【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!!
On史上最速シューズ「Cloudboom(クラウドブーム)」
洗練されたデザインに定評のあるスイス発祥のパフォーマンスブランド「On(オン)」が、満を持してこの7月に発売したレーシングシューズ。それが「Cloudboom(クラウドブーム)」(税込み21,780円)だ。「On史上最速」を標榜するこの靴はいったいどんな性能なのだろうか。
Onの技術を集約した一足
速く走れる靴かどうかは、足を入れた瞬間にほぼわかる――。Onがこの7月に発売したレーシングモデル「Cloudboom(クラウドブーム)」はまさにそういった「速さ」を直感的に感じさせるシューズだ。これまで自社製品のターゲット層を明示してこなかったOnが「On史上最速のレーシングシューズ」と銘打ってきたことからも、この一足に懸ける熱量が感じ取れる。

On史上最速のレーシングシューズであるCloudboom(クラウドブーム)。On独自のソールテクノロジーである「CloudTec(クラウドテック)」を2層構造としている
クラウドブームの特徴は、Onの世界特許技術である「CloudTec(クラウドテック)」をミッドソールに搭載しながらも、レーシングシューズにふさわしい反発性と軽量性を備えていることだろう。CloudTecとはホースを半分にカットしたような空洞のあるミッドソール形状で、Onの代名詞とも言える存在だ。
ミッドソールには「Speedboard(スピードボード)」と呼ばれるプレートが内蔵され、それを挟むようにCloudTecが2層になって1つのソールを構成する。この「Twin CloudTec(ツインクラウドテック)」と名づけられた2層式のCloudTecはクラウドブームが初採用で、Speedboardにカーボンファイバーを配合したのも初めての試みだ。さらに、ソールの素材には衝撃吸収素材として定評のあるEVAではなく、「Helion(ヘリオン)」という自社開発のものを使用。Onのテクノロジーを惜しみなく投入している。

アウトソールのパターンも従来のモデルからは一新。高いグリップ力で快適なでキック動作を実現する
重さは27.0cmで約225gだが、実際に履いてみると200g未満のシューズに匹敵するような軽快感がある。ちなみに、サイズ感としては普段25.0~25.5cmを履いている筆者は25.0cmがジャスト。「狭すぎる」「長すぎる」といったクセもないので選びやすいだろう。
また、脚をスムーズに回転させるためにつま先と踵が反り上がったロッカー構造が採用されているのも特徴だ。歩いてみると「転がる」ような感覚で、角度のつき方には無理がない。全体にOnの独自性を残しながらも、速く走るシューズに必要な要素を徹底的に研究し、集約させた印象を受ける。
フラットな接地で真価を発揮
Speedboardが蹴り出しをアシスト
レーシングシューズではあるものの、まずはジョギングから履き心地を確認した。最初に驚いたのは地面を蹴った脚が靴の反発で勝手に跳ね上がるような感覚があることだ。極端に言えばまるで自分がケニア人ランナーになったかのように脚がポンポン跳ね上がり、なおかつスムーズに回転する。今までのシューズにはなかった感覚だった。
これはOnによればカーボンを15%配合したSpeedboardが接地の際に曲がり、それが元に戻ることで反発として作用するのだという。一方、クッション性は全体的に硬めではあるものの、踵寄りやフラットに荷重して接地するとOnらしくソフトな感触も味わえる。
では、クラウドブームをトラックで使ったらどうなるのか。筆者の現時点での5000mレースペースに近い1000m3分40~45秒で2000mを走ってみたところ、やや意外な感触を得た。出力を上げて接地時の荷重がフォアフット寄りになってくると、Twin CloudTecのクッション性をあまり感じなかったのだ。
クラウドブームのソールは母指球より先は硬く、蹴り出しの感覚は非常に鋭い。このため、ロッカー構造に合わせてフォアフットで走っていると薄底レーシングシューズのような感覚になる。ところが、疲れてきて荷重がフラットになってくると、いよいよTwin CloudTecが存在感を発揮する。Speedboardとの連動によって、疲れてきても反発力が足運びをサポートしてくれるため、ペースを維持しやすいのだ。

