2024.09.14
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第257回「国内初の正式な400mトラック」(井上 敦)

彌彦神社競技場の碑。嘉納治五郎が揮毫した
さて、パリで大きな成果を挙げた日本陸上界ですが、それも一朝一夕ではなく、黎明期から先人たちの積み重ねがあったからこそ。そこで唐突ですが、一つ昔話を。
昨年の当コラムで、現存する国内最古の陸上競技場は新潟県柏崎市の柏崎市陸上競技場(1923年竣工)と紹介しましたが、日本初となる正式な400mトラックの陸上競技場も新潟県にあったと伝えられています。
それが弥彦村にあった「彌彦神社競技場」です。1919年(大正8年)5月に完成し、開場は6月1日。朝ドラ「虎に翼」のロケ地にもなった弥彦神社の北東に設置されました。その場所には、1880年代に明訓校と呼ばれる私立学校があったそうです。
明治末期の大火による弥彦神社の再建事業として、当時の宮司が県民の体育意識の高揚などを目的に陸上競技場を建設しました。これが、本邦初の400mトラックを持つ陸上競技場とされています。
当然ながら現在のような設備はありませんが、それでも莫大な費用が必要で、長岡市の宝田石油(日本石油/現・ENEOSホールディングスの前身)が巨額を奉納しました。開場から3年後には、当時の大日本体育協会会長で、IOC委員を務めた嘉納治五郎が揮毫した碑が設置されました。
弥彦神社競技場では、県下青年団の体育大会や旧制中学校男子大会など、さまざまな競技会の会場となりました。また全国から選手が集まり、合宿なども盛んに行われたそうです。
しかし、戦後は復興の資金調達を目的に、彌彦神社競技場の跡地に1950年(昭和25年)、弥彦競輪場が設置されます。当時、「陸上競技場ではお金にならない」という声があったとか……(最近も某ナショナルスタジアムでよく聞きますけど)。こうして、日本最初の400mトラックの陸上競技場は姿を消しました。
神社や温泉など観光地の弥彦村でしたが、競輪場からの収入もあり、復興が進むと財政面も豊かになってきます。
弥彦村では1993年から20年間にわたり、全国選抜招待高校駅伝弥彦大会が毎年3月下旬に開催されていました。全国から多数集まり、タスキをつなぎましたが、全国高校駅伝の上位入賞校など一部は、大会名のとおり招待されていました。ほかにも出場校の名前が入ったのぼり旗が用意され、沿道にはびっしりと並んでいました。
私も1996年に出場しましたが、前年の全国高校駅伝優勝校・西脇工(兵庫)、田村(福島)、大牟田(福岡)、清風(大阪)などが参戦。男子は県内外合わせて約60チームが参加していたと思います。
直接的な関係があるかは別として、村が大会を開催できるだけの財政的な余裕があったはずです。400mの陸上トラックが競輪のバンクに変わり、時を経て、陸上競技の普及に還元されていたと思いたいです。
嘉納治五郎が揮毫した碑は現在も残っています。以前はフェンスで囲まれ、競輪場の敷地外からは近づけませんでしたが、今春にフェンスの一部を取り外し、外から入れるようになりました。先日行ってきましたが、碑の横には、競技場の歴史を紹介し、当時の写真を盛り込んだボードも設置されています。
新しい時代を切り拓く活躍に胸を躍らせつつ、古きを知る夏でした。
井上 敦(いのうえ あつし) 1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。中学で陸上部に入部して最初は100mを始めたものの、夏には400mに転向し、結果的には県大会に進めなかった。しかし、3年秋の駅伝で区間賞獲得やチームの県大会出場をきっかけにまたまた転向を決意。高校は中距離をメインに、2年の県新人戦1500mで6位に入ったのが最高成績だった。 |
過去の編集部コラムはこちら
第257回「国内初の正式な400mトラック」(井上 敦)
[caption id="attachment_146526" align="alignnone" width="800"]
井上 敦(いのうえ あつし) 1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。中学で陸上部に入部して最初は100mを始めたものの、夏には400mに転向し、結果的には県大会に進めなかった。しかし、3年秋の駅伝で区間賞獲得やチームの県大会出場をきっかけにまたまた転向を決意。高校は中距離をメインに、2年の県新人戦1500mで6位に入ったのが最高成績だった。 |
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