HOME アイテム

2020.11.20

【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アディダス「アディゼロ アディオス プロ」
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アディダス「アディゼロ アディオス プロ」

【シューズレポ】
サブスリー編集者が語る!!
アディダス「アディゼロ アディオス プロ」

 中学時代から陸上競技に取り組み、今も市民ランナーとして走り続けている月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、注目のシューズをトライアル! 今回はアディダスの「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」(税込み27,500円)を紹介する。

アディダスのトップレーシングシューズ「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」

カーボンバー搭載レーシングモデル

 ある意味、“底の見えないシューズ”かもしれない。アディダスが6月から順次発売している「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」は、これまでに発売された厚底レーシングシューズの中でも、性能評価が個人によって大きく分かれそうなモデルだ。

広告の下にコンテンツが続きます

 2017年以降に登場したレーシングシューズは、主に“厚底”と“カーボンプレート”をキーワードに開発されてきた。アディダスも2020年2月にはカーボンプレートを搭載した厚底レーシングシューズ「adizero Pro(アディゼロ プロ)」を発表。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で発売を延期すると、6月には早くも独自技術を搭載した次なる厚底モデル「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」をアディゼロ プロと同時に発売した。

 アディゼロ アディオス プロの大きな特徴は前足部のミッドソール内にプレートではなく、5本のカーボンバー「EnergyRods(エナジーロッド)」を内蔵していること。エナジーロッドは中足骨をヒントに調整されており、足の形状に沿った自然な重心移動を維持するという。

前足部のミッドソールには5本のカーボンバー「EnergyRods(エナジーロッド)」を内蔵。重心移動はスムーズだ
 さらに、ミッドソールにはアディダスで最も軽量で高反発な「LightstrikePRO(ライトストライク プロ)」という新素材を採用。ヒール部分の厚さは39.5mmで、これは世界陸連の既定上限(40mm)をギリギリでクリアしている。エナジーロッドとライトストライク プロによる反発で「爆発的推進力」に貢献する、というのがアディゼロ アディオス プロのコンセプトだ。

長い距離ほど威力を発揮

 このアディゼロ アディオス プロはすでにトップランナーの間では大きな成果を上げている。10月にポーランド・グディーニャで開催された世界ハーフマラソン選手権では、アディゼロ アディオス プロを履いたペレス・ジェプチルチル(ケニア)が女子単独レース世界最高記録となる1時間5分16秒で優勝。男子も9月のプラハ・ハーフマラソン(チェコ)ではキビウォット・カンディー(ケニア)が世界記録に36秒と迫る58分37秒をマークしている。

 では、アディゼロ アディオス プロの履き心地はどうなのか。まず、サイズ感は通常25.0~25.5cmを履く筆者だと25.0cmで少しゆとりがある印象だ。重量は25.0cmで208g(実測値)と、200g未満が主流であるレーシングシューズの中では重い部類に入るが、走っている時にはそれほど気にならない。ソールの厚さを考えると、以前紹介したアディゼロジャパン5と10g程度しか変わらないのは驚異的と言えるだろう。

広告の下にコンテンツが続きます

 分厚いミッドソールはクッション性が高く、全体に「モチッ」とした柔らかさがある。前足部は母指球からつま先にかけて反り上がっており、ソールの分厚さをより強く感じるものの、踵から接地したとしても重心移動はスムーズだ。エナジーロッドの存在は走っている間にはほとんど意識されないが、カーボンプレート内蔵シューズのような“前足部の平べったさ”はなく、エナジーロッドが縁の下の力持ちとして役目を果たしているのを理解できる。

 反り上がったミッドソールは前に重心を傾けると靴全体がカクンと転がるような構造をしており、ゆっくり走ろうとしても自然にペースが上がる。1km5分程度で走っていたつもりでも気がつくと4分30~40秒になってしまうほどだ。それでいてふくらはぎや太腿など脚の疲労感は少なく、距離が長ければ長くなるほどシューズの性能が生かされるように感じる。

アップダウンにマッチする構造

 一方で、ミッドソールをバネのように弾ませるタイプの靴ではないため、トラックの5000mレース(※12月以降はソールが25mmを超えるシューズはトラックレースで使用できない)などで使ってみると反発がやや物足りない印象も受けた。200mなど短い距離のダッシュでも、足を強く踏み込むとミッドソールにエネルギーを吸収されてしまい、力がうまく地面に伝わらないように感じる。

 そもそもアディゼロ アディオス プロは前足部の傾斜によって、地面を蹴ろうとしても“蹴らせてくれない”構造となっている。キックによるエネルギーロスを構造的に抑え、「足を転がしながら走る」という仕組みだ。短い距離を走る時にはカーボンプレートを搭載したアディゼロ プロのほうが向いているかもしれない。

