◇日本選手権10000m(5月7日/国立競技場)
男子10000mで昨年12月の日体大競技会で日本歴代2位の27分23秒44をマークし、ただ1人オレゴン世界選手権の参加標準記録(27分28秒00)を有効期限内に切っていたのが、大学生の田澤廉(駒大)だった。
レース前半は、伊藤達彦(Honda)、相澤晃(旭化成)に続いて、集団の中段に位置取ると、中盤を過ぎても先頭集団に食らいついた。しかし、8000mを過ぎて相澤がペースアップを図ると、田澤はじわりじわりと遅れ始めた。
「残り5周、相澤さんが上げたあたりから、自分の余裕がなくなって…。あそこでついていかなければいけないと思って、力のある限りついていこうとしましたが、体力が持たず落ちていってしまいました」
東京五輪を経験した相澤が終盤に強さを見せつける一方、田澤は盛り返せず、結局、28分06秒34で10位に終わった。
日本選手権で3位以内に入れば日本代表の内定を得られたはずだった。「(内定へ)一番条件が良かった」と田澤が言うように、世界選手権に一番近い位置にいることを自覚してレースに臨んだ。それだけに、現時点で内定を勝ち取れず、田澤は率直に悔しさを口にする。
「標準を切っていたっていう気持ちに余裕があるなかで3番以内に入れなかった。しっかり結果を残すことができなかったのは、自分の弱さです」
今季は順調にシーズンインを迎えた。初戦の金栗記念選抜では、『専門外』の5000mで13分22秒60の自己新記録(学生歴代8位)と好走。約1ヵ月後の日本選手権に向けて、弾みをつけたかに思えた。
しかし、「試合が終わると少し休んでから練習をするんですけど、金栗の後は休まずに、すぐに練習した」と、いつもとは違う流れにしたことが裏目に出て、疲労を取り切れず、万全なコンディションで臨めなかった。
「調整面で監督(の考え)と少しだけ違いがあった。しっかりすり合わせていかないと、ミスが起きると分かったので、自分の体調などを(監督と)共有した上で、今後は試合に臨んでいきたい」
目標としてきた世界選手権に即内定とはならなかったものの、しっかりと自身の課題に目を向けていた。とはいえ、田澤の世界選手権への道筋は完全に途切れたわけではない。
日本陸連が発表している代表内定における優先順位は「日本選手権の順位」→「参加標準記録有効期限内の記録」→「2022年度に開催される国内主要競技会の成績」の順となっているため、6月26日までに、相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(Honda)、市田孝(旭化成)の3名が標準記録を突破すれば、世界選手権への切符を手にすることになる。また、上位3選手だけでなく、田澤よりも順位が良かった選手には9人おり、彼らのうち3人以上が参加標準記録を突破すれば、田澤の日本代表の可能性はなくなる。その一方で、逆に、3名以上標準記録突破者がでなかった場合は、田澤が世界選手権代表に選ばれる可能性が出てくる。
「ここで3番以内に入って内定をもらう予定だったんですけど、それが崩れてしまった。これからどうしようかなと、しっかり話し合っていきたいと思います」
当初のプランには狂いが生じたかもしれないが、今回の敗戦を糧に、また一段成長したエースの姿を見せそうだ。
文/和田悟志

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)