HOME 学生長距離

2023.12.26

箱根駅伝Stories/仲間思いの帝京大キャプテン西脇翔太「“個人目標=チーム目標”と思ってやってきた」
箱根駅伝Stories/仲間思いの帝京大キャプテン西脇翔太「“個人目標=チーム目標”と思ってやってきた」

主将として帝京大を牽引する西脇翔太(撮影/和田悟志)

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

責任感に苦しんだ前期シーズン

「主将という立場になってからは、“個人目標=チーム目標”みたいになっていて、個人目標を立てることが少なかった。そうやってここまで来ました」

今季、帝京大で主将を務める西脇翔太(4年)に個人の目標を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

西脇は初めて箱根駅伝を走った前々回は10区、前回はエース区間の2区を担った。ここまでは、1年生の頃から目標としてきた3学年先輩の星岳(現・コニカミノルタ)と同じ歩みだ。

以前、西脇は「1年の頃に同部屋だった星さんの記録をずっと意識している」と話していた。最終学年でも星と同じように2区を走ることを希望していると想像していただけに、意外な回答だった。

「もちろん2区を走りたいですし、往路を走りたい。ですが、僕の最大の希望は、監督が『西脇をここに置けば勝てる』と言ってくれる区間を走って仕事をすること。それが目標だと思っています」

“For the team”の思いが人一倍強い西脇らしい目標だった。

広告の下にコンテンツが続きます

今季は春先に10000mで28分台を連発。関東インカレ(2部)ではタイムレースの1組目で1着(総合16位)となり、自己記録を28分38秒43まで伸ばした。名実とも支柱としてチームを引っ張る西脇の姿があった。

だが、その思いの強さは諸刃の剣。気負い過ぎるあまり、責任感の強さが裏目に出ることもあった。

6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、脱水気味になり、最終組で32着と力を発揮できなかった。

そんなことがあっても、中野孝行監督は西脇のキャプテンシーを高く評価している。

「関東インカレだったり、全日本大学駅伝選考会だったり、西脇はストレスの溜まる場面ばかり担ってきた。夏もキャプテンという立場でかなり気を張っていたように思います。9月に新型コロナに感染してしまった時には、『すみません、すみません……』と何度も謝っていて、他の人にうつしていないか、仲間に迷惑をかけていないか、周りのことばかり気にかけていました。一生懸命やってきたのだから、コロナになってしまったことは仕方ないのに……。彼はすごいんですよ。本当に責任感が強い」

主将としての西脇がどれほどの重圧を抱えてきたか。中野監督は間近で見てきた。

新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。

責任感に苦しんだ前期シーズン

「主将という立場になってからは、“個人目標=チーム目標”みたいになっていて、個人目標を立てることが少なかった。そうやってここまで来ました」 今季、帝京大で主将を務める西脇翔太(4年)に個人の目標を尋ねると、こんな答えが返ってきた。 西脇は初めて箱根駅伝を走った前々回は10区、前回はエース区間の2区を担った。ここまでは、1年生の頃から目標としてきた3学年先輩の星岳(現・コニカミノルタ)と同じ歩みだ。 以前、西脇は「1年の頃に同部屋だった星さんの記録をずっと意識している」と話していた。最終学年でも星と同じように2区を走ることを希望していると想像していただけに、意外な回答だった。 「もちろん2区を走りたいですし、往路を走りたい。ですが、僕の最大の希望は、監督が『西脇をここに置けば勝てる』と言ってくれる区間を走って仕事をすること。それが目標だと思っています」 “For the team”の思いが人一倍強い西脇らしい目標だった。 今季は春先に10000mで28分台を連発。関東インカレ(2部)ではタイムレースの1組目で1着(総合16位)となり、自己記録を28分38秒43まで伸ばした。名実とも支柱としてチームを引っ張る西脇の姿があった。 だが、その思いの強さは諸刃の剣。気負い過ぎるあまり、責任感の強さが裏目に出ることもあった。 6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、脱水気味になり、最終組で32着と力を発揮できなかった。 そんなことがあっても、中野孝行監督は西脇のキャプテンシーを高く評価している。 「関東インカレだったり、全日本大学駅伝選考会だったり、西脇はストレスの溜まる場面ばかり担ってきた。夏もキャプテンという立場でかなり気を張っていたように思います。9月に新型コロナに感染してしまった時には、『すみません、すみません……』と何度も謝っていて、他の人にうつしていないか、仲間に迷惑をかけていないか、周りのことばかり気にかけていました。一生懸命やってきたのだから、コロナになってしまったことは仕方ないのに……。彼はすごいんですよ。本当に責任感が強い」 主将としての西脇がどれほどの重圧を抱えてきたか。中野監督は間近で見てきた。

