2024.09.12
全日本選考会で粘走。夢のマラソンへ
「全日本への思いで変わりました。やれることをやろうと」。スランプ中ももやるべきことはやってきたという自負があり、全日本大学駅伝関東地区選考会へ向けて「チームに還元するために頑張ろう」と自分にスイッチを入れた。
そんな思いが身体を突き動かし、6月の全日本選考会で最終4組の17位。神奈川大は3組終了時で圏外の総合8位だったが、速い展開の中で粘りに粘った宮本の走りが効いて、総合7位へ滑り込んだ。
宮本はその後、7月の関東学生網走夏季記録挑戦会で10000m28分33秒32の自己新。尊敬する先輩の小林篤貴(現・NTN)が昨年に出した28分21秒10を目指していたため、タイムには満足していないが、苦手な集団走で上位争いを演じた内容に手応えを得た。
泉川中1年時に、1500mでジュニア五輪に出場。3年時には3000mで全中12位、ジュニア五輪9位と活躍している。「ただ走ることが好きで、意外に高いレベルに行けてしまった感じです」。
「佐藤圭汰(駒大)君や弓削(征慶/山梨学大)君と一緒のチームで走りたいという思いがあって」(宮本)、名門・洛南高に進学。3年時、全国高校駅伝で3区の佐藤圭汰からタスキを受け取り、4区を区間賞で駆けた。
「初めての全国高校駅伝で、一番走りたかった試合でしたが、全然緊張しなくて。いつものポイント練習ぐらいの感覚で中継ラインに立ったら、区間賞を取れてしまいました」。
神奈川大は「小さい頃からの夢」だというマラソンを通じて縁があった。
「前監督の大後(栄治)さんやコーチの市川(大輔)さんが『宮本君はマラソンができると思う』と言ってくださった。まだそんなに強くなかった頃で、いずれ夢だったマラソンができることも、大学で続けられることも、それがすごくうれしくて」
神奈川大を志望する前から、卒業生の鈴木健吾(富士通)の姿を目に焼き付けていた。洛南高では合宿や遠征などの移動中、バスに設置したモニターにレースのDVDを流している。全日本大学駅伝で優勝のゴールを切る鈴木、そしてチームメイトから信頼される様子が印象に残った。鈴木がまだ、マラソン日本記録を樹立する前のことだ。
夏の鍛錬期に入り、8月の前半は実業団チームの合宿に帯同。マラソン準備の「さわり」を体感させてもらった。将来の夢・マラソンにも近付きつつある宮本。
「去年の箱根駅伝予選会の(小林)篤貴さんはむちゃくちゃ強かった(日本人3位)。そんな走りがしたい。全日本に対しては僕自身の思いがいろいろあります。配置された区間で勝負します。箱根はまず出場することですが、存在感を示し続ける試合にして、次の年につなげたいです」
着実に1歩ずつ。中野剛監督体制になった新生チームを引っ張っていく。
◎みやもと・はると/2003年9月20日生まれ、京都府出身。泉川中→洛南高→神奈川大。自己記録5000m14分06秒75、10000m28分33秒32、ハーフマラソン1時間2分14秒。
文/奥村 崇
神奈川大の宮本陽叶[/caption]
学生長距離Close-upインタビュー
宮本陽叶 Miyamoto Haruto 神奈川大3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。42回目は、神奈川大の宮本陽叶(3年)をピックアップする。
これまでチームの浮上のカギとなってきたが、今年1月の箱根駅伝本戦では悔しさも味わった。その悔しさをバネにさらなる成長を続けている。
神奈川大の新エースが、ここまでの歩みや近づく駅伝シーズンへの抱負を語った。
“平塚に”悔しい思いを
神奈川大が躍動する時、その原動力を担ってきたのが宮本だ。宮本の1年時、チームは全日本大学駅伝に出て、箱根駅伝は看板を欠き予選会で次点の11位で思わぬ敗退。2年時、今度は全日本の出場にあと22秒08及ばなかったが、箱根駅伝予選会は7位で突破し本戦に返り咲いた。 神奈川大は今年1月の箱根駅伝本戦メンバーのうち7人が卒業。分厚い選手層を形成した学年が卒業した今、3年になった宮本がチームの先頭に立っている。 「失速した箱根の借りは箱根で。それにはその舞台に立つ権利を取らなくてはいけません。全日本も大事にしたい大会。2つの大会にまずは出場することを目標に、今年をスタートしました」 借りを返す場に掲げる箱根駅伝。宮本は“平塚”に、悔しい思いを置いてきている。 本戦出場がかなわなかった1年の時は、“平塚”で走路員を務めていた。「残り1km」のプラカード近く。「あと1kmだぞ!」。沿道からの声援がもっとも熱を帯びる場所で、それに応え、最後の力を振り絞る選手たちを目の当たりにした。 