2025.11.14
高気圧酸素と低圧低酸素の両方の環境を1台でつくれる日本気圧バルク工業の特許製品
2025年3月、東京都調布市の京王線布田駅からほど近い閑静な住宅街に「OHANA 鍼灸治療院」がオープンした。井上伸次院長(51歳)が大切にしているのは、「治療、運動、酸素、インソール」という4つの柱。そのなかで酸素は、自身もケガをした時期に実体験した日本気圧バルク工業の酸素ルーム「O2Room®」を導入し、一般の幅広い年齢層の人たちやさまざまな競技のトップアスリートまで、主に運動に携わる人たちを手厚くサポートして支持されている。
37歳から専門学校に通い、14年目の今年3月に開院
OHANA鍼灸治療院の「OHANA」とは、ハワイ語で「家族」を意味する。ハワイが好きな井上院長は、「患者様を家族の一員として捉え、〝生涯、好きなことが続けられる体づくり〟をサポートしたい」という思いを開院した治療院の名に込めた。
井上院長は、幼少期から大学まで競泳で活躍。大阪・北陽高校時代には400m個人メドレーでインターハイ3位になったこともある。大学卒業後はフィットネスクラブで働き、やがて独立して業務委託を受けたバスケットボールやラグビーなどの実業団チームで、選手のパフォーマンス向上のためのトレーニングやケガの治療などを担うストレングス&コンディショニングコーチを務めるようになる。
2005年から4年間は、かつて存在したプロバスケットボールチームの東京アパッチで、NBAのスーパースター、故コービー・ブライアントの父、ジョー・ブライアント監督のもとで働いた。
その傍ら、27歳からは自身がボディビルを始める。そこには「筋肉をつけたり減量したり、スポーツ選手の体をコントロールするには、自分で体験しないと説得力が生まれない」という考えがあった。ボディビルでは、関東圏の数々の大会で優勝するほど結果を残した。

(左画像)以前はストレングス&コンディショニングコーチをしていた井上院長(左)。2005年から4年間は、かつて存在したプロバスケットボールチーム「東京アパッチ」で、ジョー・ブライアント監督(中央)のもとで働いていた。右は米国アスレティックトレーナーの資格を持つ妻の鎮子さん/(右画像)27歳からボディビルも始めていた井上院長。関東圏の数々の大会で優勝したキャリアがあるという
ただ、そうした生活は井上院長の体を少しずつ傷つけていく。ボディビルのトレーニングに加え、コーチとして選手に見本の動きを繰り返すうちに、両膝の半月板を痛めてしまったのだ。
「変形質関節症という診断で、歩けなくなるほどでした。それが37歳。今後仕事をしていくのにまずいなと思い、鍼灸の専門学校に通い始めた矢先に手術をしました。そのため、松葉杖をつきながら専門学校に通っていました」
40歳で国家資格を取得してからは整形外科内のコンディショニングルームに勤務し、治療だけでなく、運動指導やリハビリ、パフォーマンス向上までを一貫してサポートしてきた。しかし、その後のコロナ禍が井上院長の背中を押すきっかけになる。
「膝が悪化して再度、両膝の手術をしました。しっかり歩けるようになるまで約3年かかりましたが、これから現場に出るのは難しい。ストレングス&コンディショニングコーチをやる前から治療家になりたかったこともあって、自分でやってみたいと開院することを決めました」
2階建ての家を新築して1階を治療院とし、今年3月のオープンに至った。
自身の実体験から〝酸素〟に注目、酸素療法を組み合わせた治療
開院にあたっては、「治療、運動、酸素、インソール」という4つの柱を中心に、症状の改善から再発予防、競技復帰、パフォーマンス向上まで一貫して支えることをイメージした。それぞれの患者に合わせた完全オーダーメイド治療を行い、鍼灸、電気、手技、運動、インソール、酸素の各療法を組み合わせた総合的なアプローチを目指してスタートを切った。
OHANA鍼灸治療院のロゴには、深みのある青い山に鮮やか3色の虹がかかっている。井上院長はその意図を「赤色は治療や血行促進、黄色は運動や活動的であること、青色は酸素や回復。山が高地トレーニングを表しています。また、Hの文字を2人の人のようにしたのは、家族のように手を携えて、患者様のゴールを一緒に目指したいという思いからです」と話す。
治療院として「治療」や「運動」を重視するのは理解しやすい。では、「酸素」に注目したのはどういう経緯だったのか。一つは自身の実体験によるところが大きい。
