2023.12.26
自身もチームも仕上がり上々
10月の箱根駅伝予選会では、「本当はフリーでどんどん勝負してタイムを稼ぎたかった」と言うように、本来であれば、上位でレースを進めてチームに貯金をもたらすことが自身の役割だと考えていた。
しかし、9月にチーム内に新型コロナウイルスが蔓延し、西脇自身も罹患したこともあって、副主将の日高拓夢(4年)とともに集団走の牽引役を務めることになった。
「僕らは後半に絶対に(順位を)上げられるとわかっていた」
西脇は冷静に日高と交互に集団を引っ張り、思惑通りに後半に順位を上げ、無事に箱根路への切符をつかんだ。タイムを稼ぐ役割ではなくても、西脇と日高の貢献度は高かった。
新型コロナ罹患から予選会には間に合わせたものの、その反動も大きかった。全日本大学駅伝で4区を任された西脇は、脱水症状に陥るアクシデントに見舞われたのだ。なんとかタスキをつないだものの、7つ順位を落とし、チームは12位でレースを終えた。
「西脇さんは、チームのことを思って行動してくれている。自分たちは普段の西脇さんの行動、態度を見てきているので、西脇さんが外してしまっても、誰も責められない」
全日本の1区を走った福田翔(3年)はこんな言葉で西脇をかばった。これも彼の人望の厚さの現れだ。
全日本の後は、他の主力選手が記録会やハーフマラソンに出場するなか、西脇は回復に努めた。そして、12月上旬の伊豆大島での選抜合宿を経て、無事に16人のエントリーメンバーに名を連ねた。
「まだ100%やり切れていない状態で大島合宿に挑んだので、結構苦しむだろうと考えていたのですが、パーフェクトに練習ができました。距離走は余裕を持ってこなせたし、インターバル系の練習も、少し心肺はきつかったんですけど、しっかりこなせました」
調子は上々。箱根には万全な状態で臨めそうだ。
頼もしい仲間の復活もあった。下級生の頃からともに主力選手として活躍してきた小野隆一朗(4年)だ。夏から不調が続いていた小野は、箱根予選会も全日本も不出場。大島合宿にも参加せずに、12月上旬の日体大長距離競技会に臨んだ。そして、10000mで自己記録を更新(28分36秒68)。復活を強くアピールした。
「LINEのビデオ通話を使って小野のレースをみんなで応援していました。走り終えた小野が『箱根は任せろ。お前らは合宿頑張れ』とメッセージをくれました。『そんなこと言っていないで、お前も合宿来いよ!』と内心では思ったのですが(笑)」
ともに戦ってきた仲間の復活を、西脇は心から喜んだ。
足りなかったピースがようやくそろい、チームの雰囲気も良い。何より西脇自身の表情が明るい。
「箱根ではおもしろいレースができるように頑張ります」
そう宣言する西脇の声には自信がみなぎっていた。
にしわき・しょうた/2001年4月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。愛知・冨士中→名経大高蔵高。5000m13分56秒71、10000m28分38秒43、ハーフ1時間2分25秒
文/和田悟志
責任感に苦しんだ前期シーズン
「主将という立場になってからは、“個人目標=チーム目標”みたいになっていて、個人目標を立てることが少なかった。そうやってここまで来ました」 今季、帝京大で主将を務める西脇翔太(4年)に個人の目標を尋ねると、こんな答えが返ってきた。 西脇は初めて箱根駅伝を走った前々回は10区、前回はエース区間の2区を担った。ここまでは、1年生の頃から目標としてきた3学年先輩の星岳(現・コニカミノルタ)と同じ歩みだ。 以前、西脇は「1年の頃に同部屋だった星さんの記録をずっと意識している」と話していた。最終学年でも星と同じように2区を走ることを希望していると想像していただけに、意外な回答だった。 「もちろん2区を走りたいですし、往路を走りたい。ですが、僕の最大の希望は、監督が『西脇をここに置けば勝てる』と言ってくれる区間を走って仕事をすること。それが目標だと思っています」 “For the team”の思いが人一倍強い西脇らしい目標だった。 今季は春先に10000mで28分台を連発。関東インカレ(2部)ではタイムレースの1組目で1着(総合16位)となり、自己記録を28分38秒43まで伸ばした。名実とも支柱としてチームを引っ張る西脇の姿があった。 だが、その思いの強さは諸刃の剣。気負い過ぎるあまり、責任感の強さが裏目に出ることもあった。 6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、脱水気味になり、最終組で32着と力を発揮できなかった。 そんなことがあっても、中野孝行監督は西脇のキャプテンシーを高く評価している。 「関東インカレだったり、全日本大学駅伝選考会だったり、西脇はストレスの溜まる場面ばかり担ってきた。夏もキャプテンという立場でかなり気を張っていたように思います。9月に新型コロナに感染してしまった時には、『すみません、すみません……』と何度も謝っていて、他の人にうつしていないか、仲間に迷惑をかけていないか、周りのことばかり気にかけていました。一生懸命やってきたのだから、コロナになってしまったことは仕方ないのに……。彼はすごいんですよ。本当に責任感が強い」 主将としての西脇がどれほどの重圧を抱えてきたか。中野監督は間近で見てきた。自身もチームも仕上がり上々
