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2021.05.31

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第9回「歴史と伝統、そして未来に向かって~第100回関東インカレを振り返り思うこと~」
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第9回「歴史と伝統、そして未来に向かって~第100回関東インカレを振り返り思うこと~」


山梨学大の上田誠仁監督の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます!

第9回「歴史と伝統、そして未来に向かって ~第100回関東インカレを振り返り思うこと~」

 第100回関東学生陸上競技対校選手権大会(関東インカレ)が、5月20日から4日間の日程で開催された。箱根駅伝が98回大会を迎えることを考えれば、その歴史と伝統の重さを痛感させられる。

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 昨年は急激な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、例年通りの5月開催は断念。対校戦としては行わず、秋の箱根駅伝予選会の前後(※)に規模を縮小しての開催であった。
※一般種目は10月9~11日、混成は10月24~25日、長距離種目は11月22日に実施

 無観客とはいえ競技会が開催でき、対校戦として成立する大会運営ができたことは、関東学生陸上競技連盟(以下、関東学連)学生幹事をはじめ、関係各位のご尽力の賜物であると感謝したい。コロナ禍でなければ参加大学の部員たちがスタンドに陣取り、湧き上がるような大声援の中で競技会が進行していったことだろう。日本一熱い競技会として定着してきていただけにその点は残念でならない。

 その代わり、YouTubeや日本テレビG+の中継で、リアルタイムに観戦できる方法を整備していただいた。現場に来ることができなかった部員、OB・OGやファンの皆様方に映像を通して熱戦をお伝えできたのは大変ありがたかった。

 開催要件として、参加各大学および役員・審判・補助員の感染症予防対策は漏水の余地を残さぬことは勿論である。さらには緊急事態宣言や蔓延防止重点措置の発令を受けて、大会会場の使用ができるかどうかが問題であった。

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 競技会開催には、各自治体が運営する競技場の使用許可の可否にかかっている。今回使用許可をいただいた相模原ギオンスタジアム(神奈川)に対しても、競技会が無事終了し関係者の健康に問題が生じない運営を心がけることが、主催者として必須条件。

 この点は何とかクリアできたとしても、更なる壁が公道を使用するハーフマラソンのコース設定であった。一般道ではスタジアムのように無観客や人の導線を完全にコントロールすることが不可能である。そのため、どこでどのように行うかで頭を悩ませた。過去にコース設定をして開催の実績のある、新横浜公園や東京・立川市の自衛隊駐屯地はすでに他の大会や諸事情で利用できず、無観客での開催場所探しに知恵を絞っていただいた。

 そこで候補に挙がったのが遊園地のよみうりランド(東京)であった。読売新聞が箱根駅伝を共催しているとはいえ、そうそう都合よく競技会開催を受け入れていただけるか不安でもあった。

 しかしながら、その思いも杞憂であった。木曜日の休園日であれば協力していただけると言うことで、さっそく学連幹事長をはじめ、関係者で現地視察を行った。遊園地の観覧車やジェットコースターを背景に、厳しいアップダウンのある1週約2kmの周回コースを設定することができた。事前の協議においては、ハーフマラソンの中止という選択や、早朝に20000mをトラックで行うなどの案が飛び交う中でのことである。このような状況にあってよみうりランドをお借りできることに異存はなかった。

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遊園地の観覧車をバックにハーフマラソンを走る選手たち

 起伏の激しい過酷なコースではあったが、1部2部3部合わせて91名のエントリーのうち途中棄権は1名という完走状況であった。比較的涼しい天候であったこともあるが、箱根駅伝や予選会を含めて、関東インカレに向けて各大学が真摯にトレーニングを積み、このレースに挑んだことの証であったと捉えている。

 関東インカレをここまで熱く語るには理由がある。100回の歴史を紡いできた先輩諸氏のたゆまぬ努力と献身があったからこそ今があり、未来があると思えるからだ。

 各種目優勝者に贈られるトロフィーの芳名を見ると、男子三段跳は織田幹雄杯、女子800mは人見絹江杯と、日本陸上界に多大な貢献をされた方々の名前がずらりと並び、そのページを眺めているだけで歴史のページが紐解かれた気がしてくる。

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 その偉大なる諸先輩方の戦いの場を粛々と運営してきたのが、関東学連の学生幹事諸君と大会運営のために協力していただいた陸協審判員、そして学生審判員と補助員であることを、いつの時代の学生競技者諸君には見失ってほしくないと願っている。

 関東学連は日本で最初の学生自治による競技連盟として、大正8年(1919年)に設立されている。まだ日本陸連も日本学連も設立されていない102年も前に、当時の大学、高専の選手たちが相集い、互いの親睦と切磋琢磨を目指して結成したと、関東学連会長を歴任された故・廣瀬豊氏からお聞きしたことがある。

 箱根駅伝の開催も、当時の大学生の連盟設立への熱い思いがなければ成立さえ困難であったことは想像に難くない。

山梨学院大は今年も1部残留!

