2019.12.19
男子第70回、女子第31回全国高校駅伝は12月22日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園陸上競技場)を発着するコースで行われる。今大会は7区間42.195kmで競う男子が5年に1回の記念大会にあたり、通常の47都道府県代表に加えて11の地区代表も出場する。5区間21.0975kmで争う女子と合わせて、優勝争いの展望や見どころを紹介する。
女子編はこちら
男子(1区10km―2区3km-3区8.1075km―4区8.0875km―5区3km―6区5km―7区5km)
〝3強〟が優勝争いの中心
入賞争いを含め、ハイレベルな予感
今大会に向けて各地で行われた予選(都道府県大会、地区大会)では好記録が続出しており、都大路では過去にないハイレベルな争いとなりそうだ。
予選会最速は仙台育英(宮城)が県大会で出した2時間2分46秒。次いで、豊川(愛知)が2時間3分48秒、昨年の全国覇者・倉敷(岡山)が2時間3分57秒と2時間3分台をマーク。さらに、2時間4分台は大分東明(大分/2時間4分47秒)と洛南(京都/2時間4分55秒)の2校が続き、2時間5分台は8校、2時間6分台は6校に上る。
このほかにも、台風による被害でトラックレースに切り替えた予選会では、1校が2時間5分台、3校が2時間6分台をマーク(いずれも7人合計42000mでのタイム)した。
5000mの上位7名の平均タイムで比較すると佐久長聖(長野)が14分07秒でトップ。2番手は昨年の全国大会3位・学法石川(福島)の14分11秒。以下、世羅(広島)の14分12秒、東農大二(群馬)の14分13秒、仙台育英と國學院久我山(東京)の14分15秒と続き、14分20秒を切っているのは9校を数える。
また、13分台の自己記録を持つ日本人は11名に上り、留学生は4名。これらを踏まえると、優勝チームは史上3校目の2時間1分台に突入する可能性もあり、入賞争いもハイレベルで例年以上に激しいレースが予想される。
倉敷、仙台育英、佐久長聖が軸
その中で、優勝争いの中心となるのが、連覇を狙う倉敷、予選会最速の仙台育英、トラックの平均タイムで最も速い佐久長聖の3校となりそうだ。
倉敷はインターハイ5000m10位の石原翔太郎(3年)が日本人エースを務めるだけでなく、3000m障害でインターハイ3連覇を果たしたフィレモン・キプラガット(3年)といった留学生も強力だ。秋に入って、他の日本人選手もトラックや駅伝で力をつけてきており、2年連続3回目の頂点へ着々と戦力を整えている。1区には石原、3区には留学生が起用される可能性が高いが、そこで後続とのリードをどこまで開けるかが注目だ。前半の主導権は倉敷が握るだろう。
仙台育英は日本人選手の充実ぶりが目立つ。インターハイ5000mでは吉居大和(3年)が日本人トップの3位、喜早駿介(3年)が11位に入った。喜早は11月に10000mで28分52秒13をマークしている。留学生もいるものの、この2人が実力、実績ともチームの牽引役を担う。ただ、宮城県大会で2時間2分台をマークしているように他の選手も粒ぞろい。アンカー勝負も視野に入れたオーダーで、12年ぶり8回目の頂点を目指す。
2年前の覇者・佐久長聖は、倉敷や仙台育英と違って留学生はいないものの、5000mの平均タイムではトップという層の厚さを前面に出して、タイトル奪還を狙う。2年前の優勝の原動力となった中谷雄飛(現・早大)のような大エースはいないが、5000m13分台の記録を持つ、鈴木芽吹(3年)や伊藤大志(2年)を筆頭にハイレベルな選手がそろう。カギとなるのは留学生と激突する区間。そこをうまく粘りきれば、3回目の優勝へ道が開ける。

倉敷は日本人エースの石原翔太郎の走りに注目が集まる。
優勝争いに絡む力を持つ世羅、学法石川、豊川、洛南、大分東明
総合的にはこの3校が抜け出すものの、昨年2位の世羅、学法石川、豊川、洛南、大分東明も上位を狙える力を持つ。
世羅は昨年のメンバー5人が残り、中野翔太と倉本玄太の3年生コンビがチームの中心。昨年の全国大会4区で区間タイ記録をマークした留学生のジョン・ムワニキ(2年)がリードを作る展開になれば、大会最多となる10回目の優勝もある。
