2025.06.28
今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。
これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2009年にドイツのベルリンで行われた第12回大会を振り返る。
ボルトが圧巻の世界新
この大会で異次元のパフォーマンスを見せたのが男子短距離のウサイン・ボルト(ジャマイカ)。100mを9秒58(+0.9)、200mを19秒19(-0.3)の世界新記録でそれぞれ優勝。3走を務めた4×100mリレーでは、37秒31の大会新記録で制して3冠を達成した。
まずは100m。前年の北京五輪ではフィニッシュ直前に横を向き、胸を叩きながら9秒69の世界新記録をマークしていたボルト。初日の1次予選は、中盤からジョギングのような走りで10秒20の1着通過。続く2次予選では隣のレーンに入ったダニエル・ベイリー(アンティグア・バーブーダ)と顔を見合わせながら笑顔でフィニッシュし、10秒03の2着で準決勝進出を決めた。
翌日の準決勝はフライングをするも(当時は同組で2回目のフライングをした選手が失格)、再スタートでは見事なスタートを決め、中盤以降は流しながら、9秒89で決勝に駒を進めた。
迎えた決勝では、ボルトに加え、前世界記録保持者で9秒72のベストを持つアサファ・パウエル(ジャマイカ)、前回覇者のタイソン・ゲイ(米国)が揃い、歴史的な決戦に世界中が注目した。
ボルトは鋭い飛び出しで前半からリードし、中盤以降は他の選手を圧倒。最後まで躍動感のある走りで、悠然とフィニッシュラインを駆け抜けた。
人類史上初の9秒5台となる9秒58(+0.9)。歴史にその名を刻んだ瞬間となった。ゲイ(米国)は9秒71で2位。これは当時世界歴代2位の記録であり、史上最速の銀メダリストだった。3位には9秒84でパウエルが入った。
200mは北京五輪で19秒30と、こちらも世界新記録を樹立していた。100mで世界記録をマークした好調そのまま、1次予選から余裕の走りでラウウンドを突破し、ファイナルへ進んだ。
決勝は8人中最速のリアクションタイムでスタートを決め、前半からリードを奪うと、後半の直線でも大きストライドで他を寄せつけない。向かい風のなか、自身が持つ世界記録を0秒11も更新する19秒19(-0.3)。19秒2台を飛び越えて、こちらは人類初の19秒1台に到達した。
締めは4×100mリレー。3走のボルトでリードを奪うと、4走のアサファ・パウエルもトップを守り、3つ目の金メダルを手にしてこの大会を終えた。
女子ハンマー投はアニタ・ヴォダルチク(ポーランド)が77m96の世界新記録で優勝。タチアナ・ルイセンコ(ロシア)が持っていた従来の世界記録を16cm上回った。
1投目に74m86を投げて2位とまずまずのスタートを切ると、2投目に会心の投げを見せる。高い弾道でハンマーは飛んでいき、トップ(75m10)の記録を大きく超え、77m96の世界新記録をマークした。
正式結果を確認したヴォダルチクは跳び上がって喜びを爆発させる。しかし、勢い余って左脚を捻挫し、3投目から5投目をパス。前回覇者のベティ・ハイドラー(ドイツ)が6投目に77m12を投げてヒヤリとしたが、からくも逃げ切った。
名勝負が繰り広げられたのが女子走高跳。この種目は連覇を狙うブランカ・ブラシッチ(クロアチア)と地元・ドイツのアリアネ・フリードリヒによる一騎打ちが予想されていた。
1m99を終えた時点で残ったのがブラシッチ、フリードリヒ、アンナ・チチェロワ(ロシア)の3人。チチェロワが1回目、ブラシッチが2回目で2m02を成功させたが、フリードリヒは2回失敗して窮地に追い込まれる。それでも3回目に成功させ、勝負は2m04、もつれ込んだ。
2m04はブラシッチが2回目に成功。チチェロワは3回連続で失敗し、2回連続で失敗したフリードリヒは3回目をパスして、2m06にすべてを懸けた。地元の大声援に後押しされたフリードリヒだったが、これも失敗。ブラシッチが連覇を達成した。
男子長距離では「皇帝」と言われたケネニサ・ベケレ(エチオピア)が大会史上初の5000mと10000mの2冠の快挙を成し遂げた。
