2024.12.24
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。
周りの期待と失いかけた自信
この苦悩は誰しもが理解できるものではないかもしれない。周りからの期待値が高いからこそ、自身が求めるものも大きい。順大・吉岡大翔(2年)が過ごしてきたこれまでの大学生活は、まさに見えないトンネルの出口を探すような日々だった。
長野・佐久長聖高時代の吉岡は、まさに超高校級のランナーとしてその名を轟かせていた。3年時の11月には5000mで、日本人高校生初の13分30秒切りを飛び越え、13分10秒台に迫る特大高校新(13分22秒99)をマーク。駅伝でも全国高校駅伝3区(8.1075km)で日本人最高の22分51秒、都道府県対抗駅伝でも5区(8.5km)で区間新(23分52秒)と無類の強さを誇った。
だが、大学では思うような結果を得られない時期が続く。1年目、9月の日本インカレこそ日本人トップの4位に入るも、駅伝では出雲駅伝は1区10位、全日本大学駅伝3区14位と苦戦。箱根は4区8位と健闘するも、「ほとんど単独走で、あまり手応えのないまま、あっという間に終わってしまいました」と振り返る。
それでも、「5000m高校記録保持者」の肩書きはつきまとい、思い悩む時期もあった。「あの頃はどん底すぎて、『自分なんかに注目しないで、他の人に話を聞けば良いのに」と思うことすらありましたね。個人のレースも結果が出ないし、駅伝でも順位を下げるだけで、何のために走っているんだろうと考えたりもしていました」。ネガティブに考えてしまうようになっていた。
そんな時に吉岡に声をかけたのが、高校時代の恩師である高見澤勝先生だった。
「高校時代から、『陸上は苦しさ9割、喜び1割で、苦しんだからこそ喜びが得られる』と言われていました。先生からは『高校時代に苦しまずに結果が出てしまったから、今は良い経験をしているんだよ』と。そう考えるとこの期間も決して無駄ではないと思えるようになりました」
さらに今季からチームに加わった今井正人、田中秀幸(トヨタ自動車)の両コーチの存在も大きかった。
「今井コーチは結果が出ないことを自分のように悔しがってくれますし、田中コーチは選手として、自らも結果を出されている。一緒に練習している立場としては大きな自信をもらえて、いろいろな面で支えてもらっています」とプラスに働いているようだ。
周りの期待と失いかけた自信
この苦悩は誰しもが理解できるものではないかもしれない。周りからの期待値が高いからこそ、自身が求めるものも大きい。順大・吉岡大翔(2年)が過ごしてきたこれまでの大学生活は、まさに見えないトンネルの出口を探すような日々だった。 長野・佐久長聖高時代の吉岡は、まさに超高校級のランナーとしてその名を轟かせていた。3年時の11月には5000mで、日本人高校生初の13分30秒切りを飛び越え、13分10秒台に迫る特大高校新(13分22秒99)をマーク。駅伝でも全国高校駅伝3区(8.1075km)で日本人最高の22分51秒、都道府県対抗駅伝でも5区(8.5km)で区間新(23分52秒)と無類の強さを誇った。 だが、大学では思うような結果を得られない時期が続く。1年目、9月の日本インカレこそ日本人トップの4位に入るも、駅伝では出雲駅伝は1区10位、全日本大学駅伝3区14位と苦戦。箱根は4区8位と健闘するも、「ほとんど単独走で、あまり手応えのないまま、あっという間に終わってしまいました」と振り返る。 それでも、「5000m高校記録保持者」の肩書きはつきまとい、思い悩む時期もあった。「あの頃はどん底すぎて、『自分なんかに注目しないで、他の人に話を聞けば良いのに」と思うことすらありましたね。個人のレースも結果が出ないし、駅伝でも順位を下げるだけで、何のために走っているんだろうと考えたりもしていました」。ネガティブに考えてしまうようになっていた。 そんな時に吉岡に声をかけたのが、高校時代の恩師である高見澤勝先生だった。 「高校時代から、『陸上は苦しさ9割、喜び1割で、苦しんだからこそ喜びが得られる』と言われていました。先生からは『高校時代に苦しまずに結果が出てしまったから、今は良い経験をしているんだよ』と。そう考えるとこの期間も決して無駄ではないと思えるようになりました」 さらに今季からチームに加わった今井正人、田中秀幸(トヨタ自動車)の両コーチの存在も大きかった。 「今井コーチは結果が出ないことを自分のように悔しがってくれますし、田中コーチは選手として、自らも結果を出されている。一緒に練習している立場としては大きな自信をもらえて、いろいろな面で支えてもらっています」とプラスに働いているようだ。取り戻しつつある本来の走り
2年目のシーズンも結果だけを見れば、思うようにいかないことが多かったかもしれない。5月の関東インカレ前には鼻水と咳が出る症状が長引き、夏場には一時体重がピークよりも4kg落ちた時期も。10月の箱根予選会は元に戻った矢先のレースとなり、その後はインフルエンザの予防接種による発熱にも見舞われた。「決められたレースの日程に合わせていけなかったことは弱さです」と反省する。 一方、練習ではより良い取り組みを模索し続けた。1年目は距離への対応やポイント練習に意識が行き過ぎ、疎かにしがちだったジョグの改善に着手。「自分の持ち味を考えると、質の良いジョグをしっかりやること。そこで走りのリズムも良くなっている実感があります」と光明を見い出した。 今では「練習はやってすぐに結果が出るものではないのはわかっていますが、実際に全員の練習を見たことがあるわけではないですが、全大学のどの選手よりも質が良いジョグをしている自信があります」と手応えを感じている。 11月9日に出場した日体大長距離競技会10000mで28分26秒75の自己新をマーク。それ以上に「記録会ですけど勝負にもこだわりました」と吉岡。レースの大半を先頭で引っ張りながら、最後もしっかり勝ち切って組トップを占め、「記録以上に思い通りの走りができた」と笑顔を見せた。 長門俊介駅伝監督も「彼の期待値からすると、まだ物足りないと評価される人もいるかもしれないけど、チームのために長い距離に取り組むなど、確実に成長はしています。このレースは浮上のきっかけにもなったと思います」と感じている。 2度目の箱根駅伝では、下級生がエントリー10人を占める若いチームにあって、主力を任される存在となる。「どの区間を走るかよりも、どういう走りをするかが大事。予選会の結果から一番順位を上げていけるのは自分たちなので、上を目指していければ」と力強い。 完全復活まではまだ道半ばかもしれない。それでも、かつての輝きは取り戻しつつある感覚はある。「長門監督をはじめ、周りの人々は悪い時でも声をかけて支えてくれました。本当に感謝しかないですね」。 チームのため、そして何より苦しい時期に支えてくれた人たちに恩返しの走りを見せるつもりだ。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"]
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