HOME 国内、世界陸上、日本代表
北口榛花 女子やり投初銅メダルの快挙!「最終的には一番良い色のメダルを」/世界陸上
北口榛花 女子やり投初銅メダルの快挙!「最終的には一番良い色のメダルを」/世界陸上

22年オレゴン世界選手権女子やり投銅メダルを獲得した北口榛花

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目

広告の下にコンテンツが続きます

オレゴン世界陸上8日目のイブニングセッションに行われた女子やり投で、北口榛花(JAL)が快挙達成。女子フィールド種目で初のメダル獲得となる3位に入った。

決勝6回目。1回目で62m07を投げて2位につけた北口の順位は5位に落ちていた。「私が乗り越えなきゃいけない壁なんだ」。思い出していたのは高校時代のこと。高校最後の試合だった日本ジュニア選手権、高校最後の1投で高校記録58m90を放った。「自分は6回目に“できる子”だ」。助走を開始し、力強くやりを放った。

大きな投てきで会場も沸いたが、「(モニターで)メダルラインを超えていないように見えて」うずくまり、頭を抱える。記録はこの日最高となる63m27で2位に浮上した。「残りの2人に絶対に抜かれるからダメだと思っていました」。米国のカラ・ウィンガーが地元の声援を背に64m05を投げて北口は3位に。東京五輪金メダリストの劉詩穎が失敗投てきに終わった瞬間、日本陸上界の歴史が動いた。劉との差はわずか2㎝。女子フィールド種目、初のメダル獲得を果たし、スタンドのディヴィッド・シェケラック・コーチと歓喜に浸った。

「ホッとした安心感がありました。自然に涙が出てきました。すごくうれしいです」。日の丸を背負って「夢だった」というウイニングランに加わった。

1回目のあとは、「12人の(試合の)ペースが久しぶり」で試技間の過ごし方に苦心して失敗投てきが続く。シェケラック・コーチからは「集中しろ」と何度も声が飛んだというが、「ここで集中しない人はいません」と笑って振り返る。4回目61m27、5回目はグリップがうまく握れなくて失敗投てきになった。

6回目は絶対に上がってやろうという思いではなく、「自分の最大限の距離を投げをしたい」という気持ち。だからこそ、メダルの快挙にも「完璧な投てきというイメージはなかった」し、全体通して「満足はいっていません」と北口は振り返った。

「うまくいかなかった時期もありました」。ここまでのことを振り返ると、さまざまな思いが去来する。もともとはバドミントンやスイミングに取り組み、高校から陸上を始めた。すぐさまその才能は光り、北海道・旭川東高3年時には世界ユース選手権で世界一に輝いている。しかし、日大進学後は肘のケガに悩まされ、指導者が不在になった時期もあった。食事が喉を通らない日々。それでも必ず、グラウンドに顔を出した。それが、勉強や他のスポーツをあきらめてまでやり投を選んだ覚悟だった。

指導者を求めて選んだのがやり投王国・チェコ。やり投関係者が集まるカンファレンスでたまたま知り合ったのがシェケラック・コーチだった。「君のことを知っているよ」。そう言っていろいろな動画を目の前で検索。「今、コーチがいない。チェコに行ったら見てくれますか?」。答えは「イエス」だった。「海外で過ごす時間が長くて家族や友達と過ごせないこともありました」。北口はチェコに飛び込んだ。

そこからは「ケンカもたくさんしました」。お互いに主張もあり、文化も違う。技術面の口論ではいつも負けたという。指導を受けはじめた翌年の2019年。止まっていた針が動く。5月に64m36の日本新記録を投げると、ドーハ世界選手権の予選落ちを挟んで10月には66m00にまで記録を伸ばした。

昨年の東京五輪は決勝に進むも12位。予選で痛めた左脇腹は、競技生活を脅かすほどのものだった。地道なリハビリと走り込みは、北口の課題だった基礎体力向上に充てる大事な時間に。その成果から、今季は安定して62m前後の記録をマークしていた。東京五輪を経て、シェケラック・コーチとの関係も「対等にコミュニケーションをとれるようになった」という。6月にはダイヤモンドリーグ・パリ大会日本人初優勝。機は熟した。

