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2025.12.22

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箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ
箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

島田晃希(帝京大)

高2の秋で大きく飛躍

25年全日本大学駅伝7区の帝京大・島田晃希

三重県出身の島田は、全日本大学駅伝のコースが自宅から1kmほどにあり、子どもの頃から沿道で学生ランナーの走りを見てきた。9歳上の兄と7歳上の姉が陸上競技をやっていた影響もあって、小学5年になると陸上クラブに入り陸上を始める。

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「小学生の頃は800mで3分も切れなくて、ほとんどの大会で最下位だった」と言うものの、島田は中学、高校と走り続け、少しずつ速くなっていった。

そして、三重・高田高2年の秋に飛躍を遂げる。先輩のアドバイスを受けてフォームの改善を図ると、5000m16分20秒台から一気に14分台に突入し、三重県高校新人で優勝を果たした。さらに、翌年のインターハイ三重県大会でも5000mで優勝を飾っている。

「県大会で優勝し、『どこまでいけるのか、試してみたい』という気持ちが強くなってきて、関東の大学に行きたいと思いました」。インターハイ路線は東海大会で敗れて全国出場は逃したものの、高校卒業後も陸上を続けるという決意を固めた。

「高校時代から長い距離、ハーフマラソンや10000mをやりたいと思っていて、箱根駅伝でシード権を安定して取れている帝京大学を志望しました」。高校の先生を通じて、自ら帝京大にアプローチしたという。

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入学時は「実績が何もなかったので、4年間のうちに一度、箱根駅伝を走れればいいかなって思っていました」と振り返る。しかし、1年目から箱根駅伝の16人のメンバー入り。この時は出番がなかったが、2年時は8区8位、3年時は1区5位と区間ひとケタで大崩れしない強さがある。「一度走れれば……」どころか、今や帝京大のエース格の一人だ。

「前回の箱根の後から、自分がエース区間を走りたいと思うようになりました」。大学ラストイヤーの今季は箱根駅伝で“花の2区”を希望している。「自分は単独走でも良いペースで押していくことができる」と言い、その持ち味を存分に発揮するつもりだ。

もちろん楠岡もその候補の1人に挙がるが、島田は「2区を走りたい」という意志を、ことあるごとに口に出してきた。

練習でも提示されたメニューをただこなすだけでなく、楠岡とともに、少し設定ペースを速くしたり、チームメイトより数秒遅れて走り始めたりと、2区を走るために自らアレンジを加えてきた。

前回の2区は、山中博生(現・大阪ガス)が区間5位と好走し、1時間6分22秒の帝京大記録を打ち立てた。序盤で出遅れないためには、この山中の記録が一つの目安になりそうだ。

全日本の7区では、区間5位にまとめた一方で、他大学のエースとの力の差を痛感させられたという。「出雲の時よりも良い走りでしたが、他大学のエース選手たちと初めて走ってみて、やっぱりまだ差があるなと感じました」。

区間5位の島田よりも上にいたのは、青学大・黒田朝日(4年)、日大・シャドラック・キップケメイ(3年)、駒大・佐藤圭汰(4年)、早大・山口智規(4年)という顔ぶれ。いずれも、箱根駅伝で2区を走ることになれば、そこで再戦となる可能性がある。島田としても、このまま引き下がるわけにはいかない。

ここまでの島田の活躍ぶりに、中野監督は豪州のハーフで優勝した際には珍しく褒めていたものの、「こんなところで満足していてはいけない」と、なかなか褒め言葉を口にしてこなかった。

