HOME 学生長距離

2023.12.28

箱根駅伝Stories/中大・吉居大和「優勝を狙えるチームになってきた」28年ぶり総合V狙う名門の絶対エース
箱根駅伝Stories/中大・吉居大和「優勝を狙えるチームになってきた」28年ぶり総合V狙う名門の絶対エース

中大のエースとして最後の箱根駅伝に挑む(チーム提供)

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

2020年。当時1年生だった彼らが4年生で迎える100回大会は、どんな大会となるのだろうか。三浦龍司(順大)、吉居大和(中大)、石原翔太郎(東海大)。“最強世代”が迎える最後の箱根路の物語――。

広告の下にコンテンツが続きます

駅伝主将として過ごした1年

吉居大和(中大4)の走りには何度も驚かされてきた。特に箱根駅伝の快走は衝撃的だった。1区に登場した前々回は6km過ぎに抜け出すと、10kmを27分台で通過。20kmを56分30秒台という驚異的なタイムで駆け抜ける。終盤もペースを落とすことなく突っ走り、1時間0分40秒の区間記録を樹立。箱根路では最古となっていた東海大・佐藤悠基(現・SGホールディングス)が保持していた区間記録を26秒も塗り替えて、後続に39秒以上の大差をつけたのだ。

そして前回は花の2区で信じられない走りを見せた。エース区間を言い渡されたのは3週間前で、「最初はマジか?」と思ったという。

「当初は3区を走りたい気持ちがありましたし、2区は上りが強い中野(翔太)のほうが向いていると思っていました。でも3週間前は中野より自分の状態が良かったので、すぐに気持ちを切り替えたんです。本当に苦しくて、最後まで持たないかと思いましたが、一緒に頑張ってきた仲間が待っていてくれたので、最後は思い切りいきました」

トップと18秒差の4位でタスキを受けた吉居は3.2kmで明大をかわしてトップに立つと、10kmを28分00秒で通過した。その後はペースが鈍り、12.2kmで駒大・田澤廉(現・トヨタ自動車)に並ばれて、引き離される。しかし、青学大・近藤幸太郎(現・SGホールディングス)の背後につくと、息を吹き返した。田澤、近藤とのデッドヒートを強烈スパートで制圧。中大としては20年ぶりに戸塚中継所をトップで通過して、吉居は区間歴代8位の1時間6分22秒で区間賞に輝いた。

広告の下にコンテンツが続きます
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。 2020年。当時1年生だった彼らが4年生で迎える100回大会は、どんな大会となるのだろうか。三浦龍司(順大)、吉居大和(中大)、石原翔太郎(東海大)。“最強世代”が迎える最後の箱根路の物語――。

駅伝主将として過ごした1年

吉居大和(中大4)の走りには何度も驚かされてきた。特に箱根駅伝の快走は衝撃的だった。1区に登場した前々回は6km過ぎに抜け出すと、10kmを27分台で通過。20kmを56分30秒台という驚異的なタイムで駆け抜ける。終盤もペースを落とすことなく突っ走り、1時間0分40秒の区間記録を樹立。箱根路では最古となっていた東海大・佐藤悠基(現・SGホールディングス)が保持していた区間記録を26秒も塗り替えて、後続に39秒以上の大差をつけたのだ。 そして前回は花の2区で信じられない走りを見せた。エース区間を言い渡されたのは3週間前で、「最初はマジか?」と思ったという。 「当初は3区を走りたい気持ちがありましたし、2区は上りが強い中野(翔太)のほうが向いていると思っていました。でも3週間前は中野より自分の状態が良かったので、すぐに気持ちを切り替えたんです。本当に苦しくて、最後まで持たないかと思いましたが、一緒に頑張ってきた仲間が待っていてくれたので、最後は思い切りいきました」 トップと18秒差の4位でタスキを受けた吉居は3.2kmで明大をかわしてトップに立つと、10kmを28分00秒で通過した。その後はペースが鈍り、12.2kmで駒大・田澤廉(現・トヨタ自動車)に並ばれて、引き離される。しかし、青学大・近藤幸太郎(現・SGホールディングス)の背後につくと、息を吹き返した。田澤、近藤とのデッドヒートを強烈スパートで制圧。中大としては20年ぶりに戸塚中継所をトップで通過して、吉居は区間歴代8位の1時間6分22秒で区間賞に輝いた。

