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2021.07.14

指揮官インタビュー/全日本選考会トップ通過 東京国際大・大志田監督「今年は今年のやり方で強くなっていく」
指揮官インタビュー/全日本選考会トップ通過 東京国際大・大志田監督「今年は今年のやり方で強くなっていく」


全日本選考会では4組の丹所(左から2人目)が日本人トップを意識してしっかり走った

三浦瞭太郎(4年)を主将に据えて新チームをスタートさせた東京国際大は、6月19日に行われた全日本大学駅伝関東選考会を総合1位で突破した。箱根駅伝では2年連続シード権獲得。新興校のひとつという位置づけから、今や箱根常連校となっただけではなく、伊藤達彦(Honda)が東京五輪代表に名を連ねるなど、陸上長距離界で存在感を示す強豪校へと変貌し始めている。前半シーズンを終えた「チームの今」を、大志田秀次監督に伺った。

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――まずは全日本大学駅伝関東選考会、1位突破おめでとうございます。

大志田秀次監督(大志田) ありがとうございます。まさか7位からトップまでいけるとは思ってもみませんでした。最終組の2人(丹所健とイエゴン・ヴィンセント)がよく頑張ってくれました。ヴィンセントは関東インカレから連戦だったので調子が上がっていないなかでしたが、要所を押さえた走りをしてくれましたね。丹所とはレース前に細かい話はしていませんでしたが、日本人トップを狙っていたということで、それを意識した走りをしてくれたと思います。

オーダーも意外だったようで、「この選手が走るの?」という声も聞かれました。確かに実績のある選手を入れていませんでしたが、試合前のタイムトライアルなどの結果を見て、新しい戦力を試してみよう、ということでチャレンジしました。今まで私たちがやってきた、レースにしっかり状態を合わせて、その状況に適した走り、展開をすることができていました。そういう本番に強い私たちの良さを継承してくれていましたし、結果を出すことができたのは収穫です。

――2年連続シードを獲得した箱根駅伝が終わって、2月には三浦瞭太郎選手を主将に据えて、新チームが立ち上がりました。

大志田 今季は『東國邁進』~最強、最速のチームへ~をスローガンに掲げて、新チームをスタートさせました。ヴィンセントや丹所もそうですが、1年生にも良い選手が入ってくれました。今までは手堅くシードを取る、前回の記録を上回る、という地道なところを目標に掲げてきました。ですが、ここ数年で選手たちの意識の中に、「優勝を目指す」という気持ちが芽生え始めています。ならば、堅実に試合を迎えるだけではなく、勝つチームを目指す、上位と対峙できるチームにしなければなりません。そこで、最強、最速のチームへという言葉を使って、上を目指すチーム作りをしていくことにしました。

――強い決意でスタートさせた今シーズンですが、ここまでの歩みを振り返っていただけますか。

大志田 そうですね、就職活動中だった芳賀宏太郎と、宗像聖も調子が上がってきませんでした。山谷昌也は昨年からの不調から回復せず、という状況。なかなか実績のある選手が足踏みをしている状況ですので、そこが私たちのチームの悪いところでもあり、課題だと思っています。

数値だけを見れば、シードを取った2年前のほうが力はあるかもしれません。昨年のチームは、計算ができる外さないチームだったと思います。今のチームは、まだまだその強さや潜在能力を表に出せていない選手も多いですから、その楽しみがありますよね。

全日本の選考会で言えば、堀畑佳吾(3年)や冨永昌輝(1年)、4年生の野澤巧理や村松敬哲(2年)らが強くなってくれたのは大きな収穫です。堀畑はケガも多く、なかなかうまく走れないことが多かった選手ですが、ここで結果を出してくれました。1年生でいえば、冨永や倉掛響、今は故障をしていますが白井勇佑も楽しみな選手の1人です。