「あんなふうに、次の走者に向けて魂のラストスパートを、自分もするんだ」。 2年になり、予選会を突破。その思いを具現するチャンスを得た。予選会ではチーム3位、個人総合49位と貢献している。しかし、本戦では「軽い体調不良」(宮本)を抱えての出走。ウォーミングアップでは異変なく、「大丈夫」と確認して“平塚”をスタートした。 そこにちょうど、冷たい雨が降り出す。走り出したとたん、身体が冷えていくことがわかった。2kmでペースを守れなくなり、「信じられない速度、とんでもないタイムで・・・・・・。レース後に倒れたのも初めてでした」。低体温症だった。 全日本大学駅伝も、長距離区間で勝負することを想定している。「ハーフをしっかり走れる力をつけていく」。宮本は明確なテーマを持って2024年を走り出した。 「丸亀ハーフマラソン(2月)の前から、毎朝20kmをずっとやっていました。丸亀はそれなりに走れた(1時間2分14秒の自己新をマーク)のですが……」。 スタミナ作りへの意気込みは良かったが、身体がついていかなかった。身体に疲れが蓄積し、3月から5月はスランプに陥ってしまう。関東インカレ2部10000mでの不振は、不調の最中だったのだ。全日本選考会で粘走。夢のマラソンへ
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6月の全日本大学駅伝関東地区選考会4組で力走する宮本[/caption]
「全日本への思いで変わりました。やれることをやろうと」。スランプ中ももやるべきことはやってきたという自負があり、全日本大学駅伝関東地区選考会へ向けて「チームに還元するために頑張ろう」と自分にスイッチを入れた。
そんな思いが身体を突き動かし、6月の全日本選考会で最終4組の17位。神奈川大は3組終了時で圏外の総合8位だったが、速い展開の中で粘りに粘った宮本の走りが効いて、総合7位へ滑り込んだ。
宮本はその後、7月の関東学生網走夏季記録挑戦会で10000m28分33秒32の自己新。尊敬する先輩の小林篤貴(現・NTN)が昨年に出した28分21秒10を目指していたため、タイムには満足していないが、苦手な集団走で上位争いを演じた内容に手応えを得た。
泉川中1年時に、1500mでジュニア五輪に出場。3年時には3000mで全中12位、ジュニア五輪9位と活躍している。「ただ走ることが好きで、意外に高いレベルに行けてしまった感じです」。
「佐藤圭汰(駒大)君や弓削(征慶/山梨学大)君と一緒のチームで走りたいという思いがあって」(宮本)、名門・洛南高に進学。3年時、全国高校駅伝で3区の佐藤圭汰からタスキを受け取り、4区を区間賞で駆けた。
「初めての全国高校駅伝で、一番走りたかった試合でしたが、全然緊張しなくて。いつものポイント練習ぐらいの感覚で中継ラインに立ったら、区間賞を取れてしまいました」。
神奈川大は「小さい頃からの夢」だというマラソンを通じて縁があった。
「前監督の大後(栄治)さんやコーチの市川(大輔)さんが『宮本君はマラソンができると思う』と言ってくださった。まだそんなに強くなかった頃で、いずれ夢だったマラソンができることも、大学で続けられることも、それがすごくうれしくて」
神奈川大を志望する前から、卒業生の鈴木健吾(富士通)の姿を目に焼き付けていた。洛南高では合宿や遠征などの移動中、バスに設置したモニターにレースのDVDを流している。全日本大学駅伝で優勝のゴールを切る鈴木、そしてチームメイトから信頼される様子が印象に残った。鈴木がまだ、マラソン日本記録を樹立する前のことだ。
夏の鍛錬期に入り、8月の前半は実業団チームの合宿に帯同。マラソン準備の「さわり」を体感させてもらった。将来の夢・マラソンにも近付きつつある宮本。
「去年の箱根駅伝予選会の(小林)篤貴さんはむちゃくちゃ強かった(日本人3位)。そんな走りがしたい。全日本に対しては僕自身の思いがいろいろあります。配置された区間で勝負します。箱根はまず出場することですが、存在感を示し続ける試合にして、次の年につなげたいです」
着実に1歩ずつ。中野剛監督体制になった新生チームを引っ張っていく。
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21年全国高校駅伝で佐藤圭汰(右)からタスキを受ける宮本[/caption]
◎みやもと・はると/2003年9月20日生まれ、京都府出身。泉川中→洛南高→神奈川大。自己記録5000m14分06秒75、10000m28分33秒32、ハーフマラソン1時間2分14秒。
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