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 関東学生陸上競技連盟に登録している大学は今年度130校・登録者数は7200名を超えている。今年の大会は、男子が1部16校527名、2部63校706名、3部21校73名が標準記録を突破し、対校選手として競い合った。男子の場合、走・跳・投・混成・リレーを含めて23種目の総合得点で、上位14校が1部残留となり、下位2校が2部に降格。2部総合上位2校が1部校に昇格する。各種目1位8点~8位1点をもぎ取ろうと、おのずと競技も白熱したものとなる。

 今年は16年ぶりの総合優勝を果たした順天堂大学を頂点に、1部残留14校(順大・日大・法大・東海大・早大・日体大・国士大・筑波大・中大・東洋大・山梨学大・慶大・駿河台大・流経大)と2部総合上位2校(明大・東学大)合わせて来年度の1部16校が決定した。

 山梨学院大学陸上競技部は1985年に強化育成クラブとして創部。2年目で箱根駅伝初出場、7年目(箱根出場6回目)で初優勝を果たした。

 しかしながら、関東インカレはやっとの思いで10年目の節目である平成7年(1995年)に初の2部総合優勝&1部校昇格を果たすことができた。今年の大会の結果を受けて、来年度も27回目の1部でのプライドをかけた戦いに挑めることに身の引き締まる思いである。

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 長距離・駅伝のチームとしてのイメージが定着しているようであるが、今回の大会は中長距離・競歩以外でも400m7位、走幅跳7位、三段跳6位と得点を獲得できたことが感慨深い。3年前の大会では、やり投で3位に入賞しているので、短距離・フィールド種目の強化をスポーツ科学部開設(2016年)と同時に開始して6年目で、走・跳・投合わせてTrack & Fieldのチーム作りが少しずつ根を張りはじめたのかもしれない。とは言ってもハイレベル・ハイパフォーマンスが求められる厳しい現実は何も変わらない。

 来年のインカレまで“腹を据えて”取り組み、来るべき大会では“肝を据えて”挑まなければならない。

 できることなら“肝を冷やす”ことがないように願いつつ。

上田誠仁 Ueda Masahito/1959年生まれ、香川県出身。山梨学院大学スポーツ科学部スポーツ科学科教授。順天堂大学時代に3年連続で箱根駅伝の5区を担い、2年時と3年時に区間賞を獲得。2度の総合優勝に貢献した。卒業後は地元・香川県内の中学・高校教諭を歴任。中学教諭時代の1983年には日本選手権5000mで2位と好成績を収めている。85年に山梨学院大学の陸上競技部監督へ就任し、92年には創部7年、出場6回目にして箱根駅伝総合優勝を達成。以降、出雲駅伝5連覇、箱根総合優勝3回など輝かしい実績を誇るほか、中村祐二や尾方剛、大崎悟史、井上大仁など、のちにマラソンで世界へ羽ばたく選手を多数育成している。
山梨学大の上田誠仁監督の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます!

第9回「歴史と伝統、そして未来に向かって ~第100回関東インカレを振り返り思うこと~」

 第100回関東学生陸上競技対校選手権大会(関東インカレ)が、5月20日から4日間の日程で開催された。箱根駅伝が98回大会を迎えることを考えれば、その歴史と伝統の重さを痛感させられる。  昨年は急激な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、例年通りの5月開催は断念。対校戦としては行わず、秋の箱根駅伝予選会の前後(※)に規模を縮小しての開催であった。 ※一般種目は10月9~11日、混成は10月24~25日、長距離種目は11月22日に実施  無観客とはいえ競技会が開催でき、対校戦として成立する大会運営ができたことは、関東学生陸上競技連盟(以下、関東学連)学生幹事をはじめ、関係各位のご尽力の賜物であると感謝したい。コロナ禍でなければ参加大学の部員たちがスタンドに陣取り、湧き上がるような大声援の中で競技会が進行していったことだろう。日本一熱い競技会として定着してきていただけにその点は残念でならない。  その代わり、YouTubeや日本テレビG+の中継で、リアルタイムに観戦できる方法を整備していただいた。現場に来ることができなかった部員、OB・OGやファンの皆様方に映像を通して熱戦をお伝えできたのは大変ありがたかった。  開催要件として、参加各大学および役員・審判・補助員の感染症予防対策は漏水の余地を残さぬことは勿論である。さらには緊急事態宣言や蔓延防止重点措置の発令を受けて、大会会場の使用ができるかどうかが問題であった。  競技会開催には、各自治体が運営する競技場の使用許可の可否にかかっている。今回使用許可をいただいた相模原ギオンスタジアム(神奈川)に対しても、競技会が無事終了し関係者の健康に問題が生じない運営を心がけることが、主催者として必須条件。  この点は何とかクリアできたとしても、更なる壁が公道を使用するハーフマラソンのコース設定であった。一般道ではスタジアムのように無観客や人の導線を完全にコントロールすることが不可能である。そのため、どこでどのように行うかで頭を悩ませた。過去にコース設定をして開催の実績のある、新横浜公園や東京・立川市の自衛隊駐屯地はすでに他の大会や諸事情で利用できず、無観客での開催場所探しに知恵を絞っていただいた。  そこで候補に挙がったのが遊園地のよみうりランド(東京)であった。読売新聞が箱根駅伝を共催しているとはいえ、そうそう都合よく競技会開催を受け入れていただけるか不安でもあった。  しかしながら、その思いも杞憂であった。木曜日の休園日であれば協力していただけると言うことで、さっそく学連幹事長をはじめ、関係者で現地視察を行った。遊園地の観覧車やジェットコースターを背景に、厳しいアップダウンのある1週約2kmの周回コースを設定することができた。事前の協議においては、ハーフマラソンの中止という選択や、早朝に20000mをトラックで行うなどの案が飛び交う中でのことである。このような状況にあってよみうりランドをお借りできることに異存はなかった。 遊園地の観覧車をバックにハーフマラソンを走る選手たち  起伏の激しい過酷なコースではあったが、1部2部3部合わせて91名のエントリーのうち途中棄権は1名という完走状況であった。比較的涼しい天候であったこともあるが、箱根駅伝や予選会を含めて、関東インカレに向けて各大学が真摯にトレーニングを積み、このレースに挑んだことの証であったと捉えている。  関東インカレをここまで熱く語るには理由がある。100回の歴史を紡いできた先輩諸氏のたゆまぬ努力と献身があったからこそ今があり、未来があると思えるからだ。  各種目優勝者に贈られるトロフィーの芳名を見ると、男子三段跳は織田幹雄杯、女子800mは人見絹江杯と、日本陸上界に多大な貢献をされた方々の名前がずらりと並び、そのページを眺めているだけで歴史のページが紐解かれた気がしてくる。  その偉大なる諸先輩方の戦いの場を粛々と運営してきたのが、関東学連の学生幹事諸君と大会運営のために協力していただいた陸協審判員、そして学生審判員と補助員であることを、いつの時代の学生競技者諸君には見失ってほしくないと願っている。  関東学連は日本で最初の学生自治による競技連盟として、大正8年(1919年)に設立されている。まだ日本陸連も日本学連も設立されていない102年も前に、当時の大学、高専の選手たちが相集い、互いの親睦と切磋琢磨を目指して結成したと、関東学連会長を歴任された故・廣瀬豊氏からお聞きしたことがある。  箱根駅伝の開催も、当時の大学生の連盟設立への熱い思いがなければ成立さえ困難であったことは想像に難くない。

