HOME 学生長距離

2022.10.19

【鉄紺軍団Close-up】清野太雅 人より多く走る 〝練習の虫〟長い距離への適性光り 1年目から箱根駅伝エントリーメンバー入り


1500m専門の高校生が4年後マラソンランナーに
清野太雅は福島・喜多方高時代には1500mをメインとしており、同種目でインターハイにも出場している。それが、4年後の夏に、その約28倍の距離の北海道マラソンを走っているとは……「自分でもこんなことになるとは思っていなかった」と、4年前には想像さえしていなかった未来だった。

清野は強豪校出身ではなかったこともあり、入学当初は他の部員に比べて練習量が劣っていたという。ぶれやすいフォームを直すためにフィジカルトレーニングに取り組むなど地道な練習を重ねていくと、1年目から長い距離にも対応できるようになり、箱根駅伝の16人のエントリーメンバーにも選ばれた。そして、2年時、3年時と、箱根駅伝の10区を任され、それぞれ区間9位、2位と好走している。

広告の下にコンテンツが続きます

「各自練習で人より多く走ったり、休みの日にも軽く動かしたりしている」という練習の虫。今ではチームで一、二を争うほどの練習量をこなせるまでになった。そして、大学4年目の今年、酒井監督に北海道マラソン出場を提案されると、「練習の延長で出てみようと思いました」と出場を決めた。

マラソン挑戦は初めて尽くしだった。これまでレースでの最長距離は箱根駅伝10区の23㎞で、42.195㎞を走るのはもちろん初。練習でも30㎞走まではこなしたことがあったが、40㎞走に取り組むのも初めてのことだった。

「夏に実業団の合宿に参加して、初めて40㎞走をしました。ペースはキロ3 分40秒~ 30秒。1回だけでしたが、結構余裕を持って走れたのが大きかったです。自信になりました。マラソンに生かせたと思います。ただ、(夏は)マラソンに向けた練習というよりも、距離を踏むことを考えて練習をしていました」

マラソンを見据えつつも、その先にある駅伝シーズンをも意識して夏を送っていた。北海道マラソンの1週間前は疲労困憊で「これはやばいな」と思ったほどだったという。だが、東洋大にはこれまでに駅伝や競歩で実績を積み重ねてきたコンディショニングのノウハウがある。1週間を切ってからは、水分や食事を計画的に摂って本番に備えた。

広告の下にコンテンツが続きます

北海道マラソンでは度重なる〝給水の不運〟を克服

「今回の北海道マラソンは経験が目的で、練習の一環だったので、タイムはあまり気にせず、自分のいけるところまで行こうと思っていました」という清野は、当初はペースメーカーに付いていくつもりはなく、キロ3分10秒~ 15秒ペースをキープして走る予定だった。ところが、「周りの選手が全員、ペースメーカーに付いていってしまって、これは後半がきつくなると思ったので」と、単独走を回避するためにキロ3分05秒~ 06秒の集団で走る決断をした。

想定外のアクシデントはまだまだあった。後方を走っていたために、5㎞ごとの給水所ではスペシャルドリンクを入れたボトルが、前を走るランナーに落とされていることが多かった。序盤の5㎞、10㎞はボトルを取ることができなかった。

「給水は全部飲もうと思っていたので、さすがにこれはまずいなと思いました」

広告の下にコンテンツが続きます

東洋大は普段から栄養指導に力を入れており、水分補給の重要性についても同様に選手たちは承知している。

15㎞でも清野のボトルは落ちていたが、それを見つけるや、集団の最後方を走っていた清野は、拾って給水する判断をした。20㎞でも同じく、落ちていたボトルを拾って給水をしたため、集団から少し遅れる場面もあった。だが、結果的にはその機転が功を奏したと言えるだろう。パリ五輪のマラソン日本代表選考レースとなるMGCへの進出にはあと一歩届かなかったものの、最後まで粘り、2時間12分20秒の6位に入賞した。