つま先が反り上がっており、走る時は足が転がるような感覚。厚底のソールはクッション性が高く、走っていても疲労感は少ない
 ちなみに、筆者がアディオス プロの性能が最も生きると感じたのは上り坂と下り坂だった。地面を“蹴らせてくれない”構造が傾斜とマッチし、楽に上り坂でもスピードを上げられるのだ。

広告の下にコンテンツが続きます

 下る時も脚が流れにくい構造により、コンパクトに回転数を上げられる。箱根駅伝の5、6区にも向いているのではないだろうか。

 前述の通り、走っていてもふくらはぎや太腿などのダメージが抑えられることから、マラソンやハーフマラソン、ウルトラマラソンといった長い距離のレースほど有力な選択肢に入りそうだ。それがタイムにどの程度反映されるかは未知数な部分も多く、そういう意味でもアディゼロ アディオス プロは“底の見えないシューズ”と言えるかもしれない。

文/山本慎一郎

<関連記事>
【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アディダスの「Adizero Japan 5」

広告の下にコンテンツが続きます

<関連リンク>
ADIZERO ADIOS PRO(公式サイト)

【シューズレポ】 サブスリー編集者が語る!! アディダス「アディゼロ アディオス プロ」

 中学時代から陸上競技に取り組み、今も市民ランナーとして走り続けている月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、注目のシューズをトライアル! 今回はアディダスの「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」(税込み27,500円)を紹介する。 アディダスのトップレーシングシューズ「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」

カーボンバー搭載レーシングモデル

 ある意味、“底の見えないシューズ”かもしれない。アディダスが6月から順次発売している「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」は、これまでに発売された厚底レーシングシューズの中でも、性能評価が個人によって大きく分かれそうなモデルだ。  2017年以降に登場したレーシングシューズは、主に“厚底”と“カーボンプレート”をキーワードに開発されてきた。アディダスも2020年2月にはカーボンプレートを搭載した厚底レーシングシューズ「adizero Pro(アディゼロ プロ)」を発表。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で発売を延期すると、6月には早くも独自技術を搭載した次なる厚底モデル「adizero adios Pro(アディゼロ アディオス プロ)」をアディゼロ プロと同時に発売した。  アディゼロ アディオス プロの大きな特徴は前足部のミッドソール内にプレートではなく、5本のカーボンバー「EnergyRods(エナジーロッド)」を内蔵していること。エナジーロッドは中足骨をヒントに調整されており、足の形状に沿った自然な重心移動を維持するという。 前足部のミッドソールには5本のカーボンバー「EnergyRods(エナジーロッド)」を内蔵。重心移動はスムーズだ  さらに、ミッドソールにはアディダスで最も軽量で高反発な「LightstrikePRO(ライトストライク プロ)」という新素材を採用。ヒール部分の厚さは39.5mmで、これは世界陸連の既定上限(40mm)をギリギリでクリアしている。エナジーロッドとライトストライク プロによる反発で「爆発的推進力」に貢献する、というのがアディゼロ アディオス プロのコンセプトだ。

長い距離ほど威力を発揮

 このアディゼロ アディオス プロはすでにトップランナーの間では大きな成果を上げている。10月にポーランド・グディーニャで開催された世界ハーフマラソン選手権では、アディゼロ アディオス プロを履いたペレス・ジェプチルチル(ケニア)が女子単独レース世界最高記録となる1時間5分16秒で優勝。男子も9月のプラハ・ハーフマラソン(チェコ)ではキビウォット・カンディー(ケニア)が世界記録に36秒と迫る58分37秒をマークしている。  では、アディゼロ アディオス プロの履き心地はどうなのか。まず、サイズ感は通常25.0~25.5cmを履く筆者だと25.0cmで少しゆとりがある印象だ。重量は25.0cmで208g(実測値)と、200g未満が主流であるレーシングシューズの中では重い部類に入るが、走っている時にはそれほど気にならない。ソールの厚さを考えると、以前紹介したアディゼロジャパン5と10g程度しか変わらないのは驚異的と言えるだろう。  分厚いミッドソールはクッション性が高く、全体に「モチッ」とした柔らかさがある。前足部は母指球からつま先にかけて反り上がっており、ソールの分厚さをより強く感じるものの、踵から接地したとしても重心移動はスムーズだ。エナジーロッドの存在は走っている間にはほとんど意識されないが、カーボンプレート内蔵シューズのような“前足部の平べったさ”はなく、エナジーロッドが縁の下の力持ちとして役目を果たしているのを理解できる。  反り上がったミッドソールは前に重心を傾けると靴全体がカクンと転がるような構造をしており、ゆっくり走ろうとしても自然にペースが上がる。1km5分程度で走っていたつもりでも気がつくと4分30~40秒になってしまうほどだ。それでいてふくらはぎや太腿など脚の疲労感は少なく、距離が長ければ長くなるほどシューズの性能が生かされるように感じる。

