◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)5日目
パリ五輪・陸上競技の5日目イブニングセッションが行われ、男子棒高跳ではアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)が6m25の世界新記録で優勝を飾った。
7万7000人の観客の視線が注がれるなか、デュプランティスの身体が鮮やかにバーを越えた。
各種目で熱戦が繰り広げられるパリ五輪だが、「誰が勝つか」ということよりも、「世界新記録が出るか」という1点だけに関心が集まったのは男子棒高跳だけだろう。
勝負としては6m00をデュプランティスだけが跳び、早々に金メダルが確定。あとは、その“瞬間”が訪れるかどうか。女子800mなどトラック種目がすべて終了し、舞台はデュプランティスだけのものとなった。
棒高跳選手だった父の影響で3歳からポールを持ち、15歳でU18世界選手権を制した。年代別記録を次々と更新し、19年の世界選手権で銀メダル。20年には6m17の世界新記録も樹立した。
前回の東京大会では6m02でシニア初の世界大会金メダルを獲得。その後は22年、23年世界選手権を連覇。1cmずつ更新してきた世界記録は今年4月に6m24まで引き上げてきた。
2020年以降の4年半で80試合を戦い、負けたのはわずかに4試合。勝つことよりも試合に負けた時のほうが大きなニュースとなる。他の選手が試技を終えた後に飛び始め、優勝を決めたあとに世界記録に挑戦する。そんな光景が幾度となく繰り返されている。
世界の主要大会の金メダルはすべて獲得。世界記録も8度更新してきたデュプランティスだが、まだ成し遂げていないことが1つだけ残っていた。
「子どもの頃からの夢は、棒高跳選手にとって最大の舞台であるオリンピックで世界記録を更新することだった」
前回の東京大会では無観客のスタジアムで当時の世界記録である6m19に挑戦したが、成功することはできていなかった。
今回のデュプランティスは6m00を跳んだあと、五輪新記録となる6m10も軽々とクリア。そして、バーは6m25へ。1回目は頂点が合わず失敗。その後、男子100mの表彰式が行われ、仕切り直しとなった2回目は助走のスピードが乗り切らず、高さを得られなかった。
そして迎えた3回目。「できるだけ頭を空っぽにしようとした」というなか、観客の手拍子を求めると、力強い踏み切りから放たれた身体は見事な放物線を描く。
バーを越えた瞬間、会場のスタッド・ド・フランスは地響きのような歓声に包まれ、デュプランティスも歓喜の声を上げると、マットから飛び上がり家族と恋人の腕の中に飛び込んだ。
「完璧な準備をして臨んできたし、自信もあった。そして、これまで競技した中で最も熱狂的な観客の前でそれを達成することができた」と興奮気味に語ったデュプランティス。記者会見では「どこまで上を目指せるか」という問いに対し、「まだいけると思う。でも、今はそれよりも、家族や彼女とこの幸せを分かち合いたい。今日は盛大なパーティーになるだろうね」と笑って答えた。
【動画】6m25の世界新! デュプランティスが五輪で偉業達成
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)