HOME 国内

2023.05.04

安定感増した秦澄美鈴 いよいよ“イケクミ超え”と世界陸上標準突破へ「楽しみはお預け」/静岡国際
安定感増した秦澄美鈴 いよいよ“イケクミ超え”と世界陸上標準突破へ「楽しみはお預け」/静岡国際

女子走幅跳の秦澄美鈴

◇第38回静岡国際(5月3日/静岡・エコパスタジアム)

日本グランプリシリーズG1の静岡国際が行われ、女子走幅跳は秦澄美鈴(シバタ工業)が6m75(+2.0)の大会タイ記録で優勝した。

大きな歓声が起こったのは3回目。「追い風が安定していたので足が(踏み切りに)合わせやすかったです」。ただ、感覚的には「あまり良くなかったので“行った”とは思わなかったです」。

広告の下にコンテンツが続きます

前に「抜けていく」ジャンプにはなったが、走高跳出身らしい力強く高く抜けていく感じにはならなかった。直前に跳んだ2回目の6m68の自己新も含めて、どちらも「失敗」に近いかたち。それでも飛距離が出たのは地力がついた証明でもあった。

昨年はワールドランキングで出場枠に入ってオレゴン世界選手権に出場。ただ、予選敗退に終わり「持ち味の踏み切りができなかった」と悔し涙をこぼした。その後は気持ちがやや落ち込んだ時期もあったが、秋には復活して6m67の自己新を跳んだ。

課題は明確で、まずは体幹を含めてフィジカルの強化。特に追い風にはめっぽう強かったが、向かい風になると安定しないことも多かった。「ここ1、2年取り組んできた」というウエイトトレーニングを中心とした身体作りは、この冬もさらに強度が上がった。

助走も変化し、スピードが上がったことで詰まり気味だった助走を、「大きな動きの助走で(踏み切りに)入っていく」意識に変えた。それも安定感を生んでいる。「脚を回してしまうと6本しっかり跳べない」とし、「無理に回さなくても走れるようになったのはパワーがついてきたから」と言う。

一つの成果として表れたのが2月のアジア室内選手権。当然、無風ながら、6m62を跳んで優勝した。その後は、タイのストリート陸上や豪州・ブリスベン・トラック・クラシックに出場(6m48で3位)するなど、世界選手権で感じた国際試合での経験不足を埋めていく。

兵庫リレーカーニバルは6m35(優勝)にとどまったが、「調子は悪くなかったので、そこから修正というよりしっかり休養して身体のキレを戻しました」。静岡国際はコンディションが安定しているということもあり、今週末、地元である木南記念よりも優先した。「走高跳で出た以来だったので静岡で(走幅跳を)試してみたかった」と笑う。

今季はブダペスト世界選手権に参加標準記録(6m85)を跳んで出場することを目指している。その1cm先には、2006年から動いていない日本記録がある。レジェンド・池田久美子が作った偉大な記録だ。

しかし、そのどちらも、いよいよ視界に捉えた。「射程圏内です」。この後はセイコーゴールデングランプリと日本選手権が控え、「まだまだ日本選手権に(調子を)合わせています。日本記録を出せるようにどんどん攻めていきます。楽しみはお預けということで」。

