HOME 学生長距離

2024.12.24

箱根駅伝Stories/中央学大・近田陽路 絶対的エースをお手本に 「自分のやってきたことを信じている」
箱根駅伝Stories/中央学大・近田陽路 絶対的エースをお手本に 「自分のやってきたことを信じている」

副キャプテンとして高い意識を持って取り組んできた中央学大・近田陽路

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

前回の経験を糧に成長

「あの経験があるから今があると思っています」。そう語る中央学大の近田陽路(3年)にとって「あの経験」とは、9区で区間最下位に沈んだ今年の第100回箱根駅伝だ。

広告の下にコンテンツが続きます

「1週間前までは調子が良かったのですが、初めての箱根駅伝で緊張しました。当日は曇りで、思ったよりも涼しかった。走る前にあまり水分を摂らずにスタートしたら、脱水のような感じになってしまって・・・・・・」

本来の力を発揮できず、チームは15位から21位に転落する。中央学大としては25年ぶりの鶴見中継所での繰り上げスタートとなった。「タスキを(10区の)キャプテン・飯塚達也さん(現・山陽特殊製鋼)につなげなかったのが、1番悔いに残ります」。近田はあの日を思い出すと、今でも胸の奥がチクリと痛む。

しかし、ただ「悔しい」だけで終わらなかった。「次の箱根では9区で区間賞を取る」と心に決め、ジョグの距離を延ばすなど、それまでの練習を見直した。すると、2月の丸亀ハーフマラソンで従来の自己記録を1分07秒も更新する1時間2分08秒の大幅自己新。さらに3月の日本学生ハーフでは、2位集団の中で残り1kmからロングスパートを仕掛け、1時間2分19秒で2位を占めた。

「学生ハーフは特に目標を立てませんでしたが、いざ走り出すと上位で走ることができて、途中で『これは1位か2位に行けるんじゃないか』と。そこから自分の出せる力をすべて出し切ったら2位でゴールできました。かなり自信がつきました」

広告の下にコンテンツが続きます

新年度が始まり、3年生となった近田。上級生として、また、新チームが始動した時に就任した副キャプテンとして、「走りの面だけでなく、他の人から慕われるような、本当に尊敬されるような人にならないといけない」と考えた。

お手本にしたのは、チームの絶対的エースで、強烈なキャプテンシーを持つ吉田礼志(4年)だ。「礼志さんの背中を追って、あの人がどんなふうに行動しているかを見て、真似できる部分は真似をしました」と話す。

「(川崎勇二)監督もよく言っていることですが、挨拶や掃除、時間の厳守は今まで以上に徹底するようにしました。勉強も苦手ですが、しっかり出席して、苦手なりにも単位は取得できるように努力しているつもりです」

競技面でもレベルアップするためにやれることはすべてやった。「自分はスピードが足りません。そこを鍛えるためにも日々のジョグが終わった後に流しを少し多く走ったり、 体幹が弱いので、下腹部を強くするためにダンベルを持って補強をしたり。走りの根本である持久力を培うためにも、人一倍走ることも続けました」。

新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。

前回の経験を糧に成長

「あの経験があるから今があると思っています」。そう語る中央学大の近田陽路(3年)にとって「あの経験」とは、9区で区間最下位に沈んだ今年の第100回箱根駅伝だ。 「1週間前までは調子が良かったのですが、初めての箱根駅伝で緊張しました。当日は曇りで、思ったよりも涼しかった。走る前にあまり水分を摂らずにスタートしたら、脱水のような感じになってしまって・・・・・・」 本来の力を発揮できず、チームは15位から21位に転落する。中央学大としては25年ぶりの鶴見中継所での繰り上げスタートとなった。「タスキを(10区の)キャプテン・飯塚達也さん(現・山陽特殊製鋼)につなげなかったのが、1番悔いに残ります」。近田はあの日を思い出すと、今でも胸の奥がチクリと痛む。 しかし、ただ「悔しい」だけで終わらなかった。「次の箱根では9区で区間賞を取る」と心に決め、ジョグの距離を延ばすなど、それまでの練習を見直した。すると、2月の丸亀ハーフマラソンで従来の自己記録を1分07秒も更新する1時間2分08秒の大幅自己新。さらに3月の日本学生ハーフでは、2位集団の中で残り1kmからロングスパートを仕掛け、1時間2分19秒で2位を占めた。 「学生ハーフは特に目標を立てませんでしたが、いざ走り出すと上位で走ることができて、途中で『これは1位か2位に行けるんじゃないか』と。そこから自分の出せる力をすべて出し切ったら2位でゴールできました。かなり自信がつきました」 新年度が始まり、3年生となった近田。上級生として、また、新チームが始動した時に就任した副キャプテンとして、「走りの面だけでなく、他の人から慕われるような、本当に尊敬されるような人にならないといけない」と考えた。 お手本にしたのは、チームの絶対的エースで、強烈なキャプテンシーを持つ吉田礼志(4年)だ。「礼志さんの背中を追って、あの人がどんなふうに行動しているかを見て、真似できる部分は真似をしました」と話す。 「(川崎勇二)監督もよく言っていることですが、挨拶や掃除、時間の厳守は今まで以上に徹底するようにしました。勉強も苦手ですが、しっかり出席して、苦手なりにも単位は取得できるように努力しているつもりです」 競技面でもレベルアップするためにやれることはすべてやった。「自分はスピードが足りません。そこを鍛えるためにも日々のジョグが終わった後に流しを少し多く走ったり、 体幹が弱いので、下腹部を強くするためにダンベルを持って補強をしたり。走りの根本である持久力を培うためにも、人一倍走ることも続けました」。