「八王子スポーツ整形外科で膝の手術をした後、酸素ルーム(O2Room®)に入ったことがあります。その時に『とても良いな』と感じ、もしかしたら酸素は体にとって絶対に必要なものなのかもしれないと考えるようになりました」
これまでのストレングス&コンディショニングコーチや整形外科での臨床経験を通して、「アスリートや一般の方の回復や再発予防、睡眠の質向上には、共通して酸素と呼吸の重要性を感じていた」とも言う。
また、自身でもインターネットや文献などで酸素について調べるにつれて、高気圧酸素には血行促進などのエビデンスが多くあることを知り、「ケガや疲労の回復、炎症の抑制には、酸素を取り入れることでより相乗効果が生まれる」という思いが固まっていく。
開院に向けて家を新築する際は、酸素ルームを設置する前提でレイアウトを考えた。
「患者様が安心感を持てる」日本気圧バルク工業製品を導入
酸素カプセルや酸素ルームのメーカーが数多くあるなかで、「内部で運動ができるものが良い」と考えていた井上院長は、カプセルではなく、ルームに注目する。そこで日本気圧バルク工業の「O2Room®」を導入した理由はいくつかあった。「安全性や操作性が高く、デザインも落ち着いていて患者様が安心感を持てる」というのは、自身がかつて八王子スポーツ整形外科で膝の手術後に同院で「O2Room®」を利用した時に感じたことだった。
日本気圧バルク工業代表取締役、天野英紀社長の熱意も大きく影響した。他メーカーも検討したが、担当者から感じたのは営業したいという前のめりな姿勢ばかり。それに対して、天野社長の話は「ウチの製品は壊れません」という自信がみなぎり、利用者への配慮や心遣いに溢れていた。日本体力医学会に所属し、複数の大学や病院と共同研究を続けてきたこと、そして何より酸素に関わる製品の販売を開始して以降30年間、一度も事故を起こしていないという説明も受け、井上院長の気持ちは固まった。
「この業界を長く牽引してきた老舗であり、現在も国内トップメーカー。社員の方々は日本体力医学会に所属し、毎年、論文発表も行っています。治療家としては、そうしたエビデンスが信頼につながりますから、導入の決め手になりました。改めて実際に酸素ルームを体験させていただくと、治療や運動療法に酸素をプラスすることの相乗効果は確信に変わりました」
日本気圧バルク工業の「O2Room®」には、もともと高気圧酸素ルームと低圧低酸素ルームがあり、その後、ユーザーからの要望で高気圧酸素と低圧低酸素の2つの環境を併用できる同社の特許製品「2way酸素ルーム」が開発された。
井上院長は「1台で高気圧酸素と低圧低酸素の両方を切り替えられるのは非常に魅力的。アスリートの高地トレーニングから一般の健康管理まで幅広く対応できる」と、2way酸素ルームを選択する。
日本気圧バルク工業は本社と同じ静岡県内にある自社工場で製品を製造しているため、内装やカラーはもちろん、酸素ルーム自体の仕様や大きさまでが自由自在にオーダーメイドできる体制を整えている。
「サイズや部品の位置など、何回もやり取りしてこちらの細かいニーズを汲んでいただきました。ルーム内で運動用のサスペンションをぶら下げられるようにできたのも満足しています」と、開院前には井上院長が自信を持って来院者に提供できる酸素ルームが納品された。
1台で2つの環境を併用できる「2way酸素ルーム」のメリット
私たちは普段、1気圧で酸素濃度20.9%という環境の中で生活をしている。気圧が上がれば空気が凝縮され、酸素濃度も上がる。酸素のそうした性質を利用する2way酸素ルームは、高気圧酸素は人体に安全な1.3気圧、低圧低酸素は約0.72気圧までの範囲で設定可能。井上院長はそれぞれの特徴を次のように説明する。
「高気圧酸素ルームでは、通常よりも多くの酸素を取り込むことができます。体の隅々まで酸素が行き渡れば、血行促進やケガの早期回復、炎症や腫れ、むくみの軽減、疲労回復や気力・集中力の増加、ダイエット、睡眠の質の向上、口腔ケア、美肌など、さまざまな治療効果を高める期待ができるというエビデンスが出ています」
実際に、利用者からは「疲れが取れやすくなった」「体が軽くなったように感じる」「ぐっすり眠れるようになった」といった好評を得ている。
一方の低圧低酸素ルームは「疲労耐性の向上や持久力の強化などエネルギー代謝の改善が期待できます。特にアスリートの方には高地環境でのトレーニングモード(ウェーブモード)が人気で、標高3000m相当の負荷を体験できるのが特徴です」と言う。
