2023.12.24
駅伝主将の重圧受け止め復活
そんな強い思いとは裏腹に、故障もあって本来の力を出せずに苦しんだ。
6月の全日本大学駅伝関東選考会で国士大は10位に入り、7年ぶりに伊勢路に駒を進める。しかし、山本は選考会、11月の本大会ともに出走していない。箱根駅伝予選会もコンディションが整わず、走ることができなかった。
「『予選会、落ちてはいけない』『箱根駅伝に出られなかったら自分の責任だ』と自分に言い聞かせて練習をしていて、それがプレッシャーになってケガにつながって、調子も落としてしまったんです」
駅伝主将を欠きながらも、チームは予選会を8位で通過し、8年連続の本大会出場を決めた。この仲間の力走が、駅伝主将の目覚めを促した。
秋からは徐々に調子を取り戻し、10月には5000mで14分29秒14、10000mで29分33秒84と、トラックで立て続けに自己ベストを更新。11月の激坂最速王決定戦を制し、改めて上りの強さをアピールした。
「みんなががんばって予選会を通過してくれて、ちょっと心が落ち着きました。激坂最速王決定戦は『自分のために走ろう』と思えたのが優勝できた要因だと思います」
最後の箱根駅伝、本心では10区を走ってみたいという思いもある。「10区は目立つし、応援がすごいので(笑)。でも、チームのために、やっぱり自分が5区を走らなきゃいけない」と、3年連続の山上りへ、準備を進めてきた。国士大が最後にシード権を獲得したのは1990年の第66回大会。チームは34年ぶりのシード権獲得を目指し、燃えている。
小川博之駅伝監督も「雷我は自分の強みに特化して取り組んできました。5区の走り方を熟知しています。最後の箱根、力を出し切って走ってくれると思っています」と信頼を寄せている。
4年間、合宿所で生活をともにし、切磋琢磨してきた山本龍神(4年)も「5区に雷我がいるのは頼もしいです。小田原中継所までいい順位で持っていければ、雷我がシード圏内に押し上げてくれるはず」と話した。
卒業後は陸上競技を離れると決めた。今回の箱根駅伝が、競技者として最後の大舞台になる。
「目標は区間5位。復路をいい位置でスタートさせてあげられたらいいなと思っています。自分の人生にとって、こんな大きな舞台は最後になると思う。出し切って、一番いい順位でゴールしたい。でも、入れ込み過ぎず、いつも通りに走りたいという気持ちもあります」
力まず、自然体で、箱根の急峻へ挑む。
やまもと・らいが/2002年2月7日生まれ。福井県越前市出身。福井・武生六中→敦賀気比高。5000m14分29秒14、10000m29分33秒84
文/小川誠志
サッカーからランナーを志して
冷たい強風が吹きつける厳しいコンディションのなか、山本雷我(4年)は逆転でレースを制し、右こぶしを突き上げた。 11月18日に行われた激坂最速王決定戦(登りの部)、山本は先行する山梨学院大・弓削征慶(2年)を終盤に捕らえると、ラストスパートで一気に突き放す。今季の不調を吹き飛ばすような会心のレースを山本雷はこう振り返る。 「緊張で前日眠れなかったし、体調も良くなくて。走り出してから2~3kmぐらいからお腹も痛くなってきたんです。それでも離されずについていって、ラスト500mのところから一気にギアを上げました」 福井県越前市の実家は、200mほどの急な坂道を上ったところにある。登下校のため毎日、坂道を上り下りしたことから、上りでの強さが自然と培われたのだろう。 小2から中3まではサッカーに取り組み、ポジションはボランチ。中学時代にはトレセン(地区選抜)のメンバーに選ばれるほどの有力選手だった。サッカー部に所属しながら陸上競技の大会や駅伝にも出場。中2の時には校内のマラソン大会で1学年上の先輩たちに大差をつけて優勝した。そして、2学年上の兄・彪我(ひょうが)さんがいた敦賀気比高への進学と、陸上への転向を決める。 「兄がいたこともあるんですけど、大会で何度か一緒に走った山下悠河(青学大4)の影響が大きいです。『一緒に敦賀気比へ行って、強い美方高を倒そう』って山下に誘われたので」 高1、高2と美方高の牙城を崩すことはできなかった。それでも高校最後の年に、ついに宿敵を破って全国高校駅伝出場を果たした。 彪我さんが国士大へ進んでいたこともあり、当時駅伝監督だった添田正美コーチから熱心な誘いを受け、国士大への進学を決める。 箱根駅伝では2年時、3年時と2年連続で5区を走った。2年生だった前々回は区間13位。3年生だった前回は区間11位と力走し、順位を2つ押し上げたが、国士大は総合19位と振るわなかった。 最終学年を迎えるにあたり、山本は立候補して駅伝主将に就任。駅伝チームを引っ張る意気込みでシーズンに入った。駅伝主将の重圧受け止め復活