ソールはつま先と踵が反り上がったロッカー構造を採用。母指球から指先にかけてはソールが硬くなっており、薄底レーシングシューズのような強い蹴り出しが可能となっている
また、短い距離のダッシュでは前足部の硬さもあってスピードの切り替えがしやすいことにも気づいた。200mの快調走を入れてみると、普段は34~35秒かかるところがいとも簡単に33秒台が出た。つまり、荷重がフォアフット寄りかフラットになるかで、シューズがそれぞれに対応した機能を持っているのだ。
そして、フラットに接地すると脚が跳ね上がるように感じるのは、イメージされがちな「加速」ではなく「温存」なのかもしれないと思った。楽に脚を回すことでエネルギーの消耗を抑え、ここぞという時にはフォアフットでスピードの切り換えもしやすい。この「攻め」と「温存」という2つの走り方を使い分けることで、トラックからマラソンまで幅広い距離に対応できるように感じる。もっとも、ハーフマラソン以上の距離であればフォアフットで走り続けられる人はごく一部だと思われるので、普通に走るだけでもシューズの恩恵は実感できるだろう。
基本的には上級者向けのシューズではあるものの、フラットや踵寄りの荷重で接地すればクッション性も感じられるため、マラソン3時間台のランナーでも使いこなせそうだ。まさにOnの集大成と言えるシューズだろう。
文/山本慎一郎
<関連記事>
本格レーシングモデルが続々登場〝熱意〟で広まるランニングブランド「On(オン)」/PR
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! 「On」のCloud(クラウド)
パワーアップして戻ってきた 「ママさんハードラー」 寺田明日香(パソナグループ)
<関連リンク>
Cloudboom(オン・ジャパン公式サイト)
On Cloudboom (クラウドブーム) について。(オン・ジャパンの駒田博紀代表のブログ)
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洗練されたデザインに定評のあるスイス発祥のパフォーマンスブランド「On(オン)」が、満を持してこの7月に発売したレーシングシューズ。それが「Cloudboom(クラウドブーム)」(税込み21,780円)だ。「On史上最速」を標榜するこの靴はいったいどんな性能なのだろうか。Onの技術を集約した一足
速く走れる靴かどうかは、足を入れた瞬間にほぼわかる――。Onがこの7月に発売したレーシングモデル「Cloudboom(クラウドブーム)」はまさにそういった「速さ」を直感的に感じさせるシューズだ。これまで自社製品のターゲット層を明示してこなかったOnが「On史上最速のレーシングシューズ」と銘打ってきたことからも、この一足に懸ける熱量が感じ取れる。
On史上最速のレーシングシューズであるCloudboom(クラウドブーム)。On独自のソールテクノロジーである「CloudTec(クラウドテック)」を2層構造としている
クラウドブームの特徴は、Onの世界特許技術である「CloudTec(クラウドテック)」をミッドソールに搭載しながらも、レーシングシューズにふさわしい反発性と軽量性を備えていることだろう。CloudTecとはホースを半分にカットしたような空洞のあるミッドソール形状で、Onの代名詞とも言える存在だ。
ミッドソールには「Speedboard(スピードボード)」と呼ばれるプレートが内蔵され、それを挟むようにCloudTecが2層になって1つのソールを構成する。この「Twin CloudTec(ツインクラウドテック)」と名づけられた2層式のCloudTecはクラウドブームが初採用で、Speedboardにカーボンファイバーを配合したのも初めての試みだ。さらに、ソールの素材には衝撃吸収素材として定評のあるEVAではなく、「Helion(ヘリオン)」という自社開発のものを使用。Onのテクノロジーを惜しみなく投入している。
アウトソールのパターンも従来のモデルからは一新。高いグリップ力で快適なでキック動作を実現する
重さは27.0cmで約225gだが、実際に履いてみると200g未満のシューズに匹敵するような軽快感がある。ちなみに、サイズ感としては普段25.0~25.5cmを履いている筆者は25.0cmがジャスト。「狭すぎる」「長すぎる」といったクセもないので選びやすいだろう。
また、脚をスムーズに回転させるためにつま先と踵が反り上がったロッカー構造が採用されているのも特徴だ。歩いてみると「転がる」ような感覚で、角度のつき方には無理がない。全体にOnの独自性を残しながらも、速く走るシューズに必要な要素を徹底的に研究し、集約させた印象を受ける。
フラットな接地で真価を発揮 Speedboardが蹴り出しをアシスト
レーシングシューズではあるものの、まずはジョギングから履き心地を確認した。最初に驚いたのは地面を蹴った脚が靴の反発で勝手に跳ね上がるような感覚があることだ。極端に言えばまるで自分がケニア人ランナーになったかのように脚がポンポン跳ね上がり、なおかつスムーズに回転する。今までのシューズにはなかった感覚だった。 これはOnによればカーボンを15%配合したSpeedboardが接地の際に曲がり、それが元に戻ることで反発として作用するのだという。一方、クッション性は全体的に硬めではあるものの、踵寄りやフラットに荷重して接地するとOnらしくソフトな感触も味わえる。 では、クラウドブームをトラックで使ったらどうなるのか。筆者の現時点での5000mレースペースに近い1000m3分40~45秒で2000mを走ってみたところ、やや意外な感触を得た。出力を上げて接地時の荷重がフォアフット寄りになってくると、Twin CloudTecのクッション性をあまり感じなかったのだ。 クラウドブームのソールは母指球より先は硬く、蹴り出しの感覚は非常に鋭い。このため、ロッカー構造に合わせてフォアフットで走っていると薄底レーシングシューズのような感覚になる。ところが、疲れてきて荷重がフラットになってくると、いよいよTwin CloudTecが存在感を発揮する。Speedboardとの連動によって、疲れてきても反発力が足運びをサポートしてくれるため、ペースを維持しやすいのだ。
ソールはつま先と踵が反り上がったロッカー構造を採用。母指球から指先にかけてはソールが硬くなっており、薄底レーシングシューズのような強い蹴り出しが可能となっている
また、短い距離のダッシュでは前足部の硬さもあってスピードの切り替えがしやすいことにも気づいた。200mの快調走を入れてみると、普段は34~35秒かかるところがいとも簡単に33秒台が出た。つまり、荷重がフォアフット寄りかフラットになるかで、シューズがそれぞれに対応した機能を持っているのだ。
そして、フラットに接地すると脚が跳ね上がるように感じるのは、イメージされがちな「加速」ではなく「温存」なのかもしれないと思った。楽に脚を回すことでエネルギーの消耗を抑え、ここぞという時にはフォアフットでスピードの切り換えもしやすい。この「攻め」と「温存」という2つの走り方を使い分けることで、トラックからマラソンまで幅広い距離に対応できるように感じる。もっとも、ハーフマラソン以上の距離であればフォアフットで走り続けられる人はごく一部だと思われるので、普通に走るだけでもシューズの恩恵は実感できるだろう。
基本的には上級者向けのシューズではあるものの、フラットや踵寄りの荷重で接地すればクッション性も感じられるため、マラソン3時間台のランナーでも使いこなせそうだ。まさにOnの集大成と言えるシューズだろう。
文/山本慎一郎
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