「少し悔しさもありましたが、走り終えた時は達成感や楽しさが満ち溢れていました。夏のマラソンでこれだけのタイムで走れたことは自信になりました。ただ、今回のマラソンのペースでは、さすがに駅伝では通用しないので、マラソンから駅伝に切り替えて、速いペースに対応できる練習をしていきたい」


箱根駅伝では過去2年間アンカーの10区を務め、前回は区間2位の力走でチームを7位から4位まで押し上げた

広告の下にコンテンツが続きます

今度はチームで達成感を味わうために、駅伝での出番に向けて準備をしている。「ただ出走するだけではチーム目標の優勝に貢献できないと思うので、区間賞を目指したいと思います」

4年間で培ったスタミナを武器に、学生最後の駅伝シーズンに臨む――。

文/福本ケイヤ

※この記事は『月刊陸上競技』2022年11月号に掲載しています

広告の下にコンテンツが続きます
1500m専門の高校生が4年後マラソンランナーに 清野太雅は福島・喜多方高時代には1500mをメインとしており、同種目でインターハイにも出場している。それが、4年後の夏に、その約28倍の距離の北海道マラソンを走っているとは……「自分でもこんなことになるとは思っていなかった」と、4年前には想像さえしていなかった未来だった。 清野は強豪校出身ではなかったこともあり、入学当初は他の部員に比べて練習量が劣っていたという。ぶれやすいフォームを直すためにフィジカルトレーニングに取り組むなど地道な練習を重ねていくと、1年目から長い距離にも対応できるようになり、箱根駅伝の16人のエントリーメンバーにも選ばれた。そして、2年時、3年時と、箱根駅伝の10区を任され、それぞれ区間9位、2位と好走している。 「各自練習で人より多く走ったり、休みの日にも軽く動かしたりしている」という練習の虫。今ではチームで一、二を争うほどの練習量をこなせるまでになった。そして、大学4年目の今年、酒井監督に北海道マラソン出場を提案されると、「練習の延長で出てみようと思いました」と出場を決めた。 マラソン挑戦は初めて尽くしだった。これまでレースでの最長距離は箱根駅伝10区の23㎞で、42.195㎞を走るのはもちろん初。練習でも30㎞走まではこなしたことがあったが、40㎞走に取り組むのも初めてのことだった。 「夏に実業団の合宿に参加して、初めて40㎞走をしました。ペースはキロ3 分40秒~ 30秒。1回だけでしたが、結構余裕を持って走れたのが大きかったです。自信になりました。マラソンに生かせたと思います。ただ、(夏は)マラソンに向けた練習というよりも、距離を踏むことを考えて練習をしていました」 マラソンを見据えつつも、その先にある駅伝シーズンをも意識して夏を送っていた。北海道マラソンの1週間前は疲労困憊で「これはやばいな」と思ったほどだったという。だが、東洋大にはこれまでに駅伝や競歩で実績を積み重ねてきたコンディショニングのノウハウがある。1週間を切ってからは、水分や食事を計画的に摂って本番に備えた。 北海道マラソンでは度重なる〝給水の不運〟を克服 「今回の北海道マラソンは経験が目的で、練習の一環だったので、タイムはあまり気にせず、自分のいけるところまで行こうと思っていました」という清野は、当初はペースメーカーに付いていくつもりはなく、キロ3分10秒~ 15秒ペースをキープして走る予定だった。ところが、「周りの選手が全員、ペースメーカーに付いていってしまって、これは後半がきつくなると思ったので」と、単独走を回避するためにキロ3分05秒~ 06秒の集団で走る決断をした。 想定外のアクシデントはまだまだあった。後方を走っていたために、5㎞ごとの給水所ではスペシャルドリンクを入れたボトルが、前を走るランナーに落とされていることが多かった。序盤の5㎞、10㎞はボトルを取ることができなかった。 「給水は全部飲もうと思っていたので、さすがにこれはまずいなと思いました」 東洋大は普段から栄養指導に力を入れており、水分補給の重要性についても同様に選手たちは承知している。 15㎞でも清野のボトルは落ちていたが、それを見つけるや、集団の最後方を走っていた清野は、拾って給水する判断をした。20㎞でも同じく、落ちていたボトルを拾って給水をしたため、集団から少し遅れる場面もあった。だが、結果的にはその機転が功を奏したと言えるだろう。パリ五輪のマラソン日本代表選考レースとなるMGCへの進出にはあと一歩届かなかったものの、最後まで粘り、2時間12分20秒の6位に入賞した。 「少し悔しさもありましたが、走り終えた時は達成感や楽しさが満ち溢れていました。夏のマラソンでこれだけのタイムで走れたことは自信になりました。ただ、今回のマラソンのペースでは、さすがに駅伝では通用しないので、マラソンから駅伝に切り替えて、速いペースに対応できる練習をしていきたい」 箱根駅伝では過去2年間アンカーの10区を務め、前回は区間2位の力走でチームを7位から4位まで押し上げた 今度はチームで達成感を味わうために、駅伝での出番に向けて準備をしている。「ただ出走するだけではチーム目標の優勝に貢献できないと思うので、区間賞を目指したいと思います」 4年間で培ったスタミナを武器に、学生最後の駅伝シーズンに臨む――。 文/福本ケイヤ ※この記事は『月刊陸上競技』2022年11月号に掲載しています

