2023.12.10
◇第107回日本選手権10000m(12月10日 東京・国立競技場)
第107回日本選手権10000mが行われ、男子は塩尻和也(富士通)が27分09秒80の日本新記録で初優勝を飾った。6月の5000mを含む2冠に輝いた。
同じ五輪イヤー前年の12月開催だった2020年の日本選手権。相澤晃(旭化成)が27分18秒75の日本新、伊藤達彦(Honda)が27分25秒73、田村和希(住友電工)が27分28秒92と、上位3人が従来の日本記録(27分29秒69)を塗り替え、相澤と伊藤が東京五輪標準を突破。相澤が代表に即時内定するという歴史的レースが繰り広げられた。
そしてこの夜、その歴史は塗り替えられた。その主役となったのが塩尻。9000mから圧巻のロングスパートを放ち、日本人で初めて27分ひとケタに乗せる激走に、「日本記録での優勝を目標を置いていた。達成できてうれしい」と胸を張った。
2位の太田が27分12秒53、3位の相澤も27分13秒04と従来の日本記録を上回り、田澤も自己ベストを更新する27分22秒31。日本歴代1~4位が一気に誕生する史上最高水準のレースとなった。
「中盤まで先頭について、勝負どころの8000m過ぎがポイントだと思っていた」という想定通り、電子ペーサーの最速ペース「27分15秒00」を視野に入れた先頭集団の流れに身を置く。
5000mを13分40秒で通過した段階で、ペースメーカー役のシトニック・キプロノ(黒崎播磨)に続く先頭集団は8人。塩尻はその中央付近に陣取った。そこから1周ごとに人数が削られ、7000mではトヨタ自動車の太田智樹と田澤廉、小林歩(NTT西日本)、塩尻、相澤の5人となった。
いよいよ、塩尻が「勝負どころ」と見た8000mを過ぎる。その1周前に小林が脱落し、8400mで田澤が苦しくなった。そして9000m、満を持して塩尻が前に出る。
意識は「日本記録ペースだったので、無理に切り替えるよりは、落とさないようにすること」だったが、相澤、太田を一気に置き去りにした。
5月のブダペスト世界選手権選考レースだったゴールデンゲームズinのべおか、6月の日本選手権5000mなど、今季に入って塩尻が見せてきた終盤の強さを、ここでも見せつけた。
パリ五輪の参加標準記録27分00秒00まであと10秒弱。「今回オリンピックの標準を突破すれば内定だったので、そこは達成できず力不足」と言いつつも、日本人初の26分台が十分に視野に入ってきた。「5000mに続いて勝つことができ、自信をもって競技に取り組んでいくことができると思います」と胸を張る。
順大2年だった2016年のリオ五輪には3000m障害で出場したが、大会直前の追加枠でのもの。東京五輪はケガなどで思うように走れない時期で選考にからむことすらできなかった。
27歳を迎え、充実期。塩尻は2度目の五輪に向けて突き進む。
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