そんな強い思いとは裏腹に、故障もあって本来の力を出せずに苦しんだ。 6月の全日本大学駅伝関東選考会で国士大は10位に入り、7年ぶりに伊勢路に駒を進める。しかし、山本は選考会、11月の本大会ともに出走していない。箱根駅伝予選会もコンディションが整わず、走ることができなかった。 「『予選会、落ちてはいけない』『箱根駅伝に出られなかったら自分の責任だ』と自分に言い聞かせて練習をしていて、それがプレッシャーになってケガにつながって、調子も落としてしまったんです」 駅伝主将を欠きながらも、チームは予選会を8位で通過し、8年連続の本大会出場を決めた。この仲間の力走が、駅伝主将の目覚めを促した。 秋からは徐々に調子を取り戻し、10月には5000mで14分29秒14、10000mで29分33秒84と、トラックで立て続けに自己ベストを更新。11月の激坂最速王決定戦を制し、改めて上りの強さをアピールした。 「みんなががんばって予選会を通過してくれて、ちょっと心が落ち着きました。激坂最速王決定戦は『自分のために走ろう』と思えたのが優勝できた要因だと思います」 [caption id="attachment_124230" align="alignnone" width="800"] 23年激坂最速王決定戦(登りの部)を制して復調をアピールした山本雷我[/caption] 最後の箱根駅伝、本心では10区を走ってみたいという思いもある。「10区は目立つし、応援がすごいので(笑)。でも、チームのために、やっぱり自分が5区を走らなきゃいけない」と、3年連続の山上りへ、準備を進めてきた。国士大が最後にシード権を獲得したのは1990年の第66回大会。チームは34年ぶりのシード権獲得を目指し、燃えている。 小川博之駅伝監督も「雷我は自分の強みに特化して取り組んできました。5区の走り方を熟知しています。最後の箱根、力を出し切って走ってくれると思っています」と信頼を寄せている。 4年間、合宿所で生活をともにし、切磋琢磨してきた山本龍神(4年)も「5区に雷我がいるのは頼もしいです。小田原中継所までいい順位で持っていければ、雷我がシード圏内に押し上げてくれるはず」と話した。 卒業後は陸上競技を離れると決めた。今回の箱根駅伝が、競技者として最後の大舞台になる。 「目標は区間5位。復路をいい位置でスタートさせてあげられたらいいなと思っています。自分の人生にとって、こんな大きな舞台は最後になると思う。出し切って、一番いい順位でゴールしたい。でも、入れ込み過ぎず、いつも通りに走りたいという気持ちもあります」 力まず、自然体で、箱根の急峻へ挑む。 やまもと・らいが/2002年2月7日生まれ。福井県越前市出身。福井・武生六中→敦賀気比高。5000m14分29秒14、10000m29分33秒84 文/小川誠志
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.05.11
三浦龍司がパリ五輪代表内定! 3000m障害8分13秒96で参加標準突破!!/DLドーハ
2024.05.10
黄金ルーキー・高橋諒が十種競技でV!7235点のU20日本最高をマーク/関東IC
-
2024.05.10
-
2024.05.10
-
2024.05.10
-
2024.05.06
-
2024.05.04
-
2024.05.06
2024.04.12
40年以上の人気シューズ”ペガサス”シリーズの最新作!「ナイキ ペガサス 41」が登場!
-
2024.04.26
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.05.10
黄金ルーキー・高橋諒が十種競技でV!7235点のU20日本最高をマーク/関東IC
◇第103回関東インカレ(5月9~12日/東京・国立競技場)2日目 関東インカレの1、2日目にかけて男子十種競技が行われ、高橋諒(慶大)が7250点1年生優勝。U20日本最高記録(7175点/土井翔太、早大)を塗り替えた […]
2024.05.10
400m豊田兼が45秒82で初優勝!慶大主将として覚悟の激走/関東IC
◇第103回関東インカレ(5月9~12日/東京・国立競技場)2日目 関東インカレの2日目に男子1部400m決勝が行われ、豊田兼(慶大)が45秒82で、自身関東インカレ初優勝を飾った。 広告の下にコンテンツが続きます 準決 […]
Latest Issue 最新号
2024年5月号 (4月12日発売)
パリ五輪イヤー開幕!