東京世界選手権出場のための記録の有効期間最終日となる8月24日、奈良市サーキットの男子100mに栁田大輝(東洋大)が出場した。
土壇場での大逆転を狙い、日本記録(9秒95)を目指した栁田。午前中の第一レースを10秒11(+0.7)で走ると、夕方の第二レースへ準備を進めた。
ただ、荒天により2度にわたる中断。当初より2時間ほど遅い18時30分のレース予定となった。栁田は再アップからスパイクを履いてスターティングブロックを使って身体を動かしたものの、向かい風の状況に棄権を決断。個人での東京世界選手権代表への挑戦は終わった。
「アップまでしましたが、土江(寛裕)先生から『やめようか』と声をかけられて、すんなり受け入れられました」と話す。「無事に終わっておこう、というのが一番。ケガのリスクが高まるので」と決断した心境を明かす。
今年はワールドユニバーシティゲームズで銅メダルとなった以外、アジア選手権も含めて決勝の舞台で一度も負けなかった。だが、7月の日本選手権の予選でまさかの不正スタート(フライング)により失格。「すべて自分の一つのミス」が響いた。
その後は個人での代表入りを目指し、有効期間内の日本勢最高記録のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)の9秒96以上を目指して連戦。Athlete Night Gamesでは予選で追い風参考ながら9秒92(+3.3)、決勝で参加標準記録突破の10秒00の自己新を叩き出した。
そして、この記録会。「まさか走らずに終わるとは。最後の最後まで運を味方につけられなかった」と苦笑いするが、ギリギリまで挑戦する姿を示した。無事に終わって「安心している部分もある」とし、自己ベスト更新、連戦での挑戦に「速く走れるようになって、安定していた。楽しめた自分もいる」。
東洋大での4年間は「陸上の明るい部分と暗い部分どちらも経験しました」。個人での出場にすべてを懸けてきたため、選考では厳しいもののリレーメンバーでの代表入りなどは「考えていませんでした」と話す。
「ケガをせず、無理をしなくて良かったと思える日が絶対に来るはず」と前を向き、「来年は世界選手権はありませんが、来年以降、借りを返していきたい。誰にも負けないような選手になりたい」と力を込めた。
逃したものは大きく、戻ってはこない。それでも、強さを速さを手に入れるきっかけになった世界陸上への挑戦。それ以上に得たものが大きかったと言えるように、最強スプリンタ-になるための道を歩み始める。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.08.24
-
2025.08.24
-
2025.08.24
-
2025.08.24
2025.08.19
15年ぶりの箱根総合優勝へ 早大駅伝主将・山口智規「夏合宿で底上げを」 妙高で合同取材会
-
2025.08.24
2025.08.16
100mH・福部真子12秒73!!ついに東京世界選手権参加標準を突破/福井ナイトゲームズ
-
2025.08.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.08.25
34年ぶり東京世界陸上 注目の男子100m3枠、9秒台再びの桐生祥秀らが代表入りへ
今年9月、34年ぶりに東京で開かれる世界選手権の出場資格獲得のための記録の有効期間が8月24日で終了した。 世界選手権の各種目の代表枠は最大3名。最後まで注目を集めたのが男子100mだった。7月の日本選手権時点で、内定条 […]
2025.08.24
栁田大輝 最後の最後まで挑戦も100m代表逃す「無理をしなくて良かったと思える日が絶対に来る」
東京世界選手権出場のための記録の有効期間最終日となる8月24日、奈良市サーキットの男子100mに栁田大輝(東洋大)が出場した。 土壇場での大逆転を狙い、日本記録(9秒95)を目指した栁田。午前中の第一レースを10秒11( […]
2025.08.24
ドキュメント/今年も歴史が刻まれた福井の夜に熱狂!東京世界陸上前に過去最大規模の“お祭り”が夏を彩る
2019年に産声を上げたAthlete Night Games in FUKUIは、今年で6回目を迎えた。17年に行われた日本インカレの男子100mで、桐生祥秀(東洋大、現・日本生命)が日本初の9秒台を刻んだ時の感動から […]
2025.08.24
100mH清山ちさと 34歳自己新連発 ラストチャンスは惜しくも標準届かず世界陸上代表ならず
東京世界選手権出場のための記録の有効期間最終日となる8月24日、九州選手権が大分スポーツ公園クラサスドーム大分で行われ、女子100mハードルに清山ちさと(いちご)が出場した。 東京世界選手権の参加標準記録(12秒73)を […]
2025.08.24
【“陸女”インタビュー】バラエティーや情報番組に引っ張りだこ!タレント・国本梨紗さん 中学3年間の陸上部「あの時の記憶が数年後の自分を助けてくれる」
オリンピックの花形である陸上競技! 球技に比べると、すこーし“地味”な印象があるかもしれない……。しかし、中高生合わせて、なんと約30万人以上が「陸部」なんです。 実は芸能界で活躍するあの人も、この人も、結構、陸上経験者 […]
Latest Issue
最新号

2025年9月号 (8月12日発売)
衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99