08

400mH・ベンジャミンと短距離のジェファーソン・ウッデンが年間最優秀賞! 米国陸連が年間表彰者発表

米国陸連(USATF)は12月5日、2025年の年間表彰者を発表した。 レジェンドの名を冠した年間最優秀賞は、男子(ジェシー・オーエンス賞)が400mハードルのR.ベンジャミン、女子(ジャッキー・ジョイナー=カーシー賞) […]

NEWS 福岡国際と防府読売、2つのマラソンは2人の「西山」が2時間7分台でロス五輪MGC切符つかむ

2025.12.08

福岡国際と防府読売、2つのマラソンは2人の「西山」が2時間7分台でロス五輪MGC切符つかむ

MGCシリーズ2025-26男子G1の福岡国際マラソンと防府読売マラソンの2大会が12月7日に行われた。 福岡国際はバイエリン・イエグゾー(エチオピア)が2時間7分51秒で優勝。2位には西山雄介(トヨタ自動車)が2時間7 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top