他メーカーの低酸素ルームは、常圧のままルーム内に窒素を入れることで酸素濃度を下げるものが多い。その点、日本気圧バルク工業の「O2Room®」は気圧を下げて低酸素にするため、よりリアルな高地環境を作ることができる。そこでトレーニングを行うと、心肺機能が向上し、ハイパワーやミドルパワーといった無酸素性能力も高まる。
もちろん、一般の人たちも利用でき、「手足が冷えにくくなった」「体力がついた」などと感じるようになった人が増えているそうだ。
OHANA鍼灸治療院を訪れる顧客は、競技の違いやレベルの高低こそあるが、トップアスリートを含め、中学生から高齢者まで日頃から運動を行っている人が圧倒的に多い。井上院長はそうした幅広い層の顧客に対し、「当院では一般的な治療だけでなく、運動も治療、酸素ルームも治療、インソールも治療だと考えています。患者様に合ったオーダーメイドプランを提案させていただいております」と、パーソナルトレーニングのイメージで顧客に接している。
「低圧低酸素内では血管が拡張します。血管が拡張すれば血行が良くなる。自然治癒力を上げる目的の治療も運動も、血行を良くすることを目指しますから、そこでは共通しています。手段の違いがあるだけだと思っています」
〝生涯、好きなことを続けられる体づくり〟を目指して
2way酸素ルームを導入した1年目ですでに多くの成果を実感している井上院長だが、「まだまだ可能性がある分野」とも考えている。
「たとえばケガや疲労の回復にしても、低圧低酸素に入ってから高気圧酸素に入った方が良いというエビデンスも出ています。私自身も実験のために低圧低酸素から高気圧酸素に入ると、膝の腫れやむくみが減るように感じます。酸素と体の関係はまだわからないことがたくさんあって、これからもどんどん試していきたいと思っています」
また、酸素ルームに関して、広く正しく認知されていない面もある。OHANA鍼灸治療院の玄関先には、「O2Room®」の幟(のぼり)が風に揺れてはためいている。酸素ルームを見学できることも謳っているが、それらを見て訪れてくる人はそう多くない。
「幟は目につくので、酸素カプセルのようなものがあることは知っていただいていると思います。でも、おそらく酸素ルームの詳細はよく知らないという人が大多数。今、ウチの利用者のほとんどは口コミです」
酸素カプセルや酸素ルームを危険と感じている人も多いかもしれない。ただ、日本気圧バルク工業の製品は設定などがプログラムで管理されている。また、気圧差がある使用時は扉の開け閉めができないものの、インターホンによって常時、内外で会話ができる。つまり、安全や安心はしっかり確保されているわけだ。
「特に低圧低酸素ルームでは、息を吸っても入ってこないといった少し怖いイメージを持たれがちです。でも、だから危険ということはないですし、スポーツをしている方も一般の方も確かな効果が期待できる。そのことをこれから多くのみなさんに広めていくことが課題です」
井上院長が今の仕事で喜びややりがいを感じられるのは、OHANA鍼灸治療院を訪れた人たちが笑顔になった時だという。
「多くのみなさんは体が不調だったり、痛みを抱えたりして辛いわけです。ウチに来ていただいたことで痛みが和らいだり、楽になったりして笑顔になってくれたら、お手伝いして良かったなと思います。先日もケガをして来院してくれた中学生から『復帰して試合に勝ちました』と言われた時は本当にうれしかったです」
トップレベルで戦うアスリートも登山を楽しんでいる高齢者の方も、あらゆる人たちに〝生涯、好きなことを続けられる体づくり〟を提供する。井上院長は「〝治療から予防へ、そしてパフォーマンス向上へ〟をテーマに、患者様が自分の体を理解し、良いコンディションで過ごせるようにサポートを続けていきます」と力を込める。
OHANA鍼灸治療院はこれからも「家族のように寄り添う治療院」として、地域やスポーツ現場に貢献していくつもりだ。
OHANA 鍼灸治療院
東京都調布市国領町5-30-1(京王線 布田駅 徒歩3分)
一般治療、美容鍼灸、スポーツ鍼灸、レディース鍼灸、小児鍼パーソナルトレーニング、加圧トレーニング酸素ルーム(高気圧酸素、低圧低酸素)、インソール作成
ホームページ
Webで簡単予約
電話で予約・空き状況確認 080-4378-0870
※電話時は「健康にはりを見た」とお伝えください。