2組では堀畑(先頭)が組6着と好走した

――村松選手をはじめ2年生にも良い選手がそろっていますね。

大志田 川畑昇大や林優策も楽しみな存在です。まだ2年生なので体力はありませんが、この先の夏合宿でしっかりと体力をつけていけば、面白い存在になると思います。野澤は一般入試で入ってきた選手です。2年生から寮に入って取り組んできました。それでも思うように結果が出せず、厳しいかな、と思っていたのですが、3月から徐々に調子が上がり始めました。関東インカレ後も好調で、全日本選考会前のタイムトライアルもトップで走るくらいの力を見せてくれています。努力で這い上がってきた彼の存在は大きいです。同期や1年生が、彼を見て継続することの大切さを学んでくれるとうれしいですね。

――これから夏合宿もスタートし、それが終われば秋の駅伝シーズンです。

大志田 今年は今年のやり方で強くなっていく。選手の特性、色、それを生かして練習をしていくことが大切だと思っています。初の三大駅伝出場が決まりましたが、出雲駅伝に始まり、全日本、箱根と3カ月間戦い抜かなければなりません。まずはその体力を、この夏合宿でつけていきたいと考えています。

昨年は合宿期間も短かったのでスピードに重点を置き、選手たちもついてきてくれましたが、故障なども発生してしまい、消化不良の部分もありました。昨年は4年生が多かった分、身体の核ができていたのでまだ耐えられましたが、今年は下級生が多くなりそうですから、ちょっとした身体のひずみが出たときに、長期の故障につながらないように注意しなければなりません。

――具体的な夏の強化イメージは?

大志田 今年は夏だからと言って特別なことをやるのではなく、今までと同じことにプラスアルファで少し追加する程度に抑えつつ、体力をつけられるような取り組みをしていきたいですね。たとえば、脚の運びの解析などもやっていきます。シューズの状況が変わってきていますから、その特性を生かした走りができるような研究を進めていくつもりです。まずはケガをさせないように。じっくりと体力をつけていって、3カ月間、調子を崩すことなく、戦い続けられる体力を身につけることを大事にしていきます。

全日本トップ通過の東京国際大。大志田監督は駅伝に向けてどう仕上げていくか

構成/田坂友暁

7月14日発売の月刊陸上競技8月号では全日本大学駅伝関東学連選考会の詳しいリポートとをお伝えしています!