それは、島田の潜在能力の高さを認めており、もう一皮も二皮も剥けるのを期待してのこと。指揮官からすれば、島田は『未完の大器』なのだ。

島田が“大化け”した走りを見せたとき、チームが掲げる「5強崩し」はもちろん、それ以上の結果も見えてくる。

文/和田悟志

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。

身近にあった箱根駅伝

この1年で帝京大の長距離種目の歴代記録がガラリと塗り替えられた。トラックで躍動したのが楠岡由浩(3年)。そして、ハーフマラソンで新たな記録を打ち立てたのが島田晃希(4年)だった。 2月の日本学生ハーフ(香川・丸亀国際ハーフ併催)で、従来の帝京大記録を1分以上更新。1時間0分56秒の好記録で走った。 「トラックは思ったような結果が出なかったんですけど……」とはにかむが、「ロードは想定していた通りのタイムが狙えました」と言うようにハーフマラソンや駅伝では安定したパフォーマンスを発揮してきた。 丸亀で出した1時間1分台が決してフロックではないことを示したのが、6月に出場したペッパーズサイロハーフ(豪州)だ。このレースには、ハーフマラソンで59分57秒の豪州記録を持つブレット・ロビンソン、今年の丸亀ハーフで1時間0分28秒で走り島田に先着したアンディ・ブキャナンといった、地元のトップランナーも多数出場していた。 「(中野孝行)監督からは『勝ちに行ってこい』と言われていて、タイムよりも勝負を優先してレースに臨みました」。そんなハイレベルなレースで勝負にこだわり、見事に優勝。しかも、1時間1分12秒の大会新記録というおまけつきだった。 今季の駅伝シーズンは、出雲駅伝が2区5.8km、全日本大学駅伝が7区17.6kmと、各校のエース級が集う区間へ。出雲は区間7位だったが、全日本は区間5位の力走で、距離が長くなるほど持ち味が発揮できることを改めて示した。

高2の秋で大きく飛躍

[caption id="attachment_194106" align="alignnone" width="800"] 25年全日本大学駅伝7区の帝京大・島田晃希[/caption] 三重県出身の島田は、全日本大学駅伝のコースが自宅から1kmほどにあり、子どもの頃から沿道で学生ランナーの走りを見てきた。9歳上の兄と7歳上の姉が陸上競技をやっていた影響もあって、小学5年になると陸上クラブに入り陸上を始める。 「小学生の頃は800mで3分も切れなくて、ほとんどの大会で最下位だった」と言うものの、島田は中学、高校と走り続け、少しずつ速くなっていった。 そして、三重・高田高2年の秋に飛躍を遂げる。先輩のアドバイスを受けてフォームの改善を図ると、5000m16分20秒台から一気に14分台に突入し、三重県高校新人で優勝を果たした。さらに、翌年のインターハイ三重県大会でも5000mで優勝を飾っている。 「県大会で優勝し、『どこまでいけるのか、試してみたい』という気持ちが強くなってきて、関東の大学に行きたいと思いました」。インターハイ路線は東海大会で敗れて全国出場は逃したものの、高校卒業後も陸上を続けるという決意を固めた。 「高校時代から長い距離、ハーフマラソンや10000mをやりたいと思っていて、箱根駅伝でシード権を安定して取れている帝京大学を志望しました」。高校の先生を通じて、自ら帝京大にアプローチしたという。 入学時は「実績が何もなかったので、4年間のうちに一度、箱根駅伝を走れればいいかなって思っていました」と振り返る。しかし、1年目から箱根駅伝の16人のメンバー入り。この時は出番がなかったが、2年時は8区8位、3年時は1区5位と区間ひとケタで大崩れしない強さがある。「一度走れれば……」どころか、今や帝京大のエース格の一人だ。 「前回の箱根の後から、自分がエース区間を走りたいと思うようになりました」。大学ラストイヤーの今季は箱根駅伝で“花の2区”を希望している。「自分は単独走でも良いペースで押していくことができる」と言い、その持ち味を存分に発揮するつもりだ。 もちろん楠岡もその候補の1人に挙がるが、島田は「2区を走りたい」という意志を、ことあるごとに口に出してきた。 練習でも提示されたメニューをただこなすだけでなく、楠岡とともに、少し設定ペースを速くしたり、チームメイトより数秒遅れて走り始めたりと、2区を走るために自らアレンジを加えてきた。 前回の2区は、山中博生(現・大阪ガス)が区間5位と好走し、1時間6分22秒の帝京大記録を打ち立てた。序盤で出遅れないためには、この山中の記録が一つの目安になりそうだ。 全日本の7区では、区間5位にまとめた一方で、他大学のエースとの力の差を痛感させられたという。「出雲の時よりも良い走りでしたが、他大学のエース選手たちと初めて走ってみて、やっぱりまだ差があるなと感じました」。 区間5位の島田よりも上にいたのは、青学大・黒田朝日(4年)、日大・シャドラック・キップケメイ(3年)、駒大・佐藤圭汰(4年)、早大・山口智規(4年)という顔ぶれ。いずれも、箱根駅伝で2区を走ることになれば、そこで再戦となる可能性がある。島田としても、このまま引き下がるわけにはいかない。 ここまでの島田の活躍ぶりに、中野監督は豪州のハーフで優勝した際には珍しく褒めていたものの、「こんなところで満足していてはいけない」と、なかなか褒め言葉を口にしてこなかった。 それは、島田の潜在能力の高さを認めており、もう一皮も二皮も剥けるのを期待してのこと。指揮官からすれば、島田は『未完の大器』なのだ。 島田が“大化け”した走りを見せたとき、チームが掲げる「5強崩し」はもちろん、それ以上の結果も見えてくる。 文/和田悟志

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