「今までは頼ってばかりいた」

そうした積み重ねが、5000mで4月に14分05秒70、7月に14分00秒97の自己ベストにつながる。「13分台を出したかったので悔しいですが、今までの自分と比べるとかなり強化できたと思います」と手応えを感じていた。 ただ、チームは全日本大学駅伝関東地区選考会で総合11位と結果を残せなかった。夏合宿に入ると、選手たちがどこかまとまりを欠いていた。普段ならそこで主将の吉田が引き締めるところだったが、吉田は実業団の合宿で不在だった。 川崎監督から「お前がチームをまとめないとダメなんだぞ。来年は(吉田)礼志がいないんだから、お前がやらないと」と諭され、近田は「今までは礼志さんに頼ってばかりいた」ことに気づいたという。 近田から見て吉田は、練習で妥協せず、走力も学生長距離界でトップクラスというだけでなく、本当の意味でのキャプテンだった。 「礼志さんは、人に厳しいことを言える人です。後輩やチームメイトにきつく言うと、どうしても嫌われるかもしれないと考えてしまう。でも、そういうことを気にしていると、チームとしても個人としても良くなりません。礼志さんの、悪いことは悪いと指摘して、その人を正すというか、チームを良い方向に持っていける部分を見習っていきたいと思っています」 近田なりにそういう姿勢を見せ、練習も妥協なく取り組むようになると、チームも次第にまとまりが出てきた。吉田は夏合宿後半にチームに合流した際、「みんなの雰囲気がすごく良くなっていて、うれしかった」と語っている。 10月の箱根駅伝予選会では、5位通過という結果に喜べなかったのは、本気でトップ通過を狙っていたから。それだけチーム状態は良かった。近田も日本人トップの10位で走った吉田に次ぐ、チーム2番手(18位)で走り切り、しっかりと役割を果たした。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 10月の箱根駅伝予選会ではチーム内2番手の18位だった近田陽路[/caption] その後、11月に10000mで29分05秒59の自己ベストをマークしたのち、上尾ハーフは「疲れが溜まっていたのもあるかもしれません」とやや精彩を欠いた。しかし、本戦に向けては、「自分のやってきたことを信じているので、このまま行けば区間賞は取れると思っています」と不安は少しもない。 自身の武器を「粘り強さ」だと言い切る。「普通はきつくなるとタイムを落としてしまいますが、自分は1km3分ちょっとに抑えられるので、大きなミスをあまりしないのが強み。箱根で自分が一番活躍できるのは9区だと思っています」 チームの目標は総合5位。強豪校がひしめくなか、非常にハイレベルな目標だが、「かなり楽しみです。本当にやってやるぞという気持ちが強いです」とを心待ちにしている。 こんだ・ひろ/2003年12月3日生まれ。愛知県豊橋市出身。愛知・羽田中→愛知・豊川高。5000m14分00秒97、10000m29分05秒59、ハーフ1時間2分08秒 文/小野哲史

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.15

小原響が3000m障害で8分22秒64の日本歴代8位!セイコーGGPに続く自己新マーク

6月14日に米国・ポートランドで行われたポートランド・トラックフェスティバルの男子3000m障害で、小原響(GMOインターネットグループ)が日本歴代8位の8分22秒64をマークした。 大会は世界陸連コンチネンタルツアー・ […]

NEWS 久保凛が800m2分02秒76の大会新でV3!! 1500mと2年連続2冠「チームへの貢献を考えていた」/IH近畿

2025.06.15

久保凛が800m2分02秒76の大会新でV3!! 1500mと2年連続2冠「チームへの貢献を考えていた」/IH近畿

◇インターハイ近畿地区大会(6月12~15日/京都市・たけびしスタジアム京都)4日目 広島インターハイを懸けた近畿地区大会の4日目が行われ、女子800mは久保凛(東大阪大敬愛3大阪)が昨年自らがマークした大会記録を0.7 […]

NEWS 青学大・塩出翔太が10000m28分55秒81の自己新!800mは金子1分46秒59、日本インカレ400m2連覇の田邉1分48秒16/日体大長距離競技会

2025.06.15

青学大・塩出翔太が10000m28分55秒81の自己新!800mは金子1分46秒59、日本インカレ400m2連覇の田邉1分48秒16/日体大長距離競技会

第322回日本体育大学長距離競技会兼第16回NITTAIDAI Challenge Games(NDG)の1日目が6月14日に行われ、雨のなか、各組で好レースが繰り広げられた。 男子10000mでは2組で1着(28分53 […]

NEWS 中大勢が海外5000mレースで好走!溜池一太が13分25秒11の自己新、濵口大和は自己2番目13分37秒54

2025.06.15

中大勢が海外5000mレースで好走!溜池一太が13分25秒11の自己新、濵口大和は自己2番目13分37秒54

6月14日にオーストリア・ウィーンで行われた「Track Nigh Vienna」の5000mに中大の溜池一太(4年)とルーキー・濵口大和が出場し、溜池は13分25秒11の自己新、濵口も13分37秒54のセカンドベストを […]

NEWS 3000m障害・青木涼真が8分23秒58で3位!5年連続世界大会出場目指して好走/WAコンチネンタルツアー

2025.06.15

3000m障害・青木涼真が8分23秒58で3位!5年連続世界大会出場目指して好走/WAコンチネンタルツアー

男子3000m障害の青木涼真(Honda)が6月14日、オーストリア・ウィーンで行われた「Track Nigh Vienna」に出場し、8分23秒58で3位に入った。 青木は一昨年のU23欧州王者であるA.キヤダ(スペイ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top