それでもオレゴン世界陸上の目標は「入賞」と変わらなかった北口。それは「長い競技生活のステップアップにしたい」という理由からだった。メダルを獲得した今、次は「海外転戦を楽しみながらたくさん経験して、異国でも自分のホームだと思って投げられるのが大事だと思います」と見据えている。

女子やり投界を牽引する者としての思いもある。「これを続けることが大事ですし、私だからできることじゃなくて、みんなができること。そう思って日本のやり投の選手たちみんなで頑張っていけたらいいと思っています」。

来年以降、ブダペスト世界陸上、そしてパリ五輪、東京世界陸上と続く。「パリ五輪に向けてまた同じようにメダルを取り続けて、最終的には一番良い色のメダルが取れるようにやっていきたいと思います」。世界トップスロワーの位置に“戻ってきた”北口榛花。再びの世界一に向けた歩みが、ここオレゴンから始まった。

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目 オレゴン世界陸上8日目のイブニングセッションに行われた女子やり投で、北口榛花(JAL)が快挙達成。女子フィールド種目で初のメダル獲得となる3位に入った。 決勝6回目。1回目で62m07を投げて2位につけた北口の順位は5位に落ちていた。「私が乗り越えなきゃいけない壁なんだ」。思い出していたのは高校時代のこと。高校最後の試合だった日本ジュニア選手権、高校最後の1投で高校記録58m90を放った。「自分は6回目に“できる子”だ」。助走を開始し、力強くやりを放った。 大きな投てきで会場も沸いたが、「(モニターで)メダルラインを超えていないように見えて」うずくまり、頭を抱える。記録はこの日最高となる63m27で2位に浮上した。「残りの2人に絶対に抜かれるからダメだと思っていました」。米国のカラ・ウィンガーが地元の声援を背に64m05を投げて北口は3位に。東京五輪金メダリストの劉詩穎が失敗投てきに終わった瞬間、日本陸上界の歴史が動いた。劉との差はわずか2㎝。女子フィールド種目、初のメダル獲得を果たし、スタンドのディヴィッド・シェケラック・コーチと歓喜に浸った。 「ホッとした安心感がありました。自然に涙が出てきました。すごくうれしいです」。日の丸を背負って「夢だった」というウイニングランに加わった。 1回目のあとは、「12人の(試合の)ペースが久しぶり」で試技間の過ごし方に苦心して失敗投てきが続く。シェケラック・コーチからは「集中しろ」と何度も声が飛んだというが、「ここで集中しない人はいません」と笑って振り返る。4回目61m27、5回目はグリップがうまく握れなくて失敗投てきになった。 6回目は絶対に上がってやろうという思いではなく、「自分の最大限の距離を投げをしたい」という気持ち。だからこそ、メダルの快挙にも「完璧な投てきというイメージはなかった」し、全体通して「満足はいっていません」と北口は振り返った。 「うまくいかなかった時期もありました」。ここまでのことを振り返ると、さまざまな思いが去来する。もともとはバドミントンやスイミングに取り組み、高校から陸上を始めた。すぐさまその才能は光り、北海道・旭川東高3年時には世界ユース選手権で世界一に輝いている。しかし、日大進学後は肘のケガに悩まされ、指導者が不在になった時期もあった。食事が喉を通らない日々。それでも必ず、グラウンドに顔を出した。それが、勉強や他のスポーツをあきらめてまでやり投を選んだ覚悟だった。 指導者を求めて選んだのがやり投王国・チェコ。やり投関係者が集まるカンファレンスでたまたま知り合ったのがシェケラック・コーチだった。「君のことを知っているよ」。そう言っていろいろな動画を目の前で検索。「今、コーチがいない。チェコに行ったら見てくれますか?」。答えは「イエス」だった。「海外で過ごす時間が長くて家族や友達と過ごせないこともありました」。北口はチェコに飛び込んだ。 そこからは「ケンカもたくさんしました」。お互いに主張もあり、文化も違う。技術面の口論ではいつも負けたという。指導を受けはじめた翌年の2019年。止まっていた針が動く。5月に64m36の日本新記録を投げると、ドーハ世界選手権の予選落ちを挟んで10月には66m00にまで記録を伸ばした。 昨年の東京五輪は決勝に進むも12位。予選で痛めた左脇腹は、競技生活を脅かすほどのものだった。地道なリハビリと走り込みは、北口の課題だった基礎体力向上に充てる大事な時間に。その成果から、今季は安定して62m前後の記録をマークしていた。東京五輪を経て、シェケラック・コーチとの関係も「対等にコミュニケーションをとれるようになった」という。6月にはダイヤモンドリーグ・パリ大会日本人初優勝。機は熟した。 それでもオレゴン世界陸上の目標は「入賞」と変わらなかった北口。それは「長い競技生活のステップアップにしたい」という理由からだった。メダルを獲得した今、次は「海外転戦を楽しみながらたくさん経験して、異国でも自分のホームだと思って投げられるのが大事だと思います」と見据えている。 女子やり投界を牽引する者としての思いもある。「これを続けることが大事ですし、私だからできることじゃなくて、みんなができること。そう思って日本のやり投の選手たちみんなで頑張っていけたらいいと思っています」。 来年以降、ブダペスト世界陸上、そしてパリ五輪、東京世界陸上と続く。「パリ五輪に向けてまた同じようにメダルを取り続けて、最終的には一番良い色のメダルが取れるようにやっていきたいと思います」。世界トップスロワーの位置に“戻ってきた”北口榛花。再びの世界一に向けた歩みが、ここオレゴンから始まった。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