山梨学院大は今年も1部残留!

 関東学生陸上競技連盟に登録している大学は今年度130校・登録者数は7200名を超えている。今年の大会は、男子が1部16校527名、2部63校706名、3部21校73名が標準記録を突破し、対校選手として競い合った。男子の場合、走・跳・投・混成・リレーを含めて23種目の総合得点で、上位14校が1部残留となり、下位2校が2部に降格。2部総合上位2校が1部校に昇格する。各種目1位8点~8位1点をもぎ取ろうと、おのずと競技も白熱したものとなる。  今年は16年ぶりの総合優勝を果たした順天堂大学を頂点に、1部残留14校(順大・日大・法大・東海大・早大・日体大・国士大・筑波大・中大・東洋大・山梨学大・慶大・駿河台大・流経大)と2部総合上位2校(明大・東学大)合わせて来年度の1部16校が決定した。  山梨学院大学陸上競技部は1985年に強化育成クラブとして創部。2年目で箱根駅伝初出場、7年目(箱根出場6回目)で初優勝を果たした。  しかしながら、関東インカレはやっとの思いで10年目の節目である平成7年(1995年)に初の2部総合優勝&1部校昇格を果たすことができた。今年の大会の結果を受けて、来年度も27回目の1部でのプライドをかけた戦いに挑めることに身の引き締まる思いである。  長距離・駅伝のチームとしてのイメージが定着しているようであるが、今回の大会は中長距離・競歩以外でも400m7位、走幅跳7位、三段跳6位と得点を獲得できたことが感慨深い。3年前の大会では、やり投で3位に入賞しているので、短距離・フィールド種目の強化をスポーツ科学部開設(2016年)と同時に開始して6年目で、走・跳・投合わせてTrack & Fieldのチーム作りが少しずつ根を張りはじめたのかもしれない。とは言ってもハイレベル・ハイパフォーマンスが求められる厳しい現実は何も変わらない。  来年のインカレまで“腹を据えて”取り組み、来るべき大会では“肝を据えて”挑まなければならない。  できることなら“肝を冷やす”ことがないように願いつつ。
上田誠仁 Ueda Masahito/1959年生まれ、香川県出身。山梨学院大学スポーツ科学部スポーツ科学科教授。順天堂大学時代に3年連続で箱根駅伝の5区を担い、2年時と3年時に区間賞を獲得。2度の総合優勝に貢献した。卒業後は地元・香川県内の中学・高校教諭を歴任。中学教諭時代の1983年には日本選手権5000mで2位と好成績を収めている。85年に山梨学院大学の陸上競技部監督へ就任し、92年には創部7年、出場6回目にして箱根駅伝総合優勝を達成。以降、出雲駅伝5連覇、箱根総合優勝3回など輝かしい実績を誇るほか、中村祐二や尾方剛、大崎悟史、井上大仁など、のちにマラソンで世界へ羽ばたく選手を多数育成している。

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