学法石川は5000mの自己ベスト平均で佐久長聖に次ぐ2番目と選手層が厚い。その中でも、松山和希(3年)や渡辺亮太(3年)といった昨年3位の経験者2人が主要区間を務め、今年も堅実な走りを見せるだろう。あとは1年生ながら5000m13分台をマークした山口智規の起用区間が初Vへのポイントとなる。
豊川は愛知県大会1区を29分18秒で走破した鈴木竜太朗(3年)をはじめ、全体的に層が厚くなった。鈴木が好走すれば、上位でレースを進める可能性は十分。インターハイ1500mで日本人トップの2位に入った栁本匡哉(3年)の出来が1つの注目になるだろう。
近畿大会で2時間4分台をマークして圧勝した洛南は、3000m障害の高校記録保持者で、5000mでは13分51秒97の自己記録を持つ三浦龍司(3年)を擁する。昨年9位の経験者が4人残り、前半で流れをつかめば、3年ぶりの京都勢入賞だけでなく、ベスト3入もあり得る。
洛南と同じく2時間4分台の記録を持つ大分東明は、インターハイ5000m2位のダンカン・キサイサ(2年)という強力な留学生を擁する。昨年は1区で33位と出遅れたのが響き、最終的に15位にとどまった。それだけに日本人選手の走りがカギとなりそうだ。

世羅は昨年のアンカーを務めた倉本玄太が主要区間を担いそう
九州勢や東農大二なども有力候補
2時間5~6分台の好記録をマークした九州勢はいずれも強豪。初出場となる自由ケ丘(福岡)は2時間5分台で古豪・大牟田を退けた勢いで初入賞を狙う。また、3位に入った第20回大会(1969年)以来、50年ぶりの出場となる開新(熊本)も2時間5分台の記録を持つ。昨年の全国4位・九州学院(南九州/熊本)は県大会で2位に敗れたが、九州大会を2時間5分台で制した。また九州大会2位の宮崎日大(宮崎)や3位の鳥栖工(佐賀)あたりも入賞圏内だ。
関東では東農大二が上位争いに絡む力を持つ。5000mで今季日本人最速の13分51秒91をマークしている石田洸介(2年)を擁し、伊井修司、宗像直輝の3年生コンビも強力だ。また、國學院久我山、鎌倉学園(南関東/神奈川)、藤沢翔陵(神奈川)も力はある。埼玉栄(埼玉)は昨年の1区区間賞の白鳥哲汰(3年)の走りがカギとなり、八千代松陰(千葉)は5000m13分台の記録を持つ佐藤一世、石井一希に注目だ。
このほか北海道大会で2時間6分を切った札幌山の手や、秋田工(秋田)、西脇工(兵庫)、須磨学園(近畿/兵庫)なども目が離せない。
各代表校の名鑑を掲載した〝高校駅伝総展望〟が付録の月刊陸上競技2020年1月号も発売中!
男子(1区10km―2区3km-3区8.1075km―4区8.0875km―5区3km―6区5km―7区5km)
〝3強〟が優勝争いの中心 入賞争いを含め、ハイレベルな予感
今大会に向けて各地で行われた予選(都道府県大会、地区大会)では好記録が続出しており、都大路では過去にないハイレベルな争いとなりそうだ。 予選会最速は仙台育英(宮城)が県大会で出した2時間2分46秒。次いで、豊川(愛知)が2時間3分48秒、昨年の全国覇者・倉敷(岡山)が2時間3分57秒と2時間3分台をマーク。さらに、2時間4分台は大分東明(大分/2時間4分47秒)と洛南(京都/2時間4分55秒)の2校が続き、2時間5分台は8校、2時間6分台は6校に上る。 このほかにも、台風による被害でトラックレースに切り替えた予選会では、1校が2時間5分台、3校が2時間6分台をマーク(いずれも7人合計42000mでのタイム)した。 5000mの上位7名の平均タイムで比較すると佐久長聖(長野)が14分07秒でトップ。2番手は昨年の全国大会3位・学法石川(福島)の14分11秒。以下、世羅(広島)の14分12秒、東農大二(群馬)の14分13秒、仙台育英と國學院久我山(東京)の14分15秒と続き、14分20秒を切っているのは9校を数える。 また、13分台の自己記録を持つ日本人は11名に上り、留学生は4名。これらを踏まえると、優勝チームは史上3校目の2時間1分台に突入する可能性もあり、入賞争いもハイレベルで例年以上に激しいレースが予想される。 倉敷、仙台育英、佐久長聖が軸 その中で、優勝争いの中心となるのが、連覇を狙う倉敷、予選会最速の仙台育英、トラックの平均タイムで最も速い佐久長聖の3校となりそうだ。 倉敷はインターハイ5000m10位の石原翔太郎(3年)が日本人エースを務めるだけでなく、3000m障害でインターハイ3連覇を果たしたフィレモン・キプラガット(3年)といった留学生も強力だ。