たくましさを増した秦が日本女子走幅跳の歴史を動かして、再び世界へと挑戦しようとしている。

◇第38回静岡国際(5月3日/静岡・エコパスタジアム) 日本グランプリシリーズG1の静岡国際が行われ、女子走幅跳は秦澄美鈴(シバタ工業)が6m75(+2.0)の大会タイ記録で優勝した。 大きな歓声が起こったのは3回目。「追い風が安定していたので足が(踏み切りに)合わせやすかったです」。ただ、感覚的には「あまり良くなかったので“行った”とは思わなかったです」。 前に「抜けていく」ジャンプにはなったが、走高跳出身らしい力強く高く抜けていく感じにはならなかった。直前に跳んだ2回目の6m68の自己新も含めて、どちらも「失敗」に近いかたち。それでも飛距離が出たのは地力がついた証明でもあった。 昨年はワールドランキングで出場枠に入ってオレゴン世界選手権に出場。ただ、予選敗退に終わり「持ち味の踏み切りができなかった」と悔し涙をこぼした。その後は気持ちがやや落ち込んだ時期もあったが、秋には復活して6m67の自己新を跳んだ。 課題は明確で、まずは体幹を含めてフィジカルの強化。特に追い風にはめっぽう強かったが、向かい風になると安定しないことも多かった。「ここ1、2年取り組んできた」というウエイトトレーニングを中心とした身体作りは、この冬もさらに強度が上がった。 助走も変化し、スピードが上がったことで詰まり気味だった助走を、「大きな動きの助走で(踏み切りに)入っていく」意識に変えた。それも安定感を生んでいる。「脚を回してしまうと6本しっかり跳べない」とし、「無理に回さなくても走れるようになったのはパワーがついてきたから」と言う。 一つの成果として表れたのが2月のアジア室内選手権。当然、無風ながら、6m62を跳んで優勝した。その後は、タイのストリート陸上や豪州・ブリスベン・トラック・クラシックに出場(6m48で3位)するなど、世界選手権で感じた国際試合での経験不足を埋めていく。 兵庫リレーカーニバルは6m35(優勝)にとどまったが、「調子は悪くなかったので、そこから修正というよりしっかり休養して身体のキレを戻しました」。静岡国際はコンディションが安定しているということもあり、今週末、地元である木南記念よりも優先した。「走高跳で出た以来だったので静岡で(走幅跳を)試してみたかった」と笑う。 今季はブダペスト世界選手権に参加標準記録(6m85)を跳んで出場することを目指している。その1cm先には、2006年から動いていない日本記録がある。レジェンド・池田久美子が作った偉大な記録だ。 しかし、そのどちらも、いよいよ視界に捉えた。「射程圏内です」。この後はセイコーゴールデングランプリと日本選手権が控え、「まだまだ日本選手権に(調子を)合わせています。日本記録を出せるようにどんどん攻めていきます。楽しみはお預けということで」。 たくましさを増した秦が日本女子走幅跳の歴史を動かして、再び世界へと挑戦しようとしている。

【動画】自己記録を8cm更新 秦澄美鈴の跳躍をチェック

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.08

サニブラウンがU20合宿にサプライズ登場!「みなさんが日本陸上界の未来」期待のジュニア選手たちにエール

有力ジュニア選手が全国から集まるU20オリンピック育成競技者研修合宿が12月4日から7日までの4日間、ナショナルトレーニングセンターで行われた。 選手たちが集合し、開講式が開かれて最初の研修に登場したのが男子短距離のサニ […]

NEWS U20世代トップ選手約60人が4日間合宿! 100mインターハイ2位の菅野翔唯、100mH高校記録保持者・石原南菜ら参加

2025.12.08

U20世代トップ選手約60人が4日間合宿! 100mインターハイ2位の菅野翔唯、100mH高校記録保持者・石原南菜ら参加

ジュニア世代の有力選手が対象の「U20オリンピック育成競技者研修合宿」が12月4~7日の4日間、東京都北区のナショナルトレーニングセンターで行われた。 インターハイやU20日本選手権、U18大会などで上位に入った高校生や […]

NEWS 富士山女子駅伝の全日本大学選抜に立教大・小川陽香、明治国際医療大・古西亜海ら12人選出

2025.12.08

富士山女子駅伝の全日本大学選抜に立教大・小川陽香、明治国際医療大・古西亜海ら12人選出

日本学生陸上競技連合は12月8日、2025全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)に出場する全日本大学選抜チームの選手を発表した。 全日本大学選抜チームは全国8地区学連(北海道、東北、関東、北信越、東海、関西、中国四国、 […]

NEWS 2026年関東インカレは5月21日~24日に宇都宮で初開催! 参加標準記録も発表

2025.12.08

2026年関東インカレは5月21日~24日に宇都宮で初開催! 参加標準記録も発表

12月8日、関東学連は2026年の関東インカレを、栃木県宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎで5月21日から24日に開催すると発表した。 関東の学生ナンバーワンを決める関東インカレは、来年で第105回を迎える伝統の対校戦。 […]

NEWS 女子400mのナセルがアディダスと契約 パリ五輪銀、東京世界陸上銅メダリスト

2025.12.08

女子400mのナセルがアディダスと契約 パリ五輪銀、東京世界陸上銅メダリスト

女子400mのアジア記録保持者、S.E.ナセル(バーレーン)がアディダスとのプロ契約を結んだことを発表した。自身のSNSで契約締結に関して「新たな挑戦と歴史的偉業に向け、アディダスの献身的な取り組みとパートナーシップは極 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top