2021.01.29
【コラム番外編】
編集部が独断で選ぶ2020年トラック&フィールド
「ONE SCENE」
2020年は五輪延期、競技会中止・延期など暗い影を落としたシーズンだったが、夏以降は多くの好記録・ハイパフォーマンスが誕生した。
2019年に続いて、編集部員コラム「番外編」として編集部員が独断(?)と偏見(?)と思い入れたっぷり(?)に、2020年シーズンで印象に残った「ONE SCENE」を選出しました。みなさんの心にはどんな「ONE SCENE」が刻まれましたか?
田中希実
女子1500mで新時代の日本新(小川雅生)
8月22日、〝新〟国立競技場の最初のビッグゲームにして、最初の日本記録。歴史に刻まれる激走を見せたのが、当時20歳の田中希実選手(豊田自動織機TC)だった。
序盤から先頭を引っ張り続け、打ち立てた記録が4分05秒27。同郷(兵庫県小野市)の大先輩・小林祐梨子(須磨学園高)が2006年に作った従来の日本記録(4分07秒86)を大幅に塗り替えた。
12月4日の日本選手権では5000mを制し、東京五輪代表に内定済み。800mから10000mまで、距離を問わずに活躍を続ける21歳は、次なるターゲットを日本女子初の五輪1500m出場に置いている。
全国高校大会で
石川優が女子短距離2冠(井上 敦)
史上初のインターハイ中止という残念な出来事もあったが、5種目で新記録が出るなどコロナ禍でも盛り上がりを見せた2020年の高校シーズン。いろいろ迷ったが、全国高校大会で女子スプリント2冠に輝いた石川優選手(相洋3神奈川)が印象に残っている。
同学年には中学時代から実績のあるライバルが居並ぶが、石川選手は全中出場の経験はなく、高校でも2年時の沖縄インターハイ100m予選では不正スタートで失格。しかし、最終学年では、心身ともに逞しくなった。広島では他を圧倒して、ヒロインとなった。
冬季も後輩たちと汗を流している様子。大学1年目の2021年はどんな成績を残すだろうか。ライバルたちの奮起も合わせて注目したい。
橋岡優輝が見せた
世界へ通じるジャンプ(向永拓史)
9月に行われた日本インカレ男子走幅跳。この大会はコロナ禍にあって、前半2回、後半2回の4回試技で実施された。その数少ないチャンスで調整力・修正力・底力を見せたのが橋岡優輝選手(日大)。1回目7m92(+1.1)、2回目8m06(-0.2)、3回目ファウルのあと、最終4回目に8m29(-0.6)を跳んで優勝を果たした。
この記録は自身2番目の記録で、パフォーマンス日本歴代3位。昨シーズン8m以上を跳んだのは橋岡選手のみで、世界リストでも3位だった(この時点では世界1位!)。昨年はフィールド種目においては調整が難しかったようで、全体的に記録が低水準。そんな中でさすがの強さを発揮した。自身でも大きな手応えをつかんだ跳躍のようで、力強く拳を握りしめた姿が印象的だった。
高橋大史 圧巻の2冠
全国中学生陸上2020(大久保雅文)
8月の全中が中止となり、中学生にとっては2020年唯一の全国大会。冷たい雨が降るコンディションだったが、男子四種競技の高橋大史(上山南3山形)が3091点の中学新で優勝と一際輝くパフォーマンスを見せた。
大会前から脚を痛めており、決して万全ではなかったというが、4種目中、走高跳を除く3種目で自己新をマーク。走高跳も自己タイで得点を積み重ね、大記録に結びつけた。
大会最終日には4×100mリレーのアンカーを務め、42秒71の中学歴代7位の好タイムで2冠を達成。過去の全中では混成競技と4×100mリレーの2種目Vはおらず、中学陸上史に残る結果を残した。
相澤晃VS伊藤達彦
同学年コンビによる魂の激闘(松永貴允)
12月の日本選手権10000m。東京五輪の代表選考が懸かった一戦は、絶好のコンディションに恵まれた。「今日は日本新が誕生する――」。そんな期待感がレース前から漂っていた。
佐藤悠基(SGホールディングスグループ)、鎧坂哲也(旭化成)、大迫傑 (Nike)、大六野秀畝(旭化成)、田村和希(住友電工)……歴代王者たちを置き去りにし、先頭争いに残ったのは、ともに社会人ルーキーの相澤晃(旭化成)と 伊藤達彦(Honda)。
2人は正月の箱根駅伝2区で魅せた名勝負を再現するかのような、抜きつ抜かれつ の攻防を繰り広げ、ライバル対決を制した相澤が東京五輪の参加標準記録(27分28秒00)を上回る27分18秒75で代表内定。2位の伊藤が27分25秒73、3位の田村も 27分28秒92と、上位3人が従来の日本記録を上回った。
残念ながら現地で観戦することはできなかったが、画面越しでも、観るものを熱くするような感動的なレースだった。
待ちに待ったビッグイベント
国立での試合で独特の緊張感(船越陽一郎)
2020年はコロナ禍にあってなかなか競技会が行われなかった。夏になり、少しずつ試合を撮影する機会が増えて迎えたのが8月の国立競技場でのセイコーゴールデングランプリ。国立競技場で初の競技会、久々に大規模大会の撮影ができるという喜び、久々に味わう独特の緊張感、これらが混ざり合い、今まで味わったことがない不思議な感覚で撮影していたのが忘れられません。
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