文/小野哲史、撮影/船越陽一郎
※この記事は『月刊陸上競技』2025年12月号に掲載しています
高気圧酸素と低圧低酸素の両方の環境を1台でつくれる日本気圧バルク工業の特許製品
2025年3月、東京都調布市の京王線布田駅からほど近い閑静な住宅街に「OHANA 鍼灸治療院」がオープンした。井上伸次院長(51歳)が大切にしているのは、「治療、運動、酸素、インソール」という4つの柱。そのなかで酸素は、自身もケガをした時期に実体験した日本気圧バルク工業の酸素ルーム「O2Room®」を導入し、一般の幅広い年齢層の人たちやさまざまな競技のトップアスリートまで、主に運動に携わる人たちを手厚くサポートして支持されている。 [caption id="attachment_190068" align="alignnone" width="800"]
井上院長は「治療、運動、酸素、インソール」という4つの柱で、プロスポーツ選手から一般患者まで幅広く対応している[/caption]
37歳から専門学校に通い、14年目の今年3月に開院
OHANA鍼灸治療院の「OHANA」とは、ハワイ語で「家族」を意味する。ハワイが好きな井上院長は、「患者様を家族の一員として捉え、〝生涯、好きなことが続けられる体づくり〟をサポートしたい」という思いを開院した治療院の名に込めた。 井上院長は、幼少期から大学まで競泳で活躍。大阪・北陽高校時代には400m個人メドレーでインターハイ3位になったこともある。大学卒業後はフィットネスクラブで働き、やがて独立して業務委託を受けたバスケットボールやラグビーなどの実業団チームで、選手のパフォーマンス向上のためのトレーニングやケガの治療などを担うストレングス&コンディショニングコーチを務めるようになる。 2005年から4年間は、かつて存在したプロバスケットボールチームの東京アパッチで、NBAのスーパースター、故コービー・ブライアントの父、ジョー・ブライアント監督のもとで働いた。 その傍ら、27歳からは自身がボディビルを始める。そこには「筋肉をつけたり減量したり、スポーツ選手の体をコントロールするには、自分で体験しないと説得力が生まれない」という考えがあった。ボディビルでは、関東圏の数々の大会で優勝するほど結果を残した。 [caption id="attachment_190276" align="alignnone" width="800"]
(左画像)以前はストレングス&コンディショニングコーチをしていた井上院長(左)。2005年から4年間は、かつて存在したプロバスケットボールチーム「東京アパッチ」で、ジョー・ブライアント監督(中央)のもとで働いていた。右は米国アスレティックトレーナーの資格を持つ妻の鎮子さん/(右画像)27歳からボディビルも始めていた井上院長。関東圏の数々の大会で優勝したキャリアがあるという[/caption]
ただ、そうした生活は井上院長の体を少しずつ傷つけていく。ボディビルのトレーニングに加え、コーチとして選手に見本の動きを繰り返すうちに、両膝の半月板を痛めてしまったのだ。
「変形質関節症という診断で、歩けなくなるほどでした。それが37歳。今後仕事をしていくのにまずいなと思い、鍼灸の専門学校に通い始めた矢先に手術をしました。そのため、松葉杖をつきながら専門学校に通っていました」
40歳で国家資格を取得してからは整形外科内のコンディショニングルームに勤務し、治療だけでなく、運動指導やリハビリ、パフォーマンス向上までを一貫してサポートしてきた。しかし、その後のコロナ禍が井上院長の背中を押すきっかけになる。
「膝が悪化して再度、両膝の手術をしました。しっかり歩けるようになるまで約3年かかりましたが、これから現場に出るのは難しい。ストレングス&コンディショニングコーチをやる前から治療家になりたかったこともあって、自分でやってみたいと開院することを決めました」
2階建ての家を新築して1階を治療院とし、今年3月のオープンに至った。
自身の実体験から〝酸素〟に注目、酸素療法を組み合わせた治療
開院にあたっては、「治療、運動、酸素、インソール」という4つの柱を中心に、症状の改善から再発予防、競技復帰、パフォーマンス向上まで一貫して支えることをイメージした。それぞれの患者に合わせた完全オーダーメイド治療を行い、鍼灸、電気、手技、運動、インソール、酸素の各療法を組み合わせた総合的なアプローチを目指してスタートを切った。 [caption id="attachment_190279" align="alignnone" width="800"]