10000mは26分46秒31の大会新記録で4連覇。得意のスパートでライバルを圧倒した。5000mではラスト1周まで大集団でレースが進み、最後は前回覇者バーナード・ラガト(米国)との一騎打ちになる。フィニッシュ直前までの争いとなり、0秒24差でベケレに軍配が上がった。
日本勢は最終日にメダル2つ獲得
日本からは男子30選手、女子25選手が出場。メダル2、入賞5の成績を残した。
ハイライトは大会最終日。それまで日本勢のメダルは0だった。
まずはモーニングセッションの女子マラソン。尾崎好美(第一生命)が2時間25分25秒で銀メダルを獲得。加納由理(セカンドウインドAC)は2時間26分57秒で7位に入った。
レースは25kmまでスローペースながらも後半に入ってペースが上がる展開。35km手前の時点で先頭は尾崎、白雪(中国)、アセレフェチュ・メルギア(エチオピア)の3人に絞られた。
40kmを過ぎたところで尾崎がスパート。メルギアを突き放し、白雪との一騎打ちに。残り1kmで白雪にスパートされ、尾崎はついていくことができない。それでも最後まで力を振り絞り、1991年大会で恩師の第一生命・山下佐知子監督が獲得した時と同じ色のメダルに輝いた。
男子やり投では村上幸史(スズキ)が82m97で銅メダルの快挙。この種目で日本人初のメダリストとなった。

男子やり投で銅メダルを獲得した村上幸史
前年の北京五輪で銀メダルを獲得した男子4×100mリレーは、これまで4走を務めてきた朝原宣治が現役を引退。江里口匡史(早大)、塚原直貴(富士通)、高平慎士(富士通)、藤光謙司(セーレン)のメンバーで挑み、38秒30で4位に入った。
男子マラソンでは佐藤敦之(中国電力)が2時間12分05秒で6位入賞。女子20km競歩の渕瀬真寿美(大塚製薬)も1時間31分15秒でこちらも6位に入った。
女子10000mでは中村友梨香(天満屋)が31分14秒39で7位、福士加代子(ワコール)もシーズンベストの31分23秒49と力を出したが、8位と2秒07差の9位で、惜しくも入賞を逃した。
また、メダルが期待された男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)と女子マラソンの渋井陽子(三井住友海上)は故障により欠場となった。
ボルトが圧巻の世界新
この大会で異次元のパフォーマンスを見せたのが男子短距離のウサイン・ボルト(ジャマイカ)。100mを9秒58(+0.9)、200mを19秒19(-0.3)の世界新記録でそれぞれ優勝。3走を務めた4×100mリレーでは、37秒31の大会新記録で制して3冠を達成した。 まずは100m。前年の北京五輪ではフィニッシュ直前に横を向き、胸を叩きながら9秒69の世界新記録をマークしていたボルト。初日の1次予選は、中盤からジョギングのような走りで10秒20の1着通過。続く2次予選では隣のレーンに入ったダニエル・ベイリー(アンティグア・バーブーダ)と顔を見合わせながら笑顔でフィニッシュし、10秒03の2着で準決勝進出を決めた。 翌日の準決勝はフライングをするも(当時は同組で2回目のフライングをした選手が失格)、再スタートでは見事なスタートを決め、中盤以降は流しながら、9秒89で決勝に駒を進めた。 迎えた決勝では、ボルトに加え、前世界記録保持者で9秒72のベストを持つアサファ・パウエル(ジャマイカ)、前回覇者のタイソン・ゲイ(米国)が揃い、歴史的な決戦に世界中が注目した。 ボルトは鋭い飛び出しで前半からリードし、中盤以降は他の選手を圧倒。最後まで躍動感のある走りで、悠然とフィニッシュラインを駆け抜けた。 人類史上初の9秒5台となる9秒58(+0.9)。歴史にその名を刻んだ瞬間となった。ゲイ(米国)は9秒71で2位。これは当時世界歴代2位の記録であり、史上最速の銀メダリストだった。3位には9秒84でパウエルが入った。 200mは北京五輪で19秒30と、こちらも世界新記録を樹立していた。100mで世界記録をマークした好調そのまま、1次予選から余裕の走りでラウウンドを突破し、ファイナルへ進んだ。 決勝は8人中最速のリアクションタイムでスタートを決め、前半からリードを奪うと、後半の直線でも大きストライドで他を寄せつけない。向かい風のなか、自身が持つ世界記録を0秒11も更新する19秒19(-0.3)。19秒2台を飛び越えて、こちらは人類初の19秒1台に到達した。 締めは4×100mリレー。