2021.10.15
夏の東京五輪で3000m障害7位入賞という快挙を達成した三浦龍司(2年)の活躍が目立つなか、9月の日本インカレでは好成績が光った。安定感と粘り強さが持ち味の4年生、強力選手がそろう3年生を軸に、いまやその選手層は駒大や青学大に引けを取らないほど。最大の目標は「箱根駅伝優勝」を掲げているが、その過程にある全日本大学駅伝でも上位争いをかき乱すつもりでいる。
文/酒井政人
日本インカレで5人が入賞
かつて学生三大駅伝で15度の優勝を誇る名門・順大が、戦力を充実させている。「箱根駅伝総合優勝」を今年度の最大目標に置いているが、長門俊介駅伝監督は「この高い目標に対してどこまで本気なのか見てきましたが、5月の関東インカレなど春からの結果を見て、現実的に考えてもいい目標だと思っています」と、手応えをつかんでいる様子だ。
9月中旬に行われた日本インカレで、その勢いは加速した。1500mは原田凌輔(4年)が自己新の3分43秒00で優勝。9位で入賞は逃したが、小島優作(4年)が果敢に引っ張り、原田をアシストしたかたちだ。5000mは伊豫田達弥(3年)が14分05秒48で7位、10000mは吉岡智輝(4年)が28分55秒48で8位。3000m障害は三浦龍司(2年)が悠々と連覇し、6月のU20日本選手権を制している服部壮馬(1年)も苦しみながら8位を死守した。
長距離勢としては「20点」を目標に掲げていたが、その点数にピタリと到達。2年ぶり29回目の総合優勝に大きく貢献した。
駅伝シーズンに向け、この時期は走り込みを優先する大学が多いなか、順大は〝攻めの調整〟で日本インカレを迎えていた。
「今回は標高約2300mの志賀高原横手山(長野)で5日間の高地合宿を行い、そのまま日本インカレの宿舎に入りました。歴代のエースである岩水嘉孝さんや松岡佑起らも経験してきた調整なのですが、久しぶりに取り入れたんです。駅伝シーズンを見据えながらエントリーして、どの種目も満遍なく点数を取ってくれたことに関しては評価できるかなと思います」(長門監督)
高地トレーニングの効果は個人差が大きく、服部はうまくいかなかったようだが、逆に1500mの原田にはハマった。
「予選・決勝と1日2本のレースになり、1500mを専門にしている選手と比べて分がある。タイムテーブルが出た時点で優勝を意識させました。予選を(トップタイムで)通過して『勝つんじゃないのかな』と思いましたね」と長門監督の予想が的中する。原田はロングスパートを決めて、初の学生日本一に輝いた。さらに原田は2日後の日体大長距離競技会5000mでも自己ベストとなる13分57秒51で走破。出雲駅伝の登録メンバーに滑り込んだ。
5000mは伊豫田が7位に入っただけでなく、野村優作(3年)も9位と入賞にあと一歩と迫った。両者は関東インカレ10000mでも野村が5位、伊豫田が6位に入り、大舞台での安定度が光る。ともに今季はトラック種目で自己ベストを大きく更新しており、5000mは野村が13分41秒73、伊豫田が13分43秒71、10000mは伊豫田が28分06秒26、野村が28分19秒01と、一部大学を除けば「エース」と呼んでもおかしくない実力者である。
長門監督は「2人は春から大崩れがありません。できればダブル入賞してほしかったですが、これからが大切ですので、駅伝に向けていいかたちになったと思います」と、主軸としての活躍を期待している。
10000mで吉岡が8位入賞を果たしたことは、チームにとって大きな自信になった。「他の4年生も吉岡と同じような走りができたと思います」。近藤亮太、牧瀬圭斗も「吉岡クラス」の状態だという。駅伝シーズンを目前に控え、チーム状況はかなり充実している。出雲駅伝は10位に終わったが、「出雲は優勝を狙うような状況ではないと思うので、トップ争いを何区まで演じられるか考えたい」と長門監督は大会前に話していた。
オリンピアン・三浦は今年度も1区が有力