10月の箱根駅伝予選会では、「本当はフリーでどんどん勝負してタイムを稼ぎたかった」と言うように、本来であれば、上位でレースを進めてチームに貯金をもたらすことが自身の役割だと考えていた。 しかし、9月にチーム内に新型コロナウイルスが蔓延し、西脇自身も罹患したこともあって、副主将の日高拓夢(4年)とともに集団走の牽引役を務めることになった。 「僕らは後半に絶対に(順位を)上げられるとわかっていた」 西脇は冷静に日高と交互に集団を引っ張り、思惑通りに後半に順位を上げ、無事に箱根路への切符をつかんだ。タイムを稼ぐ役割ではなくても、西脇と日高の貢献度は高かった。 新型コロナ罹患から予選会には間に合わせたものの、その反動も大きかった。全日本大学駅伝で4区を任された西脇は、脱水症状に陥るアクシデントに見舞われたのだ。なんとかタスキをつないだものの、7つ順位を落とし、チームは12位でレースを終えた。 「西脇さんは、チームのことを思って行動してくれている。自分たちは普段の西脇さんの行動、態度を見てきているので、西脇さんが外してしまっても、誰も責められない」 全日本の1区を走った福田翔(3年)はこんな言葉で西脇をかばった。これも彼の人望の厚さの現れだ。 全日本の後は、他の主力選手が記録会やハーフマラソンに出場するなか、西脇は回復に努めた。そして、12月上旬の伊豆大島での選抜合宿を経て、無事に16人のエントリーメンバーに名を連ねた。 「まだ100%やり切れていない状態で大島合宿に挑んだので、結構苦しむだろうと考えていたのですが、パーフェクトに練習ができました。距離走は余裕を持ってこなせたし、インターバル系の練習も、少し心肺はきつかったんですけど、しっかりこなせました」 調子は上々。箱根には万全な状態で臨めそうだ。 頼もしい仲間の復活もあった。下級生の頃からともに主力選手として活躍してきた小野隆一朗(4年)だ。夏から不調が続いていた小野は、箱根予選会も全日本も不出場。大島合宿にも参加せずに、12月上旬の日体大長距離競技会に臨んだ。そして、10000mで自己記録を更新(28分36秒68)。復活を強くアピールした。 「LINEのビデオ通話を使って小野のレースをみんなで応援していました。走り終えた小野が『箱根は任せろ。お前らは合宿頑張れ』とメッセージをくれました。『そんなこと言っていないで、お前も合宿来いよ!』と内心では思ったのですが(笑)」 ともに戦ってきた仲間の復活を、西脇は心から喜んだ。 足りなかったピースがようやくそろい、チームの雰囲気も良い。何より西脇自身の表情が明るい。 「箱根ではおもしろいレースができるように頑張ります」 そう宣言する西脇の声には自信がみなぎっていた。 [caption id="attachment_124680" align="alignnone" width="800"]
23年箱根駅伝1区の小野隆一朗(左)から2区の西脇翔太へのタスキ渡し[/caption]
にしわき・しょうた/2001年4月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。愛知・冨士中→名経大高蔵高。5000m13分56秒71、10000m28分38秒43、ハーフ1時間2分25秒
文/和田悟志 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.31
これが世界メダリストの走り!ケジェルチャが25人ごぼう抜きで30万円ゲット
2025.12.31
棒高跳デュプランティスがジャーナリスト投票2年連続で年間MVP受賞
-
2025.12.30
2025.12.30
城西大が2冠達成!2区・本間香が区間新、順位下げるも7区で再逆転/富士山女子駅伝
-
2025.12.30
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.21
早大が来春入部選手発表!高校駅伝1区激闘の増子陽太、新妻、本田がそろって加入!
-
2025.12.14
-
2025.12.21
-
2025.12.21
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.31
これが世界メダリストの走り!ケジェルチャが25人ごぼう抜きで30万円ゲット
TBSでオールスター体育祭が放送され、番組内では「オールスター感謝祭」でもおなじみの赤坂5丁目ミニマラソンが行われた。 レースには1991年東京世界選手権男子マラソン金メダリストで65歳になった谷口浩美さん、レジェンドラ […]
2025.12.31
棒高跳デュプランティスがジャーナリスト投票2年連続で年間MVP受賞
国際スポーツプレス協会(AIPS)のアスリート・オブ・ザ・イヤーが12月30日に発表され、男子棒高跳のA.デュプランティス(スウェーデン)が「男子・アスリート・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。 121カ国836人のジャーナ […]
2025.12.31
逆境はねのけ初優勝の城西大「選手たちの思いが強かった」 ルーキー3人が区間賞/富士山女子駅伝
◇全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 学生女子駅伝2大タイトルの一つ、富士山女子駅伝が行われ、城西大が2時間22分36秒で初 […]
2025.12.31
箱根駅伝 ご当地選手をチェック! 福岡市出身6人が登録 川崎市、新潟市、姫路市、北九州市からも多数エントリー 徳島県から4年ぶり箱根路なるか
出身市町村別エントリー人数 クリック&スワイプで拡大 ■6人 福岡県福岡市 桜井優我(城西大4)、柴戸遼太(帝京大4)、馬場賢人(立大4)、山上勇希(日体大2)、松田祐真(青学大1)、辻誉(中大1) ■5人 神奈 […]
Latest Issue
最新号
2026年1月号 (12月12日発売)
箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳
