2025.04.29
きっかけは学校の「強歩大会」
生まれは千葉県松戸市。小学校から兵庫県西宮市へ転居した。4歳上に姉がおり、子どもの頃はかけっこでいつも負けていたのが悔しかった。中学受験で中高一貫の六甲学院に進学するとサッカー部に入部。身体がそこまで大きくない秋吉はプレーでよく当たり負けをしていたという。
そんな秋吉が長距離の素質に気づいたきっかけが、学校の名物行事である「強歩大会」。約30kmを中1から高2までが一斉に走り、秋吉は中2でいきなり全校1位になった。
高校から陸上部へ。高1の4月に初めて出た神戸地区記録会では1500m4分27秒56、5000m16分35秒31だった。秋吉の最初の目標は、全国の多くの高校生がそうであるように「県大会に出ること」。サッカー部で県大会に出られなかった秋吉にとって、陸上部に移ったことを正当化するためでもあった。
8月の県ユース大会学年別で1年時から県大会出場という目標をさっそく達成。その後も記録が少しずつ伸び、5000m県ユース2年の部で15分30秒92をマーク(11位)。神戸地区高校選手権では優勝も果たした。「小さな成功体験を積み重ねることで陸上の楽しさを感じていきました」。もっと強くなりたいという向上心にもどんどん火がついた。
高3の4月の兵庫陸協春季記録会で高校ベストとなる14分58秒94をマーク。自信をつけた秋吉は5月の県総体で「あわよくば近畿大会を」と挑んだ。
しかし、1学年下の長嶋幸宝(西脇工高、現・旭化成)と前田和摩(報徳学園高、現・東農大3)ら強者たちの前に圧倒的な力の差を見せつけられ、15分11秒47で9位に終わる。それでも「東大に進み箱根に出場したい」と猛勉強し、現役で理科Ⅰ類に合格した。
秋吉が幸運だったのは、東大に入学した2022年に近藤コーチが就任したこと。加えて、大学院も含めた長距離パートに古川大晃、森田雄貴、瀬川莉玖、本多健亮といった5000m14分台前半の記録を持つ先輩部員がそろっていたことだ。
「入学前は勝手に『東大なら自分が入って即エースだろう』と思っていましたが、こんなに速い人たちが東大生にもいるんだと衝撃でした」
自分より速い人がいたら勝ちたいと思うのが秋吉の性格。チームメートと競い合い、近藤コーチの的確なメニューと、自信を持たせる声掛けがマインドセットとなり、4年間で学生トップを争うレベルにまで成長する要因となった。
この4月には昨年のU20日本選手権800mで1分47秒80のタイムで優勝した吉澤登吾が入学。「種目は違えど高いレベルで戦っている選手がいると燃える性格なので、彼の結果にも刺激を受けながらやっていきたいですね」と話す。
そして、陸上を続けることを志す高校生たちにもエールも送る。「僕は受験か部活かで絞らず、両方やりたいことをやってきたことが今に生きています。レベルの高いところを目指す時に、何かを犠牲にしなければならないと考えるのではなく、両方あきらめずにやってほしいですね」。
何事にもがむしゃらに取り組んできた秋吉。今後も強い選手たちと競い合い、虎視眈々とレースで上位を狙っていく。
◎あきよし・たくま/2003年5月23日生まれ、千葉県松戸市出身。兵庫・六甲学院中→六甲学院高→東大。自己記録5000m13分50秒09、10000m28分45秒62、ハーフマラソン1時間1分38秒。
文/荒井寛太
東大の秋吉拓真[/caption]
学生長距離Close-upインタビュー
秋吉拓真 Akiyoshi Takuma 東大4年「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。47回目は、東大の秋吉拓真(4年)をピックアップする。東大入学後に大きく記録を短縮し、今年1月の箱根駅伝では関東学生連合チームで出場。4月の東京六大学対校では5000mで優勝するなど勢いに乗る。最終学年で迎える2025年シーズン。どういった思いで戦っていくのか目標やこれまでの歩みを聞いた。東京六大学で会心のスパート
残り250mで会心のスパートが炸裂した。4月5日に行われた東京六大学対校5000mで、東大の秋吉拓真(4年)が13分51秒23で初優勝を飾った。強豪校がそろう対校戦では初のタイトルだ。前回も自ら勝負を仕掛けたが、ラスト80mで早大の間瀬田純平(現・4年)に差し切られて2位に終わっていた。「今年は1位にこだわり、最後に仕掛けるところも冷静に見極めて勝ちきれました」。“山の名探偵”こと早大の工藤慎作(3年)が序盤はハイペースでレースを作ったが、ラストのキレには絶対の自信を持っていた。負けず嫌いで野性味のある走りが強みで、理詰めで考えるタイプではない。「東大の特徴として年間を通して対校戦が多く、勝負レースを積み重ねてきたことで仕掛けるタイミングや切り替え方を実践の中で磨いてきました」。