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.05.15

日本陸連 パリ五輪代表選考要項を訂正 参加資格得られる参加標準記録に誤り

日本陸連は5月15日、今夏のパリ五輪の代表選考要項の一部を訂正したと発表した。 昨年9月20日に発表されたパリ五輪の「トラック&フィールド種目日本代表選考要項」の中にある各種目の出場資格獲得の条件となる「参加標準記録」を […]

NEWS ダイヤモンドリーグ・ユージン110mHに泉谷駿介エントリー 世界選手権トップ5集結しハイレベルな争いの予感

2024.05.15

ダイヤモンドリーグ・ユージン110mHに泉谷駿介エントリー 世界選手権トップ5集結しハイレベルな争いの予感

陸上の最高峰・ダイヤモンドリーグ(DL)の主催者はこのほど、ユージン大会(米国、5月25日)での一部種目のエントリー選手を発表し、男子110mハードルに23年世界選手権5位の泉谷駿介(住友電工)が登録された。 泉谷の他に […]

NEWS 富士山の銘水のポール・オニエゴが退部 21年箱根駅伝で4区区間賞を獲得

2024.05.15

富士山の銘水のポール・オニエゴが退部 21年箱根駅伝で4区区間賞を獲得

富士山の銘水は5月15日、所属するポール・オニエゴが4月30日付で退社、帰国したこと明らかにした。 オニエゴはケニア南西部のキシイ出身。18歳で来日し、山梨学大に入学した。大学2年までは目立った活躍はなかったものの、20 […]

NEWS セイコーGGP 佐藤圭汰がコンディション不良で5000m欠場 男子110mHでパリ標準突破の野本周成が欠場、ブダペスト代表・横地が追加出場

2024.05.15

セイコーGGP 佐藤圭汰がコンディション不良で5000m欠場 男子110mHでパリ標準突破の野本周成が欠場、ブダペスト代表・横地が追加出場

日本陸連は5月15日、セイコーゴールデングランプリ陸上2024東京(5月19日/東京・国立競技場)の欠場選手と追加登録選手を発表した。 男子5000mでは室内(1周200m)で日本歴代2位の13分09秒45をマークした佐 […]

NEWS ダイヤモンドリーグ・マラケシュのエントリー発表! 3000m障害三浦龍司が王者エル・バッカリやキビウォトと対決 円盤投世界記録保持者アレクナが参戦

2024.05.15

ダイヤモンドリーグ・マラケシュのエントリー発表! 3000m障害三浦龍司が王者エル・バッカリやキビウォトと対決 円盤投世界記録保持者アレクナが参戦

世界最高峰のリーグ戦・ダイヤモンドリーグ(DL)の主催者は、5月19日にモロッコで行われるマラケシュ大会のエントリーを発表した。 日本からは男子3000m障害の三浦龍司(SUBARU)がただ1人参戦。10日のDLドーハで […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年6月号 (5月14日発売)

2024年6月号 (5月14日発売)

別冊付録学生駅伝ガイド

page top