OHANA鍼灸治療院のロゴマークにはさまざまな想いが込められている[/caption]
OHANA鍼灸治療院のロゴには、深みのある青い山に鮮やか3色の虹がかかっている。井上院長はその意図を「赤色は治療や血行促進、黄色は運動や活動的であること、青色は酸素や回復。山が高地トレーニングを表しています。また、Hの文字を2人の人のようにしたのは、家族のように手を携えて、患者様のゴールを一緒に目指したいという思いからです」と話す。
治療院として「治療」や「運動」を重視するのは理解しやすい。では、「酸素」に注目したのはどういう経緯だったのか。一つは自身の実体験によるところが大きい。
「八王子スポーツ整形外科で膝の手術をした後、酸素ルーム(O2Room®)に入ったことがあります。その時に『とても良いな』と感じ、もしかしたら酸素は体にとって絶対に必要なものなのかもしれないと考えるようになりました」
これまでのストレングス&コンディショニングコーチや整形外科での臨床経験を通して、「アスリートや一般の方の回復や再発予防、睡眠の質向上には、共通して酸素と呼吸の重要性を感じていた」とも言う。
また、自身でもインターネットや文献などで酸素について調べるにつれて、高気圧酸素には血行促進などのエビデンスが多くあることを知り、「ケガや疲労の回復、炎症の抑制には、酸素を取り入れることでより相乗効果が生まれる」という思いが固まっていく。
開院に向けて家を新築する際は、酸素ルームを設置する前提でレイアウトを考えた。
「患者様が安心感を持てる」日本気圧バルク工業製品を導入
酸素カプセルや酸素ルームのメーカーが数多くあるなかで、「内部で運動ができるものが良い」と考えていた井上院長は、カプセルではなく、ルームに注目する。そこで日本気圧バルク工業の「O2Room®」を導入した理由はいくつかあった。「安全性や操作性が高く、デザインも落ち着いていて患者様が安心感を持てる」というのは、自身がかつて八王子スポーツ整形外科で膝の手術後に同院で「O2Room®」を利用した時に感じたことだった。 日本気圧バルク工業代表取締役、天野英紀社長の熱意も大きく影響した。他メーカーも検討したが、担当者から感じたのは営業したいという前のめりな姿勢ばかり。それに対して、天野社長の話は「ウチの製品は壊れません」という自信がみなぎり、利用者への配慮や心遣いに溢れていた。日本体力医学会に所属し、複数の大学や病院と共同研究を続けてきたこと、そして何より酸素に関わる製品の販売を開始して以降30年間、一度も事故を起こしていないという説明も受け、井上院長の気持ちは固まった。 「この業界を長く牽引してきた老舗であり、現在も国内トップメーカー。社員の方々は日本体力医学会に所属し、毎年、論文発表も行っています。治療家としては、そうしたエビデンスが信頼につながりますから、導入の決め手になりました。改めて実際に酸素ルームを体験させていただくと、治療や運動療法に酸素をプラスすることの相乗効果は確信に変わりました」 日本気圧バルク工業の「O2Room®」には、もともと高気圧酸素ルームと低圧低酸素ルームがあり、その後、ユーザーからの要望で高気圧酸素と低圧低酸素の2つの環境を併用できる同社の特許製品「2way酸素ルーム」が開発された。 井上院長は「1台で高気圧酸素と低圧低酸素の両方を切り替えられるのは非常に魅力的。アスリートの高地トレーニングから一般の健康管理まで幅広く対応できる」と、2way酸素ルームを選択する。 [caption id="attachment_190070" align="alignnone" width="800"]
OHANA鍼灸治療院の2way酸素ルームは「スクエアタイプ」の特別バージョンで、高さ2.0m、幅1.5m、奥行き2.76mの大型サイズ。予定の置き場所にぴったり収まるようにオーダーメイドで製造された[/caption]
日本気圧バルク工業は本社と同じ静岡県内にある自社工場で製品を製造しているため、内装やカラーはもちろん、酸素ルーム自体の仕様や大きさまでが自由自在にオーダーメイドできる体制を整えている。
「サイズや部品の位置など、何回もやり取りしてこちらの細かいニーズを汲んでいただきました。ルーム内で運動用のサスペンションをぶら下げられるようにできたのも満足しています」と、開院前には井上院長が自信を持って来院者に提供できる酸素ルームが納品された。