3走のボルトでリードを奪うと、4走のアサファ・パウエルもトップを守り、3つ目の金メダルを手にしてこの大会を終えた。 女子ハンマー投はアニタ・ヴォダルチク(ポーランド)が77m96の世界新記録で優勝。タチアナ・ルイセンコ(ロシア)が持っていた従来の世界記録を16cm上回った。 1投目に74m86を投げて2位とまずまずのスタートを切ると、2投目に会心の投げを見せる。高い弾道でハンマーは飛んでいき、トップ(75m10)の記録を大きく超え、77m96の世界新記録をマークした。 正式結果を確認したヴォダルチクは跳び上がって喜びを爆発させる。しかし、勢い余って左脚を捻挫し、3投目から5投目をパス。前回覇者のベティ・ハイドラー(ドイツ)が6投目に77m12を投げてヒヤリとしたが、からくも逃げ切った。 名勝負が繰り広げられたのが女子走高跳。この種目は連覇を狙うブランカ・ブラシッチ(クロアチア)と地元・ドイツのアリアネ・フリードリヒによる一騎打ちが予想されていた。 1m99を終えた時点で残ったのがブラシッチ、フリードリヒ、アンナ・チチェロワ(ロシア)の3人。チチェロワが1回目、ブラシッチが2回目で2m02を成功させたが、フリードリヒは2回失敗して窮地に追い込まれる。それでも3回目に成功させ、勝負は2m04、もつれ込んだ。 2m04はブラシッチが2回目に成功。チチェロワは3回連続で失敗し、2回連続で失敗したフリードリヒは3回目をパスして、2m06にすべてを懸けた。地元の大声援に後押しされたフリードリヒだったが、これも失敗。ブラシッチが連覇を達成した。 男子長距離では「皇帝」と言われたケネニサ・ベケレ(エチオピア)が大会史上初の5000mと10000mの2冠の快挙を成し遂げた。 10000mは26分46秒31の大会新記録で4連覇。得意のスパートでライバルを圧倒した。5000mではラスト1周まで大集団でレースが進み、最後は前回覇者バーナード・ラガト(米国)との一騎打ちになる。フィニッシュ直前までの争いとなり、0秒24差でベケレに軍配が上がった。日本勢は最終日にメダル2つ獲得
日本からは男子30選手、女子25選手が出場。メダル2、入賞5の成績を残した。 ハイライトは大会最終日。それまで日本勢のメダルは0だった。 まずはモーニングセッションの女子マラソン。尾崎好美(第一生命)が2時間25分25秒で銀メダルを獲得。加納由理(セカンドウインドAC)は2時間26分57秒で7位に入った。 レースは25kmまでスローペースながらも後半に入ってペースが上がる展開。35km手前の時点で先頭は尾崎、白雪(中国)、アセレフェチュ・メルギア(エチオピア)の3人に絞られた。 40kmを過ぎたところで尾崎がスパート。メルギアを突き放し、白雪との一騎打ちに。残り1kmで白雪にスパートされ、尾崎はついていくことができない。それでも最後まで力を振り絞り、1991年大会で恩師の第一生命・山下佐知子監督が獲得した時と同じ色のメダルに輝いた。 男子やり投では村上幸史(スズキ)が82m97で銅メダルの快挙。この種目で日本人初のメダリストとなった。 [caption id="attachment_174671" align="alignnone" width="800"]
男子やり投で銅メダルを獲得した村上幸史[/caption]
予選で日本歴代2位(当時)となる83m10を投げ、全体の2位で通過。決勝では2投目に82m97を投げて3位に立つ。その後は記録を伸ばせなかったが、有力選手の記録が伸び悩み、そのまま3位をキープ。出場した過去2回は予選落ちに終わっていたが、自身初の決勝でつかんだメダルだった。
前年の北京五輪で銀メダルを獲得した男子4×100mリレーは、これまで4走を務めてきた朝原宣治が現役を引退。江里口匡史(早大)、塚原直貴(富士通)、高平慎士(富士通)、藤光謙司(セーレン)のメンバーで挑み、38秒30で4位に入った。
男子マラソンでは佐藤敦之(中国電力)が2時間12分05秒で6位入賞。女子20km競歩の渕瀬真寿美(大塚製薬)も1時間31分15秒でこちらも6位に入った。
女子10000mでは中村友梨香(天満屋)が31分14秒39で7位、福士加代子(ワコール)もシーズンベストの31分23秒49と力を出したが、8位と2秒07差の9位で、惜しくも入賞を逃した。
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