◇日本選手権(6月24日~27日/大阪・ヤンマースタジアム長居)
東京五輪代表選考会となる第105回日本選手権の1日目。男子100m準決勝が行われた。リオ五輪代表で、4×100mリレーでは4走として銀メダル獲得に貢献したケンブリッジ飛鳥(Nike)だが、今大会は準決勝で5着(10秒44/-0.9)に敗れ、決勝進出ならず。東京五輪参加標準記録10秒05にも届かず、2大会連続の個人での代表入りは事実上なくなってしまった。
悔しさを抑えるように、静かに言葉を絞り出すケンブリッジ。「いいところがなく終わってしまった。難しいシーズンになってしまって残念な気持ちでいっぱいです」。リオ五輪シーズンだった2016年は日本選手権を制し、オリンピックでも活躍。だが、この5年間は常にケガと戦ってきた。昨年、コロナ禍で東京五輪が延期。だが、その時間を有意義に過ごせたケンブリッジは新たなトレーナーの指導などもあり、8月には10秒03をマークするなど、再び上昇気流を描いた。
東京五輪参加標準記録10秒05を上回るタイムまで進化したケンブリッジだったが、コロナ禍の影響で昨年11月末まで世界陸連は有効期間外としたため、代表を勝ち取るためには、もう一度10秒05を破らなければいけなかった。
すでに3人が参加標準記録突破済み。記録を出さなくてはいけない、だが、その気持ちに反するように今季は再び脚が万全ではなくなってしまう。4月の出雲陸上と5月のREADY STEADY TOKYOの決勝を棄権、6月の布勢スプリントでは2本走ってともに10秒2台。その布勢では山縣が9秒95の日本新。窮地に立たされた。
迎えた日本選手権。やはり、状態は戻らなかった。「痛みがあって練習も抑えつつやっていたが、ストレッチでハムストリングスが伸びなかったりうまく力が入らなかったり」。昨年、目の前に見えていた東京五輪代表はスルリと手からこぼれ落ちた。
この5年間は「世界で戦える選手を目指してやってきて、ほとんどそこに届かずに終わった」というケンブリッジ。「やっぱり陸上競技って難しいなって感じました」。
中3で東京都に引っ越し、名門・東京高校で成長し、誰よりも「TOKYO」を背負って戦ってきた。日本男子短距離を史上最高レベルに押し上げた立役者の一人であることは疑いようもない。東京五輪100m代表を逃した現実を受け止めるには少し時間がかかるかもしれない。それでも、幾度もケガに泣きながら不死鳥のように戻り、その美しく力強いフォームで世界と戦える可能性を示してきたケンブリッジは、必ずこの舞台に戻ってくるだろう。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
Latest articles 最新の記事
2025.06.21
ハブズが1500m世界歴代6位3分27秒49! コエチはU20世界新3分27秒72 女子3000m障害チェロチは3戦3勝/DLパリ
世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)第8戦「ミーティング・ド・パリ」が6月21日、フランスで行われ、男子1500mではA.ハブズ(フランス)が今季世界最高、世界歴代6位の3分27秒49で優勝した。 ハブズは現在 […]
2025.06.21
編集部コラム「暑ければ暑いほど熱いけど」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]
2025.06.21
400m橋本頼弥46秒79「全国でメダルを争える」 東京学館新潟&佐久長聖が4継北信越高校新 1500mは家光応輔/IH北信越
◇インターハイ北信越地区大会(6月19~22日/福井・福井県営陸上競技場)2日目 広島インターハイを懸けた北信越地区大会の2日目が行われ、男子400mは橋本頼弥(鵬学園3石川)が46秒79で優勝した。 広告の下にコンテン […]
2025.06.21
男子ハンマー投・大川巧が先輩超えの66m07 女子400mは今峰紗希が復調示すV/IH東海
◇インターハイ東海地区大会(6月20日~22日/三重・三重交通G スポーツの杜 伊勢)1日目 広島インターハイ出場を懸けた東海地区大会の1日目が行われ、男子ハンマー投では大川巧(久居3三重)が66m07の今季高校最高、そ […]
2025.06.21
大垣尊良が17m92砲丸投大幅大会新 三輪紘大200m21秒21 大森悠斗三段跳15m21で2連覇 女子3000m吉田彩心V/IH北海道
◇インターハイ北海道地区大会(6月17日~20日/旭川花咲スポーツ公園陸上競技場)最終日 広島インターハイ出場を懸けた北海道地区大会の4日目(最終日)が行われ、男子砲丸投は大垣尊良(厚真2)が、大会新記録の17m92で優 […]
Latest Issue
最新号

2025年7月号 (6月13日発売)
詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会