         

Latest articles 最新の記事

2026.03.26

出雲陸上に桐生祥秀、栁田大輝、山縣亮太、井戸アビゲイル風果ら、スプリントのトップ選手が多数エントリー!

島根陸協は3月26日、日本グランプリシリーズの第80回出雲陸上「YOSHIOKAスプリント」のエントリーリストを発表した。 男子100mでは昨年の東京世界選手権代表の守祐陽(渡辺パイプ)と栁田大輝(Honda)が登録。と […]

NEWS 田中希実 今季は「自分がどうしたいのか見つけられるように」初の著書発売で気持ち新た

2026.03.26

田中希実 今季は「自分がどうしたいのか見つけられるように」初の著書発売で気持ち新た

女子中長距離の田中希実(New Balance)が3月26日、自身初の著書『希(ねが)わくばの詩(うた)』を発売した。それを記念し、出版元の世界文化社が都内の書店でトーク&書籍お渡し会を開き、その後メディアの取材に応じた […]

NEWS 田中希実が初の著書に葛藤綴る「負けるのがわかっているのに戦わないといけない」トークイベントとお渡し会開催

2026.03.26

田中希実が初の著書に葛藤綴る「負けるのがわかっているのに戦わないといけない」トークイベントとお渡し会開催

女子中長距離の田中希実(New Balance)が3月26日、自身初の著書『希(ねが)わくばの詩(うた)』を発売した。それを記念し、出版元の世界文化社が都内の書店でトーク&書籍お渡し会を開いた。 イベントには老若男女の読 […]

NEWS 東邦銀行に北日本インカレ200m優勝、国スポ300m2位の金森瑛が加入

2026.03.26

東邦銀行に北日本インカレ200m優勝、国スポ300m2位の金森瑛が加入

東邦銀行は3月26日、4月から男子短距離の金森瑛(仙台大)がチームに加入することを発表した。 金森は福島県いわき市出身。東日大昌平高では東北大会出場が最高成績だったが、大学進学後に成長。24年には東北インカレ200mで優 […]

NEWS 宮崎の地で高校トップ選手約270人が4泊5日の合宿! 初日はあいにくの雨にも「このメンバーで切磋琢磨したい」

2026.03.25

宮崎の地で高校トップ選手約270人が4泊5日の合宿! 初日はあいにくの雨にも「このメンバーで切磋琢磨したい」

2025年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月25日、宮崎・ひなた宮崎県総合運動公園を中心に4泊5日の日程で始まった。 合宿には約270人の選手と約180人の引率指導者が参加。開講式で […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年4月号 (3月13日発売)

2026年4月号 (3月13日発売)

別冊付録 記録年鑑 2025

東京マラソン、大阪マラソン、名古屋ウィメンズマラソン

page top