アップダウンにマッチする構造

 一方で、ミッドソールをバネのように弾ませるタイプの靴ではないため、トラックの5000mレース(※12月以降はソールが25mmを超えるシューズはトラックレースで使用できない)などで使ってみると反発がやや物足りない印象も受けた。200mなど短い距離のダッシュでも、足を強く踏み込むとミッドソールにエネルギーを吸収されてしまい、力がうまく地面に伝わらないように感じる。  そもそもアディゼロ アディオス プロは前足部の傾斜によって、地面を蹴ろうとしても“蹴らせてくれない”構造となっている。キックによるエネルギーロスを構造的に抑え、「足を転がしながら走る」という仕組みだ。短い距離を走る時にはカーボンプレートを搭載したアディゼロ プロのほうが向いているかもしれない。 つま先が反り上がっており、走る時は足が転がるような感覚。厚底のソールはクッション性が高く、走っていても疲労感は少ない  ちなみに、筆者がアディオス プロの性能が最も生きると感じたのは上り坂と下り坂だった。地面を“蹴らせてくれない”構造が傾斜とマッチし、楽に上り坂でもスピードを上げられるのだ。  下る時も脚が流れにくい構造により、コンパクトに回転数を上げられる。箱根駅伝の5、6区にも向いているのではないだろうか。  前述の通り、走っていてもふくらはぎや太腿などのダメージが抑えられることから、マラソンやハーフマラソン、ウルトラマラソンといった長い距離のレースほど有力な選択肢に入りそうだ。それがタイムにどの程度反映されるかは未知数な部分も多く、そういう意味でもアディゼロ アディオス プロは“底の見えないシューズ”と言えるかもしれない。 文/山本慎一郎 <関連記事> 【シューズレポ】サブスリー編集者が語る!! アディダスの「Adizero Japan 5」 <関連リンク> ADIZERO ADIOS PRO(公式サイト)

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.05.07

【竹澤健介の視点】葛西潤と五島莉乃に感じた「意志」と冷静さ 太田智樹の安定感、前田和摩の潜在能力に驚き/日本選手権10000m

静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムを舞台に開催された第108回日本選手権10000m。男子は葛西潤(旭化成)が27分17秒46、女子は五島莉乃(資生堂)が30分53秒31と、ともに日本歴代6位の好タイムで初優勝を飾 […]

NEWS 【高平慎士の視点】男子4×100m、4×400m「収穫ある4位」五輪シードレーン獲得、後手に回ってメダル争いの価値/世界リレー

2024.05.06

【高平慎士の視点】男子4×100m、4×400m「収穫ある4位」五輪シードレーン獲得、後手に回ってメダル争いの価値/世界リレー

バハマ・ナッソーで開催された2024世界リレー(5月4日、5日/日本時間5日、6日)で男子の4×100mと4×400mがパリ五輪出場権を獲得した。初日の予選で、4×100mは38秒10で1着通過して五輪切符を決めると、決 […]

NEWS ダイヤモンドリーグ・ドーハに三浦龍司、田中希実、ディーン元気がエントリー!

2024.05.06

ダイヤモンドリーグ・ドーハに三浦龍司、田中希実、ディーン元気がエントリー!

5月10日に行われるダイヤモンドリーグ(DL)ドーハ大会のエントリーリストが発表された。 男子3000m障害に日本記録保持者の三浦龍司(SUBARU)が登録。世界記録保持者のラメチャ・ギルマ(エチオピア)、ブダペスト世界 […]

NEWS 男子は銭海峰が1時間19分05秒でトップ 女子はベテラン・劉虹が快勝/WA競歩ツアー

2024.05.06

男子は銭海峰が1時間19分05秒でトップ 女子はベテラン・劉虹が快勝/WA競歩ツアー

5月5日、世界陸連(WA)競歩ツアー・ゴールドのコルゼニフスキ・ワルシャワ競歩カップがポーランドで開催され、男子20km競歩では銭海峰(中国)が1時間19分05秒で、女子20km競歩はリオ五輪金メダリストの劉虹(中国)が […]

NEWS 米国が4種目を制覇! 男子4×400mはボツワナが2分59秒11で初優勝/世界リレー

2024.05.06

米国が4種目を制覇! 男子4×400mはボツワナが2分59秒11で初優勝/世界リレー

5月4日、5日の両日、バハマ・ナッソーで世界リレーが開催され、米国が5種目中4種目で優勝を飾る圧倒的な強さを見せた。 男子4×100mではアンカーに世界選手権100m王者のN.ライルズを起用。1走から3走も全員が100m […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年5月号 (4月12日発売)

2024年5月号 (4月12日発売)

パリ五輪イヤー開幕!

page top