[caption id="attachment_190075" align="alignnone" width="800"]
日本気圧バルク工業の2way酸素ルーム(O2Room®)は、サイズや部品の位置など細かいニーズにとことん対応してくれた[/caption]
[caption id="attachment_190077" align="alignnone" width="800"]
酸素ルーム内に運動用のサスペンションをぶら下げられるような工夫も施されていた[/caption]
1台で2つの環境を併用できる「2way酸素ルーム」のメリット
私たちは普段、1気圧で酸素濃度20.9%という環境の中で生活をしている。気圧が上がれば空気が凝縮され、酸素濃度も上がる。酸素のそうした性質を利用する2way酸素ルームは、高気圧酸素は人体に安全な1.3気圧、低圧低酸素は約0.72気圧までの範囲で設定可能。井上院長はそれぞれの特徴を次のように説明する。 「高気圧酸素ルームでは、通常よりも多くの酸素を取り込むことができます。体の隅々まで酸素が行き渡れば、血行促進やケガの早期回復、炎症や腫れ、むくみの軽減、疲労回復や気力・集中力の増加、ダイエット、睡眠の質の向上、口腔ケア、美肌など、さまざまな治療効果を高める期待ができるというエビデンスが出ています」 実際に、利用者からは「疲れが取れやすくなった」「体が軽くなったように感じる」「ぐっすり眠れるようになった」といった好評を得ている。 一方の低圧低酸素ルームは「疲労耐性の向上や持久力の強化などエネルギー代謝の改善が期待できます。特にアスリートの方には高地環境でのトレーニングモード(ウェーブモード)が人気で、標高3000m相当の負荷を体験できるのが特徴です」と言う。 [caption id="attachment_190079" align="alignnone" width="800"]
低圧低酸素は標高3000mまでの高地と同じ環境を実現でき、過酷な条件の中で漕ぐバイクトレーニングは非常にハードだ[/caption]
他メーカーの低酸素ルームは、常圧のままルーム内に窒素を入れることで酸素濃度を下げるものが多い。その点、日本気圧バルク工業の「O2Room®」は気圧を下げて低酸素にするため、よりリアルな高地環境を作ることができる。そこでトレーニングを行うと、心肺機能が向上し、ハイパワーやミドルパワーといった無酸素性能力も高まる。
もちろん、一般の人たちも利用でき、「手足が冷えにくくなった」「体力がついた」などと感じるようになった人が増えているそうだ。
OHANA鍼灸治療院を訪れる顧客は、競技の違いやレベルの高低こそあるが、トップアスリートを含め、中学生から高齢者まで日頃から運動を行っている人が圧倒的に多い。井上院長はそうした幅広い層の顧客に対し、「当院では一般的な治療だけでなく、運動も治療、酸素ルームも治療、インソールも治療だと考えています。患者様に合ったオーダーメイドプランを提案させていただいております」と、パーソナルトレーニングのイメージで顧客に接している。
[caption id="attachment_190081" align="alignnone" width="800"]
酸素ルーム内に折りたたみ式ベッドを持ち込み、微弱電流(MCRマイクロカレント)を活用しながら体を整えることもしばしば[/caption]
「低圧低酸素内では血管が拡張します。血管が拡張すれば血行が良くなる。自然治癒力を上げる目的の治療も運動も、血行を良くすることを目指しますから、そこでは共通しています。手段の違いがあるだけだと思っています」
[caption id="attachment_190082" align="alignnone" width="800"]
治療用のベッドで施術をしながら高気圧酸素の環境に入ってもらうこともあるという[/caption]
〝生涯、好きなことを続けられる体づくり〟を目指して