自身もチームも仕上がり上々

10月の箱根駅伝予選会では、「本当はフリーでどんどん勝負してタイムを稼ぎたかった」と言うように、本来であれば、上位でレースを進めてチームに貯金をもたらすことが自身の役割だと考えていた。 しかし、9月にチーム内に新型コロナウイルスが蔓延し、西脇自身も罹患したこともあって、副主将の日高拓夢(4年)とともに集団走の牽引役を務めることになった。 「僕らは後半に絶対に(順位を)上げられるとわかっていた」 西脇は冷静に日高と交互に集団を引っ張り、思惑通りに後半に順位を上げ、無事に箱根路への切符をつかんだ。タイムを稼ぐ役割ではなくても、西脇と日高の貢献度は高かった。 新型コロナ罹患から予選会には間に合わせたものの、その反動も大きかった。全日本大学駅伝で4区を任された西脇は、脱水症状に陥るアクシデントに見舞われたのだ。なんとかタスキをつないだものの、7つ順位を落とし、チームは12位でレースを終えた。 「西脇さんは、チームのことを思って行動してくれている。自分たちは普段の西脇さんの行動、態度を見てきているので、西脇さんが外してしまっても、誰も責められない」 全日本の1区を走った福田翔(3年)はこんな言葉で西脇をかばった。これも彼の人望の厚さの現れだ。 全日本の後は、他の主力選手が記録会やハーフマラソンに出場するなか、西脇は回復に努めた。そして、12月上旬の伊豆大島での選抜合宿を経て、無事に16人のエントリーメンバーに名を連ねた。 「まだ100%やり切れていない状態で大島合宿に挑んだので、結構苦しむだろうと考えていたのですが、パーフェクトに練習ができました。距離走は余裕を持ってこなせたし、インターバル系の練習も、少し心肺はきつかったんですけど、しっかりこなせました」 調子は上々。箱根には万全な状態で臨めそうだ。 頼もしい仲間の復活もあった。下級生の頃からともに主力選手として活躍してきた小野隆一朗(4年)だ。夏から不調が続いていた小野は、箱根予選会も全日本も不出場。大島合宿にも参加せずに、12月上旬の日体大長距離競技会に臨んだ。そして、10000mで自己記録を更新(28分36秒68)。復活を強くアピールした。 「LINEのビデオ通話を使って小野のレースをみんなで応援していました。走り終えた小野が『箱根は任せろ。お前らは合宿頑張れ』とメッセージをくれました。『そんなこと言っていないで、お前も合宿来いよ!』と内心では思ったのですが(笑)」 ともに戦ってきた仲間の復活を、西脇は心から喜んだ。 足りなかったピースがようやくそろい、チームの雰囲気も良い。何より西脇自身の表情が明るい。 「箱根ではおもしろいレースができるように頑張ります」 そう宣言する西脇の声には自信がみなぎっていた。 [caption id="attachment_124680" align="alignnone" width="800"] 23年箱根駅伝1区の小野隆一朗(左)から2区の西脇翔太へのタスキ渡し[/caption] にしわき・しょうた/2001年4月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。愛知・冨士中→名経大高蔵高。5000m13分56秒71、10000m28分38秒43、ハーフ1時間2分25秒 文/和田悟志

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.12.14

京山・石原万結は5区 神村学園・瀬戸口恋空は2年連続1区 大沢野も長森結愛、黒川志帆が3km区間に/全中駅伝・女子

第32回全国中学駅伝は12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催される。14日には開会式が行われ、併せて区間エントリーも発表された。 女子は1区、5区が3km、2区から4区までは2kmの5区間1 […]

NEWS 京山はエースの玉川彩人が3区 坂は8分台トリオを前半に配置 鶴ヶ島藤は植松遼がアンカー/全中駅伝・男子

2024.12.14

京山はエースの玉川彩人が3区 坂は8分台トリオを前半に配置 鶴ヶ島藤は植松遼がアンカー/全中駅伝・男子

第32回全国中学駅伝は12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催される。14日には開会式が行われ、併せて区間エントリーも発表された。 史上初の2年連続男女優勝を目指す京山(岡山)は全中3000m […]

NEWS 第5回大学対校男女混合駅伝の出場校が決定! 大東大、環太平洋大、亜細亜大、早大が初出場!! 2月16日に大阪・長居で開催

2024.12.14

第5回大学対校男女混合駅伝の出場校が決定! 大東大、環太平洋大、亜細亜大、早大が初出場!! 2月16日に大阪・長居で開催

12月12日、関西学連は25年2月16日に開催される第5回全国大学対校男女混合駅伝の出場チームを発表した。 同大会は2021年に大学駅伝では国内初の男女混合レースとして誕生。これまでは「全国招待大学対校男女混合駅伝」とい […]

NEWS ケガから復帰の駒大・佐藤圭汰「インパクトのある走りをしたい」青学大・太田に闘志燃やす 伊藤、山川との3年生トリオが充実

2024.12.13

ケガから復帰の駒大・佐藤圭汰「インパクトのある走りをしたい」青学大・太田に闘志燃やす 伊藤、山川との3年生トリオが充実

第101回箱根駅伝に出場する駒大がオンラインで記者会見を開き、藤田敦史監督、大八木弘明総監督、選手が登壇、報道陣の取材に応じた。 前回、3区区間2位の力走を見せたものの、青学大・太田蒼生(4年)との競り合いに敗れた佐藤圭 […]

NEWS 箱根駅伝V奪還狙う駒大 藤田敦史監督「100回大会の悔しさ晴らしたい」選手層に課題も手応えあり

2024.12.13

箱根駅伝V奪還狙う駒大 藤田敦史監督「100回大会の悔しさ晴らしたい」選手層に課題も手応えあり

第101回箱根駅伝に出場する駒大がオンラインで記者会見を開き、藤田敦史監督、大八木弘明総監督、選手が登壇、報道陣の取材に応じた。 藤田監督は「前回は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制した状態で迎え、青山学院に負けて準優勝でした […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top