「やっと優勝を狙えるチームになってきた」

実業団選手だった両親を持つ吉居は中学時代から全国大会で活躍。宮城・仙台育英高時代は故障に苦しみながらも、3年時にはインターハイ5000mで日本人トップに輝くと、全国高校駅伝では日本一も経験した。 中大に進学すると、1年時は5000mでU20日本記録を2度も更新。冬季にはバウワーマントラッククラブ(BTC)の練習に参加するなど、世界を本気で目指してきた。その一方で大学1年時に藤原正和駅伝監督から「第100回大会の箱根駅伝で優勝を目指そう!」という言葉を聞き、吉居も"同じ夢"を追い求めるようになった。 「箱根駅伝を目指すチームの一員になり、年々、第100回大会で優勝したい気持ちが強くなってきたんです」 目標にしていた5000mでの世界大会出場はかなわなかったが、今季は10月1日の世界ロードランニング選手権5kmに出場。箱根駅伝だけでなく、スピードを磨き、世界への挑戦も続けてきた。 8月下旬にコロナ感染した影響もあり、出雲駅伝は欠場。全日本大学駅伝も3区で区間11位と振るわなかった。それでも吉居は自身の成長を感じている。 「今季は凄く良い記録を出すことはできなかったんですけど、シーズンを通して5000mは13分30秒前後で安定して走れました。練習も2・3時と比べてできるようになっています」 [caption id="attachment_124862" align="alignnone" width="800"] チーム力が上がり「優勝を目指せる」と実感(チーム提供)[/caption] 吉居は11月25日の八王子ロングディスタンス10000mに出場した。駒大のエース3人が27分20~30秒台で駆け抜けたレースで28分01秒02。わずかだが自己ベスト(28分03秒90)を更新している。 「僕のターゲットは27分50秒~28分切りだったんです。ペースメーカーが予定より速くなり、中盤から自分で引っ張るような展開になりました。最後は少しペースを落としてしまいましたが、悪くはなかったと思っています。駒大勢ですか? 自分たちのやるべきことをやるだけなので、あまり意識していません。僕らの一番の目標は1月2日・3日の箱根駅伝ですから」 10000mのレースとしては駒大勢に"完敗"したかたちだが、箱根駅伝に向けての調整は成功したと感じているようだ。最後の箱根駅伝で吉居は何区に登場するのだろうか。 「前回経験していますし、頑張りポイントもわかったので、自分としては2区がいいんじゃないかなと思います」。目標タイムについては「自分は前半突っ込むタイプなので、1時間5分30秒を切るような勢いでいきたいです」。 箱根駅伝の予選会を2度経験するも、吉居が入学して中大は急上昇を始めた。最後の学生駅伝で大学4年間のすべてを懸ける。 「やっと箱根駅伝で優勝を狙えるチーム状況になってきました。駒大は強いですけど、自分や中野が駒大の芽吹、篠原、佐藤圭汰にしっかり勝ちたい。個人としては区間賞・区間新記録を目標にして、チームの優勝に貢献したいと思っています」 赤いタスキを渡した先に、パリ五輪と東京選手権を見つめている吉居大和。中大の絶対エースが伝統の「C」に情熱の炎を灯す。 文/酒井政人

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.05.16

サニブラウン パリ五輪で「メダルを取りたい」セイコーゴールデンGPで内定狙う

男子100mで世界選手権2大会連続入賞を果たしているサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が都内で会見を開いた。 この日はサポートを受ける東レとプーマがサニブラウンの意見を取り入れながら共同開発したウエアを発表。会見の […]

NEWS 男子走高跳・王振が欠場 静岡国際優勝の傅兆玄が追加出場/セイコーGGP

2024.05.16

男子走高跳・王振が欠場 静岡国際優勝の傅兆玄が追加出場/セイコーGGP

日本陸連は5月16日、セイコーゴールデングランプリ(5月19日、国立競技場)の男子走高跳に出場予定だった王振(中国)が欠場することを発表した。代わりに傅兆玄(台湾)が出場する。 傅は21歳の若手ジャンパー。昨年のワールド […]

NEWS 【ダイソー女子駅伝部】 新メンバー加えて6年目のシーズン始動 クイーンズ駅伝の常連入りに向けて「今年が一番大事になる」(岩本監督)

2024.05.16

【ダイソー女子駅伝部】 新メンバー加えて6年目のシーズン始動 クイーンズ駅伝の常連入りに向けて「今年が一番大事になる」(岩本監督)

悔しさバネに再スタート、年明けから主力選手が揃って好調 創部3年目の2021年、プリンセス駅伝を15位で通過し、当初の目標より2年早くクイーンズ駅伝に初出場したダイソー女子駅伝部は、翌年のプリンセス駅伝では5位に躍進する […]

NEWS 布勢スプリント男子100mに桐生祥秀、坂井隆一郎、多田修平、栁田大輝がエントリー!110mHは村竹、高山ら 女子100mHに寺田、田中、青木、福部

2024.05.16

布勢スプリント男子100mに桐生祥秀、坂井隆一郎、多田修平、栁田大輝がエントリー!110mHは村竹、高山ら 女子100mHに寺田、田中、青木、福部

日本陸連は5月16日、6月2日に開催される布勢スプリント2024(鳥取・布勢総合)のエントリー選手を発表した。 男子100mには9秒台のベストを持つ桐生祥秀(日本生命)をはじめ、ブダペスト世界選手権代表の坂井隆一郎(大阪 […]

NEWS パリ五輪挑戦断念を決断した山縣亮太 再起へ「自分に与えられた可能性を追求することをやりきりたい」

2024.05.16

パリ五輪挑戦断念を決断した山縣亮太 再起へ「自分に与えられた可能性を追求することをやりきりたい」

男子100m日本記録(9秒95)保持者の山縣亮太(セイコー)が5月16日、オンライン上で会見を開き、6月下旬の日本選手権を含めて現状で予定していたレースをすべてキャンセルすることを明らかにした。五輪参加標準記録(10秒0 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年6月号 (5月14日発売)

2024年6月号 (5月14日発売)

別冊付録学生駅伝ガイド

page top