2way酸素ルームを導入した1年目ですでに多くの成果を実感している井上院長だが、「まだまだ可能性がある分野」とも考えている。 「たとえばケガや疲労の回復にしても、低圧低酸素に入ってから高気圧酸素に入った方が良いというエビデンスも出ています。私自身も実験のために低圧低酸素から高気圧酸素に入ると、膝の腫れやむくみが減るように感じます。酸素と体の関係はまだわからないことがたくさんあって、これからもどんどん試していきたいと思っています」 また、酸素ルームに関して、広く正しく認知されていない面もある。OHANA鍼灸治療院の玄関先には、「O2Room®」の幟(のぼり)が風に揺れてはためいている。酸素ルームを見学できることも謳っているが、それらを見て訪れてくる人はそう多くない。 「幟は目につくので、酸素カプセルのようなものがあることは知っていただいていると思います。でも、おそらく酸素ルームの詳細はよく知らないという人が大多数。今、ウチの利用者のほとんどは口コミです」 酸素カプセルや酸素ルームを危険と感じている人も多いかもしれない。ただ、日本気圧バルク工業の製品は設定などがプログラムで管理されている。また、気圧差がある使用時は扉の開け閉めができないものの、インターホンによって常時、内外で会話ができる。つまり、安全や安心はしっかり確保されているわけだ。 [caption id="attachment_190084" align="alignnone" width="800"]
OHANA鍼灸治療院ではリハビリからスポーツ特有の動作まで、いくつもの異なるトレーニングに使用することができ、最も基本的で多用途のケーブルマシン「ファンクショナルトレーナー」も有効に活用している[/caption]
「特に低圧低酸素ルームでは、息を吸っても入ってこないといった少し怖いイメージを持たれがちです。でも、だから危険ということはないですし、スポーツをしている方も一般の方も確かな効果が期待できる。そのことをこれから多くのみなさんに広めていくことが課題です」
井上院長が今の仕事で喜びややりがいを感じられるのは、OHANA鍼灸治療院を訪れた人たちが笑顔になった時だという。
「多くのみなさんは体が不調だったり、痛みを抱えたりして辛いわけです。ウチに来ていただいたことで痛みが和らいだり、楽になったりして笑顔になってくれたら、お手伝いして良かったなと思います。先日もケガをして来院してくれた中学生から『復帰して試合に勝ちました』と言われた時は本当にうれしかったです」
[caption id="attachment_190086" align="alignnone" width="800"]
井上院長は〝生涯、好きなことが続けられる体づくり〟を目指して来院者と向き合っている[/caption]
トップレベルで戦うアスリートも登山を楽しんでいる高齢者の方も、あらゆる人たちに〝生涯、好きなことを続けられる体づくり〟を提供する。井上院長は「〝治療から予防へ、そしてパフォーマンス向上へ〟をテーマに、患者様が自分の体を理解し、良いコンディションで過ごせるようにサポートを続けていきます」と力を込める。
OHANA鍼灸治療院はこれからも「家族のように寄り添う治療院」として、地域やスポーツ現場に貢献していくつもりだ。
OHANA 鍼灸治療院
東京都調布市国領町5-30-1(京王線 布田駅 徒歩3分)
一般治療、美容鍼灸、スポーツ鍼灸、レディース鍼灸、小児鍼パーソナルトレーニング、加圧トレーニング酸素ルーム(高気圧酸素、低圧低酸素)、インソール作成
ホームページ
Webで簡単予約
電話で予約・空き状況確認 080-4378-0870
※電話時は「健康にはりを見た」とお伝えください。
[caption id="attachment_190095" align="alignnone" width="800"]
OHANA鍼灸治療院は京王線布田駅から徒歩3分の閑静な住宅街にある[/caption]
文/小野哲史、撮影/船越陽一郎
※この記事は『月刊陸上競技』2025年12月号に掲載しています RECOMMENDED おすすめの記事
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2025.11.13
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一般社団法人 服部真二 文化・スポーツ財団は11月13日、都内で「第8回服部真二賞」の受賞式を開き、女子やり投の北口榛花(JAL)が受賞し、200万円と江戸切子とクオーツ時計を組み合わせたオリジナルトロフィーが贈呈された […]
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