昨年度の駅伝シーズンは箱根予選会を〝歴代最速タイム〟でトップ通過。全日本大学駅伝は8位、箱根駅伝は7位と、ともにシード権を獲得している。すでに10000m28分台の数は12人と、王者・駒大(8人)や選手層に定評のある青学大(11人)をしのぐ戦力を持つが、今季の駅伝シーズンはどのような展開を考えているのだろうか。
この続きは2021年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。
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日本インカレで5人が入賞
かつて学生三大駅伝で15度の優勝を誇る名門・順大が、戦力を充実させている。「箱根駅伝総合優勝」を今年度の最大目標に置いているが、長門俊介駅伝監督は「この高い目標に対してどこまで本気なのか見てきましたが、5月の関東インカレなど春からの結果を見て、現実的に考えてもいい目標だと思っています」と、手応えをつかんでいる様子だ。 9月中旬に行われた日本インカレで、その勢いは加速した。1500mは原田凌輔(4年)が自己新の3分43秒00で優勝。9位で入賞は逃したが、小島優作(4年)が果敢に引っ張り、原田をアシストしたかたちだ。5000mは伊豫田達弥(3年)が14分05秒48で7位、10000mは吉岡智輝(4年)が28分55秒48で8位。3000m障害は三浦龍司(2年)が悠々と連覇し、6月のU20日本選手権を制している服部壮馬(1年)も苦しみながら8位を死守した。 長距離勢としては「20点」を目標に掲げていたが、その点数にピタリと到達。2年ぶり29回目の総合優勝に大きく貢献した。 駅伝シーズンに向け、この時期は走り込みを優先する大学が多いなか、順大は〝攻めの調整〟で日本インカレを迎えていた。 「今回は標高約2300mの志賀高原横手山(長野)で5日間の高地合宿を行い、そのまま日本インカレの宿舎に入りました。歴代のエースである岩水嘉孝さんや松岡佑起らも経験してきた調整なのですが、久しぶりに取り入れたんです。駅伝シーズンを見据えながらエントリーして、どの種目も満遍なく点数を取ってくれたことに関しては評価できるかなと思います」(長門監督) 高地トレーニングの効果は個人差が大きく、服部はうまくいかなかったようだが、逆に1500mの原田にはハマった。 「予選・決勝と1日2本のレースになり、1500mを専門にしている選手と比べて分がある。タイムテーブルが出た時点で優勝を意識させました。予選を(トップタイムで)通過して『勝つんじゃないのかな』と思いましたね」と長門監督の予想が的中する。原田はロングスパートを決めて、初の学生日本一に輝いた。さらに原田は2日後の日体大長距離競技会5000mでも自己ベストとなる13分57秒51で走破。出雲駅伝の登録メンバーに滑り込んだ。 5000mは伊豫田が7位に入っただけでなく、野村優作(3年)も9位と入賞にあと一歩と迫った。両者は関東インカレ10000mでも野村が5位、伊豫田が6位に入り、大舞台での安定度が光る。ともに今季はトラック種目で自己ベストを大きく更新しており、5000mは野村が13分41秒73、伊豫田が13分43秒71、10000mは伊豫田が28分06秒26、野村が28分19秒01と、一部大学を除けば「エース」と呼んでもおかしくない実力者である。 長門監督は「2人は春から大崩れがありません。できればダブル入賞してほしかったですが、これからが大切ですので、駅伝に向けていいかたちになったと思います」と、主軸としての活躍を期待している。
オリンピアン・三浦は今年度も1区が有力
昨年度の駅伝シーズンは箱根予選会を〝歴代最速タイム〟でトップ通過。全日本大学駅伝は8位、箱根駅伝は7位と、ともにシード権を獲得している。すでに10000m28分台の数は12人と、王者・駒大(8人)や選手層に定評のある青学大(11人)をしのぐ戦力を持つが、今季の駅伝シーズンはどのような展開を考えているのだろうか。 この続きは2021年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。
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