2023.01.28
2023年、最後の箱根駅伝を終えた大学4年生ランナーたち。納得のいく走りができた選手や悔いを残した選手、なかにはアクシデントでスタートラインにすら立てなかったエース級もいる。お届けするのは、そんな最上級生たちの物語――。
直前の疲労骨折判明で無念の欠場
1月2日、スタート前の午前7時。往路の走者変更リストが発表された際、出走が予定されていた3区に専大・髙瀨桂(4年)の名前はなく、代わりに同級生の成島航己の名が記されていた。
「本戦の1週間前、左大腿骨の疲労骨折が判明してしまいました。まだ初期段階だったので、見ていただいたドクターからも走れなくはない、と言われました。ですから、出走を視野に入れて(長谷川淳)監督と相談しながら調整を続けてきました」
ギリギリの12月31日まで試行錯誤してきた。そのころにはジョグで痛みを感じるようになっており、「そういう状態で走ってもチームには迷惑をかけるだけ。そこはきっぱりと断念して、チームのサポートに回ることにしました」と、言葉を選ぶように、ゆっくりと、はっきりと髙瀨は話した。
誰よりも走りたかった箱根だったが、そのチャンスがまさにその手からするりとこぼれ落ちてしまった。苦笑いを浮かべながら「悔しいですね、はい」と言葉を続ける。
他校のエースたちに比べて、自分に足りないところはもう知っていた。ペース維持能力に持久力。スピードはスタミナでカバーする。何よりも、中盤で耐えられるだけの力を身につけること。
そうすれば、必ず「僕は箱根を走ったんだ」と胸を張って言えるようになれる。そう信じて、箱根予選会を終えてから黙々とトレーニングに励んできた。誰よりも真面目に、寡黙に、ひたむきに。
そんな髙瀨が、最後の箱根路を走れなくなるとは、誰も予想できなかった。
次のページ 2年時に1区、3年時に2区で出走
直前の疲労骨折判明で無念の欠場
1月2日、スタート前の午前7時。往路の走者変更リストが発表された際、出走が予定されていた3区に専大・髙瀨桂(4年)の名前はなく、代わりに同級生の成島航己の名が記されていた。 「本戦の1週間前、左大腿骨の疲労骨折が判明してしまいました。まだ初期段階だったので、見ていただいたドクターからも走れなくはない、と言われました。ですから、出走を視野に入れて(長谷川淳)監督と相談しながら調整を続けてきました」 ギリギリの12月31日まで試行錯誤してきた。そのころにはジョグで痛みを感じるようになっており、「そういう状態で走ってもチームには迷惑をかけるだけ。そこはきっぱりと断念して、チームのサポートに回ることにしました」と、言葉を選ぶように、ゆっくりと、はっきりと髙瀨は話した。 誰よりも走りたかった箱根だったが、そのチャンスがまさにその手からするりとこぼれ落ちてしまった。苦笑いを浮かべながら「悔しいですね、はい」と言葉を続ける。 他校のエースたちに比べて、自分に足りないところはもう知っていた。ペース維持能力に持久力。スピードはスタミナでカバーする。何よりも、中盤で耐えられるだけの力を身につけること。 そうすれば、必ず「僕は箱根を走ったんだ」と胸を張って言えるようになれる。そう信じて、箱根予選会を終えてから黙々とトレーニングに励んできた。誰よりも真面目に、寡黙に、ひたむきに。 そんな髙瀨が、最後の箱根路を走れなくなるとは、誰も予想できなかった。 次のページ 2年時に1区、3年時に2区で出走2年時に1区、3年時に2区で出走
過去2回走った箱根は、悔しさを髙瀨に植えつける結果となっていた。2年時は1区で完全に力負けを味わい区間19位。リベンジを果たすと誓い、月間走行距離を700kmに伸ばして臨んだ3年時の箱根は「気持ちで負けてしまった」と2区で他校のエースに気後れしてしまって区間20位。 だからこそ、準備を怠らず、最後の箱根時で結果を残すべく研鑽を積んできたはずだった。夏は故障で苦しんだが、予選会後の全日本大学駅伝も日本学連選抜の一員として走り、2区10位の好走を見せた。あとは、4年間の思いをぶつけるだけだったのに。 「振り返ると……そうですね、1年目は予選会のメンバーに入っていながら直前でケガして走れない。そんなスタートだった大学生活ですが、2年目からは自分がやらなければ、チームを引っ張らなければならない、という自覚を持ってずっとやってきました。最後は残念な結果になってしまったんですけど……。でも、一つひとつの細かい行動とか普段の生活、大会の結果に対しても自分で責任を持つ、ということができるようになりました。本当に、人間として成長させてくれた4年間でした」 髙瀨は、スッキリした笑顔で大手町を後にした。最後に「次のステージでも頑張りますね」と、新たな決意を口にして。
髙瀨 桂(たかせ・けい:専大)/2001年3月10日生まれ。福岡県太宰府市出身。佐賀・鳥栖工高。自己ベストは5000m14分17秒84、10000m29分06秒71、ハーフ1時間2分49秒
文/田坂友暁 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.16
橋岡優輝が家族での初教室「楽しみながら陸上に触れて」
-
2025.11.14
-
2025.11.13
-
2025.11.15
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.02
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.19
全中駅伝に出場する女子48チームが出そろう 3連覇狙う京山をはじめ、大沢野、松橋などが全国切符 櫛形は20回目
9月から開催されてきた第33回全国中学校駅伝(12月14日)の都道府県予選が11月16日をもって終了し、47都道府県の代表に開催地枠で出場するチームを加えた全48チームが出そろった。 女子は前回の全国大会で2連覇を飾った […]
2025.11.19
全中駅伝男子・出場チームが決定! 17チームが初出場 塩山は第1回大会以来32年ぶり 京山、三島の全国V経験校も
9月から開催されてきた第33回全国中学校駅伝(12月14日)の都道府県予選が11月16日をもって終了し、47都道府県の代表に開催地枠で出場するチームを加えた全48チームが出そろった。 男子は2年前に全国制覇を達成している […]
2025.11.19
マラソン日本記録保持者・鈴木健吾が神奈川大のアンバサダー就任 「刺激や勇気を届けられる存在でありたい」
神奈川大は11月19日、男子マラソン日本記録保持者でOBの鈴木健吾が陸上部のアンバサダーに就任したと発表した。 鈴木は箱根駅伝では3年連続で2区を担い、3年時に区間賞を獲得。4年時には東京マラソンで2時間10分21秒で走 […]
2025.11.19
岡山・京山が今年も男女ともに全国出場! 全中1500m優勝・是枝愛香を擁する内部は26年ぶり/中学駅伝
12月14日に行われる第33回全国中学校駅伝の出場を懸けた県大会が、11月14日から16日にかけて、全国10県で行われた。 14日の岡山県大会では、2年前に全国男女優勝、女子は昨年も連覇を飾った京山が圧倒的な継走を披露。 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025