全日本選考会では4組の丹所(左から2人目)が日本人トップを意識してしっかり走った 三浦瞭太郎(4年)を主将に据えて新チームをスタートさせた東京国際大は、6月19日に行われた全日本大学駅伝関東選考会を総合1位で突破した。箱根駅伝では2年連続シード権獲得。新興校のひとつという位置づけから、今や箱根常連校となっただけではなく、伊藤達彦(Honda)が東京五輪代表に名を連ねるなど、陸上長距離界で存在感を示す強豪校へと変貌し始めている。前半シーズンを終えた「チームの今」を、大志田秀次監督に伺った。 ――まずは全日本大学駅伝関東選考会、1位突破おめでとうございます。 大志田秀次監督(大志田) ありがとうございます。まさか7位からトップまでいけるとは思ってもみませんでした。最終組の2人(丹所健とイエゴン・ヴィンセント)がよく頑張ってくれました。ヴィンセントは関東インカレから連戦だったので調子が上がっていないなかでしたが、要所を押さえた走りをしてくれましたね。丹所とはレース前に細かい話はしていませんでしたが、日本人トップを狙っていたということで、それを意識した走りをしてくれたと思います。 オーダーも意外だったようで、「この選手が走るの?」という声も聞かれました。確かに実績のある選手を入れていませんでしたが、試合前のタイムトライアルなどの結果を見て、新しい戦力を試してみよう、ということでチャレンジしました。今まで私たちがやってきた、レースにしっかり状態を合わせて、その状況に適した走り、展開をすることができていました。そういう本番に強い私たちの良さを継承してくれていましたし、結果を出すことができたのは収穫です。 ――2年連続シードを獲得した箱根駅伝が終わって、2月には三浦瞭太郎選手を主将に据えて、新チームが立ち上がりました。 大志田 今季は『東國邁進』~最強、最速のチームへ~をスローガンに掲げて、新チームをスタートさせました。ヴィンセントや丹所もそうですが、1年生にも良い選手が入ってくれました。今までは手堅くシードを取る、前回の記録を上回る、という地道なところを目標に掲げてきました。ですが、ここ数年で選手たちの意識の中に、「優勝を目指す」という気持ちが芽生え始めています。ならば、堅実に試合を迎えるだけではなく、勝つチームを目指す、上位と対峙できるチームにしなければなりません。そこで、最強、最速のチームへという言葉を使って、上を目指すチーム作りをしていくことにしました。 ――強い決意でスタートさせた今シーズンですが、ここまでの歩みを振り返っていただけますか。 大志田 そうですね、就職活動中だった芳賀宏太郎と、宗像聖も調子が上がってきませんでした。山谷昌也は昨年からの不調から回復せず、という状況。なかなか実績のある選手が足踏みをしている状況ですので、そこが私たちのチームの悪いところでもあり、課題だと思っています。 数値だけを見れば、シードを取った2年前のほうが力はあるかもしれません。昨年のチームは、計算ができる外さないチームだったと思います。今のチームは、まだまだその強さや潜在能力を表に出せていない選手も多いですから、その楽しみがありますよね。 全日本の選考会で言えば、堀畑佳吾(3年)や冨永昌輝(1年)、4年生の野澤巧理や村松敬哲(2年)らが強くなってくれたのは大きな収穫です。堀畑はケガも多く、なかなかうまく走れないことが多かった選手ですが、ここで結果を出してくれました。1年生でいえば、冨永や倉掛響、今は故障をしていますが白井勇佑も楽しみな選手の1人です。 2組では堀畑(先頭)が組6着と好走した ――村松選手をはじめ2年生にも良い選手がそろっていますね。 大志田 川畑昇大や林優策も楽しみな存在です。まだ2年生なので体力はありませんが、この先の夏合宿でしっかりと体力をつけていけば、面白い存在になると思います。野澤は一般入試で入ってきた選手です。2年生から寮に入って取り組んできました。それでも思うように結果が出せず、厳しいかな、と思っていたのですが、3月から徐々に調子が上がり始めました。関東インカレ後も好調で、全日本選考会前のタイムトライアルもトップで走るくらいの力を見せてくれています。努力で這い上がってきた彼の存在は大きいです。同期や1年生が、彼を見て継続することの大切さを学んでくれるとうれしいですね。 ――これから夏合宿もスタートし、それが終われば秋の駅伝シーズンです。 大志田 今年は今年のやり方で強くなっていく。選手の特性、色、それを生かして練習をしていくことが大切だと思っています。初の三大駅伝出場が決まりましたが、出雲駅伝に始まり、全日本、箱根と3カ月間戦い抜かなければなりません。まずはその体力を、この夏合宿でつけていきたいと考えています。 昨年は合宿期間も短かったのでスピードに重点を置き、選手たちもついてきてくれましたが、故障なども発生してしまい、消化不良の部分もありました。昨年は4年生が多かった分、身体の核ができていたのでまだ耐えられましたが、今年は下級生が多くなりそうですから、ちょっとした身体のひずみが出たときに、長期の故障につながらないように注意しなければなりません。 ――具体的な夏の強化イメージは? 大志田 今年は夏だからと言って特別なことをやるのではなく、今までと同じことにプラスアルファで少し追加する程度に抑えつつ、体力をつけられるような取り組みをしていきたいですね。たとえば、脚の運びの解析などもやっていきます。シューズの状況が変わってきていますから、その特性を生かした走りができるような研究を進めていくつもりです。まずはケガをさせないように。じっくりと体力をつけていって、3カ月間、調子を崩すことなく、戦い続けられる体力を身につけることを大事にしていきます。 全日本トップ通過の東京国際大。大志田監督は駅伝に向けてどう仕上げていくか 構成/田坂友暁 7月14日発売の月刊陸上競技8月号では全日本大学駅伝関東学連選考会の詳しいリポートとをお伝えしています!

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