溜めに溜めたラスト1周、研ぎ澄まされた秋吉の勝負勘にスイッチが入る。「ここしかないと、タイミングを逃さず思い切り出ました」。歓喜のフィニッシュとなった。正月には念願の箱根駅伝に出場。関東学生連合チームの8区を担い区間7位相当と健闘した。その後も秋吉はさらに強さを増している。2月の日本学生ハーフで1時間1分38秒、3月には日体大長距離競技会10000mで28分45秒62と自己新を連発した。「箱根に出ることができ、大きな目標を達成したという感じはありました。しかし、まだまだ上の選手がいると実感するとともに、彼らに勝ちたいという気持ちが芽生えました」。年明けから、近藤秀一コーチとともにもう一段階高い設定で練習に取り組み始めた今後狙うのは関東インカレや日本インカレでの入賞、そして日本選手権5000mの参加標準記録(13分38秒00)だ。関東インカレは2部で青学大、駒大、國學院大といった箱根上位校の選手たちとも戦う。「一人でも多くの選手に勝ちたい。自分の力を100%発揮して、みんなが驚くような番狂わせを演じたいですね」。冬場に積み重ねた練習の成果を大舞台で爆発させる意欲に燃えに燃えている。きっかけは学校の「強歩大会」
生まれは千葉県松戸市。小学校から兵庫県西宮市へ転居した。4歳上に姉がおり、子どもの頃はかけっこでいつも負けていたのが悔しかった。中学受験で中高一貫の六甲学院に進学するとサッカー部に入部。身体がそこまで大きくない秋吉はプレーでよく当たり負けをしていたという。そんな秋吉が長距離の素質に気づいたきっかけが、学校の名物行事である「強歩大会」。約30kmを中1から高2までが一斉に走り、秋吉は中2でいきなり全校1位になった。高校から陸上部へ。高1の4月に初めて出た神戸地区記録会では1500m4分27秒56、5000m16分35秒31だった。秋吉の最初の目標は、全国の多くの高校生がそうであるように「県大会に出ること」。サッカー部で県大会に出られなかった秋吉にとって、陸上部に移ったことを正当化するためでもあった。8月の県ユース大会学年別で1年時から県大会出場という目標をさっそく達成。その後も記録が少しずつ伸び、5000m県ユース2年の部で15分30秒92をマーク(11位)。神戸地区高校選手権では優勝も果たした。「小さな成功体験を積み重ねることで陸上の楽しさを感じていきました」。もっと強くなりたいという向上心にもどんどん火がついた。高3の4月の兵庫陸協春季記録会で高校ベストとなる14分58秒94をマーク。自信をつけた秋吉は5月の県総体で「あわよくば近畿大会を」と挑んだ。しかし、1学年下の長嶋幸宝(西脇工高、現・旭化成)と前田和摩(報徳学園高、現・東農大3)ら強者たちの前に圧倒的な力の差を見せつけられ、15分11秒47で9位に終わる。それでも「東大に進み箱根に出場したい」と猛勉強し、現役で理科Ⅰ類に合格した。秋吉が幸運だったのは、東大に入学した2022年に近藤コーチが就任したこと。加えて、大学院も含めた長距離パートに古川大晃、森田雄貴、瀬川莉玖、本多健亮といった5000m14分台前半の記録を持つ先輩部員がそろっていたことだ。「入学前は勝手に『東大なら自分が入って即エースだろう』と思っていましたが、こんなに速い人たちが東大生にもいるんだと衝撃でした」自分より速い人がいたら勝ちたいと思うのが秋吉の性格。チームメートと競い合い、近藤コーチの的確なメニューと、自信を持たせる声掛けがマインドセットとなり、4年間で学生トップを争うレベルにまで成長する要因となった。この4月には昨年のU20日本選手権800mで1分47秒80のタイムで優勝した吉澤登吾が入学。「種目は違えど高いレベルで戦っている選手がいると燃える性格なので、彼の結果にも刺激を受けながらやっていきたいですね」と話す。そして、陸上を続けることを志す高校生たちにもエールも送る。「僕は受験か部活かで絞らず、両方やりたいことをやってきたことが今に生きています。レベルの高いところを目指す時に、何かを犠牲にしなければならないと考えるのではなく、両方あきらめずにやってほしいですね」。何事にもがむしゃらに取り組んできた秋吉。今後も強い選手たちと競い合い、虎視眈々とレースで上位を狙っていく。[caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
東京六大学対校5000mで優勝した秋吉[/caption]◎あきよし・たくま/2003年5月23日生まれ、千葉県松戸市出身。兵庫・六甲学院中→六甲学院高→東大。自己記録5000m13分50秒09、10000m28分45秒62、ハーフマラソン1時間1分38秒。文/荒井寛太RECOMMENDED おすすめの記事
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