秋に入って、他の日本人選手もトラックや駅伝で力をつけてきており、2年連続3回目の頂点へ着々と戦力を整えている。1区には石原、3区には留学生が起用される可能性が高いが、そこで後続とのリードをどこまで開けるかが注目だ。前半の主導権は倉敷が握るだろう。 仙台育英は日本人選手の充実ぶりが目立つ。インターハイ5000mでは吉居大和(3年)が日本人トップの3位、喜早駿介(3年)が11位に入った。喜早は11月に10000mで28分52秒13をマークしている。留学生もいるものの、この2人が実力、実績ともチームの牽引役を担う。ただ、宮城県大会で2時間2分台をマークしているように他の選手も粒ぞろい。アンカー勝負も視野に入れたオーダーで、12年ぶり8回目の頂点を目指す。 2年前の覇者・佐久長聖は、倉敷や仙台育英と違って留学生はいないものの、5000mの平均タイムではトップという層の厚さを前面に出して、タイトル奪還を狙う。2年前の優勝の原動力となった中谷雄飛(現・早大)のような大エースはいないが、5000m13分台の記録を持つ、鈴木芽吹(3年)や伊藤大志(2年)を筆頭にハイレベルな選手がそろう。カギとなるのは留学生と激突する区間。そこをうまく粘りきれば、3回目の優勝へ道が開ける。
倉敷は日本人エースの石原翔太郎の走りに注目が集まる。
優勝争いに絡む力を持つ世羅、学法石川、豊川、洛南、大分東明
総合的にはこの3校が抜け出すものの、昨年2位の世羅、学法石川、豊川、洛南、大分東明も上位を狙える力を持つ。
世羅は昨年のメンバー5人が残り、中野翔太と倉本玄太の3年生コンビがチームの中心。昨年の全国大会4区で区間タイ記録をマークした留学生のジョン・ムワニキ(2年)がリードを作る展開になれば、大会最多となる10回目の優勝もある。
学法石川は5000mの自己ベスト平均で佐久長聖に次ぐ2番目と選手層が厚い。その中でも、松山和希(3年)や渡辺亮太(3年)といった昨年3位の経験者2人が主要区間を務め、今年も堅実な走りを見せるだろう。あとは1年生ながら5000m13分台をマークした山口智規の起用区間が初Vへのポイントとなる。
豊川は愛知県大会1区を29分18秒で走破した鈴木竜太朗(3年)をはじめ、全体的に層が厚くなった。鈴木が好走すれば、上位でレースを進める可能性は十分。インターハイ1500mで日本人トップの2位に入った栁本匡哉(3年)の出来が1つの注目になるだろう。
近畿大会で2時間4分台をマークして圧勝した洛南は、3000m障害の高校記録保持者で、5000mでは13分51秒97の自己記録を持つ三浦龍司(3年)を擁する。昨年9位の経験者が4人残り、前半で流れをつかめば、3年ぶりの京都勢入賞だけでなく、ベスト3入もあり得る。
洛南と同じく2時間4分台の記録を持つ大分東明は、インターハイ5000m2位のダンカン・キサイサ(2年)という強力な留学生を擁する。昨年は1区で33位と出遅れたのが響き、最終的に15位にとどまった。それだけに日本人選手の走りがカギとなりそうだ。
世羅は昨年のアンカーを務めた倉本玄太が主要区間を担いそう
九州勢や東農大二なども有力候補
2時間5~6分台の好記録をマークした九州勢はいずれも強豪。初出場となる自由ケ丘(福岡)は2時間5分台で古豪・大牟田を退けた勢いで初入賞を狙う。また、3位に入った第20回大会(1969年)以来、50年ぶりの出場となる開新(熊本)も2時間5分台の記録を持つ。昨年の全国4位・九州学院(南九州/熊本)は県大会で2位に敗れたが、九州大会を2時間5分台で制した。また九州大会2位の宮崎日大(宮崎)や3位の鳥栖工(佐賀)あたりも入賞圏内だ。
関東では東農大二が上位争いに絡む力を持つ。5000mで今季日本人最速の13分51秒91をマークしている石田洸介(2年)を擁し、伊井修司、宗像直輝の3年生コンビも強力だ。また、國學院久我山、鎌倉学園(南関東/神奈川)、藤沢翔陵(神奈川)も力はある。埼玉栄(埼玉)は昨年の1区区間賞の白鳥哲汰(3年)の走りがカギとなり、八千代松陰(千葉)は5000m13分台の記録を持つ佐藤一世、石井一希に注目だ。
このほか北海道大会で2時間6分を切った札幌山の手や、秋田工(秋田)、西脇工(兵庫)、須磨学園(近畿/兵庫)なども目が離せない。
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